仲間はずれにされてちょっと不機嫌っ
フシ町西公園にウリアナ・ナールのコートが完成してからしばらくが経ったある日、私は冒険者の仕事をするため出かけていた。
ただ今回は珍しくレミアとミナタを連れてきていて、なかよし組のみんなは誰一人いない。
·····というのも。
「アイツら、あーホント腹立つなぁ!!」
『ゴブゴボブー!!』
『ェヤ"ー!ヴェヴェギェバァ!!』
ザンッ!
「えへへぇっ!ソフィさまぁっ!ゴブリンの血·····は要らないですよねぇ!じゃあ捧げないでそのままにしますぅっ!!」
ブシャァァアアアッ!!
「アチシもやっけ!へなってやっけりゃ!!」
ドシュッ!
「なーにが『ウリアナ・ナールがやりたいから一人で行ってきて』だ、私にだけ仕事を押し付けてきやがって!!私だって遊びたいに決まってるじゃん!!」
『ごぶぎゃ、がば!ぎゃヴぁばっ!!?』
『ヂャガャァアッ!?ヴォギェア!!?』
「うるさいなぁ、早く依頼終わらせたいから死んでよ?」
「ソフィさま、流石ですぅ」
「倒す速度はやすぎっけ!!アチシらなんもできねっぱりゃっけ!!」
『ゴブ·····』
『ぎぇー·····』
ドッパァァァアアアアアンッ!!
私はソフィの槍で切りつけたゴブリン2匹を更に追い打ちして、しぶとく騒いでいたから顔面を踏みつぶして爆散させてトドメを刺した。
そう、今日の私はちょっとお怒りモード、ドSなソフィちゃんで·····
「·····チッ、これだから血塗れの賢者姫なんて呼ばれるんだよ、私」
「お似合いですぅ」
Sランク冒険者ソフィ・シュテインの二つ名である『血塗れの賢者姫』モードだ。
私はその名にふさわしくゴブリン100匹とオマケに数十匹の集落を壊滅状態·····いや殲滅して、彼らの血や骨や肉や脳髄でドロドロに汚れ、魔族由来の美しい銀髪も真紅に染まるほどの返り血を浴びていて、さっき踏みつぶしたゴブリン共のせいで顔に付いてしまった血を拭い取った。
「で、次は誰が襲い掛かってくるの?」
ざわ·····
そして血潮の豪雨の下にいたかのように全身から血を滴らせる私が周囲を取り巻く残り少なくなったゴブリン共を睨みつけると、支配者級ゴブリンに命令されたにもかかわらずゴブリン共が僅かにしり込みして一歩引いて円が広くなった。
「·····来ないなら、こっちから行くけど?」
『ゴブブ····· エ"イェヤァ!!』
『ゴブゥ!!』
「まとめて来たか、でも好都合っ!2人とも!油断しないでよ!!」
「わかってますぅ!!お任せ下さぁいっ!」
「へにゃらっぺりっかりゃっけ!!」
ひときわ大きいゴブリンが何やら指揮を出すと、周囲を取り囲んでいた様々なゴブリンが私たちに一斉に襲い掛かって来た。
全方位からゴブリンが約100匹近く襲い掛かってくるというのはAランク冒険者でも対応するのがかなり厳しく下手したら死ぬか、それよりもっとひどい目に合わされるような危険な状態だ。
でも、さっきまでは数百匹に囲まれていたからこの程度全然平気だし、むしろ好都合だ。
なにせ、全ゴブリンが私の所に集合してるって事は後で残党狩りをする必要もないからだ。
「·····行くよ」
私が出したその言葉よりも物理的に早く、私を取り囲んでいたゴブリンの包囲網の1/3から鮮血の噴水が沸き上がった。
瞬間的に音よりも早く加速した私はゴブリン共の隙間をすり抜け、更にすり抜け際に槍で切り裂き突き刺し殴打して、一瞬で40匹のゴブリンが息絶えて魂があの世へと向かいはじめた。
そして私の右後ろでは、目の前以上の血の噴水ショーが始まり、天高く血の水柱が吹き上がり、針の雨へと変わると地上に突き刺さり、刺さったゴブリンは次々に破裂していって血溜まりへと変わっていった。
更に左後ろではゴブリンの持つ武器や周囲の草葉や石の角から黝い金属光沢を放つ棘が無数に出現し、ゴブリンを滅多刺しの串刺しにして瞬時に全ゴブリンが穴だらけになり即死した。
「弱い弱い、·····おっいまのやつ一撃だけ防いだ?そこそこ強かったね、さようなら」
ほぼ全てのゴブリンが息絶えたものの、円の範囲外のゴブリンはかろうじて無事で、更に指揮訳と思われる強力なゴブリン共ばかりで強敵揃いだった。
·····けど、私たちにとってはただの残党狩りだ。
「よっと」
『ゴブァ!!』
ガギャアァァァアアァァァアアアアッ!!
