天才のケンジャヒメ
ある日の出来事·····
\ヴォォォオオオオンッ/
\キャフキャフキャフキャフキャフ/
\ポポボポボボポポッ/
「·····」
「はぁゝ〜オラぁぁああ異世界でぇぇえ〜〜ぃ、田植えぇぇえぇえさぁするぅぅうだぁぁぁああ〜〜〜、あヨイショ」
\ヨイショ!(合いの手(裏声))/
「·····何よ、これ」
何を勘違いしたのか、田舎のおばあちゃんが田植えするみたいな格好をした校長先生が、田んぼのあぜ道で私の姿を見たまま呆然と立ち尽くしていた。
◇
それは時を遡ること数日前。
校長先生と珍しくサシ飲みをしてる時に出た話題から始まった。
「·····お米栽培、まだ上手く行ってないんですか?」
「えぇ、どういう訳か雑草が生えまくってマトモに稲が育たないのよ·····」
いまサークレット王国は新たな主食である米を普及すべく、全国各地で米栽培が始まっている。
·····のだが、校長先生の管轄しているフシ盆地の田園の調子があまり良くないらしく、今日はその愚痴を聞くため校長先生に誘われてお酒を奢って貰ってるのだ。
ちなみにクソ高い酒奢ってもらってる。
ひゃっほい!
「あーーー·····雑草問題ですか、まぁフシ盆地ならそうなるって思ってましたけど·····」
「何よ、しってるなら早く言いなさい」
「休閑期に栄養が豊富だと生えやすくなるんですよ、んでフシ盆地は肥料なしでも作物が育つくらい栄養豊富な地質で、特に魔力量が多いんで魔力を糧に育つ雑草が生えやすいって特徴もあるんでそのせいじゃないですか?」
「·····頭痛くなってきたわ」
「先生、高校に復学してから急に頭悪くなってきてません?」
これは私も悩まされた問題なんだけど、人間の身体は周囲の状況に合わせて適応する特性があるのか、周りに引っ張られて精神が変わる·····
じゃなくて、ここフシ盆地は土地柄なのか土に栄養価が高い肥沃な場所が多くて、なおかつ魔力も多いから農作地に雑草が生えやすいという特徴がある。
それは田園でも同じで、ほっとくと物凄い量の雑草が生えてきてしまうのだ。
んで校長先生は今それに悩まされてるって訳ね。
ちなみに私は最後余計なこと言って喰らったゲンコツの痛みに頭を悩まされてる。
いてぇ。
「で、ウチでやってる稲作での対策を聞きたいと」
「えぇ、米の栽培に関しては貴女に一日の長があるわ、どうやってるのか聞きたいのよ」
「·····聞いちゃいます?」
「そんな反応をするような怪しい方法を使ってるのかしら?」
「·····カブトエビいるじゃないですか、近くの田んぼにたまに居る生きた化石の」
「知らないわ」
「··········」
「貴女ね、今は女だけれど元男でしょう?私はずっと女子だったのよ?やってる訳無いじゃない」
·····うち、カブトエビを田んぼに住まわせて雑草の芽を食べて貰ってんのよね。
まぁ他にも色々やってるけどさ。
「他には·····鴨を放し飼いにして田んぼで泳いで貰って土を掻き回して貰ったり、芽を食べて貰ったりもしてますよ」
「それなら行けそうだけれど、動物だと魔物に襲われるのよね·····」
「·····まぁ、フシ盆地ですもんね」
で、合鴨農法といって田んぼに鴨を住まわせて雑草を食べて貰ったり、そもそも雑草が生える前に土を掻き回して貰って生えにくくする方法なんかもある。
が!ここフシ盆地は魔物がめちゃくちゃ多いし、普通に街中にも猛禽類系の魔物が飛び込んできてハトを持ち去ってく事もよくあるから、まぁ、うん、結果はお察しだ。
「そうなると、うーん····· 田植え前に代掻きを何度かやったり、軽めに除草剤を撒いたり·····」
「大変ね····· ただ困ってるのはそれだけじゃないのよ、稲の苗を育てるのも苦戦中、植える間隔とかも難航してて、場所によっては育たず枯れるし····· ソフィちゃん、貴女なんか物凄い量のお米を1人で栽培してたわよね、どうやってるのかしら」
