三女神はコーヒーブレイク中っ!
「·····ふぅ、疲れた」
「疲れたのぅ····· コーヒーと甘味が染み渡るのじゃ·····」
儀式が終わったあと、私たちは隠居屋敷の二階にあるバルコニーで柵にもたれかかってフシ町のど真ん中を流れる川を眺めながら休憩していた。
私は手が滑ってミルクを入れすぎてコーヒー牛乳みたいになってるコーヒーを、エビちゃんは牛乳の代わりに練乳を大量に入れたMAX激甘コーヒーを飲んでいた。
季節はもう5月で温かくなってるけど、山の中にあるフシ町は山から吹き下ろす風で未だに肌寒くて暖かいコーヒーがとても美味しかった。
「ところでソフィ」
「はいはいなになに?」
「ワシさっきやってた儀式が何をしておるかよう分からんかったのじゃが·····」
「あの儀式は特に意味はないと思うよ、いや宗教儀式としてはちゃんと意味はあるけど、私たちみたいな崇められる側からしたらほとんど意味はないかなぁ····· だってやってるのって小型ステンドグラス魔法陣に光属性魔法を発動できるようにする術式を刻み込んで完成させるだけだし·····」
「なるほどのぅ·····」
「っていうか、あの小さい円形のステンドグラスあったでしょ?アレってほぼ全ての教会で使われてるステンドグラス魔法陣のコアそのものだね、教会にあるデカいやつは基本的に増幅回路になってて、精霊召喚とか光魔法発動はさっきのがメインで発動する仕組みになってるのよ」
「ほう?つまりアレじゃろ?コア部分はどうせ聖地かどっかで独占して作って高値で売り付けとるんじゃろう?」
「半分正解、コア部分は聖地で造ってるんだけどそんなに高くないよ、まぁ質にもよるけど家庭用のは1個5000円、精霊召喚機能付きで1万円だね」
「·····地味に高いような安いような、微妙な値段じゃな」
サークレット教の祭壇や教会を作る際は、聖地で製造された光属性魔法である発光を放てる魔法陣となっているステンドグラスを買う必要があったりする。
·····まぁ別に一般家庭だったら5000円とはいえ数が作れないし地味に高いから、基本的には教会で販売されてるサークレット教のエンブレムとかそういうのをプチ祭壇に飾っておく程度でもいいんだけどね。
そんでステンドグラスを買うような家庭は、基本的に啓蒙な信者かお金持ちのどっちかだろう。
あと商人にも人気があって、結構低燃費でよく光ってくれるからランプ代わりに使われてたりするらしいけど、教会にとってはなんか微妙にそういう使い方はしてほしくないんだとか·····
だってすぐ割れるし、基本的に室内用だし·····
ちなみに教会で一般用に売られてる十字架的なエンブレムには一応発光魔法が組み込まれていて、握って魔力を流すと弱々しいけど光る仕組みになってたりする。
仕組みは魔石に発光魔法を刻み込んでるだけで、見習いシスターたちのお小遣い稼ぎとかでよく作られている代物だ。
「まぁ大事なのはどれだけお金を積んだかじゃなくて、どれだけ信仰心があるかじゃないかなぁ、100万円の超高級ステンドグラスを買って放置するより、500円のエンブレムでもちゃんと信仰心を捧げてる方が神様的には嬉しいじゃん?」
「そんなもんかのぅ、ワシは魔神じゃが崇められたことなど無いからわからんのじゃ」
「まぁ私もなんだけどね、神様と言っても私は事務職だから別に信仰心とかあんま関係ないし·····」
「なんかその言い方嫌なのじゃ、仕事みたいなのじゃ」
「だってただの仕事だし····· それにほら、うん、私カルト教団の祭神じゃん?だからアレくらいでも足りてるし·····てか最近たまに神界行くと頭の上に血の環が出てる事あって迷惑してるんだけどね·····」
·····そう、時と場合と世界と宗教によって神の役割は変わるけど、私の場合はそんなに神様してないのだ。
よく地上に降りてきて奇跡を起こしたり神託をしたりとかそういうのが良く目立っていて信仰されているけど、ああいうのは地上部隊でかなり高い権限と位を持つ神様とかで、私みたいなのは神界でいろんな宗教のアレコレとか世界そのものを管理する役職の神様なので、基本的に信仰されるようなことは無いのだ。
衂教団は例外ね。
んで一応ガイア様は表にも出るタイプだから多少は信仰されてるけどね。
そんで崇められる事によるメリットはなんかありそうだけど殆どないみたいで、しいて言えば神様として箔が付くのと、力が上がって魂の管理とかがやりやすくなる程度だそうだ。
「やはり神って地味じゃのぅ·····」
「ああいう表に出てきて派手に色々やる神様は花形のスターな神様だから仕方ないよ·····」
「やっぱり人間とそんな変わらんのぅ、まぁ下手に崇められるよりはマシじゃ、ワシなんぞ魔族の国に行ったら崇められる事間違いなしじゃぞ?」
「そういえば魔神って今も魔族の国で信仰されてるんだっけ、さっすがエビちゃん、私より真っ当に神様してるじゃん」
「そうじゃろう?」
