なかよし時々大喧嘩っ!
ある日の朝·····
「んふふふ~、んふっふふ~、·····なんか違う、んふふふ~っ、んふっふふん~····· 難しいなぁ·····」
朝食後に週に何回か気まぐれで練習しているバイオリンの練習を終えた私は、新品できたてほやほやで作ってもらったばかりの神話級の楽器ストラディバリウスを持って庭からリビングへと帰って来た。
ここ最近は成長が頭打ちになってイマイチな感じだったんだけど、神界で音楽の神様にお願いして指導を仰いだところ快諾してくれて、指導を受け続けていたらだいぶ良くなってきたのだ。
ちなみにこのバイオリンを作ってくれたストラディバリさんは死後その功績が認められて神界で工房持ってて天使の音楽隊の楽器作ってんのよね。
この前会いに行ってメンテナンスついでにアドバイス聞いて来たわ。
そんなこんなで、私の今の実力はアマチュアの上位に入るくらいにはなってるんじゃないかなとちょっと思ってる。
ただ神界での練習ばっかりで音楽が神的に上手な天使たちが所属する神界交響楽団の練習に混ぜてもらってるから、イマイチ自分の実力が把握できてないのよね·····
うん、たぶんアマチュア。
天使さん達に『デスメタルの才能あるよ』『エレキギターにしてみたら?』って助言を貰うくらいまだ下手糞だから、もっともっと頑張らなくちゃなぁ·····
「すぴるるるる····· ぐるぴゅー·····」
「ん?この珍妙な鳴き声·····じゃなくてイビキは·····」
って思ってたら、ソファの方から変なイビキが聞こえてきた。
こんなバカみたいねイビキをするやつなんて私は1人しか知らない。
「·····やっぱりエビちゃんだ、まだ仕事行ってなかったんだ」
「寒いの嫌じゃあ·····」
「ってさっきから言って全然起きないんだけど、ソフィちゃんお願い出来る?そろそろ行かないと遅刻だよね?」
ソファを覗き込むと、厚い毛布にくるまって寝ている毛布からはみ出した2本のツノと銀髪が居た。
そう、私の義姉のエビちゃんだ。
なんか知らないけどエビちゃんは出産してから体質が変わったのか冷え性になり、寒いのが苦手になって今日みたいに特に寒い日なんかは一切外に出ないようになってしまったのだ。
·魔族ってサークレット王国より北に移住して生活できるくらい寒さに強い種族のはずなんだけどなぁ·····
って言ったら『寒さに強いのと寒いのが平気は全くの別物なのじゃ!このドアホ!』って言い返されて大喧嘩になったから、相当寒いのが嫌いらしい。
「今何時だっけ····· うわ!8時45分じゃん!エビちゃんそろそろ行かないとまじでヤバいよ!」
「休むのじゃ」
「·····それ誰がお父さんに報告すると思ってんの?」
「お主がやれ、ワシは寝るのじゃ」
エビちゃんは今日も今日とて町政の手伝いをしに行く予定なんだけど、その町政の始業は大体9時くらいなのだ。
まぁエビちゃんなら10kmくらいなら1分以内にたどり着けるし、仕事場は私の実家の目の前だから2分前でも間に合うけど、早いに越したことはないし、エビちゃんは普段は30分前には既に出勤してるから今日はだいぶ遅いのだ。
あとサボったら私がお父さんに報告しなきゃいけないし、なんか毎回私まで巻き込まれて怒られるから嫌なのよ·····
「えーびーちゃーんー?」
「うるさい、寝させろなのじゃ·····」
「·····仕方ないか」
だから、無理やりにでも起こす。
私はバイオリンを持ち上げ、弦に弓を乗せ·····
「ふんっ!!」
\ォ゛ギヮヴィギュェェェェェェエエエエエッ!!/
思い切り下手くそで不快な音を掻き鳴らした。
「ぎゃあっ!!うっさいのじゃ!!やめろ!耳がちぎれるのじゃこのクソ下手女!!」
「おーきーろー」
\ムヂゥギピビゥゲギァァァァアアアアアッ!!/
エビちゃんは耳がブッ壊れるような不協和音を耳元で鳴らされて寝れないらしいけど、意地になっているのか絶対に起きようとしなかった。
だからお代わりしてやった。
「だぁぁぁぁあああっー!!!喧しいのじゃてめぇ!!ブッ殺して黙らしてやるのじゃ!!」
「よしやっと起きた、エビちゃん仕事行きなよ」
「ワシは快適に寝ておったのじゃぞ!?それをお主が起こしてきやがって!!万死に値するのじゃ!!じゃから死ね!!」
「てめぇが死ねっ!!」
そしてエビちゃんがキレて飛び起きた。
そして私もキレ、反射的に手に持ってたちょうどいいくらいの大きさのソレを思い切りエビの頭に叩き込んっっ·····!!?
