ギリギリ姉妹は悪役に向いているっ!
フシ町に元国王様がやって来てから3日が経過した。
元国王様は今は自ら『ご隠居』と名乗り、お爺ちゃんやお父さんに町の案内を頼んで散策してみたり、町民と交流したりして町へと溶け込み始めているようだった。
ちなみに王族という身分は完全に隠蔽していて、身分としては『お爺ちゃん(シュテイン侯爵家の当主)の旧来の友人』という事になっていて、その身分や所作からやんごとなきお方なのは間違いないと町民の皆さんは感付いている感じになってる。
·····まぁ、一部の敏い者は国王の引退と来た時期などから、もしや国王では?と予想を的中させている人も居るけど、ズバリ聞かれたら『エチゴのチリメンドンヤ』と答えるつもりらしい。
·····好きかなぁと思って屋敷のテレビに徳川光圀公の奇妙な冒険記のドラマ(統一人類語字幕&泡沫ムゲンの強制吹き替え付き)を録画しておいたのが悪かったかなぁ·····
でも無事に隠居生活を謳歌してるみたいで、毎日のように『友人』として町を連れ回されているお爺ちゃんが胃に穴が開きそうなくらいストレスを感じて私が日本で買って来た胃薬を飲んでるけど、ご隠居様は楽しそうで何よりだった。
·····ただ、こうして暗躍する不届き者が出てくるのは付き物なのよね。
この平和なフシ町でも王族の方がやってきたとなると極秘裏でも暗躍する者は出てきてしまうのだ。
現に私も、その暗躍についての仕事をやっている最中なのだ。
「あー、フィグ&マルス&シトラちゃん、ちょいこっち来て」
「はいはい!なんでしょうか!?」
「うるさい、もうちょっと静かに」
「フィグ、クロックバードの如き声量で返事するのはやめたまえ」
私は見習い聖女3人組を教会のバックヤードに呼び込むと、早速お仕事を始めた。
·····と、その前に、別件でちょっと説教しなきゃ。
「さてと、まずマルスちゃん、最近町でナンパしてるでしょ」
「うぐっ·····」
「·····今の所私しか気が付いてないけどさ、神父さんにバレたらこっぴどく叱られて退学処分とかなりかねないから気を付けてね?」
「えーっ!マルスちゃんナン、んっぷっ!?」
「黙っててアホフィグ!大声出したらバレるでしょ!?あー、なんつーか····· その····· いいじゃん別に」
「ダメっ、今の時期は調子乗って行くところまで行っちゃうから」
「チッ····· わかりました、反省してまーす」
「できれば止めてほしいんだけどなぁ····· まぁ、仕方ないとは思うけどさ·····」
実はマルスちゃんがここ最近逆ナンパをしているという噂を耳に入れて、この前調査して確証を得てしまったので説教しているのだ。
っていうかフィーロ君の弟のアラン君にナンパしたみたいで、フィーロ君経由で情報が伝わってきたのよね。
何してんのこの子·····
しかもサークレット教は基本的に恋愛·····って言うよりかは性交渉は禁止してないけどガチめに推奨してないから、こうして説教してるのだ。
「んで次、シトラちゃん」
「何かな?」
「自白すればゲンコツはやめてあげるけど、どうする?」
「心当たりはある、しかしぼかぁ聖女らしいことをしていると客観的にも判断している、故にゲンコツを喰らい反省文を書くような事はしていない」
「い、言い訳してやがる·····」
「シトラちゃんは何やったのー?」
「この町の孤児院に子供の格好して紛れ込んでして子供たちとおままごとやってるのよ、常習的に」
「ふむ?僕ぁ身寄りの無い子供たちの心を癒すべく積極的な交流を重ねているのだ、しかも少ない休みの日であっても孤児院に行きボランティアで活動をしているのだ、それにあの孤児院はこの教会が援助していることも含め、慈愛に満ちた聖女的な行為であると僕ぁ認識しているが」
「自ら進んで赤ちゃん役して子供たちに世話させてるのを聖女的行為かどうか聖女様に聞いていい?」
「やめたまえ」
·····コイツ、私の家の対岸にある言い方は良くないけど貧民街にある孤児院に入り浸っておままごとに興じてるのよね。
