Gonna Cry海の底から·····
ある日、私は日本で仕事をやっていた。
「うぅぅぅううぅぅ····· こ、怖ぁぁぁあ·····」
「この程度で怖がっていては仕事になりません、そもそも貴女もソッチ側でしょう」
「そっ、そうなんですけど·····」
今日の仕事は、すんげぇザックリ言うと『ゴーストバスターズ』だ。
つまり幽霊退治のお仕事って訳だ。
ちなみに私、幽霊、嫌い。
いやまぁ、ジャパニーズホラーな怨霊タイプは平気なんだけどさ、だってアレ倒して神界に持ってくと報酬出るからお小遣い稼ぎになるしさ?
問題はアレよアレ、メリケンさんのホラーよ。
バガーンッ!と出てきてチェーンソーでヴィィイイイッ!ってして斧でガッシャーン!して急に飛び出してオアアアアアア!!が苦手なのよ、私。
いやまぁ、ああいうのは直にぶん殴れるからいいんだけどさ、飛び出して驚かせて来るアレ·····
なんだっけあの演出の名前、漫画雑誌みたいな名前だったんだけど·····
思い出した、ジャンプスケアだ。
私あれまじで苦手なのよね·····
ちなみに私、前にこの部隊の出動で下水道の人型カメの捕獲に出た時に、飛び出してきたスッポンに驚いて思わずカワバンガした。
ちなみに正体は不法投棄の大人向け等身大人形の背中にミコヒヒッピアメコミ····· 噛んだ、ミシシッピアカミミガメが乗ってただけだったらしい。
気絶してたから後から知ったんだけどね。
「あーあ今日のは仰々しく分かりやすく出てこないかなぁ····· てかこんなのも私たちの仕事なんですか·····?嫌なんですけど」
「仕方ありません、上からの命令ですので、というより下水道で亀探しする方が間違いですからね、こちらが本業ですのでお間違いなく」
「でもなんていうか····· 幽霊退治ってかこれ警護任務のような·····」
「えぇ、今回の怨霊はそれ程の相手です」
「ひょえぇ····· 嫌だなぁ·····」
なんか話が盛大にそれたけど、今日の仕事内容はというと、日本国内某所にあるお寺の中にいる人を1晩警護して翌朝までやり過ごす·····という程度のモノだ。
·····それが、陰陽師であり忍者であり不死者でもある国内最高クラスの超能力者、不死川さんが出動するレベルじゃなければ『程度』で済んだのだけれど。
今回の相手は、除霊のスペシャリストを東北新幹線の車両満載で送り込んでも全滅させてくるレベルの特級呪霊らしくて、まぁなんていうか、井戸から出てくるアイツ級にエグい存在らしい。
報告書によれば、ソレが1睨みするだけで発狂死するとか、盛り塩が真っ黒になったとか、数km範囲内の数珠がシェ〇ロン呼び終わった後のドラゴ〇ボールみたいに四散したとか、訳分からん事が書いてあった。
「はー面倒くさ·····」
「貴女は公務員なのですから、警護対象に聞こえる範囲では口を謹んで下さい」
「·····へぇい、まぁ不可抗力っぽい原因なんで良いですけど、自分でふざけて祠壊して呪われたとかだったら放置してましたからね?」
んで原因になった人なんだけど、今後ろにある海沿いのお寺の本堂の中でガタガタ震えてる。
なんか話によると、海沿いで歌いながら釣りしてたらとんでもない呪物釣り上げちゃったみたいで、ソレに気に入られちゃって連れてかれかけたらしい。
ちなみに女性ってか少女らしいけど、まぁ、うん、日本古来の伝統文化でよく捧げられてたから、久し振りの供物と勘違いして気に入られちゃったのだろう。
ただどうやったのか分からないけど、上手いこと振り切って逃げ出せたらしい·····
·····んだけど、厄介な事に相手は禍神級のヤバい呪霊だったらしく、大問題に発展してしまった。
しかもただの禍神級ではなく、水に纏わる禍神となるとほんとにヤバい。
私の経験則からいって、水に関する神は大体気難しくてヤバい。
