直撃する神罰の一撃
それは、私が王族メイドのインクちゃんに関する悪だくみをしている時の事だった。
私はフシ町に出てきて悪だくみのための買い物をしたり普通にウィンドショッピングを楽しんでいると、フシ町を何か嫌な魔力が覆って来た。
「なんだ?気持ちわりぃ感じがするな····· まぁいいや」
「·····違う、覆ってるんじゃない、魔力の波が通過した?」
嫌な魔力はフシ町の南西方向から届いて来たみたいで、今もそっちの方向から嫌な気配が僅かに伝わって来ていた。
こういう時は大体ロクでもない事が起きて、一番軽い場合は魔物が大量に発生した程度かやたら強い魔物が出現した程度で、被害がヤバい物だと災害の前触れだったりする魔力放射現象が今の嫌な魔力の正体だろう。
でも今回のは断言はできないけど魔物関係だ、自然災害の場合は地滑りや地震の場合は電荷の影響なのか雷属性と地属性の魔力が多く放出されるから、それが含まれてないって事は高確率で魔物だ。
ちなみに噴火は当然の如く火属性の魔力が半端なく放出されるよっ☆
まぁそんなわけで、魔力が届くくらい近い場所に強大な魔物が出現したか、それとも、もっと遠い場所でとんでもなく強大な魔物が出たか·····
「·····フシ町の近くに魔物の反応なし、って事はさらに先のフシ盆地かな?·····っていない?」
強い魔物が出現したとなると流石にフシ町に被害が出る可能性があるから、私はのんびりクレープを食べながら魔物が居ないか、もしくは何かしらの現象が発生していないかを千里眼で調査していた。
でも盆地の平野部にはそんなに強い魔物は出現していなくて、かといってフシ町の近くの山の中にも強い魔物は居なかった。
·····だが、それは現れた。
「なるほど、そっちかぁ」
どうやらあの魔力はマグウェル街の奥にある西の山の奥から発せられていたようで、その原因となった魔物が山奥から現れたのが見えた。
「ってか、ヤバくね?いやマジやばいって·····」
そして、出てきたのは山の如き大きさを持ち、手足は6本もあり、長く巨大な尻尾を揺らし、狼と猪を混ぜたような目が12個もあるバケモノだった。
少なくとも体長は500mは優に超えているし、体高も半端じゃないし、しかもドラゴンみたいに割とスマートな体系ではなく象とかそっち系のガッチリしたタイプだった。
んで、私はアイツには遭遇はした事ないけど記録を見たからどういう魔物なのか知っていた。
確か名前は『魔獣バルフート』と言って、特に特殊な力は無いがあまりの巨大さで動くだけで大災害を引き起こし多くの命を奪う肉食の魔物だ。
もちろんランクはSで、動きはそこまで早くないから格好の的にはなるがそのぶんクソほど頑丈で、鋼鉄の如き体毛で覆われていて更に分厚い皮や脂肪で覆われているせいでマトモに攻撃なんて通らないし、魔法に対する耐性も高く、普通の攻撃がほぼ通用しない厄介な相手だ。
これが攻撃特化の魔物なら攻撃を当てればダメージを与えて食い止めたりできるんだけど、アイツに関しては高耐久力で持久戦に持ち込むタイプで、しかも討伐時間が伸びれば伸びるほど被害が拡大し続ける厄介すぎる魔物だ。
過去に出現した際は一点集中攻撃で攻撃し続けて血管を破って失血死させた例や、自爆魔法を掛けられた人たちがわざと食われて体内で爆発して仕留めた例とか、足を滑らせて崖に頭をぶつけてしかも崖崩れで埋まって自滅した例とか、傷口から毒を流し続けた例とか毒を喰わせたりして倒しているらしい。
·····記録に残ってる限りだと、ジワジワと倒す事しかできなくて一撃でぶっ倒せた試しがない魔物らしい。
でも、街のすぐ近くに出現したコイツにそんな悠長なことをして余裕はない。
可能な限り一撃で、なおかつ倒した後転がり落ちれば街が潰れるから山の反対側までぶっ飛ばして、更にその山体を崩壊させず魔獣バルフートだけに直撃させる必要がある。
そんな事が出来る者は、私か·····
\プルルルルルッ!/
「もしもし、校長先生ですよね?わかってます、アレですよね」
『話が早くて助かるわ!手伝って頂戴っ!!』
そう、私の恩師であるサトミさんしか居ない。
