焉狐のマエストロ
朝ご飯を食べ終えた私は、外に放置していたエキノコックスさんに渋々会いに行くことにした。
フシ町は基本的にめっちゃ平和で、私の住んでるエリアに関しては人がほぼ来ない事もあって犯罪発生率が異様に低いから多分3日くらい放置してても大丈夫だと思うけどなぁ·····
って言いつつも私はフシ町の自宅の玄関までやって来ていて、エキノコックスさん改めラッコクニミャーさんを呼ぶため玄関のドアを開けた。
「ラッコさーん、ラッコクニミャーさーん、居なかったら返事してくださーい!」
「·····」
·····あれ?居ないかな?
「もうどっか行っちゃたかな、じゃあいいや」
「まてまてまてまてまてぇっ!!居る!わらわはここにおる!!というか貴様の言葉通り居るから返事せんかったのに帰ろうとするとかどういう神経をしておる!!」
「あっ居た」
どうやらラッコクニミャーさんは玄関脇の日陰で三角座りをして死んだ魚の目をしてぼけーっとしながら私の事を待っていたようだ。
てか真面目に黙ってた人初めて見たわ、人じゃないけど。
「っていうか、ラッコさんって本当に伝説級の大妖狐なんですね····· 私のアレを大真面目に信じちゃうって事は信じるしかないか·····」
「どこで、ど!こ!で!!わらわが焉狐だと確信しておるんじゃ!もっと確信するところあったじゃろうが!!それとわらわはラッコではない!!」
「あとその~のじゃって口調やめてくれません?ウチのエビちゃんと被っててわかりにくいんですけど」
「はぁ?なんじゃそのエビとやらは!わらわの方が年上じゃ!1000を超えるのじゃぞ!?」
「エビちゃん、今年で1300歳くらいなので同い年くらいだと思いますよ?」
「·····へっ?もしやそいつも妖の類か?」
「魔王だから妖怪と言えば妖怪かなぁ·····」
魔王って妖怪に分類されるのかイマイチわかんないわ。
でもエビちゃんってああ見えて前世含めると1300歳は越してたと思うし、意外と長生きなのよね。
なかよし組の中では間違いなく最高齢だけど、お婆ちゃんって言うとガチめにショックを受けて凹むだけだから言っちゃいけない禁句になってたりする。
「·····あと、今見て気が付いたんですけど玄関の鍵締め忘れてたんですよね、だから普通に入れたと思うんですけどなんで入らなかったんですか?」
「妖は招き入れられないと部屋に入れぬ····· 故にこうしていたのだ·····」
「あっそう····· でもそれだとコンビニとか使えないですよね?どうしてるんですか?」
「『いらっしゃいませ』って書いてあるじゃろう、アレでおっけーじゃ」
「うっわ雑だなぁ·····」
吸血鬼とかそういう存在は他人から招かれない限り家に入る事は出来ないっていうのは常識らしいんだけど、どうやら『いらっしゃいませ』とか『welcome!』とか書かれていたら入れるらしい。
なんか、ガバガバで夢がブチ壊されたんだけど·····
「まぁいいや、とりあえず入っていいよ」
「ほんとうか!!よかった、では入らせてもらう!!」
とりあえず招いてみると、ラッコさんがズカズカと家の中に入って来た。
どうやら招かれないと家の中に入れないというのはガチだったみたいだけど、あの態度は酷いなぁ·····
あとでもう一回とっちめとくかな。
なんて私は思いながら、ラッコさんの後を追って行ったのだった。
◇
「という訳で、この人が私のストーカーのラッコクニミャーさんね」
「わらわはラッコクニミャーではない!ちゃんとした真名があるわ!!というかわらわの名を返せ!!」
「騒がしい人だなぁ·····」
「そもそも人じゃなくない?」
「でも私、狐の獣耳族と聞いたのだけど?」
「わたしも聞いたー!しっぽモフモフしたかったのに·····」
「多分じゃが真の姿を隠しておるのぅ」
「しっぽない·····」
そんでラッコクニミャーさんをリビングに連れて来たんだけど、コイツいつの間にか尻尾も耳も決してただの人間っぽくなってやがったのだ。
髪の色も濃いこげ茶色でもみあげが長いセミロングって感じの髪形で、まぁ、うん、普通に美人って感じの日本人にしか見えないわ。
っていうか昨日は尻尾が9本あったはずなのに1つになってたし、何なんだこの人は·····
「文句あるのか?わらわはコイツに名を奪われ妖気を操れんくなったんじゃ、今は節約で人間になってるに過ぎん、本当は焉狐じゃ」
「·····ふんっ!」
「ゴヤ"ァ"ッ!!!?」
\ぽんっ☆/
「あっ耳出た」
『『おおおおー!』』
「貴様!もみあげ引っ張るのは無しじゃ!!痛いわ!!」
しかももみあげが引っ張りやすそうだから引っ張ったら耳飛び出してきたし·····
「っていうか節約モードで人間になれるんですか?」
「そうじゃ、あと街中に行くときもこうしておる」
「なるほどぉ、便利なんだなぁ妖狐って」
「これも妖術の一種じゃ、というかはよぅ戻せ!こっちじゃと存在は保てるが妖術が一切使えんから不便じゃ!わらわの名を返せ!!」
「ソフィちゃん、いい加減返してあげたら?可哀想だよ」
「そうそう!動物をイジメるのよくないよ!」
「えっ私が悪いパターンなの?先に私を喰おうとしてきたのコイツだよ?そんで反撃されて負けたんだから仕方ないじゃん」
「うぐっ····· 貴様、覚えてろよ·····」
あーあド三流な言葉使っちゃって、弱く見えるよ?
