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TS賢者は今日も逝くっ!  作者: すげぇ女神のそふぃ
第七章 TS賢者は子育てに奔走するっ!
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ソフィ気絶中のピンチヒッター!



 ツクモさんが私を誘拐してから数日後、私はディメンションルームでのんびりとしていた。


 ·····数秒前まで。



「こらー!!フェニカ!それ返しなさい!!」


「やー!!うにゃへにゃうー!!」

「うわぁぁぁあああああんっ!あああああああああああああああっ!!ままぅー!!」


「くっ!そこだっ!」


 ばっ!

 スカッ!


\ゴッ!!/



「ぎゃんっ!あ、あんにゃろー·····」



 私は数秒前までは物凄くリラックスしてた····· 言いたくないけどぶっちゃけ言うとすんごいダラけてたんだけど、フロウと遊ばせていたフェニカがフロウの事をオモチャでぶん殴り、しかもフロウ用のお菓子を盗んで逃げだしたのだ。


 しかも最近よく歩くっていうか、年上のフロウよりも早く走る事さえできる物凄い運動能力を獲得してしまって手が付けられなくなってるし、小さいから机の下とか狭い場所とかを通り抜けるせいで私でさえ捕まえるのに苦戦を強いられてしまっていた。


 今も赤ちゃん用のオモチャの家の中に逃げ込みやがって、私はドアの枠に額を強打してしまった。



 子供用のプラスチック程度なら私の頭の方が頑丈だから平気なんだけど、日本のプラスチック製のオモチャだとフロウがブッ壊してしまうので魔法で強化しまくってたせいでめっちゃ痛かった。


 そして額を抑えて痛がってる私を見てフェニカはニコニコしながら、フロウから奪ったお菓子を美味しそうに食べた。



「·····仕方ない、須y」


「まま、やー!!」


「っ·····」



 それを見た私は本気を出して時間を止めて捕まえてやろうと思ったけど、発動する瞬間にフェニカが自身のユニークスキル『リバース』を私に向けて発動してしまった。


 その瞬間、時間停止に等しいほど時間の流れを遅らせる須臾は、効果が真逆になった。



 つまり、時の流れが数万分の1になる対象が『私』になったという事で·····






「·····おーい?お主、なぜそんなバカみたいな姿勢で止まっておるのじゃ?」


「·····」


「親子ともども顔にラクガキでもしてやろうかのぅ」



 あれからしばらくしても、私は逆須臾の影響を受けたままの姿勢で固まっていた。


 フェニカはもうフロウのお菓子の大半を食べつくしてしまい、途中でエビちゃんに捕まってオモチャの家に監禁されていた。

 そして私の可愛いお姫様をオモチャの城に閉じ込めた悪い魔王は、泣きじゃくって疲れて眠ってしまったフロウを抱いて私の所にやって来た。


 どうやらこの邪知暴虐の大魔王は世界一麗しくて美しくて可愛い女神の私の顔にラクガキをしようとしているようだ。



 だが、アイツは一つだけ気が付いてない事があった。



「ふっふっふ····· 無様な顔にしてやるのじゃ、子供のやったことは親が責任を取るべきなのじゃ」


「·····動けないとでも思ったか!バカめっ!!」


「のじゃぁぁあああっ!!?」



 そう、実はフェニカの須臾反転なんてとっくに解いていたのだ!


 つまり私は動ける状態でエビちゃんを待ち構え、イタズラしに来たらやり返すつもりだったのだ!!



