欲深き者は罰を受けるのよ、神様でもね☆
「うへへへへへへへへ····· んへへ····· すっご·····」
私はたった一人で薄暗い洞窟の中に居て、キモい笑い声をあげていた。
他の皆は先に帰して、私は調査すると言って1人で残っていたのだ。
では何故私かキモい笑い声を上げているのか?
だって、私の目の前には宝石がザックザク実る夢の大洞窟が広がっているのだから、笑わざるを得ないだろう。
私は前世からずっと生粋の鉱物オタクだ。
珍しい石、貴重な石、綺麗な石、高級な石、そういう物ばかりを集めてコレクションする鉱物のオタクだ。
鉱物は『石』とは同じであり別の物だ。
石はそこら辺に転がっているモノだが、鉱物は違う、鉱物とは岩石を構成する物質が単体で大きくなり原子配列や地質作用により同じものが存在しない自然界であれど特定の法則に従い同じような形状になる自然の神秘を何千万、何億年かけて我々に伝える地球の歴史上で最も重要な宝玉だ。
更に希少な好物はそれ自体が資産価値を持つほどの値段になり、恐ろしいほどの値段で取引されることもある。
故に、鉱物収集とはただの石ころ集めとは次元が違うのだ。
っと、話はこれくらいにしておいて真面目に戻ろう。
「流石は地下だ····· 綺麗なまま残ってるじゃん、凄い·····」
私が居るのは例の洞窟の入口から逆方向に暫く進んだ場所で、かなり厚い石灰質の壁の中に1ヶ所だけぽっかりと空いていた穴だ。
そこはなんとペグマタイトの大晶洞で、私が立って入れるほどの広さがあった。
そして入口付近は巨大フナクイムシのせいで石灰質のモノで覆われているものの、内部はかなりいい状態で保存されており、地質の作用で地上に上がる際に圧力などが掛けられていない地下で見つけたため圧壊せずに完璧な状態で晶洞に出てきた鉱物たちが残っていた。
さて、軽く説明すると『ペグマタイト』とは花崗岩のつぶつぶしてるのがクソデカくなった岩石の事だ。
もうちょい詳しく言うと、花崗岩を作る時の余りが1ヶ所に集まって大きく成長したモノってイメージで、その中には基本的に『灰水晶or黒水晶』『長石系鉱物』『雲母』がほぼ確実にあり、レア物で稀に『緑柱石グループ』『トパーズ』『電気石グループ』の鉱物が出てくると言われている。
そして今回見つけたのは、柱かと思うほど巨大なアクアマリンが乱立している、夢のような晶洞だった。
「んふふふふっ!これはヤバいねぇ!!」
先程までは少し汚れていたが、魔法で洗浄をしたらうっすらと灰色の巨大な水晶や綺麗な白い長石が立ち並ぶ美しい晶洞に早変わりしてしまった。
だが、味気ない晶洞が水色の巨大なペンライトが乱立する事でライブ会場のようになり、見る者の目を驚愕させる美しすぎる洞窟になっていたのだ。
1つが私の腕ほどもあるアクアマリンが何十と乱立し、一際目立っている巨大なアクアマリンに関しては私の太ももよりも太く大きかった。
あっいや、それだと読者さんが勘違いして細すぎだって思っちゃうわ!!
うっかりうっかり☆
1番太いのは直径20cmを超えてて、長さは1mを超えてるバケモノだ。
「ふむ····· ただデカいのは濁りがちょっとある····· その周りにあるヤツはめっちゃくちゃ綺麗だけど基本的に色がちょっと惜しい·····んでもっ、でもっ!!んへへへへへへっ·····」
デカい結晶は特性上インクルージョンや濁りが出るのは仕方ないとわかっているが、問題は比較的小さい方だった。
特にやばいのは長さ1m、太さ20cmはあろうかと言うこの晶洞の王であるかのように水晶や小さいアクアマリンを侍らせ座している巨大なアクアマリンだ。
色は濃い水色で、ベトナム産アクアマリンやドム・ペドロアクアマリンのように青に近い水色では無いが、ある意味最もオーソドックスなアクアマリンらしい色をしていた。
これは、めちゃくちゃ欲しい。
マジでもうマジで欲しい。
でも、このままにしておきたい気持ちもある。
晶洞というこの全長数十メートル、高さ最高2.3mもある美しい晶洞をそのまま保管して、誰の目につかないように永遠に地下で保管してそのままにしておきたい気持ちもある。
だが、晶洞はできたらもう基本的に成長はしないし、日光に当てると退色するものもある。
完成した晶洞は熱や変成で壊れるのを待つだけの存在だ。
だったら、私が切り出して大切に暗所で保管するべきではなかろうか?