「·····あのさ、お爺ちゃんの家で我が物顔で神様談義するのやめて?」
「うげ、ホンモノの信仰されまくり神様だ」
「そういえばお主、サークレット教の祭神じゃったのぅ」
そんな感じで神様同士の話をしていると、もう一人の神様で私たちの中では一番信仰されているであろう神様·····っていうか精霊のウナちゃんがやって来た。
まぁウナちゃんはただの王女様で、その中にサークレット教の祭神の光の大精霊ルミナリア・サークレットが居るから実質神様ってだけなんだけどね。
それでも私たちよりは圧倒的に信仰されている精霊だから、ある意味私たちより格は上なのかもしれない。
「聞かれて変な噂でもできたらお爺ちゃんが静かに暮らせないでしょ?」
「へーい」
「わかったのじゃ」
「別にいいんじゃないかしら?聞いてる人なんていないわよ」
「あっサーちゃん!」
「出たな祭神サーちゃん!」
「怪人みたいな言い方やめてくれないかしら?それより、貴女達の方がわたしより格上でしょう?」
「格上って言うか上の部門に所属してるだけだよ、だから偉いって訳じゃないよ?それにほら、私一応サークレット教の分派の祭神だからサーちゃんより下よ?」
「··········すっっっごい嫌なんだけど?貴女の事じゃなくてカルト教団が傘下に居るのが」
「ダヨネー·····」
サーちゃんは精霊だけど信仰対象で、部門で言うと三次元世界を現地で管理したりする部門に所属する存在だ。
それに対して私は会社の上層部みたいにシステムの保守とかそういう事をやる事務・管理職だから一概にどっちが偉いとは言えないのよね。
「まぁウナちゃんは神様関係の話されるの嫌そうだからこの辺にしておこっか、わざわざ出てきてもらったのにごめんね?」
「構わないわ、丁度牛乳が欲しかったのよ」
「·····コーヒーじゃなくて?」
「黒色は嫌なのよ」
「なるほどね·····」
そしてサーちゃんは私がコーヒーに入れた牛乳の余りを持って消えて行ってしまった。
·····えっ、物もってあっち側行けるの?
「ウナちゃん、サーちゃんって消えてる時どこに居るの·····?」
「えっ?うーん·····?なんか、こう、部屋みたいな?」
「ウナちゃん固有のディメンションルームでもあるのかな·····」
どうやらウナちゃんには彼女専用の控室みたいなディメンションルームがあるようだ。
何気に初耳かも·····
いや、今まで聞かなかったから知らなかっただけかな。
「それだ!たぶんディメンションルームっぽいのわたしにもある!」
「ほほぉ、ちなみに家具とかあるの?」
「わたしが持てるくらいの物だったら大丈夫みたいだよ?だからクッションとかカーペットとかはあるよ!えーっと、サーちゃん!ちょっとそこのクッションこっちに渡して!」
そう言うと、突然空中に光のゲートが発生して中からクッションが出てきた。
·····ん?
この感じ、どっちかというとアレかな?
「·····もしかして、中に入れるインベントリなのかも」
「そうなの?ん~、よくわかんないなぁ·····」
「まぁ便利だし良いんじゃない?どれくらい容量あるの?」
「ええと、結構広くてお風呂とかそういうのもあるけど·····」
どうやらインベントリとディメンションルームのハーフみたいなモノだったみたいだ。
いいなぁ·····
いや私ディメンションルームあるじゃん、なんかつい羨ましいと思っちゃったわ。
でもそんな謎スキルがあったとは全く知らなかったわ。
「あっでもみんなで一ヶ所に集まるとかもできるから、ウェアとかラーちゃんとかサーちゃんがいっつもその部屋にいるわけじゃないよ!」
「ふむふむ····· 今度ちょっと私もお邪魔してみても良い?」
「できるの?」
「わかんないけど調べてみたいからさ、協力してくれる?」
「ヤダ」
「えぇぇ·····」
「わたしだけの部屋だもん!見せたくない!」
·····気になるけど、害はなさそうだしウナちゃんも調べられるの嫌がってるから放置って事にしておくかぁ。
「っていうかお主ら、話題が変な方向に逸れておらんか?」
「えっ?·····元々何の話してたんだっけ」
「そうだ、神様の話してたけどなんであの話してたの?」
「もう忘れたのじゃ?·····ヤバい、ワシも忘れたのじゃ」
·····で、無駄話をしていた結果、私たちは元々何の話をしていたのか完全にど忘れしてしまい、ちょっとモヤモヤしたまま部屋の中へと戻って行ったのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「えーっと····· あっそうだ!さっきやった儀式がどんなのだったか話してたんだった、·····合ってるよね?」
名前:エビちゃん
ひと言コメント
「知らんのじゃ、まぁそんなに興味なかったような気がするし別にもういいのじゃ」
名前:ウナちゃん
ひと言コメント
「2人ともテキトーだなぁ·····」




