魔法科学都市サタニキア
電車に揺られる事16時間、私たちは時々ディメンションルームに戻って我が子の面倒を見ながらだけど無事に魔王国の首都へと到着した。
ただ到着したのは日付が変わった深夜で、町は既に寝静まり静かになっていた。
·····一応魔族っていう悪魔的なキャラなんだから夜が本番でしょって思うけど、エビちゃんを見ればわかる通り普通に夜は寝るのよね。
まぁ深夜営業の飲み屋とかはあるし、そこら辺の町とあんまり変わらないくらいの夜の街があるから完全に寝静まったわけじゃないけど、明らかに昼よりかは活気は少ないだろう。
まぁそんな深夜に来たら特に観光するところも無い·····
「·····とでも言うと思ったか!!すごっ!都市じゃん!完全にミッ〇ガルじゃん!」
「お主ファ〇ナルファ〇タジー派じゃったか·····?いやわからんでもないんじゃが、確かに凄いのぅ····· ワシが魔王じゃった頃はこんなのじゃなかったのじゃ、雰囲気は残っておるが、これは流石に発展しすぎなのじゃ」
「うふふ、ここへ初めて来られる方はほぼ全員がお二人のような反応をいたしますよ、ここが魔王国の首都であり魔導科学を駆使して作り上げた都市『サタニキア』でございます」
私たちの目の前には、マジで最後の物語の7番目に出てきそうな科学都市が広がっていた。
いや、ミッ〇ガルっていったけどそれは第一印象だけで、よく見ると全く違うんだけどね。
どっちかと言うとミッド〇ル風のファンタジーロシアっぽい近代計画都市って言った方が良い感じなのよね。
まず角の取れた六角形に近い都市の中央には行政とかの主要機関が集まっている····· と思いきや、中央には明らかにハイテクで魔族由来のモノとわかる渋谷901の正面みたいな形の巨大なビルが建っていて、私の神目では強力な魔力反応と熱源反応があるから、たぶんアレがボイラーとかになっていて、そこから街中に太いパイプが延びていてまるでスチームパンクのような印象を感じられるようになっていた。
多分だけど中央で一括で熱源を確保して、その熱を都市に行き渡らせるシステムになっているのだろう。
あとゴミも燃やしてるっぽい。
そして何よりも面白いのは、この町にはしっかりと電気があるのだ。
「眠らない都市か····· やっぱり生で見ると違うなぁ」
「お主みたことあったのじゃ?」
「いや、千里眼とかでね?」
「暇つぶしで世界でも見ておったのかお主?」
「正解!地図とか見るの私大好きだからさ?そしたら夜中に見てたらここだけやたら光ってて見たら魔族の国だったわけだよ」
「なるほどのぅ、それも納得なのじゃ」
しかも、電気はボイラーによる火力発電のようで、魔法由来ではない本当の電力が使われているのだ。
まぁ電力は副産物で、この都市では火力発電のタービンである魔族がかつて開発した『火力式魔力発生装置(改)』を使用しているようだ。
魔力タービンの仕組みは普通の物とあまり変わりなくて、魔力は電気みたいに魔力伝導率の非常に高いコイルの中に魔力発生体である魔結晶などを入れて回転させることで魔力が発生して取り出せて、その技術は割と世間一般に普及している。
例えばアルム商店で販売されている数少ない魔道具『魔石チャージくん5号』はルームバイクっぽい魔道具で自分の脚で自転車のペダルっぽいのを回して魔力を生み出し、セットした魔石に魔力をチャージするという健康器具にも使われてたりするのだ。
ちなみにお値段29800円と結構高いけど、健康志向で倹約家の貴族にかなりの人気がある商品だ。
·····私のお爺ちゃんも持ってるのよね、しかも1台目はお婆ちゃんに占領されて使えなくなって追加で買ったら今度はメイドさんに占領されて渋々もう一台買ったって言ってたから、確かお爺ちゃんの家には3台くらいあったはずだ。
ちなみにアルム商店ではそれの手回し版の『魔石チャージ君3号』も売ってて、アルス魔道具店では水車用の『魔石チャージ君6号』も取り扱ってる。
だが、魔族はそれに更なる改良を加えて産業に使えるレベルにしているのだ。
多分国家機密だから大っぴらには言えないけど、コイル部分は基本はミスリルなんだけどその中に銅線を混ぜて、しかも中央の回転部分は魔石を固定する部品に磁石を組み込み更に雷の魔結晶を利用することでなんやかんや上手い事磁力も生み出して発電しているらしいのだ。
たった1台で魔力も電力も生み出してしまう超技術にはさすがの私も脱帽したわ。
まぁ数台設置されてるみたいだけど、それだけでこの都市で使う魔力も電気も熱も全て賄っているって考えると超ハイテクだ。
·····でもハイテクすぎてぜんっぜん普及しないし、他の国も魔族由来の技術だからって事であんまり好まない国が多くて更に普及してないんだけどね。
一応フシ町鉱山の旧換気システムは魔族から技術提供を受けた物だから相当高度なモノだったし、サークレット王国は魔族たちと仲が良いから結構普及してるけどね。
何が言いたいかと言うと、この都市は明らかにこの世界の文化水準を大きく超えているって事だ。
まぁだから普及しないんだけどね、何せテクスチャで·····おっとこれ以上はナイショね。
「申し訳ございませんエヴィリン様、ソフィ様、言語がわからず話に加われないのですが、何かご不満な点がございましたでしょうか·····」
「あっすいません·····」
