帰ってきたんじゃなくて家出中らしい
校長先生がディメンションルームにやってきて、そろそろこっちの世界に戻ってくると報告した後·····
「·····やっぱり落ち着くわね、日本とサークレット王国のイイトコ取りをした場所なんてここくらいしか無いから丁度いいわ」
「帰るんじゃなかったんですか?」
「あら?私は長い長い冬休み中よ?いや春休みかしらね?どちらにせよ、時間はたっぷりあるわ」
「ちっ」
「なんで舌打ちしたのかしら?」
「私、フェニカのこと愛でまくってたんですよ?それを邪魔されて相手させられてるんで·····」
なんでか知らないけど、校長先生がウチに居座ってしまった。
今は手慣れた様子で勝手にキッチンで紅茶を淹れてフィグちゃんが焼きまくったクッキーを10枚くらい取ってお皿に乗っけて優雅に食べているその様子は、JKの郷美さんではなく貴族のサトミさんにしか見えないが、勝手に食べてるから実はそんな優雅なヤツではない。
断じてない。
「なら今からでもいいんじゃないかしら?私の事はほっといてもいいわよ」
「校長先生の相手をしてる間に寝てましたよ、フィーロ君と一緒にスッヤスヤと」
「それは残念だったわね、一緒に寝てくればいいじゃない」
「·····あの、先生?私を追い払おうとしてません?」
「先に追い払おうとしたのは貴女じゃない」
「むぐぐ·····」
でもそんな校長先生は何故か知らないけどやたらここへ居座ろうとしていた。
·····なんかあったな?
「校長先生、あっちで何かありました?」
「んぐっ、何もないわよ」
「いまお茶吹き出しそうになってましたよね?アカシックレコードで覗き見しますよ?」
「·····言うわよ、さっきまで勉強に行き詰って煮詰まってた勇に勉強を教えてたのだけど、教えすぎてキレられたのよ」
「ぷふっ、あーーっ!ちょっ!流石に怒りっぽすぎますって!知恵の輪が後ちょっとのところで私が引きちぎっちゃった時の激おこフィーロ君じゃないんですから!!」
校長先生がキレてなんか極大魔法を撃ってこようとしてきたけど、なんでここに居座ろうとしたか判明した。
どうやら彼氏の勇さんとケンカをして家を出て来たらしい。
·····そういや郷美さんって実家を出てもう彼氏と同棲してるんだっけ。
一回2人が住んでるマンションにお邪魔させてもらったけど、お年頃のカップルって感じの普通の安いマンションで狭いながらも2人一緒に仲良く住んでるらしい。
ちなみに向こうでは魔力量の関係で魔法の使用に制限が掛かるんだけど、空間魔法で部屋を拡張するのではなく何故か防音魔法がかなり強固に付与されてた。
あとベッドが一つだったから察した。
まぁそんな部屋でケンカしようものなら逃げ場所は風呂かトイレしかないわけで·····
「ひぃ、死ぬかと思った····· でもケンカして家出なんて珍しいですね」
「相当イライラしていたからああいう時は1人にさせるべきだと思ったのよ、·····私もついカッとなって反論したのも悪いのだけど」
そんで2人はケンカをした結果、郷美さんが家を出るという結末を迎えてしまったようだ。
まぁあんまりケンカしない私とフィーロ君とかが異常なだけで、普通はああいう感じになると思うしちょっと憧れるのよね·····
だって私とフィーロ君ってもう十何年も一緒に居るから価値観の違いとか相手の癖とかそういうの全部わかってて受け入れてるし、マジでケンカする要素が無いのよね。
前に一度フィーロ君が苦戦しまくった知恵の輪をむりやり引きちぎって攻略した時は私もキレ気味で超珍しくケンカはしたけど、それ以来ほとんどケンカらしいケンカはしたことないのよね。
「·····羨ましいわ、思い返すとイライラしてきたわ、なんでアイツあんなことも分からないのよ」
「そういえば何がわからなかったんですか?っていうか郷美さんめっちゃ頭良かったんでしたっけ」
「当たり前よ、3600年間ずっと勉強し続けていたらフェルマーの最終定理の解くらい自力でイチから解けるようになったわよ」
「すげー·····」
そうそう、ケンカの原因にもなった郷美さんの勉強の手伝いについてなんだけど、実は郷美さんはもう人類を超越してるレベルで頭がいい。
