ツノありツノなしエビエビ
「うぅぅぅぅぅうううううううっ····· やっぱり、ワシの事誰も分らないんだ····· フロウでさえ、ワシとわからないで泣いちゃったんだぁ·····」
あの不撓不屈の大魔神エヴィリン・アマイモン・ファゴサイトーシスが、珍しくなよなよしてしくしくと泣いていた。
理由はもちろんお分かりの通り、ツノが落ちた事で誰にも自分がエヴィリンだと気が付かれなくなり、果ては娘のフロウに泣き付きに行ったら娘からも顔を忘れられたのかギャン泣きしてしまい、そこでとうとうエビちゃんの魔神のプライドがへし折られてしまったのだ。
それも完ッ全にへし折れて、心の奥底に居る素というか転生したての頃に校長先生に叩き込まれた『ごく普通のサークレット人』という基礎の部分が出てきてしまって口調が~のじゃ口調から普通の女の子になるほどのショックを受けていた。
ちなみに今のノジャ口調は3600年前の魔族語の訛りね、
「ま、まぁエビちゃん、義角を着けたらみんなわかるしさ、元気出してよ」
「むぅ····· でもぅ·····」
「ほらエビちゃんも映画見て元気出そうよ、Qやってるし見よう?」
「うん·····」
そして私たちはナーバスなエビちゃんに元気を取り戻そうと色々と頑張り、私の根気強い励ましの結果、なんとか部屋の隅から移動させてソファに座らせる事ができた。
っていうかどっちかというと私がQを見たかったから早く説得した、だってここから話が一気に面白くなるシーンだし·····
「さてと、ほらエビちゃんポップコーンもって、好きなだけ食べていいからね!」
「ありがとう、そふぃ·····」
「·····ダメだこりゃ」
でもエビちゃんはすっかり普通の女の子になってしまい、ツノが無いのも相まって普通の女の子にしか見えない。
なんか、あんまりにもアレすぎて笑うのもかわいそうに思えて来たわ·····
『·····もどうしちゃったんだよ、もう!!』
「おっ、このシーンかぁ、この後のシーンで将棋やるんだけど、先生が〜手先で君の負けだって言うのがめっちゃ凄い伏線なのよね、ストップウォッチ必須だからね!あっ来た来た!」
「もぐもぐ····· うん·····」
「よーく聞いててね?それと同時にストップウォッチをスタートして····· あっこれタイマーだった」
って話してる間にも映画は進み、老人が少年を将棋に誘うシーンになった。
ここめっちゃ凄い伏線が大量に張られた隠れた名シーンなのよね。
『付き合いたまえ、飛車角金は落としてやる』
「つの····· 落とす····· うわぁぁぁああああああああああああああああああああああああああんっ!!」
「えっそこでトラウマぶり返す!?ちょ、エビちゃんポップコーン容器ごと投げようとするのやめっ!あああああああああああああああっ!!」
しかし、そんな名シーンにもエビちゃんのトラウマをぶり返す伏線がしっかり張られていた。
まさか飛車角金の角と落とすって言う言葉に反応するなんて思ってないわ·····
これも〇ーレのシナリオ通りなのか·····
その後、私はエビちゃんがぶちまけたポップコーンを空中で魔法でひとつ残らずキャッチして元の容器に戻したのだった。
ちなみにゼー〇は関係なかったし、この日は元のノジャエビちゃんに戻る事は無かった。
◇
翌日·····
私は早朝にフシ町の実家にやってきて、家族そろって朝食を食べている所にやって来ていた。
「·····エヴィリンが休みたい?何かあったのか?」
「もしかして、2人目かしら~?ふふふ·····」
「絶対あの件だろうなぁ·····」
「えびおねーちゃ、どうしたの?」
「エヴィリン様がおやすみですか····· ピセットに伝えて代わりに仕事に出てもらいましょうか?」
「う、うん、色々あったんだけど、とりあえず見てもらった方が早いかな····· エビちゃーん!!入っていいよー!!」
「し、しつれいします····· すいません·····」
『『·····誰?』』
「うわぁぁぁぁぁああああんっ!!やっぱり、わしのこと誰もわかんないんだぁぁぁあああああっ!!」
「·····これ、角が生え変わりはじめて角が落ちたエビちゃんなんだけど、色々あってショックとかストレスで性格がぶっ壊れちゃってちょっとどうしようもなくてさ·····」
「昨日の夕方はまだよかったんだけどね·····」
「·····はぁ!?この可憐な少女がエヴィリンなのか!?いつもはソフィみたいなガサツな性格なのにか?! ソフィ、間違えて町人を連れて来たんじゃないのか?」
「そうね····· 確かに、顔だけ見ればエヴィリンちゃんに見えない事もないわね·····」
「·····えっ!?エビおねーちゃ!?ぜったいちがう!!」
「ソフィ様のいう事なので信用できないですが、ラクト様まで証言すると本当の可能性が高そうですね·····」
「あの、さりげなく私罵倒されてない?」
「なんで、みんなわしのこときがつかないの·····」
あぁもうダメだおしまいだぁ!!
エビちゃんが幼児退行し始めたぁ!!
それになんか私の事もしれっと罵倒してる気がするし、なんなのよもう·····
「·····義角装着!」
\ブッピガンッ!/
「·····あっ本当にエヴィリンだ、角がある無しでここまで変わるのか、逆に面白いな」
「面白いわね、ソフィの場合は何が無くなるのかしらね?」
「貧乳じゃない?」
「お兄ちゃんブッ飛ばすよ?」
「エビおねーちゃだー!!!」
「もはや角が顔に····· いえ角がエヴィリン様ですね」
「な、なんか、ほめられてるのか、けなされてるのかわからない·····」
おいお兄ちゃん、私のお兄ちゃんだからって胸のことバカにしたら許さんぞ?