「おっと、やっぱりキング級になると防げるよね」
『グブブブ·····ッ!』
ゴアッ!!
「ウィンドブレードか、やっぱり不可視の風の刃は強いねぇ·····」
そして残党の中に居た群れのボスだったゴブリンキングが私のソフィの槍を受け止めた。
私のソフィの槍は万物を貫く神の槍だが、流石に柄や側面で受け止められると貫通する事は不可能だ。
その証拠に、私は鬱憤晴らしでボッコボコにしたくてわざとソフィの槍の側面でブッ叩いたせいでゴブリンキングの巨大なメイスで受け止められてしまった。
しかも即座に追撃で見えない風の刃を飛ばして攻撃してきやがった。
ちなみに風魔法は命中させるのが難しいけどそのステルス性能は段違いに高く、なおかつ切断力がかなり高いため暗殺にも使われる危険な魔法だ。
よくゲームとかで緑色の刃が飛ぶのを見るけど、アレはわかりやすいようにやってるだけで本物は無色透明でほぼ回避不可能だ。
まぁこの世界でもガソリンに色を付けたり、燃料用ガスに臭いを付けるのと似たような感じで、誤爆防止でわざと光魔法を混ぜて着色する場合もあるけど·····
「·····色付けなくても、魔力でわかっちゃうのよね」
ただし魔力を見れば一目瞭然だから簡単に避けられるし、風を操作できれば上書きして流したりできるんだけどね。
「んじゃ全力で掛かってきな、ブッ飛ばしてあげるから、ミナタとレミア、2人は残党狩りをお願い」
「わがりまびだぁっ!!あっ衂でぢゃいまじだ·····」
「へなアチシにまかせっけ!!」
そして私とゴブリンキングは、1VS1のバトルを·····
『焉禍の焔じゃ!!』
ゴォッ!!
ズッドオォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!
「きゃっ!!?」
『ゴアァァァアアアアッ!?アァァ····· ·····』
「·····うっそん、あの巨体が一瞬で灰燼に帰しちゃった」
「ソフィさま流石····· あれ、違いますぅ?」
1VS1のバトルをしようとした瞬間、どこからか黒焔が飛んできて私に当たりそうになってギリで回避したけどゴブリンキングに直撃し、かなり強いはずのゴブリンキングが一瞬で燃えつくして·····いや、それどころではない、物体から気体への一足飛びの変化である『昇華』を起こして骨も残らず完全に消え去ってしまった。
そして、私の後ろにゴブリンキングなんかよりはるかに禍々しく、そして強力な魔力反応が出現した。
振り返ると、そこには黒紫色の不気味な空間の裂け目から現れ、空中を優雅に歩いてこちらに接近する焉狐が·····
「·····あっ、服新調したんですか?」
「そうか?わかるよな、どうじゃ?焉狐らしくしてみたんじゃ」
「似合ってますねぇ」
·····早速私のお世辞がエキノコックスじゃなくて疫刻須宮にブチ込まれた。
はい私の勝ちぃ~
んじゃ後は茶番に付き合ってあげるとしよう。
「ククク····· わらわは握を両手で使えるようになったことで新たな力を得た!例えば、このように引き裂く事もっ!!」
ブヂブヂブヂッ
ブッシャァァァアアアッ!
