この一体の遺体はいったい何時から居たんだ?
鉱滓ダムの汚染水などの除去を行った私は、実家に戻って来てお父さんに鉱滓ダムの除染と撤去が完了したことを伝えた。
「·····もう終わったのか?」
「あー、本当は下見がてら軽く登山でもして体を動かそうと思ったんだけど、いざ行ってみたら時間的にも余裕があったしついでにやっちゃったのよ」
「一応事前にやるっていってたが、本当にやっちまうとは思ってなかったし予定より早すぎる·····」
「まぁ早い方が良いじゃん、それに金も結構残っててすごい量になって意外な収穫が出たんだし·····」
実は今回の鉱滓ダムの除染作業は事前にお父さんにやると伝えていたのだ。
でも本当はもっと先の予定だったんだけど、下見がてら気晴らしに登山してたら行ける気がしてやっちゃったのだ。
そう、私は蝶々より気まぐれでフェニカよりかは計画的に動く女なのさ!
·····フェニカの自由っぷりには私も驚かされてるよ、一瞬蝶々に気を取られた瞬間どっか行こうとしてるくらい気まぐれだし。
まぁそれは今は関係ないか。
「で、何が収穫できたんだ?」
「·····金が10kgも回収できちゃった」
「はぁ!?そんなにか!?」
「まぁだって500万kgくらいあったし、その中から徹底的に成分を分離して取り出したからこのくらいあっても変じゃないと思うよ」
んで実は、このお掃除の報酬で結構な量の資源が採取できたのだ。
金属の採取って鉱石を砕いてそれを精錬して取り出すんだけど、質の悪い部分とかは捨ててズリという山みたいにしてしまうのが普通だ。
んでこのズリに捨てられた石には基本的に資源にできるほどのモノは含まれていないんだけど、それは資源にできるほどの量って言うだけで実は普通に資源が含まれているのだ。
といっても金の場合は1トンから1gも取れないだろうけど、それでもあの中に500万kg、5000トンもあると流石に結構な量が採れてしまったのだ。
ちなみに通常は1tあたりの平均が5gで、1〜3gが低品位の鉱石となっているから、それ以外と考えると鉱石としては成立しない代物だ。
まぁ調べたら一部は砂金だったけど、それでも徹底的に分離したら結構な量が採取できたのだ。
しかも取れたのは金だけじゃなくて他の金属もあって、銀や銅やタングステンがそこそこ、鉄がかなり大量、亜鉛やカドミウムといった危険な金属が少々、他の希少元素がほんのちょっとという大収穫だった。
ちなみに岩石を構成するケイ素とかカルシウムはそもそも分離もしてないからカウントしてない。
んで希少元素はタンタルとかも取れたし、ウランとかの放射性元素が結構あって個人的にはビックリだった。
「凄いな····· そんなに取り残しがあったとは」
「いや取り出すコストが大きすぎるから諦めた方が良いよ、私レベルの魔法で無理やりやったし·····」
「そうか、確かに言われてみればそうだな、ところで金はどうしたんだ?」
「ちゃんと持って来てるよ、金銀銅タングステン鉄アルミとかそういう使えそうなのは渡した方が良いかな?」
「いやソフィが持って行って構わない、やってくれたお礼って事で好きにしていいぞ」
「よっしゃぁ!まぁ金はもうたくさんあるしいらないけど嬉しいわ!」
「ただし、どの金属がどれくらいあったかとか、元の岩が何トンあったかは報告してくれ」
あー、アレかな?
余った鉱滓にどれくらい金属が含まれててロスが発生してるか調べたいのかな?
んふふ·····
それ、もう調査済みで報告書つくってあるのよ。
「はいこれ、どの金属がどれくらいあったかの報告だね、ランタノイドとかアクチノイド系の金属はわかんないだろうからまとめて一つにしてるよ」
「あぁ助かる、というかさっき帰って来たんだよな?」
「帰りながら作った」
「·····天才だな」
「でっしょ~?んふふ、ちゃんと読みやすいようにしておいたから」
「助かる、流石は俺の娘だな」
「んっへへ····· ちなみに私の感想だと金はちゃんといい感じに採れてるけど、若干銅と鉄とアダマンタイトがロスが多くて怪しいなぁって量だったね、ちょいと見直した方が良いかも?まぁ数十年前に満杯になったダムだし今は変わってるかもだけどね」
「そうか?·····確かに量が多いな、あとで鉱山の方に報告させてもらうけどいいか?もしかしたら現行の鉱山のズリでもやってもらうかもしれないけど·····」
「もっちろん!そういう比較も大事だし面白そうだからね!言ってくれれば手伝うよ!」
「まぁ確定した訳じゃないからなんとも言えないが、ありがとうな」
「おっけー!このソフィちゃんにお任せあれっ!」
って訳で、私はお父さんへの報告も終えたので、適度にいいかんじの運動ができて心地よく疲れたので、私は家に帰ってルナの面倒を見てから寝ることにした。
◇
「って!大事なの忘れてたぁぁぁぁああああああっ!!」
「うおあっ!!?いきなり入ってくるな!」
と思って帰ろうとした瞬間に大事な事を思い出して帰って来た。
「あの鉱滓ダムを撤去してたら人骨が出てきたんだけどどうしたらいい?」
「·····マジか?」
「マジ」
「マジかぁ·····」
◇
その後、私は見つけた白骨死体について報告をしていた。
「·····成人男性の骨か、鉱山労働者か山の中を歩いていた冒険者のどちらかだろうな」
「だよね、一応私も調査したんだけどうまくわかんなくて困ってるのよ」
まぁでもわかっているのは成人男性の骨格で、特に他種族の痕跡はないから確実にサークレット王国の人だったと思う。
んでお父さんに死者行方不明者の情報を調べてもらったけど居すぎて誰かはわからなかった。
悲しいけどこの世界は危険だらけで死体はしょっちゅう見つかってるのよね·····
むしろ、見つかる方が幸運かもしれないってレベルで死が身近な世界なのよ。
だからこの人も見つかっただけ幸運かもしれない。
っていうか鉱滓ダムの中に落っこちて遺骨が回収されただけでも相当運がいいだろう。
「何か痕跡は無かったのか?遺品を身に着けてたとかそういうのは·····」
「骨しかなかったっぽいよ、それと魂の痕跡も見たけどもう残ってないから下手したら数百年前の死体かもしれないかなぁ·····」
「そういえば魂とか見れたなソフィって·····」
「そうそう、でも見つからなくて困ってるのよね、どうしよっかな·····」
「仕方ないから身元不明者用の墓地に埋葬するしかないんじゃないか?」
「だよね·····」
この世界はさっきも言ったけど身元不明の死体がよく見つかる。
だからそういう人のために、名前も刻まれないし専用の墓標も立てられないけどちゃんと供養をしてくれる共同の墓地があるのだ。
大体の町に1個はあるモノで、当然フシ町にもあるからそこに埋葬しようかっていう話が出てきた。
まぁ、私もそうするべきだとは思うけどなぁ·····
どうせなら身元を特定してあげたいのよね·····
「·····仕方ない、ちょっと集中して辿ってみるわ」
「辿る?」
「過去を見て誰だったのかとか特定する作業しよっかなって」
「できるのか?·····いやソフィだから大丈夫か」
お父さん、私だからって何でもできるって思ってない?