アカシックレコードかってくらいマジで頭が良くて、3600年間地球に帰るためにひたすら色々な事を調べて世界の真理を解き明かそうとしていたから、数学の方程式とかも自分で片っ端から見つけたり色々やった結果、東大入試程度の問題であれば即答できるような頭脳を手に入れてしまったのだ。
あっ、ちなみに郷美さんの今の財産って1億円くらいあって、なんかアメリカの物凄い難しくて解くのが不可能で、解けたら1億プレゼントしてやんよ!っていうミレニアム検証問題とかいう問題をあっさり解いて手に入れたんだとか。
この前めっちゃニュースになってて、高校生が解いた!?とかすんごい話題になってたけど、何故か取材映像は一切流れてなくて誰も突っ込んでなかったから、今ではネットに解かれたというニュースがあるくらいで終わってた。
まぁそのくらい頭がいい郷美さんが教えると百人力どころか数億人力くらいのパワーはあるんだけど、強すぎる力は時に毒になるみたいで、勇さんは知恵の輪を引きちぎった時のフィーロ君みたいに自分が悩んでた問題をアッサリ解かれて相当頭に来たみたいだ。
「でも自業自得なんで、ほとぼりが冷めたらさっさと帰ってくださいよ?」
「冷たいのね、母親になったのに優しさの温かみが全然感じられないわよ?」
「追い出さない所に温情を感じてほしいんですけど?」
「·····はぁ、そうね、私の身勝手でここに来たのだから優しいという事にしておくわ」
「よし珍しく校長先生に勝てたわ、んふふ·····」
「なんかそう言われると悔しいわね、妙に腹が立つわ」
こういうケンカは時間が解決してくれることも多いし、あっちはまだ2月で寒いから外で放置するわけにもいかないから私は校長先生をここでしばらく匿う事にしたのだった。
◇
まぁ匿うといってもお互いに冷静になるくらいまでだし、遊びに来てるだけみたいな感覚だから正確には違うと思う。
だって·····
「あらいい子ね、ふふふ」
「あぃー?」
「お姉さまよ、ほらトウマ、ちゃんと言いなさい?」
「きゃうー」
なんか、さっきからグラちゃんの息子のトウマをグラちゃんと一緒に構って遊んでるんだよねあの人。
あの人、本当にケンカしたのかな·····
さっき通話アプリで連絡して、勇さんに謝ったり落ち着いたら帰るとか大丈夫そうなら連絡して、みたいなメッセージを送ってたけど、今の様子を見るととてもじゃないけどケンカしたとは思えない状況なのよね。
「まぁ怒りが冷めずにダダをこねるよりはマシかなぁ·····」
「何か言ったわよね?」
「それ聞こえてたって事ですよね····· ケンカも青春って言いますけど程々にしてくださいよ?もし喧嘩が原因で別れたら7割くらいの確率で私の所にきてヤケ酒しますよね?そうならないよう気を付けてくださいよホント·····」
「余計なお節介はいらないわよ、·····でももう少しここに居させてほしいわ、たまには一人にさせてほしいのよ」
「って言いながらトウマと遊んでますし私と話してますけどね····· まぁ好きなように過ごしてくださいね、冷蔵庫で熟成してる魚とか私たち用のお酒を勝手に飲んだら請求しますけど」
「わかってるわ、ありがとうねソフィちゃん」
「へーい、じゃあ私はフィーロ君とフェニカの所行ってきますんでご自由に、もしかしたら寝るかもなので勝手に帰ってくださいね」
そして私はフィーロ君とフェニカの元へと向かって、家族3人で仲良く眠ったのだった。
·····ちなみに起きてもまだ校長先生が居たし、なんなら翌日になるまで帰らなかったけど、無事に仲直りはできたそうだ。
名前:加藤 郷美
ひと言コメント
「まぁケンカするほど仲がいいと言うじゃない?だから何だかんだ仲直りしたわ」
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「やれやれだわ····· ん?あれ、私あの白ワインどこ置いたっけ····· 校長先生~?·····姉貴とガイア様がこの前お風呂DE宴会中に飲んでた?ちょっとブッ飛ばしてきますね」
名前:グラちゃん
ひと言コメント
「トウマってお姉さまの顔は覚えてるのだけど名前はいつまでたっても覚えないのよね·····」