「すまんかったのじゃ·····」
「ご不明な点等がございましたらお答えいたしますので、ご遠慮なくご質問ください」
「いや特にないんですけど、一つだけあるとしたら·····」
「·····なんで門が開かないんじゃ?」
「·····凍ってしまって今溶かしています」
まぁ外壁は金属製だったせいで、なんか凍結して開かなくなっちゃったみたいだけど。
ちなみに今魔族の人たちが寝てたのに叩き起こされて魔法で溶かしている扉は普段は全く使わない来賓用の重厚感のあるデカい扉で、あんまりにも使わないせいで凍結しちゃってたみたいなのだ。
·····こわっ、まだ9月中旬なのに凍ってるってこっわ。
結局この後あの扉は開きそうになくて、迎えに来たお偉いさんたちにペコペコ謝られらなが一般人用の門をなんか申し訳ない気持ちになりながら潜って町の中に入って行ったのだった。
◇
「·····で、最初から気になってたけど!すっごぉぉぉぉぉおおおおおおおおおっ!!!!」
「凄いのじゃ!!めっちゃ凄いのじゃ!!」
現在はド深夜の3時過ぎだけど、私たちは中央にあるボイラータワーの近くまでやって来ていた。
そして、全裸になっていた。
あっいやちゃんと水着は着てるよ?それがマナーってさっき書いてあったし。
「こちらはサタニキア魔王国の一番の観光名所『ヘルラグーン温泉』でございます、この土地は湧水が非常に多く、なおかつあのボイラーからは有り余るほどの温水が溢れるため、このようにタワー周辺に温水を蓄え一般開放しているのです」
私たちが真夜中なのにここへ来た目的は、温泉だ。
さっき上から魔法で見て気が付いてたけど、あのボイラータワー周辺には巨大な堀のような池があり、そこが全て温水になっていたのだ。
しかも所々に売店があったりウッドデッキや水上のバーとかがあるから、アイスランドのスヴァルツェンギ地熱発電所から出る熱水を再利用した世界最大の超巨大温泉『ブルーラグーン』のような超巨大な露天風呂として使われているようなのだ。
ここまで来て入らない手は無いって訳で、私たちは今年使ってインベントリの奥底にブチ込んでいた水着を引っ張り出して、海の家ならぬ温泉の家の中でチャチャっと着替えてはいることにしたのだ!
ちなみに濡れっぱなしだったから魔法で乾かして着た、·····時間止まってなかったら大変なことになってたわ。
「外気温は程よく寒いから、温泉が最高そうだぁ·····」
「そうじゃなぁ·····」
「ちなみに気温は魔導制御システムによって制御しており、冬場であれば平均-10℃まで気温を上げることが可能です」
「·····寒くないですか?」
「本来ならば-30℃が普通ですので、だいぶ温かいですよ?」
「魔族は元々寒いのはあまり得意じゃないからのぅ、じゃから寒い土地に逃げた魔族にとってはこの温泉は正に命の泉なのじゃろうな」
「その通りです、人によっては家に居るより温泉に居る方が長いという方もおられますからね、では入りましょう、寒いです」
「確かに寒いわ·····」
「ワシも魔族じゃから寒いのじゃ·····」
まぁ長々と話すと寒すぎて凍え死にしそうなので、私たちはさっさと温泉に入った。
「あっったかぁ····· あぁ16時間も電車に乗ってたから疲れが取れていくぅ·····」
「ワシもじゃぁ····· 魔王といえど、16時間も乗ってると全身バッキバキなのじゃあ·····」
「ふぅ····· やはり温泉は我々サタニキアの民の命です·····」
温泉の温度は丁度いい感じで温かく、途中でガッツリ寝たとはいえ長時間電車に乗っていて全身が疲れていた私たちの体を癒してくれた。
ちなみに泉質は単純魔力泉で、発電&発魔力の際に余った余剰魔力が水に溶け込んでるお陰で魔力含有量が結構多くて、全身に魔力が染み渡る感覚がして凄く気持ちがいいお湯だった。
これなら疲労回復も魔力回復もかなり早くなって元気になれるだろう。
って訳で、ファンタジーな様式の家と現代のロシアみたいなマンションが立ち並ぶ計画都市と未来感がすごいSFが混ざった魔族の国の夜景を眺めながら、私たちは温泉で身体をたっぷりとほぐして旅の疲れを癒したのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「進み過ぎた魔法と科学は受け入れられない、かぁ····· でも魔族の人たちは受け入れていい生活ができてるみたいで安心したなぁ、ついでにあの計画の参考になりそうだからしっかり視察しなきゃ」
名前:エビちゃん
ひと言コメント
「ちなみに魔族は温泉大好きで寒いのは苦手なのじゃ、それは魔神のワシでも変わらんのじゃ!はぁ····· 温泉気持ちいい····· のじゃ」
名前:ミルシェネル・オリエンス・カルボキシル
ひと言コメント
「ええ、私はお二方の案内と護衛を兼ねている役目ですから、温泉に入るのも必要です、これは職務でありただ入りたいだけでは····· えっ、そのお酒はですって?·····職務です、なんと言われようとこれは職務です、·····ところで、今気が付いたのですが先程まで3人いませんでした?」
名前:明星 木兎萌
ひと言コメント
「あぁあぁ、ヌシさま、腰が、こしがぁ····· ハンバーグって聞いて、先に帰っちゃいましたけど、わたしも温泉入ればよかったです····· 揉んでくださいヌシさまぁ·····」




