超常現象的姉妹喧嘩
ここは南極にほど近い太平洋上·····
広い広い海の上に、孤独なヨットが浮かんでいた。
そのボートを操る者は、たった一人で世界を縦断していた。
彼は世界でもトップクラスに過酷で危険で孤独なヨットレース『Vendee Globe』の参加者で、現在単独トップで航行をしていた。
『·····風よし、ライバルも来ていない、順調だ、この調子なら優勝も狙えるだろう』
既に出発から数十日、今は冷たい南極からの風が吹き荒れ激しい潮流で渦巻く海を進んでいるが、珍しく今日は快晴で風も穏やかで、波も比較的弱く、一気に進むチャンスであった。
·····しかし、それは突然訪れた。
\·····ぁぁぁぁあああああ!!/
『なんだ?声?鳥でもいるのか?』
「まてやゴルァぁぁあああああっ!!!」
「許してくれぇぇええええッ!!悪かったからぁぁぁあああああ!!」
「許すわけないだろこのバカ姉貴が!!!」
\ドババババババババババババババババ!!!/
『·····Holy shit』
彼は奇妙な音がした方を見た瞬間、我が目を疑い頭を抱えた。
彼の船の左舷から、南極方向からフリルスカートビキニを着た頭に5mくらいの雪が積もってる犬ぞりを引いてる銀髪の少女と、かなりガッチリとした登山服を身に着けて首からハイビスカスの花輪を掛けココナッツジュースを片手に持った女性がサーフボードを小脇に抱えて走ってこちらに接近していたのだ。
今の気温は氷点下に近く、あの追いかけられている女性の服装ならわかるが後ろでどう見てもブチギレてクジラの一種であるイッカクの牙を持ってブン回してあらぶっている少女の格好はどう考えてもおかしい、最悪凍死しかねない格好だ。
だが、場違いなビキニも何故か立場が逆転して犬ぞりを引いてる人間とそれに乗る一匹のシバイヌも、何故防寒着を着てる方がハワイに行ったような恰好をしてるのかも一切理解できないが、それよりも理解できない事がある。
『Jesus “Fucking” Christ! what's!?』
「ん?あっ4年前の大会の!!いやーおひさしぶりー!!あの時は私途中で飽きて棄権して南極に立ち寄ってヴィンソン・マシフに登ったんだったわ!懐かしいねぇ!!元気?今日も相変わらず元気にロビンソンしてるじゃん!何年目?」
『·····数十日前に出発したばかりだ』
「なるほどー、やっぱり『The Life and Strange Surprizing Adventures of Robinson Crusoe, of York, Mariner: Who lived Eight and Twenty Years, all alone in an un‐inhabited Island on the Coast of America, near the Mouth of the Great River of Oroonoque; Having been cast on Shore by Shipwreck, wherein all the Men perished but himself. With An Account how he was at last as strangely deliver’d by Pyrates』に憧れちゃう的なカンジ?前回流されてサウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島で何か月か過ごしてたっしょ?さっすがは現代のロビンソン・クルーソー····· \ブンッ!/ぎゃあああああああああっ!あぶなっ!!」
「死ねゴルァ!!!」
「じゃ、じゃあバイビー☆ レッツ☆ロビンソン!!あっさっき作ったマグロの握りあげるわ!美味いぞぉ~?」
「くらえ灰皿ソニックブーム!」
\スコンッ!/
「いっでぇ!!ひぇぇええっ!にげろぉぉぉおおおっ!!」
彼女たちは船の前を横切る間にとんでもない大騒ぎをして、太平洋へと向かって走って行ってしまった。
『·····おかしいな、ここ海の上のはずだよな?はは、このレース過酷すぎだろ、幻覚が見えちまってるぜ····· いやスシがあるからマジか?·····うめぇな』
彼は海面を走る人間という、クリスチャンである自分がよく知ってる奇跡的な、それでいて下品な女性二人のバカ騒ぎが幻覚であると信じたかったが、口に入れたスシの味はそれが非情にも現実であると示していた。
◇
私は今、太平洋を横断してインドネシア諸島の中に突っ込み、シンガポールの近くの海峡を越えてインド洋にやって来ていた。
このクソ姉貴、もうまじで許さん。
「よくも、よくも私の黒毛和牛の高級焼肉をしてた時に肉汁を拭き取りながら焼こうと思ってたエリンギをロマネスコに変えやがったなぁぁぁあああああっ!!殺す!!!絶対殺す!!!」
「いいじゃん別に美味しいんだからぁぁぁあああああああっ!!!」
「しかも!!楽しみにしてたのに奪って焼いて喰いやがって!!万死に値する!!」
『ーーーーーーーーー!!!』
『ーーー!!ーーーーー!』
「あぁん!?うるせぇ!!」
「邪魔すんな!!」
って走ってたらなんか島から矢とかが飛んできた。
·····ってここ北センチネル島?
