赤ちゃん達へ洗礼と祝福をっ!
今日は四月の中旬に入り始めたとある日。
気温も一気に上がり朝はまだ寒いけど最高気温は15度を超えてぽかぽかしてきて、更に年度初めが過ぎて少し落ち着いてきたフシ盆地は活気が通常通りに戻り始めていた。
『ヘィラッシャッセーッ!!』
その証拠に、私が聖女をやってるフシ町の教会にも来客者が増え始めて商売繁盛·····
「ソフィさまっ!なんか挨拶違いますよーっ!!」
「·····ごめ、昨日アルムちゃんのお店手伝ったからつい言っちゃったわ」
「アルムさんのですか?なにやったんですか!?お菓子販売とか!?」
「違うよ、魔導具の修理をやってたの」
教会に人が来るのは来客じゃないし商売繁盛は関係なかったわ。
実は昨日は3時間くらいアルムちゃんのお店に手伝いに行ってて、お客さんが魔導具の修理依頼をしてきたから手伝ってたのだ。
んでまだその癖が抜け切れてなかったからつい言っちゃった☆
「はへぇ····· 何でもできるんですね!ソフィさまって!」
「そうでもないよ、フィグちゃんより少し長く生きてるだけで、たまたま色々知ってたからできてるだけで、私だって出来ない事の方が多いよ」
「僕も叡智を手に入れてから理解したが、知識はあればあるほど己の無知さを理解させられる、ソフィ様でさえこれだ、僕なんてまだまだだろう」
「ちょっとー!みんなサボってるなら掃除てつだってよー!」
っと、頭を切り替えないとなぁ·····
私、今は商人じゃなくて聖人だし。
はいここ激ウマギャグね、笑うところよ。
「はーい、·····で?そこの入り口から覗いてる迷える子羊は何やってんのかな?」
『やばっ!バレてる!』
『どうしよう、逃げる?』
『·····出た方が良いんじゃないかしら?』
『にげよー·····』
『こらウナ!逃げんなのじゃ!』
『ままー!』
『にゃうー!!』
で、そのギャグに笑わなかった連中が、教会の入り口をちょっと開けてその隙間から覗き込んでいた。
てか出入りの邪魔だからさっさと入ってくれないかな。
「マルスちゃんちょっと待ってもらっていい?啓蒙な信者さんを捕まえてくるから」
「えっ?はい·····」
「ありがとねー、んじゃ·····」
『·····おい、あやつがこっち見たのじゃ!逃げるぞお主ら!』
\シュバッ!/
「·····逃げられると思ったの?」
「ひっ!?」
「まぁ来るの知ってたけどさ?っていうか普通に入って?邪魔でしょそこに居ると」
「·····そうじゃな、すまんかったのじゃ」
「じゃあみんな入るよー!」
『『はーい』』
「まったく····· 私が聖女やってる様子見たいからってコソコソしなくてもいいのに、ほら入って入って」
という訳で私は啓蒙な信者さん達を教会の中へとご招待したのだった。
◇
んで教会の長椅子にみんなを座らせた私は、ある事の準備をしていた。
「えーっと、ちちんぷいぷいじゃなくて、デデビビバブデーじゃなくて、テクマクマヤ·····これも違う、フハハハ!黒より黒く闇より昏き漆黒に我が真紅の混淆·····でもなくて····· なんだっけ、えーっと·····バルs」
「·····私がやりましょうか?」
「いや自分でやります!えーっと·····」
「遅いのじゃ!はよぅせい!」
「わかってるって!こういうの慣れてないんだから許してよ!」
·····でも難航してた。
っていうのも、今日は私たちの赤ちゃんにサークレット教の洗礼をするためにみんな集まっていたのだ。
ちなみにサークレット教の洗礼は1才の時にやるらしくて、私も誕生日の数日後に連れていかれて洗礼を受けさせられたのをしっかり覚えてた。
·····あっそうだ!洗礼の時の掛け声思い出したわ!あの時神父さんが言ってたヤツだ!