「うわばっちぃ!!私の上で引き裂くなぁ!!」
「ククククッ、·····というか貴様、既に血塗れじゃな、この醜い小鬼の血で汚してやろうと思ったんじゃがなぁ」
「あっあっあっ!私にも!私にもお願いしますぅっ!誰かわかりませんし、何言ってるのかわからないですけど!!あっあっ!もしかして!!ソフィさまに血を捧げてるってことは衂教団に入信したいんですかぁっ!!?」
「な、、なんじゃこやつ·····」
「···············私の狂信者、血を捧げる事に血と命を捧げてるクレイジーサイコレズね」
「こ、こやぁ·····」
どうやら疫刻須宮さんは例の『握』を両手で扱うのをマスターしたみたいで、自慢しに来たようだ。
なんか新しいオモチャを貰った子供みたいで微笑ましいなぁ·····
ちなみに前回来た時も握の力で空間を引き裂いてこっちにつなげてしまったようだ。
そう考えるとだいぶ強いよねこの人。
てかレミア近づかないで、こいつエキノコックス急に危険なヤツだから。
·····いや早く離れて、血を私にぶっ掛けたの嫌がらせだから、血を捧げてる訳じゃないから。、
「ちなみにこれ私の戦闘スタイルなんで、戦ってるとどうしても血を浴びちゃうんですよね····· なので元々全部返り血まみれですよ?」
「じゃろうな、貴様の甘美な血の香りがせん、それにこの醜い小鬼如きに負けるような相手ではないからのぅ!!」
相手を過小評価しない、いい傾向だ。
「しかし!!握を両手で使えるようになったわらわにはかなわぬ!ここで会ったが百年目!」
「会ったっていうか会いに来たのでは?」
「·····ここに会いに来たが百年目!」
「てか会ってから1ヶ月経ってないですよ」
「·····ここに会いに来たがまだ一ヵ月経ってない!·····おい邪魔するな!!」
「へいへい」
ごめん前言撤回、ガッツリ調子に乗ってるわ。
って事で悪いキツネは躾しちゃおうねぇ。
それに·····
「あともう一つだけ言っていい?」
「ふん、辞世の句か、良いぞ」
「·····私のサンドバッグ奪っといて調子乗るんじゃねぇぞ?こっちはかなりカチンと来てるんだよこのクソ狐」
「ひぃっ!?」
·····私、結構ガチギレ中なのよ。
「お前がギリ死なない程度に留めるけどガチで行くから、死ぬ気で耐えろ」
「えへへぇ····· 私もやりますぅ」
「ん?アチシもやっけ!面白そっぱりゃ!」
「コヤァァァアアアッ!!?死ぬ、マジで死ぬコレっ!!ぢょわっ!!!」
ドガバギャベギャメギョベヂベヂャバチボゴドギャッ
◇
~30分後~
全身の血を魔法で洗い流して周辺(※レミア含む)も含めて綺麗サッパリにした私は、地面に放置しておいた見るも無残なモノを肩に担いでいた。
「さてと、片付け完了っと、あとはコレを棄てるだけっと」
「こやぁ·····」
ヴォンッ
\ポイッ/
そう、肩に担いでいたのはボロクソになった疫刻須宮だ。
私は疫刻須宮を心行くまでボッコボコにして、地面に転がして放置して周辺のゴブリンの死体を魔法で片付け終わったあと、見るも無残な状態になった疫刻須宮さんを淵璽宮に投げ返して今日の依頼を完了した。
ついでに私の怒りもだいぶおさまったので、私も帰ってウリアナ・ナールで遊ぶことにしたのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「あースッキリした、カーッときたらとりあえずゴブリンを皆殺しにしてミンチにするのがいいわぁ、まぁゴブリン以外のどんな魔物でもいいんだけどね」
名前:レミア・オールブラッド
ひと言コメント
「あっあっ!待ってくださぁいっ!入信届けまだ渡してないですぅ!!い、いまなら血がよく落ちる石鹸とか、飲んでも問題ない血液ジュースとか傷口から血が止まらなくなる塗り薬も貰えるので入信してくださぁいっ!!·····あれ?ソフィ様どうしたんですかぁ?あっ名前ですかぁ?A+ランクになって準貴族になったので家名ができたんですぅ」
名前:ミナタ
ひと言コメント
「もにゃんげーっ!!へなアチシと同じケモミミっけ!!またにゃっぽりっけてくれけーっ!!」
名前:疫刻須宮
ひと言コメント
「わらわは、あきらめん····· がくっ·····」




