妹色のインクで染め上げましょうっ!
ご隠居様を隠居屋敷へと連れて来た私はメイドさん達の部屋にやってきて、余計な質問をしてメイド長さんにゲンコツを喰らった一番年下のメイドのインクちゃんと一緒に家事に必要なモノや部屋の紹介を聞いていた。
ちなみにメイドさん達は家事全般をやるみたいで、執事さん達はご隠居様や奥様のサポートや力仕事そして護衛なども行うそうだ。
「こちらが浴室です、少し狭いですが機能性に優れています、ヒートショック防止のため浴室と洗面所の室温は自動で調節されます、そしてこちらがシャワーでレバーを手前に下げると水が出ます」
「そうなんだ、えーっと·····これ?」
\シャワァァァアアア·····/
「きゃっ!冷た·····くない?」
「·····あのようにお湯が出てきます、給湯器は外にある物を使用しております、魔石の供給は不要で脱衣所にある魔石に魔力を流せば自動的に補充される仕組みです」
·····で、さっきからチラチラと説明をしてるとインクちゃんがちょいちょいミスって、その度にシルキーさんが助けを求めるような目でこっち見てくんのよね。
うん、若い新人メイドだから許してあげて?
てか君優秀すぎるから比較しないであげて、比べたら可哀想だから。
だってこの前気合い入れて外装の年季加工をしてやっと終わって一息つくために部屋戻ってお茶してたら、暇してたシルキー数名によって目を離した隙にピッカピカに掃除されて新品同様になってたんだもん。
マジ優秀だよね、優秀過ぎて怒ったけど。
「·····はぁ、家事魔法『ドライ』、では次に行きましょう」
「無詠唱ですか····· 凄いですね」
そして濡れたインクちゃんを魔法で乾かしたシルキーさんは、何食わぬ顔で次の場所の説明に向かったのだった。
もちろん私もついて行った。
◇
その後、屋敷の説明を終えたシルキーさんとメイドの皆さんは早速仕事····· はせずに、休憩時間になっていた。
っていうのも、ご隠居様と奥様はお爺ちゃんが町の紹介をするという事で護衛付きで出て行ってしまい、私たちは『家の使い勝手も分らぬだろうからじっくり学ぶが良い』的な感じの事を国王様に言われ置いて行かれてしまったのだ。
って事で遠慮なく私たちは休んでいた。
「美味しいお菓子ですね、レシピがわかれば作れるかな·····」
「作れると思いますよ、ちなみにレシピはそこの共同スペースの本棚に入れてあるんで、部外秘にしてくれれば自由に作ってくれて構いませんよ」
「本当ですか?ありがとうございます、ソフィ様」
「いやいや、気にしなくても良いよ?国王様は長年ずっと王様として頑張ってくれたんだから快適に過ごせるように少しでもサポートしたいからさ」
「優しいのですね、ソフィ様は」
そんで私も混ぜさせてもらって従者たちの共同スペースで一番年下のインクちゃんと話をしていた。
今回来た6人の従者のうち彼女に最も年齢が近いのは19歳の青年の執事さんだけで、同年代で話題が一致する世代の人が居なくて会話に混ざれずちょっと疎外感を感じていたみたいで、私はそんな彼女に話しかけていたのだ。
·····まぁそれだけじゃないけどね。
彼女の本名は『インク・リィス・ラ・サークレット』。
2つある名前、『ラ』というミドルネーム、そして『サークレット』という名から分かる通り、彼女は王族なのだ。
それもウナちゃんの2つ下の妹で、血縁関係的に見てもちゃんとウナちゃんの妹だ。
つまりこの子、直系の王族というとんでもない血筋の子なんだけど、何故かこの子は王族ではなくメイドになりたかったらしくて、こうして元国王様の専属メイドをしているのだ。
·····まぁ理由は結構可愛らしいんだけどね、元々母親が現ご隠居様の国王様のお付きのメイドで、働いてる様子を見ていて母親の仕事にあこがれてしまい、王族が絶対にやらないはずのメイドの仕事を積極的にやろうとしていたのだ。
最初は親もやめさせようとはしたんだけど、意地でもやめようとしなかったから別に長女じゃないからいいやと諦めてメイドの道を目指させたらしい。
本当なら姉と同じで魔法学校に行くことになってたみたいだけど、メイドに専念した結果行かないでガチでメイドになっちゃったお転婆娘なのだ。