いやーよかったよかった!ってそれは閑話休題で、私の娘のフェニカは既に1才4ヶ月、フロウは1才6ヶ月ともう大幅に過ぎてて普通にキャッキャウフフと遊ぶくらいには成長してしまっていた。
んじゃなんでこんな時期に?って思うかもだけど、実はウナちゃんが原因なのだ。
本当は私たちは洗礼はいいやって事で受けないつもりだったんだけど、前に聖地の聖女様が『子供が産まれたら祝福を受けに来てくださいね?』って脅されてたから、一応受けたっていうか受けた扱いになる報告的なのをして済ませていた。
でもそれができるのは私だけで、将来の王様で王族のウナちゃんの息子のアレキ君は流石に洗礼を受けることになっていた·····んだけど、実は色々トラブルが起きて中止になっていたのだ。
その原因は、王様の王位継承と隠居の件についてだ。
突然王様が辞めるって言ったもんだから、城中がてんやわんやの大騒ぎになってウナちゃんの息子の洗礼どころじゃなくなって忘れ去られていたのだ。
その結果、なんと前代未聞の王子様の洗礼すっぽかし事件が起きてしまったのだ。
んでつい最近何とか落ち着いたけど、王都の教会は厳かな雰囲気ブチ壊しなくらい今も大騒ぎだし王城もそれどころじゃないし、何なら聖地に関しては今年は物凄い豪雪で雪がとんでもなく積もってて王様関係無しで大騒ぎになってて、どうにも洗礼ができそうにない状況になっていた。
そこで白羽の矢が立ったっていうか思いっきりぶっ刺されたのが私って訳だ。
·····王様から『やれ』って言われたのよ。
天誅してやろうか?おおん?
って言いたかったけど私は我慢して引き受けて、ついでに私たちの子供全員に洗礼を受けさせることにしたって訳だ。
「んーっと、よし行ける!んじゃみんな赤ちゃんを抱っこして祭壇の前に来て」
「わかった、フェニカ行くよ」
「うむ、フロウも抱っこするぞ?ほれぐずるでない」
「トウマはいい子ね、·····寝てるからいい子ね」
「いくよアレキ!ふふふ·····」
そんで私は気合いで赤ちゃんの頃の記憶を頼りに洗礼の言葉を思い出して、まずは4人を祭壇の前に呼び寄せた。
ちなみに本来は赤ちゃんは母親が抱っこするのがローカルルール的には正しいんだけど、生憎フェニカだけは母親が聖女をやってるので代わりにフィーロ君に頼んでる。
そうそう、工程としては
1.挨拶的なの
2.洗礼と祝福を行う宣言
3.洗礼と祝福をやる
4.赤ちゃんを親に返して終わり
って感じね、まぁ簡易版だからかなりざっくりで適当だ。
「では、おほん、あー、あー、よしっ!ではこれより、フェニカ・シュテイン、フローリス・アマイモン・ファゴサイトーシス、トウマ・ド・ウィザール、アレキ・クリソ・ラ・サークレットの洗礼と祝福を行う」
·····久しぶりに全員の名前をフルネームで呼んだけど、よく考えたら凄い面子だなぁ。
だって、フシ町の町長家でシュテイン侯爵家の家系でSランク冒険者の名字の『シュテイン』、伝説の魔王で金星の王家の『アマイモン・ファゴサイトーシス』、伝説の魔王を倒した伝説の勇者のパーティメンバーの伝説の魔導士の末裔『ド・ウィザール』、そして魔王がかつて住んでいた土地にできた国サークレット王国の王家『ラ・サークレット』の4つ貴族級の名前が揃ってるって、なかなかお目に掛かれないよ?
いやー凄いわぁ·····
「サークレット教の祝福では、光の精霊様から光の祝福と洗礼を·····ぷっ、あっやべ、洗礼を汝らの赤子へと、えーっと、赤子へと····· やべ、これ上手く日本語に翻訳でき無い言葉だ····· 直訳でいいや『赤子へ光を授け光を照らして光を集めます』いたします」
「·····なんか怪しいのぅ」
いやだってさ?
光線って英語で『レイ』って言うんだよ?