神話の益荒男『素戔嗚尊』や『ポセイドン』、暴れのたうち回る河川の化身『八岐大蛇』、大戸島に伝わる荒れ狂う海の化身『G〇DZILLA』などなど·····
そんな荒れ狂う神の機嫌を損ねたとなると、海に囲まれたこの国にとっては超一大事なのだ。
漁業や海運業だけでなく、自然環境そのものが激変してしまうかもしれないのだ。
そんな存在が執着してやってくるってなると、まぁうん、ヤバいよね。
「··········あの」
「なんでしょう」
「これあの人を生贄ゲフンゲフン!えーっと·····人柱にした方が良くないですか?」
「それを許さない·····いえ許してくれないのが現代社会です、これから”来る”存在には何とか納得して頂くしかありません」
「·····拳で?」
「えぇ、荒れ狂う神を鎮めるにはそれしかありませんので」
不死川さんは腰にさした刀を、未だ現れぬソレに対し威嚇するようにチャキッと鳴らした。
◇
数時間後·····
時刻は深夜0時を周り、どんよりした曇り空の下で私たちはいつ来るか分からない”ソレ”を待ち構えていた。
ちなみに今はそんな怖くない、お寺が白飛びするくらいめちゃくちゃ強いライトで照らしてあるから雰囲気ぶち壊しだ。
しかも夜食アホみたいに豪華だったし。
「·····夜食の本マグロ美味しかったですね」
「ですね、流石は本場の大間と言うだけあります、·····これから”来る”存在に対処する我々の最後の食事になるかもと考えれば妥当ですが」
「まぁ大丈夫ですよ、私、サイキョーなんで」
私は人差し指と中指をこんがらがらせようとして指を攣って悶絶した。
ちなみに本堂で疲れて寝てる特級呪物一本釣り少女の父親が大間で漁師やってるらしくて、本場の大間の生マグロをご馳走して貰っちゃった。
·····あっやべ、場所しれっと漏らしちゃった。
本マグロの脂で口ツルッツルになっちゃったからなぁ····· 美味しかったなアレ。
まぁもういいや、ここは青森は下北半島の某所で、激ヤバ心霊スポットの恐山の近くだ。
話によると魅入られた子はイタコの家系の子らしくて、元々そういうのに魅入られやすかったんじゃないかって不死川さんが言ってた。
「ちなみに不死川さん」
「なんでしょうか?」
「これから”来る”ヤツ、これで退治できると思います?」
「無理です、さっさと仕舞って下さい」
「無理かぁ·····」
ちなみに私の装備は、前にアルムちゃんのお店に住み着いてた怨霊を吸い取った実績のある爆強掃除機だ。
まぁ流石に無理か、うん。
「はぁ、この悪いジメジメした空気、コレで吸い取れたらなぁ·····」
「空気清浄機能でもあるのですか?ならこの生臭い臭いを·····ッ!!?」
「そうそう、あんまりにも吸引力が強いんで、こうやってONにすればこの不快な生臭い臭いだって·····ッッ!!?」
\ギュォォオオアアアアアアアアアアアアンッ!!/
なんて雑談していると、私たちは異変に気がついた。
私たちの周囲を、腐った魚のような異臭が包み込んでいたのだ。
余りの臭気に周囲の職員も顔を顰めて鼻をつまむ者さえ居る程で·····
これから、客人が”来る”事を明実に告げていた。
「来ます!!総員、第1種戦闘配置!!」
「ソフィさん勝手に言わないで下さい!我々は直接出向いて『交渉』を始めます!時間稼ぎをしている間に本堂に結界を展開、最悪の場合自衛隊に出動の要請を!!·····では、行きます!!」
『『はっ!!』』
私たちの部隊は明らかに嫌な圧を感じる海の方へと階段を駆け下りて全速力で向かった。
その嫌な圧と臭気は海に近づくほど強くなり、最前線である浜辺に着くと吐き気を催す程にまで高まった。
だけどそれを堪えて、浜辺へと到着した私たちは即座に散開し対呪霊特化の銃火器を構え、それを待ち構えた。
「うっ臭い·····ッ!」
「これは····· 非常に不味いかもしれません」
ザバァッ!!!