って思った次の瞬間には、遥か遠い海上に私たちは移動していた。
◇
そして1時間後、私はようやく姉貴を卍固めにして捕獲することに成功した。
「ぐぁいだだだだっ!!死ぬ!ギブ!へるぷみー!!」
「こんにゃろ!!どこまで来たんだよ!っていうかここエベレストじゃん!なんでだよ!!」
「やっぱりエベレストって登りやすいじゃん!?」
「·····あの、ええと、ちょっと?」
「「ああん!?」」
「·····日本人の方ですよね?」
「そうだけど!?」
「何か用ですか!?」
「単独·····?無酸素で登って来たんですか?その割には格好が·····」
「さっきまで!!南極に居やがったんですよコイツ!!」
「うぎぎぎぎぎっ!折れる!折れるぅ!!!」
私はエベレストの山頂に来るのはこれで2回目だけど、今回はなんか日本人のガイドさんが居た。
こういう事もあるんだねぇ·····
「だから水着なんですよ!!」
「くそぅ!!なんでバレたんだ!そこは普通北極でしょうが!!」
「北極も行ったに決まってんだろこのクソ姉貴!!だからイッカク持ってるんでしょうが!!」
「·····そう言えばそうだったわ!イッカクって南極の生き物じゃないわ!!」
「何度言えばわかるんだこのニブチンがぁ!!ペンギンは北極に居ないに決まってるだろ!!」
「ひええええっ!!!」
「訳が分からないんだが、とりあえず退いてくれないか?」
「あっすいませんどうぞどうぞ·····」
「お邪魔しましたー·····」
「「·····」」
\シュバッ!/
「あっ!逃げやがったあんにゃろ!!待てゴルァー!!」
そして、私は逃げた姉貴を追ってまたどこかへ行ってしまったのだった。
「·····一体何だったんだ、アレ」
◇
\バァンッ!!/
「·····」
「おっ?おかえりー」
私はあの後カスピ海でヨーグルト工場を見学しながら姉貴を探して、結局みつからなかったから日本の実家に帰ってきた。
そして姉貴の部屋のドアを開けると、そこにはTシャツだけ着てパンイチで机に脚を乗せてゲームをしてる姉貴が居た。
「·····姉貴?」
「いやー、まさか4時間待ってもイタリアのヴェネツィアに来ないなんてねぇ、運河を眺めて美味しい料理食べてまってたのにさぁ?ったくもー、一度も会わないなんて思ってもみなかったよ」
「えっ、いや私ずっと姉貴追いかけたけど?南極でラーメン作ってペンギンに振る舞ってたじゃん」
「えっそんなの知らないけど····· 一度もヴェネツィアから出ないで料理食べて観光してたけど?」
「·····えっ、じゃあ私が追いかけてたのって、誰?」
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「い、いや、どう考えてもアレ姉貴だって、えっ、なんで·····?」
名前:藤石 穂乃花
ひと言コメント
「あっごめんそれ私の生霊かも、最近よく抜けるんだよねー」
名前:ソフィ・シュテイン
もう一回ひと言コメント
「·····で、姉貴、キノコの件、私許して無いからね?」
名前:藤石 穂乃花
もう一回ひと言コメント
「えっまっちょっ!?私の生霊が肩代わりしたじゃん!·····うぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!」
名前:???
ひと言コメント
「はー楽しかった、いやぁ3日前にタイムスリップした甲斐があったわぁ、ソフィたんの活きが良くて鮮度バツグンだったねぇ!!さーてと、ちょっくらゲーム大会でウナたんと一緒に優勝でもしてくるかなっと!」




