しっかり怒るのも愛なのよ
ある日、私は自宅のディメンションルームで神様関係の仕事をやっていた。
「·····以上で報告を終了いたします、あとはそちらでの対処をお願いいたします」
『承知した』
今は丁度神界支部とのオンライン会議で向こうのお偉いさんに神界関係の報告をやっていた所だ。
私は管理職の臨時トップって事になってるから、こうやって神界の総合管理局で色々決まった事を各支部っていうか宗教ごとのお偉いさんに色々やってもらうために報告したりするのよね。
ただ三次元世界は無限に広がっていて宗教も同じように沢山あるけど、ぶっちゃけ言うとちゃんと神様が神界に居て管理してるのはせいぜい100種類しかないのよね。
というのも、宗教で崇拝される神には代表取締役みたいなのがそれぞれ居て、その神が宗教内のトラブルを解決してくれて、総合管理職の私たちが判断すべき内容だけこっちで精査してる感じね。
分かりやすく言うと、宗教が会社でそこで崇められる最高神が社長(たまに更に上の会長や代表取締役も居る)で、会社内の運営をしたりトラブル対応をしてるって感じね。
で、会社の運営にあたって国に申請が必要な事とか、会社内では解決しきれない問題は私たち総合管理職····· というか公務員の出番って訳だ。
例えば背信行為をしたからクビにする、程度ならその会社に任せるんだけど、それを超えるトラブル····· 刑事事件級のが起きたりすると私たちの出番って訳だ。
かなり大規模なグループ企業を運営してる『神聖4文字』様なんかは某グループ企業が喧嘩っ早くてちょいちょい相談してくるし·····
あっちなみに立場的には私より社長さん達が格上ね?
私はただの国家公務員の職員だからちゃんと会社やってる神様の方が上なんだけど、でも宗教の運営上私たちを無下には扱えないって感じね。
私もブラック企業所属の頃にあの横暴な社長が、普通の銀行の社員さんとか労働監査局の職員さんにペコペコ頭下げてるの見たことあるし·····
·····盛大に話は逸れちゃったけど、私たちが直接宗教の管理をしてる訳じゃないから毎秒のように仕事しなきゃとかは無いから楽っちゃ楽な仕事なのよね。
まぁ、時々相手がすっごいヤバい人で緊張することもあるのは大変かもしれないケド·····
例えば、今日のオンライン会議の相手はあんまり大っぴらに名前を言うとブチギレられること間違いなしな宗教の崇拝対象で、流石の私もちょっと怖かったのよね。
だって超有名なお方だし·····
でも最初は緊張してたけど、途中からとある原因で和やかムードになってくれて、私は心臓バックバクだったけどギリ何とかなった出来事があった。
『·····して、その幼子は汝の子か?』
「んぇ?あっ、アッ!!?すっ、すみまッ、申し訳ございません·····」
「ねーおかーしゃ、このひとだれ~?」
「フェニカ!このお方はすっごい偉いからちゃんとしなきゃダメだよ?」
「うん!わたしふぇにか!あなたはだぁれ?」
『·····ふむ、吾の名を聞くか?』
「ちょっとフェニカ!」
「あいさつ!!だいじ!!おかーしゃ、いってる!」
「そうだけど····· あぁもうっ!」
『善い、吾の名は·····』
「えっ!?えーっと、そのー····· 秘密って事でお願いします·····」
·····そう、途中で私の娘のフェニカが乱入してきたのだ。
最初はブッ殺されるかと思って濃厚豚骨ラーメンかってくらい脂汗がダラダラ垂れて来たけど、どうやら許してくれたみたいだし機嫌がよくなってくれてめっちゃ助かった。
けど後でフェニカには怒らなきゃいけない、親の仕事を邪魔するのはダメだからね。
『幼子のやる事だ、吾は許そう、汝もそうしたまえ』