そしてソレは”来た”
海中から優に数十mはあろうかと言う巨大な首を暗い夜の海を切り裂くかのように擡げ、こちらを向いた。
·····だが、それで終わりでは無かった。
同じような首が更に7本出現し、その姿はまるで日本神話の怪物ヤマタノオロチのようだった。
「こ、これは·····」
「総員、暗視ゴーグルの装着を!!相手は『禍津九頭龍腐神』!直視すれば発狂し即死します!映像越しでの視認を!!」
『『了解!!』』
不死川さんの号令に従い、職員は即座に暗視ゴーグルを装着した。
ちなみに取り込んだ光を機械的に編集して写す仕組みの暗視ゴーグルをつければ、肉眼で視認する事をトリガーとする怪異の効果を無効化できるらしく、怪異特化の部隊の標準装備だ。
ちなみに昼間はARゴーグルを装着する事になってる。
·····が、1人だけ、暗視ゴーグルをつけずにソレに向き合っている存在がいた。
「ソフィさん!?何をしているのですかっ!!早く暗視ゴーグルを!!」
「あー····· なんて言えばいいかな····· 私には要らないです」
そう、私だ。
だって·····
『我は九頭龍腐大権現なり、貴様らか、我への供物を·····ッッ!!?!?!?』
「あー·····ども、こんちゃーっす」
『あ、アザト·····ッッ!!?!?』
·····うん。
禍津九頭龍腐大権現とか言ってるけど、九頭龍腐だわコイツ。
ちなみに向こうのクトゥさんとは別人ね、あっちだと人間型だけどこっちのは完全に大ダコだし。
まぁ、うん、って事は私の方が格上なのよね。
だって私、アザトースだし。
「なんて言うか、その、申し訳ないんですけど、私が認知してなかったら好き勝手していいんですけど····· 止める側になっちゃったもんで·····」
『むっ····· ぐ·····』
「ひ、怯んでるのでしょうか····· というか禍神が一目見るだけで完全に萎縮するって何者なんですか貴女·····」
「··········わたくし でしょうか?わたくしは “眠れる白痴の女神” ですよ?·····ほげぇっ!?勝手に出てきやがったなコイツ!!··········あら 貴女の 口を 勝手に借りている だけ ですよ?」
久しぶりに勝手にアザトースが出てきやがった。
ただ、展開がギャグっぽい感じだったから幸い私の口を借りて喋る程度しか出来てないけど、危うく禍津九頭龍腐神が出てくるよりヤバい事になり掛けたわ·····
まぁそのお陰でクトゥルフが完全に沈黙して、九頭龍に見えるあの足を引っ込めて海面で静かに頭出して大人しくしてるから結果オーライかな·····
「·····それにしても 相変わらず 貧相な体 ですね わたくしの体に ふさわしくありません 豊胸手術を 検討しては?」
「て、てめぇこんにゃろ·····!!!」
海から禍神が、陸から隊員たちが白い目で見つめる中、私は1人で口喧嘩を始めた。
「まったく 自分の体を 自分で変えられない こんな低俗な者が わたくしだとは····· やれやれ です」
「何言ってんだてめぇ、お前元々人型じゃなくて変な触手の塊でしょうが、この空飛ぶ束のまま茹でた素麺野郎!」
\かちーん/
「やる気ですか この石ころめ」
「受けて立とうじゃないの!!」
·····ん?まてコイツ!!?もしや普通ではギャグのテクスチャで乗っ取れないから、自分がそっち側になる事で逆転して乗っ取ろうとしてやがるな!?
こうなりゃ徹底抗戦してやる!!
「みなさーん!アザトースは豊満な体とか言ってるけど寝てばっかで実は太ってるだけ
\放送禁止の罵詈雑言/
「それと未だに一人でねれなくて周囲で蕃神が演奏してないと眠れないバブちゃんでちゅ
\飛び散る冒涜的な言葉の数々/
「それとッッ\言葉じゃ飽き足らず飛び出した右拳/ぐえっ!!な、殴ったな!私を殴ったな貴様ぁっ!!」
私は左の拳で自分の顔面をぶん殴り、私が操っていない右拳がまた顔面を捉えた。
\ドコバキメギャバガドゴンッ!!/
·····と、何故か自分をボコボコに殴りまくるアホを眺めていた禍津九頭龍腐大権現と、不死川 史華がようやく動いた。
『·····我、そろそろ帰っていいか』
「いいかと思います、ですがあの子は諦めていただけると·····」
『何故·····と聞くのは野暮だな』
「えぇ、狙うのを継続するとアレがもっと悪化してこちらにまで被害が出そうなので·····」
『仕方ない、此度は諦めるとしよう·····』
そう言い残し、禍津九頭龍腐大権現は昏い海の底へと消えていった。
そして浜辺に残ったのは、微かな魚の腐敗臭と\バギャッ!/·····ソフィとアザトースが体の主導権を巡って自分の体をボコボコに殴り合う音だけだった·····
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「あのヤロー····· 気が済むまで私の顔殴ったら寝直しやがった····· ·····あれ、これ結局私が2倍殴られただけで殴られ損じゃ?あんにゃろぅぅうううッ!!!!」
名前:アザトース
ひと言コメント
『身体は 乗っ取れませんでした ですが あの醜悪な顔を ボコボコに出来て 満足です さぁ また眠るとしましょう うふふ!』
名前:不死川 史華
ひと言コメント
「えぇ、はい、物的被害はありません、被害者も無事です、·····ですが隊員1名が重体です、今すぐ精神病院のベッドを用意していただけると·····、はい、お願いいたします、·····ソフィさ、あっ逃げた!!待ちなさい!!」




