金星偵察団、現着
確かに、私はもう地下はしばらく行きたくないって言った。
いったけど、だからと言ってそれは無い。
·····でも仕事だから仕方ない。
「·····これが、我々の先祖が暮らしていた星、サイトーシスか」
「実際に見てみると、中々、酷い状況だな·····」
「雲の厚さは軽く数km、しかも水ではなく硫酸でできている上に気圧もかなり高く、上空では時点速度を超える風が吹いていて突入は非常に難しいでしょう」
私は今、宇宙の彼方に居ます。
あぁ、もう地中が恋しい····· それよりももっと地上の方が恋しい·····
でもエンド家とピノス家のお偉いさんが到着して金星の案内をしてるからやらないと·····
「データ通りだが、実際に見ると恐ろしいな·····」
「そうですね、想定通りですが想定外の有様です」
「多分資料にも載ってましたけど、大気成分の約95%は二酸化炭素で非常に高い温室効果の影響で表面温度は約500度、更に上空の激しい大気流の影響で温度が攪拌されてどの場所でも大体500度といわれています」
「課題が多いな····· だがやらねばならぬ、なぁカベオリン殿」
「えぇ、このために我々ピノス家は惑星再生計画を遂行し、数百万年の時を経て惑星一つの環境を丸ごと変えられるシステムを再開発しましたから」
ちなみに、カベオリンさんはかつて金星文明があった頃に知恵·····司法や学問をやっていたピノス家の末裔で、ピノス家は別の惑星に移住後、ずっと惑星の環境改変の研究を続けていた一族なようで、その技術はかつての魔族の50%に届くレベルにまで戻っているらしい。
そもそも元々魔族は惑星環境を丸ごと変える技術くらいなら普通にあったみたいだし、惑星を動かせてしまう技術とかもあったとか·····
だから、その技術を受け継いでいるピノス家だったら、移住の際に乗った宇宙船が工作船で工場などの製造施設も完備していたから、惑星を元通りにする技術も開発できたのだろう。
「でも想定外が多すぎて延期になっちゃいましたよね」
「ここまで酷いと誰が予想できるのですか?きっと先祖の方々もここまで酷いとは思わないでしょう·····」
えーっと、確か惑星改造ビフォーアフターのリスト貰ったよな·····
改訂版はこっちだっけ?
あったあった、ええと·····
・自転周期を倍にする
・分厚い硫酸の大気の除去
・高濃度の放射能汚染の除染
・エッジワース・カイパーベルトにある彗星の素を使い水を供給する。
・『塩の星』より調達した塩を混ぜて海水にする
・環境改善後、保管していた植物種子などを移植する
·····っていう、説明を聞いた感じちょっとガチのコスモリ〇ースシステムかもしれないモノを発動して惑星をまるごと再生してしまうシステムを使うらしい。
かなりざっくりだけど、彼らの計画はこんな感じだ。
そんでもって、この最後のコ〇モリバースシステムが本当にヤバいのよね····· 私もガイア様にこれ使っていいモノなんですか?って問い合わせちゃったレベルの代物なのよ。
条件がちょいと特殊だったから一応おっけーは貰ったけど、かつての魔族の技術レベルの高さがうかがえるトンデモ技術だ。
はっきり言って超絶オーバーテクノロジーの代物だ。
なにせこのシステムは世界の過去と未来と現在の全てが記録されている『世界書庫アカシックレコード』に干渉しそれに刻み込まれたかつての惑星サイトーシスのデータと、並行次元に存在する『滅びていない惑星サイトーシス』、そしてピノス家が所持する滅亡前の惑星サイトーシスのデータを使い、3つのデータを照合して直すヤバいシステムなのだ。
多分だけど、原形は神々が使う天地創造・惑星建造システム『天逆鉾』だろう。
ちなみに場所によってこれの呼び方は変わっていて、『Let there be light(光あれ)』だったり色々な呼び方がある。
でも魔族式のは『天逆鉾』が最もふさわしい呼び方だった。