光による洗レイってダジャレになってて不意を突かれちゃってさ?
あと洗礼の時の言葉がどうにも日本語で一言でまとめられなかったわ·····
例えると『Bite the Dust』みたいなもんで、直訳は『埃を噛む』で、意訳的には『地面に倒れて土を噛んで悔しがってろ』的な感じで、それが転じて『屈辱的な仕打ちに悔しがりながら倒れて死んでいく』みたいな意味になった言葉だ。
んで私が翻訳出来なかったのもコレと似たような感じで、ニュアンスでなんかこう、いい感じに受け取れる言葉だったのだ。
·····まぁいいや、気を取り直してちゃんとやろう。
「では、赤子をベビーバスケットへ」
「わかりました、行ってらっしゃいフェニカ」
「·····変なミスをするでないぞ?」
「不安だけど預けるわ」
「おねがいねー!·····じゃなくて、お願いいたします、聖女様」
なんか信用ゼロっぽいけど、一応手順通りに進んでるので私は次のセリフをしゃべり始めた。
「これより、光の精霊ルミナリア様の御光を赤子に授けます、授けるにあたり呪文を····· えーっと····· これだ、では言います」
「天より届きし偉大なる御光よ、新たな子たちを照らし、明るい未来への道標となり希望の未来へと導き給え、『サークレット・レイ』」
私は久しぶりに魔法を詠唱して発動した。
ちなみにサークレット教の洗礼は水ではなく光で行う方式で、特殊な聖属性を含む光魔法を使って赤ちゃんを照らす事で洗礼と祝福が行われるって感じらしい。
そうそう実はこれめっちゃ簡略済みで、本来王家がやるのはもっと複雑で面倒でしかも儀式的にちゃんとやるみたいだけど、フシ町だから別にいいやって事で簡略化したのだ。
·····でも弊害があって、ちゃんとした儀式をやると赤ちゃんに授けられると言われている魔力や祝福の効果が減少してしまうらしい。
あっとそうだ、実はこのサークレット教の洗礼はマジで効果があって、光の精霊からの加護を受けられたり、1才以降で魔力や魔法やスキルが開花するんだけどその手助けになって高い効果を発揮するのだ。
だからお金に余裕がある人は絶対に洗礼を受けるし、お金が無い人も教会がまとめてやる集団洗礼祝福的な儀式に参加させる事で恩恵を得られたりするのだ。
だから本当なら私たちもフルの儀式を受けたいところなんだけど·····
うん、フルの儀式って光の精霊に直接コンタクトを取る方法だから祭神であるサーちゃんが監修してる私たちには必要ないし、何ならみんな既に魔法の才能に開花してるし、魔力量もけた違いに多いからフル儀式は必要ないのよね。
って訳で私は赤ちゃん4人を優しいあたたかな光で照らしてあげて、お布団を天日干しして汚れを落とすようにしっかりと照らしてあげた。
すると4人は温かい春の日差しに照らされて、光に祝福されて簡易版の祝福は無事に終わっ·····
「うーーーーっ!!やぁぁーーー!!」
\ヒュッ!/
「·····ありゃ?」
「なんかフロウの周囲だけ真っ暗になったのじゃ」
·····終わったって事でいいよね?なんかフロウの周囲だけ光が無くなったけど。
名前:聖女ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「やっぱり魔神の娘を光の精霊の宗教で祝福するの良くなかったのかな?いやそんな事ないと思うけど·····」
名前:なかよし組
ひと言コメント
アルム
「結構普通に聖女様の仕事してたんだソフィちゃんって」
フィーロ
「またソフィちゃんがなんかやらかしてるよ·····」
グラちゃん
「トウマが巻き込まれなくてよかったわ」
ウナちゃん
「フシ町でやれてよかったー、だって本当なら3日くらいかかるもん!早い方が良いに決まってるよね!」
エビちゃん
「むっ?この魔力·····?」
ラクト
「·····一応僕も来てたんだけど無視された」
イルミア
「まぁぼく達は喋ってませんでしたし、仕方ないと思いますよ」
ウェイザ
「·····ちゃんと喋るべきだったか」