私に連絡が来ると同時にバルフートの目の前に校長先生が飛び出し、恐ろしいほど巨大な魔導障壁が現れて進行を食い止め始めた。
流石は伝説の魔導師と言うだけあるわ、あの短時間で推定体重数百万トンある巨体を支えられる結界を展開できるのは校長先生かミカちゃんくらいだろう。
それに判断力も凄まじい、普通なら攻撃したくなる所を進行を食い止めるだけにして、より精密に攻撃ができる私に頼るのも普通じゃできないわ。
というのも、校長先生の使う魔法は、基本的に超広範囲殲滅魔法ばかりなのだ。
っていうか普通の魔法でさえ超広範囲攻撃になってしまい、その威力でバルフートが居る西の山は山体崩壊を引き起こし、マグウェル街が半分以上巻き込まれてしまうだろう。
いくら魔法を極めた魔女であっても、あの巨獣を一撃で葬る程の魔法を精密に制御するのは困難を極めるのだ。
·····だけど、私の賢者の石は永久機関であると同時に、超高度の魔力制御装置でもある。
故に校長先生が不得手とする繊細かつ超威力の攻撃ができるのだ。
それに協力しないという手はない。
だってあの町は今の私の人生の半分を過ごしていた、私の第二の故郷だから襲って壊されるのは許せない。
あとあの魔獣は十中八九あの町の魔法学校の生徒たちが持つ豊富な魔力に惹かれて食いに来たんだろうから、未来ある私の後輩たちを死なせるわけには、絶対にいかない。
「今すぐ行きます、ではまた」
『頼んだわ、ソフィちゃん!』
「·····ふうぅぅぅぅ、落ち着け私、怒りで魔法の制御が雑になったら私が町を壊しちゃうから·····」
電話を耳元から離しハンズフリー通話モードにした私は、湧き上がる怒りを抑えるため食べかけのクレープをパクパクッと一気に食べた。
そしてスカートを穿いてるのも気にせずに物凄い勢いで上空へと飛び上がって行ったのだった。
ちなみに最後の持ち手の部分までホイップクリームが入ってたしイチゴたっぷりだったから上空からチップに金貨を落としておいてあげた。
◇
上空1500m付近までやってくると、フシ町を囲う山々よりも高い位置に来たため視界が一気に開け、マグウェル街の方を見ると奥の山に物凄い巨大な魔物が居るのが肉眼で確認できた。
その前には私が目が良かったから見えていたけど、小さく校長先生が浮かびながらバルフートを結界で押し返そうとしているのも見えた。
·····ただ、結界はその質量を支えてはいるものの大きく歪み、ただの身動ぎでさえ超強力な攻撃となって結界にダメージを与えていた。
いくら校長先生といえど、もう押し返すだけの余力が無いのがすぐに分かった。
更にヤツは目の前の魔力の塊、校長先生に対し捕食行動を繰り返しているのか噛み付く仕草を何度もしていて、複数ある目玉のいくつかは下の街ばかりを見ていた。
·····食うことしか脳にない駄獣め。
「·····許せないわ」
ッバリバリバリ!!
私の殺気が溢れ出し、殺気に魔力が反応し黝い稲妻となって迸った。
「·····こっち見た、校長先生、今からぶっ飛ばしますので合図に合わせて避けてください」
あまりの殺気に校長先生と魔獣バルフートがこっちを向いた。
そして通話から校長先生の声も聞こえてきた。
『わかったわ、頼んだわよ』
「任せて下さい、大切な後輩たちを、いつか私の娘の先輩になる子供たちを、そして私の大切な母校を、失わせる訳にはいかないですから·····ッ!」
その瞬間、放出される殺気の稲妻が急激に増加し、もはやプラズマの塊が如き黝いエネルギー領域が私の周囲に溢れ出た。
その殺気は音より早く伝達し、魔獣バルフートが明確な敵を見つけ、吼えるような動きを取った。
十数秒後、遥か遠いフシ町上空までその咆哮は聞こえてきた。
ソレに応えるかのように、今度は私が吼えた。
「そこクソ魔獣ッ!!その街が、どんな場所か分かって襲ってんのかァァアアッ!!」
「その街はなぁ!!未来ある若者のための学び舎であり!この国の将来を担う子供たちのための街だ!!」
「そして何より·····ッッ!!」
「私の母校、そして私の子供たちも孫たちも通う!!皆の母校だ!!!」
スゥゥゥウッ!!