「·····見ます?あんまり参考にならないと思いますけど」
「見れるなら見たいわ、貴女が6歳の頃にチラッと見た程度だからしっかり見ておきたいわ」
「んじゃ明後日」
「明後日まで学校よ、明明後日は勇とデートだから日曜で頼むわ」
「··········じゃあ日曜日に、汚れていい格好で来てください、本当の稲作ってモノをみせてあげますよ」
ということがあって、話は冒頭のアレに戻り·····
◇
私は胴長を着て麦わら帽子を被り、青々とした稲の若い芽の束を満載にした田植機に乗って、春の陽気を感じながらテキトーに考えた歌を歌いながら水を張った田んぼに稲をポコポコと植えていた。
·····実は我が家のお米栽培は既に近代化していて、農業機械を取り入れて田んぼも効率的に栽培できるように色んな現代技術も取り入れて栽培してんのよね。
もう昔の手で植えて必死こいて収穫してたあの頃の栽培方法は時代遅れなのよ!!
·····いやまぁ、普通にあの田んぼも残ってるし、毎年みんなでワイワイしながら植えて育ててるんだけどさ。
だが今は機械の時代よ!!
「·····それ、どこで買えばいいのよ」
「半分自作ですよ?向こうの稲作用の機械を1式全部中古で買って全部魔改造して魔動車にしたんです、音は出るけど排気ガスは出ないエコ仕様なんですよ?ちなみに中古で集めても1千万近く掛かりましたよ」
「そうじゃないわよ!!ていうかどうなってんのよここは!!」
「え?」
今の季節は2月に入った所で、本来ならまだ種の準備さえ始まってないような時期にも関わらず、私は本来は5月頃にやるはずの田植えをしていた。
「説明してませんでしたっけ?このディメンションルーム、私が神化した影響で『部屋を作る力』がそもそも『世界を創る力』になったんで、瑞穂の里とか海水実験室を統合して世界樹を中心に直径100kmの小世界を作ったんですよ」
「あったま痛いわ·····」
「んで起点の私たちの家がサークレット王国の季節に合うように設定してて、時計回りに季節を4分割してズラして一年中色んな季節を体験できるようにしてみたんです!」
そう、実は私が神化して更に強化されてから、ディメンションルームの改築をしていたのだ。
今のディメンションルームの大きさはなんと関東平野とほぼ同等の大きさの直径100kmで、3000m級の高山もあり、海もあり、淡水湖もあり、自然豊かな川や森もあるとんでもない広さの土地になっている。
ちなみに自然環境も可能な限り再現していて、雨も降るし風も吹くし雪も降るし、ゲリラ雷雨が来たりカエルが降ってきたりと、外の世界となんの遜色もない世界になっている。
しかも·····
\ブロロロロロ·····/
「ば、バスもあるのね·····」
「バスは1日1度·····って訳じゃなくて、あれ自動運転なんでバス停にあるボタン押して呼べばすぐ来ますよ、普段は雰囲気作りでテキトーに走らせてます、バス停に立ってたら勝手に止まってくれますよ!·····ちなみにあの田舎の小屋付きバス停あるじゃないですか、あそこ人気スポットですよ、んふふ·····」
「知らないわよそんなモン!!」
で、この世界は私の世界で向こうに影響が出ないのをいい事にかなり好き勝手やってる。
まず交通網もかなりしっかりと構築してて、アスファルト舗装の道路が張り巡らせれていて、自動運転のバスが時々走っていてもちろん乗ることも出来る。
更に世界樹の周囲には環状線になってる列車も走らせてて、好きな季節のエリアへ手軽に行けたり、乗り換えれば海まで行ける路線もある。
·····まぁみんなあんまり使わないんだけどね、だって主要な場所には転移ネットワークを構築してるからそれ使った方が早いし。