まぁ実際そうなんだけどさ·····
って心の中で文句を言いながら、私はお父さんの部屋の椅子に腰かけてインベントリから小指の骨を取り出して辿る事にした。
「んじゃ集中するから5分くらい待ってて····· 『辿眼』」
◇
私が目を瞑り過去を見る眼『辿眼』を発動した瞬間、私の視界は小指の骨を中央に捕らえた第三者視点に切り替わった。
そして、時の逆行が始まった。
まず最初はインベントリの中をフワフワと浮遊していたが、突然外へ搬出されて私の目の前にやってきた。
多分鉱滓ダムから取り出されてインベントリに収納されて、実家の部屋で取り出された場面だろう。
んでそっからはほとんど変化はなく、ただひたすら真っ暗な鉱滓ダムの中で沈んだままだった。
·····と思ったら、なんか数時間で動き出した。
あれ、なんか思ってたのと違う·····
っていうか、肉がついてない状態で動き出して水面へ戻って行ってるし、白骨化してから落っこちたっぽい?
·····ん?
そういや鉱滓ダムって強酸性のはずなのに、カルシウムの塊の骨が残ってんのおかしいよな·····
そして白骨死体が水面に浮上したところで、ようやく原因がわかった。
◇
「·····お父さん」
「なんだ?わかったのか?」
「·····金1kgで許して?」
\ゴトンッ!/
「うわっ!?な、何なんだ?何があったんだ、むしろ怖いんだが!?」
私はお父さんのテーブルの上にさっき分離して取り出した金のインゴット1kgを置いて謝った。
そして、私がこの世界でも500万円近くもするインゴットで許してほしいと言った事からも、私が盛大な勘違いをしていたことがわかるだろう。
じゃあ何を勘違いしてたのかと言うと·····
「·····スケルトンだった」
「·····なるほど」
そう、あの骨は人の骨だけど人の骨じゃなかったのだ。
この世界には『スケルトン』という白骨死体の魔物が居る。
スケルトンには2種類のタイプが存在し、一つは人間の白骨死体が魔物化したアンデットの魔物、もう一つは元々『動く人骨』という魔物として生まれた魔物の2種類があるのだ。
んでただの白骨死体との見分け方だけど、ぶっちゃけほぼ無い。
魔物か否かは魔石があるかでわかるんだけど、魔石が無いと全く分からないし、アンデットの方が聖属性魔法が効きやすいのと臭いくらいしか見分ける方法が無いのだ。
さっき過去の映像を見てわかったけど、めっちゃピカピカな白骨死体が元気に歩き回ってたんだけど足を滑らせてダムに落っこちちゃったのよね。
あのダムって汚染されてて野生動物も早々近付かないのに近付いたって事はゴーレムに近い方の後者のスケルトンだったとしか考えられないし、魔石を見た感じも後者のスケルトンで間違いなかったのだ。
そんなわけで、てっきり本当に人の死体と思いこんじゃった私はスケルトンかもしれないという可能性をすっかり忘れて大騒ぎしたのだ。
「·····ごめん、早とちりしちゃったわ」
「いや、それもよくある話だし鉱山では死者が多いから間違うのも仕方ないだろう、気にしなくていいぞ」
「ほっ····· 良かった·····」
「だから別に怒るつもりもないから安心していいぞ」
「はーよかった、これで安心して寝れる·····」
「お疲れ、ソフィ」
死体じゃないなら別にいいやって事で、私は骨を崩壊魔法で無に返してしまい、次こそ帰って寝ることにしたのだっt
「·····ところでこの金はどうするんだ?」
「あっ、·····いる?」
「貰えるなら嬉しいが·····」
「んー····· じゃあ上げるよ」
·····もう眠くてぶっちゃけ寝たくて仕方なかったから、お父さんにはあのお詫びの金はそのままあげることにして、私はさっさとディメンションルームに帰ったのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「これ後で色々つけ加えて笑い話にしよっと、いいかんじに酒の席のネタにできそうだし面白いかもなぁ、まぁ考えるのは後でいいや、今はとりあえず寝よっと!おやすみ·····」