ちなみに彼女も直系の王族の血筋なので特殊な力、ユニークスキルを所持しており、モノをちょっとだけ『増大』させることが可能で、例えば水を増やしたり、スープを増やしたり、宝石を増やしたり、面倒事や仕事を増やしたりできるそうだ。
あっ面倒事と仕事は自爆して増えてるだけか。
まぁでもその特殊能力は汎用性が高く非常に有用なため重宝され、元々優秀な子だったためメイドとしての技能もメキメキと上昇し、今に至るんだそうだ。
·····そんな感じで、普通にコネなしで元国王様のお付きのメイドになれるくらい優秀で、ウナちゃんの妹というだけあってちょっぴりポンコツな少女は、奇しくも分裂した姉が根城にしているフシ町へとやって来てしまったのだ。
「いやいや、それとキミの事は結構心配してるんだよ?親御さんの下から離れて一人で仕事って大変じゃない?」
「そんな事は無いです、メイドですから····· でも、お姉さまに会えたらいいなぁとは思ってます、それと、庶民の友達も出来たらいいなとは·····」
「ふぅん?素直なのはいい事だと思うよ、んふふ、まぁこの町に馴染んで行けば自然と友達も知り合いも出来ると思うし、私がちょっと手伝ってあげるから楽しみにしておいてね?」
「はい!ありがとうございます、ソフィ様!」
「·····ソフィ様、あまりインクの事を甘やかさないで頂けないでしょうか?その子は優秀なのですが、調子に乗るとミスが増えるので」
「まぁまぁ、まだ14歳で多感な時期なんですから、見聞を広めるのはメイドや立場として以前に人間として重要なのでいいと思いますし、ご隠居様もそうおっしゃられると思いますよ?」
「そうでしょうか····· 陛下より、この町では今までのように堅苦しくするのは禁じるといわれていますから、私たちが止める事はできませんが、あまり自由にしすぎて仕事を疎かにする場合は容赦いたしませんので」
「わかっています、メイド長様、たとえどんな状況であれど仕事を疎かにしない、メイドの掟第1条は必ず守ります」
·····そのメイドの掟って何か微妙にガバガバな気がするんだけど、大丈夫かなぁ。
まぁでもちゃんとしてる所もありそうだし良いけど。
そんな事より、この子どうしてやろうかなぁ、んへへ·····
まずはあの見習い聖女3人組は丁度同世代だからぜひとも遭遇させてみたいよね、いい感じに化学反応を起こしてくれそうな気がするし、聖女だからこの家に出入りしてもおかしくない立場だから会えるだろうし。
あとはウナちゃんだなぁ、ウナちゃんは妹の存在は認知してるけど何をしてるかまではあんまり知らないみたいだし、まさかフシ町に来てるとは夢にも思っていないだろう。
だって私もさっきまで知らなかったし。
んでそのウナちゃんは時々ここへ遊びに来るつもりみたいだから、姉妹の再会も近いうちに起きるのは間違いないだろう。
ついでに私がソフィという名前の凄い人とはわかってるけど、『Sランク冒険者ソフィ・シュテイン』とは気が付いてないみたいで、なかよし組のリーダーという事も気が付いてないので芋づる式に私が彼女の姉であるウナちゃんと関係がめっちゃあるのも知らないみたいなのだ。
さぁてと、面白くなってきたぞ~?
そんな感じで、既に私の興味はご隠居様よりもご隠居様が連れて来た王族のメイドでありウナちゃんの妹であるインクちゃんに向いてしまっていたのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「んっふっふっ····· どう調理して面白くしてやろうかなぁ·····」
名前:メイド長
ひと言コメント
「·····一番下で経験の浅いメイドとはいえ、一応元国王陛下専属のメイドで王族の方ですので、遊ばないで頂けないでしょうか?」
名前:インク・リィス・ラ・サークレット
役職:国王専属メイド(※王族)
ひと言コメント
「·····あっ、買い出しに行きましょうか?私が一番年下なので雑事はわたしにお任せください、買い出しなどもお任せいただければ····· いえ!遊びにいこうだなんてそんな事····· えっと····· はい····· ちょっと思っています·····」