まぁ、うん、あのおあつらえ向きに置かれた田舎の小屋付きバス停は時々ソレ目的の為だけにカップルで訪れてる事が時々あるけどね。
ていうかソレ目的で設置したし。
「·····話逸れたんですけど、実はこれと同じような田んぼとか畑があと3ヶ所、違う季節のエリアにもあるんです、しかも4ヶ所とも雰囲気が違うように仕上げたんですからね!」
「はぁ?ホントにいつもやり過ぎなのよ貴女は·····」
今いるエリアは春のエリアでかなり古典的で伝統的な田んぼのエリアで、水生生物とかがめちゃくちゃ多い自然豊かなエリアだ。
ちなみに耕運機とかが入れるようにはしてある。
で、私たちが住んでるあたりはもうちょい近代的で、将来子供たちが田んぼ遊びをするようになるようになった時に遊びやすそうな感じになってる。
そんで今成長期で青々と茂った稲が育ってる、世界樹を挟んで向こう側の夏のエリアは超近代的な農地で、なんと日本の都市や住宅街を再現してあって、ウチで1番大きい田んぼがあるエリアだ。
で、反対側のエリアは世界樹で隠れてこっちからほぼ見えないのをいい事に好き勝手やってんのよね。
ちなみに時々日本やサークレット王国の家をテキトーに完全コピーして入れ替えてて、アキさんが育ててるシルキーさんの家掃除の教育現場にもなってる。
で、もう収穫しちゃったんだけど秋のエリアは、なんと棚田になっていて機械が入れられない昔ながらの農法で栽培している、収穫量よりロマンを優先したエリアだ。
ちなみにそれぞれ1ヘクタールの土地は最低でも確保していて、それぞれ最低6トンの米を3ヶ月に1度収穫できるという、超効率の農園にもなっている。
ただ手作業だと限界が来たから、こうして日本の農作機械を使ってるって訳だ。
·····で、そんなに米を大量に栽培して消費し切れるのかというと、普通に余ってる。
いまウチにいるのは一日で業務用炊飯器をカラにする私含めたなかよし組のメンバーと(※毎食おにぎり1個程度で満腹のミカちゃんを除く)、ミナタとかアキさん、アキさんが育ててるシルキーさん20名で食べるとまぁかなり減るんだけど、それでも売れるくらいには収穫できている。
一応将来子供たちが育ってきたら多分業務用が2台必要になると予想してるから、今のうちから開墾して作付け面積を増やしといたのよね。
ちなみに品種は『ソフィヒカリ』で、高級米だけど貴族だけじゃなくて庶民にもかなり売れてる。
「·····だからあの凄まじい出荷量を維持できてたのね」
「そういう訳なんで、小さ頃みたいな手作業で収穫とかは今はほとんどやってないんですよ、しかも苗とかも魔法で一気に育てられちゃいますし·····」
「なんの参考にもならないわね····· ホントどうしたらいいのかしら」
·····そういうと思って、私は秘策を持ってきていた。
「はいこれ」
私は某有名ゲームメーカーの超有名なゲーム機を手渡した。
「Swi〇chでゲームでもやって諦めろってことかしら?」
「色んな事調べたりしたんですけど、うん、天穂のサク〇ヒメやってりゃ何とかなります」
「··········ゲンコツは一通りやってから判断するわ」
「わ、わーい·····?」
その後、校長先生は某稲作ゲームに見事にどハマりしたものの、現実の稲作そっちのけでゲームばっかやってしまったせいで、サークレット王国の米栽培の発展はまだもうちょっと時間がかかる羽目になったのだった·····
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「ちなみに未来を見た感じ、一通りクリアしたら現実で稲再開してたけどかなり順調そうでよかったわ····· っしゃ!!ゲンコツ回避成功っ!」
名前:校長先生
ひと言コメント
「···············」
(ゲームに夢中になっているため気が付いていない)