「全制限解除、肉体を4次元魔力へと全置換ッ!!この世の理を超えた存在、神人族へ!!」
ギュァァァアアアアンッ!!!
その瞬間、放出されていた殺気の黝い稲妻が急激に収縮し、私の体が神のモノへと神化した。
収縮した殺気の稲妻は全て右手に集まり、魔導永久機関『賢者の石』の魔力と混ざり空間が捻じ曲がる程の力が込められた。
「行きます!校長先生避けて!!」
『まさかっ!!?ソフィちゃんッ!地球に当てないで頂戴ッ!!』
「当たり前ですッ!!」
校長先生が警告ともに避けたのを、確認した私は、虚空を踏み締めると黝くなるほど魔力を込めた右拳に更に力を込めた。
これから放つのは、校長先生から喰らった最強の一撃の私オリジナルのバージョン·····
「超必殺ッ!!神罰直撃ッ!!ディザスタァァァアアアアッ!!」
ッッッズッドォォォォオオオオオンッ!!!
私の体はわずか166マイクロ秒(0.000166秒)で盆地を駆け抜けた。
質量を持ち質量を持たぬ4次元魔力へと至った私は物理法則を超え、振り抜かれる拳は光のその先の速度へと突入し、魔獣バルフートを抑える校長先生の結界へと直撃した。
「カノン!!!」
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私が持ちうる最大最強の一撃『神罰直撃』が校長先生の結界に叩きつけられ、数百万トンある巨体をも支えた結界が一撃でブラックホールのように歪み、結界を巻き込んだ事で巨大化した極光速の拳が、斜め上へと打ち上げる角度で魔獣バルフートへと直撃した。
衝突の衝撃は重力さえ発生させる私の拳に巻き込まれ全てが直線上に収束し、バルフートを撃滅し大気圏を突き破り宇宙の彼方へと飛翔し消えていった。
「っっふうぅぅぅぅ····· 神化解除、予備の『分体』をインベントリより搬出、肉体の三次元化処理を開始·····」
そして無事に危機を消し飛ばしたのを確認し、4次元化していた体を魔法でなんとか元に戻す処理をしていると、避けていた校長先生が飛んで近付いてきた。
「見事に一撃でバルフートだけ消し飛ばしたわね、学生の頃は何度もこの山を吹き飛ばしてたけれど、やれば出来るじゃない」
「·····褒めてるんですかそれ」
「あら?じゃあちゃんと褒めた方がいいかしら?さっきの拳骨、完璧だったわよ?やっぱり貴女ウチの学校の教師にならないかしら?向いてると思うわよ」
「·····前から気になってたんですけど、魔法学校の教師って採用条件に『ゲンコツが上手』って条件でもあるんですか?」
「あるわよ?\あるの!?/貴族の子供相手にも容赦なく説教を下せる人しか採用しないようにしてるわ」
「え、えぇ·····」
『神罰直撃』を放った反動でめちゃくちゃ疲れてる私は、ツッコミを入れる気力もなく、ただ呆れるしかなかったのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「いやまぁ、うん、確かに私って教師向きかもだけどさ?公爵級のSランク冒険者だし、王女のウナちゃんと公爵家令嬢のグラちゃんとも友達で遠慮なく接してるし、この国の重要な鉱山があるフシ町の管理者側の立場だしで、貴族の子供にゲンコツ喰らわせても文句言われないと思うけどさ·····?私、人に何か教えるの苦手なんですけど·····」
名前:サトミ・ド・ウィザール
ひと言コメント
「でも貴女って面倒見は凄く良いじゃない?それに人に好かれやすい体質みたいだし、教師向きだと思うのよね、まぁゆっくり考えていいわよ、その間に採用の手続きはこっちで進めておくわ、うふふ·····」
\やめてぇっ!!?/