\バギャッ!!/
「·····あっ、あああああああああああああああああああああああっっっっっっっっっっ!!!!???」
「痛っ!貴様ァ!バイオリンで殴って気やがったな!?ぶち殺す、本気でブッ殺すのじゃ!!」
だが頭に血が上っていた私の頭からレミアに血ぃ吸われてんじゃないかってくらいの勢いで血の気が引いていった。
バイオリンをバット代わりにして殴ったら、バイオリンが折れてしまった。
これが普通のバイオリンならまだいい。
折れたのは、本物が純金で作ったモノよりもはるかに高額になるという伝説の楽器、ストラディバリウスだ。
一丁で数十億円の楽器が折れてしまったのは、いくら大金持ちの私でも発狂するレベルの大惨事だ。
「あぁぁぁ·····」
「お?なんじゃ、そのヘタクソ目覚ましが壊れたのじゃ?はっは!ざまぁみろなのじゃァァァァアアッ!!ふんっ!もう一眠りするのじゃ」
「·····表出ろ、ぶっ殺してやる」
「嫌じゃ、ワシはまだ寝たいのじゃ」
「じゃあここで殺すっ!!永遠に寝てろこのクソボケエビがっ!!」
「貴様ワシの眠りをまた邪魔するのじゃ!?本気で許さんのじゃ!そのぴーぴーうるさい口を永遠に黙らせて好きなだけ寝てやるのじゃ!!」
「おっ?じゃあ永眠しなよ好きなだけ永遠に寝てられるからさぁ!!死ねクソエビめ!!」
「貴様こそ永遠に眠らせてやるのじゃ!」
お気に入りで貴重なバイオリンを壊された私と、快適な睡眠を邪魔されたエビちゃんは共にガチギレして一触即発な状態になった。
どちらかが手を出せば、この爆弾は大爆発を起こして大喧嘩に発展するだろう。
·····しかし、爆発を起こさない方法もある。
「·····あのさ、今57分だよ?あとソフィちゃんも余裕ぶっこいてる····· っていうか今日ソフィちゃんも町役場に行くの忘れてるでしょ」
「「·····あっ」」
現在時刻は8時57分。
始業は9時丁度で、今日はソフィも鉱山関係のことがあって町役場に行くことになっていた。
つまりこの2人、あと3分以内に着替えて出勤しなければ遅刻が確定するのだ。
その事実は、血が登りきって噴火寸前まで熱くなったアホな2人の空っぽな頭を冷却するには十分すぎた。
「「ヤバいっ!!!」」
だが、このアホ2人は腐りきっても腐女子····· じゃなくてヒトを超えた極音速の少女たちだ。
·····2人とも意外とBLは好きだが、特にTSモノは好きな腐女子だが、たった3分で出勤が可能なレベルには強いのだ。
つまり、本気で急げば遅刻しないのだ。
故に2人は、その事実に気がついた瞬間には動き出していた。
2人は同時にその場から離れると服を脱ぎ散らしながら自分の部屋に飛び込み、5秒後にはちゃんと着替えて出てきた。
更に魔法で一気にパンを焼くとバターを塗って10秒間で優雅なブレックファーストを楽しみ、ソフィは真っ二つに折れていたバイオリンを魔法で直し、必要な物を持って玄関に向かって飛び出した。
ここまでたったの30秒。
そしてディメンションルームから出て自宅の玄関にやって来ると、玄関に置いてある鏡で身だしなみをサッと整え、靴を履いて·····
「行ってきます!!」
「行ってくるのじゃ!!」
「行ってらっしゃい」
\ガチャッ/
/
ズドォォォォオオオンッ!!!
\
フィーロ君に行ってきますの挨拶をして、2人は少なくとも1kmは離れている仕事場に向かって走り出した。
だがどんなに走っても1kmは1分以内では走ることは出来ない。
しかし、それはあちら側の人間の話だ。
2人なら、1kmなんて数秒で走り抜けられるっ!!
そして数秒後っ!!
\ズザザザザザーーーーッ!!!/
「8時59分っ!」
「それと32秒なのじゃ!!」
「·····別に5分くらい遅れても良かったんだぞ?まぁ早いに越したことはないが、次からは気をつけろな」
「「ギリギリセーフっ!!!」」
私とエビちゃんは、たった数分前までガチの殺し合いになりそうなケンカをしてたとは思えないくらい仲良く抱き合い、間に合った事を喜ん·····
「「じゃあ1発殴らせろっ!!」」
「やめろ、ソフィ、エヴィリン」
\ゴスッ!!/
「「ぐえっ!!」」
「ったく····· また喧嘩して遅れたのか、程々にしろよ?」
「「はぁい·····」」
私とエビちゃんは間に合ったのでお互いをぶん殴ろうとしたけど、それより先に私のお父さんの鉄拳が頭に降り注いでお互いの拳は相手に届かなかった。
そして殴られてなんか冷めたので、私たちはお父さんに愚痴愚痴説教されながら、今日の仕事を始めたのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「うん、ちゃんと音も元にも戻ってる、魔法で直せて良かったぁ·····」
名前:エビちゃん
ひと言コメント
「昨日はちと張り切りすぎたのじゃ····· 酒飲んでやるんじゃなかったのじゃ、止まらんかったのじゃ····· じゃから、めっちゃ、眠い·····のじゃ·····」