っていうか胸サイズで印象が変わるの私じゃなくてあのおっぱいお化けのアルムちゃんでしょ、あれが貧乳になったら絶対わからない自信あるわ。
·····いや私が巨乳になったらツノなしエビちゃん化しそうだな。
「·····あっ、話のメインはそれじゃなくて、エビちゃんがこの有様だから今日の仕事はちょっと無理かな~って思ってさ、あと角も一応魔法で再現できるけど、うまく作れなくて一時的にしか呼び出せないし角がないとよく顔を会わせてた私たちでもわかんなかったから、仕事するときに色々問題が出そうだからさ?しばらく休ませようかなって思ったんだけどいい?」
「確かにな····· なんか、仕事出来なそうな性格になってるもんな、だが今は年度末でメチャクチャ忙しい時期なんだが、角が生えてくるまでどれくらいかかるんだ?」
「大体半年くらいだと思うけど·····」
「長いな、ただ忙しいのは今月と来月の2ヶ月間くらいで、あとは割と暇だから乗り切ればなんとかなるか?」
「何とかなると思うけど、ただ負担は増えるかなと·····」
「·····いや大丈夫だ、最近エヴィリンが手伝ってくれるようになって楽になっていただけだったな、それが戻るだけだ、たぶんいけるだろう」
「あなた、この時期は帰ってくるとソファで寝るくらい疲労困憊になるじゃない、臨時で誰か雇うべきだと思うわよ」
「そう言えばそうだったな、だが頼むと言っても·····」
·····えっ、私?
いやできない事は無いけどさ·····
私も結構いろんな仕事あるから忙しいんだけど?
「そふぃがやってくれるの?」
「·····わかったよやるよ、やりゃいいんでしょ!!」
「いいのか?いや、頼んだみたいになっちまったけど、本当に助かる·····」
「うんうん、この時期は忙しいからね····· ソフィが日本で買って来た魔剤が手放せなくなるくらい····· ははは·····」
「でも私は私で用事があるから、サブの私だけどいいよね?」
『おひさしぶり~、黒髪だけど大丈夫だよね?』
でもお父さんとかお兄ちゃんがぶっ倒れるとそれはそれで困るから、私はアカシックレコード経由で分身して働ける第二の私レベルで性能が良い体、黒髪の私である『アズラエル』を呼びだした。
『『·····誰だっけ』』
「えっ、もしかして私のアイデンティティって髪の色だった?」
だがアズを見た途端、私の家族は私を私と認識できず誰か聞いてきた。
·····もしかしてだけど、エビちゃん=ツノみたいに、私のアイデンティティって髪の色なの?
「いや、顔がだいぶ落ち着いてる顔だからな·····」
「真面目な話をしてる時のソフィみたいね·····」
「えっもしかして髪の色じゃなくて私の顔で判断してるの?いや顔で判断するのは正しいけど!あーもうっ!」
「だって!おねーちゃっていえば、アホ面でしょ!」
「イデア、結構マジで殴るけど覚悟できてる?」
「きゃーこわい~!」
妹にアホ面って言われけど、妹はいま2才·····ほぼ3歳だけどぶん殴っていいよね?
だってこいつ中身10歳以上の精神年齢があるし、イデアの影も出せるし、うん、いいよね?
いやでも殴るのは良くない、軽く関節決めてやるっ!!
「まてイデア―!!」
「にげろー!!」
そして私とイデアは追いかけっこを始めたのだった。
「·····とりあえずエヴィリン、立ってないで座ったらどうだ?」
「あっ····· ありがとうございます····· いつも色々ありがとうございます、おとうさま、おかあさま·····」
「·····なんか調子狂うな、まぁ兎に角、落ち込まないで元気出せよ、角の無いエヴィリンも可愛いと思うぞ」
「そうねぇ、笑う角には福来るっていうじゃない?落ち着いて笑っていればきっと大丈夫よ」
「エヴィリン様、角が取れたみたいな性格になりましたね····· ソフィ様もイデア様も今のエヴィリン様くらい落ち着いて下さればいいのですが·····」
「あっ、お父さんお母さんルーベさん、それ、言ったらダメなやt」
「つの、おちる····· わたしはつのじゃないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっっっ!!!!!わたしは、わたしは、えびりんだもんっ!!うわぁぁぁああああああああああああああああああああああああああんっ!!うえぇぇぇぇえええええええええんっ!!!」
リビングに残されたエビちゃんはというと、家族からもフルボッコにされて完全に壊れてしまったのだった。
名前:えびりん
ひと言コメント
「わたしはつのじゃないもん·····」
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「·····お父さん?私がイデアを捕まえてお尻ぺんぺんして帰ってくるまでの間にエビちゃんが精神崩壊してるんだけど?」
名前:フェルゼン・シュテイン(父)
ひと言コメント
「い、いや、俺たちはエヴィリンに励ましの言葉を言っただけなんだが·····?」
名前:リラ・シュテイン
ひと言コメント
「変なことは言った覚えないんだけど····· 相当疲れてたのね、あなた、エヴィリンの事働かせすぎじゃないの?」
名前:ルーベさん
ひと言コメント
「なぜ急に精神が壊れたのでしょう····· ストレスのせいでしょうか?」
名前:イデア
ひと言コメント
「おしりがいたい····· ひーん·····」
名前:ラクト・シュテイン
ひと言コメント
「なんか、もう、情報量多くてどうでもよくなってきた····· エヴィリンがかわいいや、うん、かわいいからもうそれでいいや」