 ·····()()()のだ。



「えっ!?ちょまっ!!避けないで!!ぐべぎゃっ!!?」



\ゴッ!!!/



 エビちゃんは私が突然動き出した事にビビり、垂直飛びで頭を天井に強烈にぶつけてしまったのだ。


 その速度はロケット発射の如き勢いで、私が襲い掛かるより早く天井に移動していた。


 ·····それはつまり、私が狙う対象が居なくなり空振りしてしまったという事で、そしてバランスを崩した私は机の角に頭を強かに打ち付けて意識を失ったのだった。





 気絶したソフィはなんやかんやあったけどソファに寝かされ、しばらく放置されていた。


 そして十数分後、彼女はムクッと起き上がった。



「·····どこだここ?あれ?俺どうしてたんだ?」


「あっおはようソフィちゃん、大丈夫だった?」


「ソフィちゃん?んっ?どういう事だ?俺はソフィじゃ·····」



 ·····しかし、何か様子が変だった。


 一人称が俺だし、ソフィと言われてもピンと来ていなかったようだ。



「えっ?どういう事じゃ?」


「記憶喪失じゃないかしら?」


「もしかして、あの、賢人さん·····?」

「どうしたんだ?·····って君はフィーロ君か?」



 その理由は、彼女の夫であるフィーロがすぐに気が付いた。


 どうやら今のソフィの中身はなんとTS前のソフィである『藤石賢人』になっていたのだ。



「そうですけど····· なんで賢人さんが?」


「こっちこそなんで君が····· いや、だんだん思い出してきた、俺は頭を打って気絶したんだよな?って事はソフィが気絶中なのかもしれない·····」



 そして普段はもう存在しないはずの彼としての人格は、冷静に自己分析を進めて状況を把握し始めたようだ。

 どうやら記憶喪失気味だったところも治り始めたらしい。



「·····あれ?前にもこんな事なかったっけ?」


「そういえばそんな事あったような·····」



 ちなみに、ソフィがこうして元の賢人の人格が出てきてしまう事はごく稀にだが発生する。


 例えばこうして気絶したり、あんまりにも疲れすぎてソフィが寝てしまったりすると一時的にだが『藤石賢人』が蘇ってしまうのだ。

 あと一番多いパターンは完全に表には出ないけどブラックすぎる仕事をやらされたり残業を言い渡されると出てくるトラウマモードで、アレの原因は実は隠れた人格の賢人のせいだったりする。



 まぁ今回は頭を強打した時にソフィの人格が気絶し、中途半端に残った賢人の人格がでてきてしまったのだろう。



「そういえばあった気がするな····· どうしたんだっけその時は·····」


「とりあえず殴っときゃええじゃろ」


「待ちなさい、ソフィの前世と話すのは初めてだからもう少し話を聞かせなさいよ」


「·····グラちゃん?」

「まぁフィーロ、別に少しくらい良いじゃろ?あやつの自業自得じゃし好き勝手させて後で恥をかかせてやるのじゃ」


「いや、俺の人生なんてそんな面白くないから聞くだけ無駄だろうからやめとけ、ソフィが起きるまで俺はもうひと眠りするからヨロシク」



 だが賢人はそう言うと布団に包まって普通に眠ってしまった。


 実は彼、人格内でソフィと事前に打ち合わせをしており『もし私が気絶してそっちが表に出るようなことがあったら、失言するよりかはマシだから寝ておいて、そのうち私が目覚めるから』とソフィが決めておいたのだ。


 そのお陰で絶賛気絶中で逆に目覚めている賢人の頃の黒歴史を彼女は暴露してしまう事もなく、既にTS済みで慣れていると言い聞かせて眠ってるのでもう完全に無敵だ。



 ·····と、その時までは思っていた。



「·····よいしょっと」


「うわっ!?持ち上げられた!?」



 無敵の布陣であったはずの布団に包まっていたソフィ(賢人)が突然何者かに持ち上げられた。


 そして持ち上げられた時に聞こえた声は、まちがいなくこの体の持ち主の夫であるフィーロの声であって、進んでる方向的にどう考えてもベッドルームだ。



「·····ちょ、俺、男なんだけど」


「僕はソフィちゃんが好きだから大丈夫」


「えっ、いや、待ってくれ!!?」


「それに、性転換前のまだ()()()()()()ソフィちゃんなんて新鮮だからさ?」



 ·····俺は、大事な事を忘れていた。



 フィーロ君は草食系な見た目なのに、実は獰猛な肉食系でしかも結構Sっ気がある性格だったことをすっかり忘れていた。

 しかも彼は特殊性癖の持ち主で、TSしてれば中身がまだ男でも構わずにいけちゃうタイプなのだ。



 そして、俺は逃げる事もせず呑気に布団に包まって眠ってしまった。


 ·····それは、腹ペコのライオンの前にお肉を放置するような危険な行為だったのだ。



「たす、助けてくれぇぇぇええええっ!!」


「あはは、ソフィちゃん、行こう?」


「ひっ·····」



 そして、女の子の体でか弱い俺は、成すすべなくお姫様抱っこで自分の部屋へと運び込まれてしまったのだった。




 後日、フラフラだけどツヤツヤになったソフィが人格も元通りになって出てくるのが目撃されたとかされてないとか·····

 いや、元通りじゃないな、うん、もう戻れない·····



名前:ソフィ・シュテイン?

人格:藤石賢人

ひと言コメント

「し、死ぬ、死ぬってコレ·····」


名前:フィーロ

ひと言コメント

「ふぅ、ごちそうさまでした」


名前:エビちゃん

ひと言コメント

「·····まぁ良いか、ほれフロウ、フェニカに盗まれたお菓子とおんなじヤツなのじゃ、好きなだけ食べるが良いのじゃ!」


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