しかも自分が赤ちゃん役で、ノリノリすぎて孤児院の子達が若干引いてるらしいし·····
ただなぁ、本人が言う通りやってる内容に目を瞑れば聖女らしい行為だから怒りにくいのよね·····
「·····」
「ふっ·····」
「シトラちゃん、論破って言ったらゲンコツ食らわせるから」
「むぐ····· 」
全くもー·····
揃いも揃っていっつも何かやらかしてさぁ·····
いや人の事言えないんだけどさ、私はこの子らの上司でありお目付け役でもあるから怒らないわけにはいかないのよね。
まぁそこも私の作戦通りで、ある程度厳しく取り締まっておくことで逆にやりたくなってしまうカリギュラ効果を発揮させて爆発させる予定なんだけどね。
ふふふ·····
「っと、本題から逸れたわ」
「あの、ソフィさま、わたしは·····?」
「え?ないでしょ?」
「ありますよー!わたしにだって色恋沙汰の一つくらい!」
「じゃあ説教しよっか」
「無いですごめんなさい·····」
あっ、ちなみにフィグちゃんにはそういう話は全くない、可愛そうだけど全然無いのよね。
同年代の子とか年下の子にお菓子を配ってナンパモドキをしてるみたいだけど、完全に『お菓子を配ってくれる聖女の子』としか思われてなくて大失敗して、なんとも可哀そうな事になってるのよね。
がんばってね、うん、私みたいなズボラな元男でも彼氏できたし、たぶん大丈夫でしょ。
ちなみに最近休みの日も奉仕活動をやってるんだけど····· うん、その先が近所のお菓子屋って言えば何やらかしてるか分かるよね?
その件についてはこの前ゲンコツ喰らわせたから今日はなんも言わないけど。
「んじゃ本題ね、シトラちゃんはもう感付いてるみたいだけど、この前引っ越してきた『ご隠居様』いるでしょ?あの人は先日退位したサークレット王国の前国王様だよ」
「ええええええーーーーーっ!!!?」
「ほ、本当にそうだったの!?」
「やっぱりか····· あの所作と言い、貫禄と言い、やんごとなきお方だとは思っていたが本当だったとは、流石は僕だ、予想が的中してしまった」
「流石は叡智の奇跡を獲得しただけあるねぇ····· まぁその件についてなんだけど、ご隠居様は身分を明かされるのを嫌がってるから控えてほしいっていうのが一つ目の本題ね、黙っててくれたら今日怒った内容にはある程度目を瞑って見逃してあげるから」
·····で、本題っていうのがシトラちゃんが感付いていた『ご隠居様、前国王様疑惑』関連についての事だ。
まずは普通にご隠居様との契約で、身分を明かしたくないという事を3人に伝えに来た事。
そして、もう一つ。
「んで二つ目は、旧西の公園にできた屋敷あるでしょ?あそこに神棚を作るんだけど、3人に行ってほしいと神父さんからお願いが出てて、ご隠居様もそれを望んでるから今度行くよ」
「·····へっ?」
「本当ですか?」
「これは僕たちには荷が重すぎるのではないか?」
「あー大丈夫、神父さんも行くしそっちがメインだから、3人はサポートをお願いするよ」
二つ目の本題は、隠居屋敷に神棚····· 正確には違うんだけど、なんて表現したらいいかな····· サークレット教のプチ教会みたいなのを屋敷の一角に作る事になっていて、作るのをこのフシ町教会に任されていると伝えに来たのだ。
ちなみに王族は全員啓蒙なサークレット教の信者だから家の中に毎日祈りを捧げられるプチ教会を作るのが慣例となってるんだとか。
んで場所自体は私がとっくに作ってるんだけど、肝心の儀式が終わってないからそれを今度やりに行くのだ。
·····って言うのは建前で、本当はこの3人は不要で無理やり連れて行くつもりなのだ。
その目的って言うのが、例の王族メイドでウナちゃんの妹のインクちゃんにこの3人をぶつける事なのだ。
こんな俗っぽすぎる3人に、メイドとはいえ一応王族で世間知らずな子が衝突したらどんな化学反応が起こるか楽しみじゃない?