「っていうか、そういう態度取っていいの?·····『チロンヌㇷ゚丸』ちゃん?」
「ななななななぜ貴様がそっそそその名を知っておる!!!??」
「だって神様だし?」
「·····何その名前?」
「あー、妖狐が本来の姿で真名はあるんだけどね、元々とある人物に飼われてたキタキツネでね、それが飼い主が死んで欲しくないからとある呪術で延命処置ってか、妖狐にしちゃったのがコイツなのよ」
「えぇ·····」
ちなみにこの人の過去とか能力とかそういうのはアカシックレコードで全て解析済みで、千数百年前はただのキタキツネだったらしい。
·····で、問題はその飼い主だ。
その飼い主は平安時代に蝦夷地に出向いて物珍しさからキタキツネの子供を1匹連れて帰り、キタキツネを意味するアイヌ語『チロンヌㇷ゚』丸と名付け、大切に育ててたらしいんだけど寿命が来て可哀想に思った飼い主が延命処置のために呪術を施したのだ。
·····具体的に言うと、余った人魚の肉を食べさせた上に妖怪化の術で不老不死の妖狐にしたらしい。
うん、このキツネの飼い主不死川サンジェルマンだったわ。
で、妖怪化し知性を得たコイツは飼い主のヤバさに気が付き、速攻逃げ出したらしい。
んでなんで人間になれるのかというと、メチャクチャ探しまくってくるサンジェルマンから逃げるために、そこら辺で死んでいた少女の体に憑依して人間のフリをして逃げ出したからなんだとか。
ちなみにその少女は巫女の力があったらしくて、そっち関係の力もあるらしい。
っていうか、巫女なんだったら私が神って事くらい気が付いて欲しかったんだけどなぁ·····
「·····まぁこんな感じの人って事で、今から帰そうと思うんだけど良いよね別に」
「お主が連れて来たんじゃからちゃんと元の場所に返すか、それとも拾ったんじゃから最後まで面倒を見るのじゃ」
「わらわはペットか!!?いやペットなんぞでは断じてないっ!!同格に見るな!!あとわらわはもう二度と誰かの飼い狐にはならぬ!!あの男絶対許せぬ·····ッ!!」
「はいはい、っていうかコイツが勝手についてきただけだし····· 早く帰らないと元の飼い主の所に送りますよ?」
「にぎぇっ!?や、やめっ、それだけはやめっ!!」
なんかもうめんどくさくなってきたし、みんなも飽きたみたいだから帰そっかな。
うん、私もこの人で結構遊ばせてもらったしお礼言って帰そう、それがいい。
「·····じゃあ疫刻須宮さん、普通に帰しますけどいいですよね?」
「こやぁぁぁあああっ!!!それじゃ!わらわの名は疫刻須宮じゃ!!やっと、やっとわらわの名が帰って来たぁ·····」
「はいはい良かったね、んじゃばいばいまたねー」
\ゲシッ!/
「ぢょわっ!?い、いきなりすぎるんじゃ!!待て!まだ貴様に怨みをぉぉぉぉおおおおおおっ·····」
疫刻須宮さんは怨みを晴らす事ができずに、文句を言いながら例の·····なんだっけ、そうだ淵璽宮だ!やたら漢字が難しい淵璽宮と自称していた彼女が祭られる妖界の神社へと強制送還されたのだった。
そして、これにて私の京都旅行は完全に幕を閉じたのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「まったく迷惑な狐なんだから····· 二度と帰ってくるなよー、達者で暮らせよー」
名前:フィーロ
ひと言コメント
「狐しっぽに触れると思ってちょっと期待してたんだけどなぁ·····」
名前:アルム
ひと言コメント
「ワタシも触ってみたかったし、色々····· ぐへへ·····」
名前:グラちゃん
ひと言コメント
「アレだけ見たら絶対強キャラじゃないわね、ノーマルレアくらいね」
名前:ウナちゃん
ひと言コメント
「しっぽモフモフできなかったなぁ····· ざんねん·····」
名前:エビちゃん
ひと言コメント
「強そうな気配はするんじゃが、思ったよりは強くなさそうじゃったのぅ·····」
名前:ミカちゃん
ひと言コメント
「しっぽまくら、できなかった·····」
名前:アヤメ
ひと言コメント
「真似できなかった·····」
名前:ミナタ
ひと言コメント
「んー、やっぱキツネっけ苦手っぱにゃ、アチシにうっぴぶっぴゃうにゃっちけぱする可能性あっけ、こええっけ·····」
名前:疫刻須宮(チロンヌㇷ゚丸)
ひと言コメント
「くっふっふ····· 言質は取ったぞよ?わらわに『またねー』と言ったの聞き逃さんかったわ!!これは呼ばれたも同然!またいつでも行けるわ!!絶対復讐してやるわ!!くっはははははは!!·····じゃが先ずは回復じゃ、彼奴を絶対ブチのめせるくらいまで回復してから行くとしよう!」