「·····承知いたしました、ではこれにて」
『御苦労であった、女神ガイアにy』
\ブツッ!/
「えっ!?ちょ、なんで切れ····· あーーーっ!!?ちょっとフェニカ!勝手なことしないで!い、今すぐ釈明のメールを·····」
「おわったー?おわった!おわらせた!」
向こうのお偉いさんがガイア様にナントカって言った瞬間、会議が強制終了させられた。
そしてフェニカが居ないことに気が付いて周囲を探すと、不機嫌そうな顔でパソコンの電源ボタンを長押してるフェニカが居た。
·····強制シャットダウンされたわ。
「ああぁ····· 人生が終わったかも····· フェニカ?お母さんのパソコンは勝手に触っちゃダメって言ったでしょ?」
「げーむしたい·····」
「ゲームはやらせてあげるから!お母さんがやってる時は手出ししちゃダメ!」
「だって、だってぇ····· むぅぅぅぅぅうううっ·····」
私は勝手に会議を終わらせたワガママで自由な私の娘を説教したけど、すぐに泣き始めてしまった。
ったくもう····· そっちに泣かれると悪い事してるみたいで罪悪感が半端ないからやりにくいのよ、でも怒らないといけない時だからそこはちゃんとやらなきゃだし·····
親の仕事ってホント大変すぎる·····
「·····向こうのお偉いさんにはメールで釈明しておいたよ?別に終わらせるつもりだったからいいってさ、私に宜しく伝えてくれって言うつもりだったみたいだよ」
「ガイア様ナイスです!助かります!!」
「にせおかーしゃぁああ!おかーしゃんが、ふぇにのこと、おこるー!!うえええええええんっ!!」
「よしよし、いい子いい子、フェニカは良い子だよ、お仕事は早く終わらせた方が良いからね」
「うん·····」
ってフェニカに説教をしていると後ろでダラダラしていたガイア様が向こうに釈明のメールを送ってくれたようだ。
しかも怒ってなかったみたいで助かったわ。
ただ私の怒りは怒髪天すぎてスーパーサ〇ヤ人してるけど。
「ガイア様?フェニカは悪い事をしたんですからちゃんと説教しなきゃいけないんで甘やかしすぎないでください」
「やだぁ!!にせおかーしゃ、たしゅけてぇ·····」
「うっ偽って言われるのはアレだけど娘に抱き疲れるのサイコー·····」
「私より子煩悩しないでくれません?」
しかもその矛先は私の娘を自分の娘のように扱ってしかも許そうとしているガイア様に向いていた。
私の教育方針は『良いことをしたら全力で褒めて、悪い事をしたらちゃんと怒る』で、今のフェニカは悪い事をしたんだからちゃんと怒るつもりだ。
もちろん暴力には絶対に頼らなし怒鳴らないけど、諭すように怒るのがめっちゃ怖いらしくて子供たちには大不評だ。
ただ母親をやるってのは愛されると同時に嫌われる事もやらなきゃいけない大変な仕事だから、私も我慢して怒ってるのよね。
·····だから、先にガイア様にいい所を持っていかれると私が嫌われ損するから許せないのよ。
「でもねフェニカ、お母さんはフェニカに嫌な事をされちゃってフェニカの事嫌いになっちゃうかもよ~?フロウとかルナとかに目移りしちゃうかもなぁ·····」
「やだぁ!!おかーしゃはフェニのことだいすきなのー!!」
「だったらちゃんと謝らないとね?お母さんが嫌だなぁって思う事をしたら嫌いになって他の子ばっかり好きになっちゃうかもしれないからね、『私が一番なんだ、一番偉くて可愛いんだ』ってお母さんにアピールしなきゃ、何もなしで一番にはなれないからね?」
「·····うん」
「じゃあ後はどうすればいいか、可愛くて天才で一番のフェニカならわかるよね?」
「·····うんっ」
·····流れ変わった?