いや!そうに違いない!
何せ私は大地の女神ガイア! ·····の部下
だから大地のモノは私が貰ったって問題ないはずだ!
ほら、たった30×14×4mの範囲を切り取って持ち出すだけだからさぁ?
いいよね?(確認)
いいよね!!(確証)
「よし切り取ろう!沢山鉱床は見つけたんだしいいよね!ねっ!ねっ!!」
そんで実は、私はコレを見つけるまでに色々な鉱床を見つけていたりする。
あの大量の石の中には、たぶん消化しきれなくて体内に残留して固まったと思われる金や銀、アダマンタイトなんかの貴金属が大量にあって、それも調べたらちゃんと鉱床があったのだ。
まぁ深すぎて掘るのは無理だろうけどそれでも大発見だから、この大大大大大大発見の大晶洞は報酬として丸ごと頂いてもいいよね·····?
うん!いいよね!というか魔法で埋め立てて元々無かったことにしちゃえばいいし!
「切断開始っ!そいっ!」
私はソフィアの槍を取り出すと晶洞の周囲を余裕を持って切断し、あっという間に岩盤から切り離してしまった。
更に晶洞は大きいので自重で圧壊しないように魔法で補強し、他にも様々な保護魔法を掛けて劣化や破損の対策を行った。
そして、ついに·····
「インベントリへ格納っ!」
シュンッ!
という音が鳴った瞬間、目の前にあった巨大な岩壁が消滅してとてつもなく巨大な真四角の空間が現れた。
無事に晶洞を虚空に送ることに成功した証拠だ。
そして残った穴を魔法で元通りに何も無かったかのように塞いだ私は、もう満足してしまったので今日のところは一旦帰って、後日また来て探索する事にしたのだった。
◇
「それで、勝手に許可なしに採ったと?」
「ハイ····· スイマセンデシタ·····」
だがあっさりバレた。
くそぅ·····
あの巨大アクアマリンのクラスターの中から良さげな取り巻きのヤツを綺麗に切り取って別枠で保管してたんだけど、見せびらかしすぎて1日でバレたわ·····
だって、表面にも付着物が全くなくて中も濁りひとつないクリアで色ムラも無い綺麗な巨大なアクアマリンなんだよ?しかも私の腕くらいの太さあるし、自慢したくなるじゃん·····
ちなみにラクアに見せたら椅子ごとひっくり返って、慌てて店の裏に駆け込んで力技で金庫ごと店の有り金全部持ってきて買い取ろうとしてきた。
まぁ売らなかったけどね!だって私のコレクションだし!!
·····そういやあの金庫、火事場の馬鹿力で持ってきたはいいものの戻せなくなって私が戻したんだけどさ、200kgはあった気がするんだけど。
よく持てたなアイツ····· あの執着心に免じて1本くらい売ってあげよっかな。
そんな感じで自慢してたら、たぶんフィーロ君かエビちゃん経由でお父さんにそれが伝わり、来なけりゃ全没収って言われたから渋々怒られに来たのだ。
「はぁ····· ソフィ」
「ハイ·····」
「お前には罰として例の洞窟の完全な調査をしてもらう、終わるまではコレは没収だ」
「····················ぐずん」
「·····おい、ソフィ?」
「···································」
「大丈夫か?·····おいっ!?大丈夫か!?」
「没収がそんなショックなのか!?」
私はガチの涙目で首を縦に振った。
「·····分かった、これは返すが期限を設ける、今週中に完全に調査を終わらせろ」
「分かりました!誠心誠意頑張らせてもらいます!」
没収と聞いて完全に凹んでいた私だったが、帰してくれるとわかった途端急にやる気が出てシャキッと立ち上がった。
そして、私は今日はこのアクアマリンとか晶洞を見てニヤニヤしようと·····
「あの、お父さん、今日、日曜日だけど、週の始まりって日曜日だよね·····?」
「月曜だ、ほら早く行かないと間に合わないぞ」
「ひぃぃぃぃいいいいいっ!!!」
今は日曜日の午後14時17分
そして、来週まであと10時間を切っていた。
たった10時間で全長不明のとんでもなく長いトンネルの完全な調査をするため、私はかなり本気を出す羽目になったのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「まさか、300km以上あるなんて····· 死ぬかも思った····· 日本地図でいうと一旦奥多摩辺りまで進んでそこから秩父の方に向かうって感じのルートだったわ····· 地殻変動のせいで出口は埋まってたけど、たぶんこれ数千万年前の古秩父湾だった頃に掘られ始めた代物だわ····· ヤバすぎるってコレ····· 晶洞に入って遊びたかったけど、洞窟はもう嫌だ····· 晶洞で遊ぶの来週にしよ·····」