「でも、そんな技術よく開発と復元出来ましたね」
「もちろん宇宙生命体連合の皆様には極秘で開発していましたから、ただ、我々はもう二度とできないでしょうね、あの狂気的なシステムは今の我々には作れません、それに、もう二度と開発できないように、故郷で使い失伝させるべきだと判断しましたから」
「あぁ、俺たち宇宙生命体連合もそれを知った時は超新星爆発如きじゃ動じない議会が大騒動になったレベルだ、だから俺に感謝しろよ?元々惑星諸共消滅させる方針だったのを『未知の超技術だから見守って技術を拝借するべきだ』と提言したのは俺なんだからな?」
宇宙生命体連合のトップたちも動揺するそれは、一度、私の故郷の星でもやられたことがあるアレの本来の姿だった。
ピノス家が所持する移住船を『惑星再生システム』へと作り替え、それを地面に突き刺し、惑星内の魔力やエネルギーを人工再現した魔神の力で爆発的に増幅させ、活性化したところを移住船に組み込まれたアカシックレコード干渉回路及び現実改変機構を用いて惑星を『惑星サイトーシス』へと変えてしまう超技術だ。
しかし、このシステムはピノス家が現在所有する星への移住の際に、軟着地させたとはいえ経年劣化などもありシステムの一部が故障し、別の惑星をまるごと惑星サイトーシスに変更してしまうほどの力は失われてしまったらしい。
そして魔族はこの機能を搭載した船を2隻しか建造できていなかった。
しかも一つは未完成のまま出港してしまい、現在地球にぶっ刺さっていて、今は残った回路だけで地球に影響を及ぼしてサークレット王国を魔法の聖地にしている龍脈のような存在になっているため、実質ピノス家が所持する1隻しかこの世に残っていないのだ。
しかも惑星を完全に変えるほどの力は残っていない、オーバーテクノロジーでありロストテクノロジーである遺物なのだ。
「·····でも、この星を元に戻すくらいなら十分可能です、そこまでなら我々でもできましたから」
「流石だな、ピノス家の者たちは」
だが、壊れて改変不可能になってしまった惑星改変装置でも、壊れてしまった改変元を壊れる前に戻すくらいなら十分できる。
彼らは、先祖が立案していた銀河中に惑星サイトーシスを作る計画を、壊れてしまった先祖の星に使用するつもりなのだ。
宇宙を侵略しようとした先祖たちの過去の清算を、先祖たちが望んだ惑星改変を、文明の発展で自分たちの手で壊した母なる星を戻すために使う事で、彼らの3つの家で3つの星に分かれて移住した子孫である自分たちが一堂に会し、自身の手で終わらせる。
「なかなか良いSF小説のネタになりそうですね、それ」
「ははは、確かそっちの星には文学が好きな者が多いのだろう?コレを題材に何か書いてみたらどうだ?完成したら読ませてくれよ」
「エンド家の者はあまり文学を好まない印象があったのですが····· いや、我々も最近健康ブームでよく運動していますから、時が経てばヒトは変わるのでしょう」
「星でさえ時が経つとこんな事になっちまうんだもんなァ····· あいつはあの船をこのために使う事を望んでたのかもしれねぇな·····」
「今はファゴス家の方は居ませんが、いつか3つの家の者が集まり、あの星の大地の上で星空を眺めながら故郷に帰って来た喜びを分かち合う時が楽しみですね」
「あぁ、もしかしたら、思ったより早く終わるかもしれないからな、楽しみだ、ご先祖様達もきっと喜んでくれているだろう」
先祖たちの故郷をその目で見てそれぞれが感傷に浸っている中、私は尿意を必死でこらえていた。
·····どうしよ、さっきからすっごいトイレ行きたいんだけど話がなんかすごくいい感じだから離れたくないんだけど。
流石に漏らしたくない·····
結局、私は我慢の限界になった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「書き方!!最後の書き方!!!漏らして無いから!恥を忍んでトイレ行っただけだから!!」