ついでにご隠居様も、インクちゃんを連れてきたのは仕事の関係で同年代の子と触れ合う機会が少ないし、普通にメイドとしても王族の家系の者としてもちょっと常識が足りてないから町の同世代の子供と触れ合ってもらいたいって言ってたし、丁度いいだろう。
んでこの俗っぽ過ぎる3人は立場上『聖女』となっており、一応あの屋敷に出入りしてもおかしくない存在だから適任と判断してのだ。
·····そう、国王様が来て暗躍する者がいるというのは、実は私の事だったのよ。
それに、私だけじゃない。
もう一人、裏で動いてもらってたのよね。
◆
場所は変わり、ディメンションルームのリビングにて·····
「·····のぅ、ウナよ」
「なぁに、エビちゃん」
「お主の祖父がフシ町に来たんじゃよな、もう会いに行ったのじゃ?」
「あー、いってなーい、だってお城で見送ったしー」
リビングでは私の義姉であるエビちゃんが、ダラダラしながらウナちゃんと話をしていた。
その話題は、この前退位して隠居しにやって来た彼女の祖父についてだった。
·····実はこの話題は義妹であるソフィから提案され、珍しく面白そうだから自ら乗ってやっている暗躍計画の一つなのだ。
流石は魔王、策略が板に付いている。
·····って言ったらぶん殴られたから、言わないようにしてるんだけどね。
「じゃが会いたがっておったとソフィから聞いておるんじゃが、王族としてではなく家族として会いに行ってやったらどうじゃ?」
「あー確かに、どうしよっかなぁ·····」
「ならば丁度よいタイミングがあるのじゃ、あの屋敷にはサークレット教のアレがあるじゃろう?ええと、アレじゃ、アレ、祈るヤツじゃ」
「祭壇?あーそっか、わたしたち一応サークレット教の啓蒙な信者って事になってたっけ·····」
\祭神と同化しておいてその言い方は無いわ!!/
「あっごめんねサーちゃん!」
「ソフィが言っておったのじゃが、今度フシ町の教会の者が祭壇を作る儀式?とやらをするらしいんじゃが、お主の中に祭神が居ったじゃろう? ならば行くべきではないか?それに祖父と会う丁度いい機会なのじゃ」
「·····いつ?」
「今週末じゃから、えーっと、4日後じゃな」
「まってね、·····うん、予定無いから行こうかなぁ」
実は、すべて計画通りだ。
ウナちゃんが4日後に予定が無いのもすべて把握してるし、それ前提で儀式をやる日程をソフィが裏で決定していたのだ。
そして、ウナちゃんを儀式へと、祖父の屋敷へと行かせるのはある目的のためだった。
·····まぁウナちゃんは気が付いてなくて、読者さんならわかってると思うけど、彼女の妹であるインク・リィス・ラ・サークレットちゃんとウナちゃんをばったり遭遇させるつもりなのだ。
そう、ウナちゃんは妹が来ている何てこと全く知らないのだ。
そんな状態で屋敷に行って、滅多に会う事が無かった妹ちゃんと遭遇したらどうなるか·····
更にそこに俗っぽい見習い聖女3人組がダブルブッキングしたらどうなってしまうのか·····
っていう話をエビちゃんとこっそりしたら、超絶面白そうという事になり、私たちは暗躍してこの計画を進めることになったという訳だ。
「よし、たまには動かないとね!お爺ちゃんに会うのもいいかも!」
「がんばるのじゃぞ~」
そして、時を同じくしてフシ町教会で俗っぽい見習い聖女3人を屋敷に送り込む事に成功したソフィと共に、エビちゃんは内心で凄い悪い笑みを浮かべたのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「ちなみに予定だと午前中に私を含めた教会組が現場入りして、先に準備してる間に見習い聖女3人にはインクちゃんと接触させておく予定だね」
名前:エビちゃん
ひと言コメント
「そして午後からワシもウナと共に挨拶に行って、ワシは儀式には参加せぬが事の顛末を見届けるつもりじゃ、くっくっくっ····· やはりめっちゃ面白そうじゃのぅ·····」
名前:ウナちゃん
ひと言コメント
「さいきん部屋でゲームばっかりだったから外でなきゃなぁ····· お爺ちゃんともちゃんと話したかったから良い機会かも!」
名前:フィグ
ひと言コメント
「わ、わたしだってカレシの一人や二人くらいすぐできるもん!」
名前:マルス
ひと言コメント
「····· (やっべ、もうやる事ヤッちゃったなんて絶対言えない·····)」
名前:シトラ
ひと言コメント
「この町の人は僕みたいな貧相な女子でも好んでくれることが多いようだ、いわゆるロリータ・コンプレックスを抱いている人が多いように見える、故にニーズに答え子供らしい格好をしているのだが、不自然に目を背けられのは何故なのだろうか、·····え?見ていて痛々しいから?き、、貴様ぁっ!言ってはいけない事を言ったなぁ!!事実陳列罪は罪なのだぁぁああっ!ふぉわちょーっ!!シトラキーック!!」