あっフェニカが自分からガイア様の膝から降りてこっち来た。
「おかあしゃん、ごめんなしゃい·····」
「·····いいよ、ちゃんと謝れていい子だね、お母さんの仕事の邪魔はしちゃダメってわかった?」
「うん·····」
「そっか····· フェニカはよくわかってるねぇ、やっぱり一番天才で一番可愛いよ!いい子いい子!ハイもう許した!仲直りしよう?」
「うんっ!おかーしゃだいすきー!!」
そう言うとフェニカは私に抱き着いてきて、仲直りって事になった。
我が家ではこれがいつもの事で、一度ちゃんと謝ったらもうそこからは絶対に怒ったりしないでたっぷり甘やかすっていう事に決めている。
そのつもりは無かったんだけど、いつの間にか飴と鞭みたいになってしまっているけど結構効果があるのよね。
我が家では再犯率はそこそこ低くて、私のやり方がいいとは言い切れないけどフェニカたちが天才でちゃんと理解してくれてるから再犯が少ないと私は考えてる。
·····まぁ私がルナの面倒を見てたりすると時々自らジュースをこぼして悪い事をしたって言って自作自演で甘やかされようとしてきた事はあるけど、3歳にして既に制度を悪用できるくらい頭がいいフェニカを私はめっちゃ溺愛しているのよね。
ただ悪用してるってわかった時はガチめに怒ったせいで丸一日口を聞いてくれなくなって、結局私が折れて溺愛しに行ったけど。
「じゃあちょっと放してくれる?」
「やだぁ、おかーしゃがいい·····」
「フェニカがやりたかったゲームの準備しようと思ってたんだけどなぁ、こっちの方がいっか!」
「だめ!ゲームしたい!」
「んふふ、じゃあ一旦どけるよね?フェニカは良い子だからさ?」
「うんっ」
でも溺愛している娘がゲームをしたいって言っていたから私はフェニカを一旦離して、パソコンで開いていた仕事関係のデータを保存して終了して、ゲーム用に仕事関係のデータをロックしていじれないように変更する作業をはじめたのだった。
◇
~5分後~
「えいっ!やー!あははっ!」
私がさっきまで使っていたパソコンでフェニカが子供向けのゲームをやって遊んでいた。
ちなみにキーボード操作は小さいフェニカの手には難しかったから、専用のコントローラーで操作して遊んでいるけどそれがなかなか可愛くて私の100ペタバイトはある写真フォルダの数%はコントローラーを持ってゲームをするフェニカの写真で埋まっている。
そんくらい可愛い。
そして私とガイア様は、少し離れたところでお菓子をボリボリ食べながらフェニカの様子を見守っていた。
「·····ガイア様、さっきはナイスフォローでした、ありがとうございます」
「まぁねぇ、だって私も育児は沢山してきたからもう百戦錬磨よ」
「そういえば無限回くらい育児してるんでしたっけ····· これが最適って方法とかあります?」
「無い!育児は臨機応変で無限回やれば無限に別パターンが出てくるからわからん!!」
「ひえー·····」
そういえばガイア様って、何度も世界をやり直してその度に育児をしてきてたから子育てとかに関しては神級の知識と経験があるのよね。
だから時々助けてくれたりしてぶっちゃけめっちゃ助かってる。
·····ただ育児は知っていたからと言ってどうにかなるモノではない。
その時の子供の気分で正解は違うし、同じパターンでも全く答えが違くて予測なんて出来たもんじゃないのだ。
私もアカシックレコードに頼って何とかしたいけど、予測不可能で自力でなんとかするしかなくて大変なのよね·····
そいえば育児は楽できないって誰かが言ってたなぁ·····
でもやっぱり私は小さい頃から中身が大人だったから素直に言う事を聞くし従うし大人しいしでかなり育児がしやすい良い子だったんじゃないかな。
·····いやそうでも無いってか、だいぶ苦労させてたな、うん。
そんで私の血をしっかり継いでるこの子も·····
嫌な予感が頭に過ぎった私は、即考えるのをやめて今の天真爛漫で愛おしいフェニカを愛でたのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「·····やめやめ、あんまり悪いこと考えてたら実現しちゃいそうだし、イデアなんかそっち方向に猪突猛進中だし·····」
名前:フェニカ・シュテイン
「どうしたのー?」
名前:ガイア
ひと言コメント
「あーー····· お母さんはフェニカが大きくなってからどうやって愛そうか悩んでるんだと思うよ?うん、だからフェニカもお母さんをあんまり困らせないようにするんだよ?··········すんごい大変だったからさ」




