奇跡の特異点
蘇生魔法が使える。
それは超絶天才の私でも驚愕してしまうような、とんでもない事だ。
ちなみにうるとら天才の僕も驚いたぞ。
·····シトラちゃん、干渉すんのやめて?
仕方ない····· ようやく見つけた手法なのだが場違いだったようだ、大人しくしよう。
まったくもー·····
·····それはともかく。
「·····本当に生き返った」
「ふっふんっ!これで鮮度を長持ちさせたりもできるんですよ!」
にわかには信じ難い事だが、目の前で死んでいたアユが生き返ったのを見ると認めざるを得なかった。
本来、生と死に可逆性はなく、一度死んでしまえば生き返る事は絶対に不可能な事だ。
そして、聖女たちがやっている蘇生の奇跡は死から生へと戻すという不可逆的な壁を突破する行為ではなく、抜けてしまった魂を元に戻すだけの行為だ。
それだけでも十分に凄いが、やっているのはゲームで例えると遊んでる最中にカセットが引っこ抜けてしまって、急いでカセットを元に戻すのと全く同じなのだ。
本当の蘇生は、壊れたり紛失してしまったカセットとデータを呼び戻すくらい難しい事だ。
それを、フィグはたやすくやってしまった。
「ただ、完全な奇跡じゃない····· 生き返ってるけど、元の魂じゃない」
「えっ?」
「普通の魂はよほどのことが無い限りこの世にはあまり留まらない、長くて1ヶ月半くらいしか居ないし、もしそうだとしても元に戻すのは至難の業なのよ」
「どういうことですか?」
「このアユはたしか去年の夏に買ってインベントリで時空凍結保存してたんだよ、だから、魂はもう残ってないはずなのに·····」
フィグちゃんが生き返らせたアユは、宙に浮かべたウォーターボールの中でのんびりと泳いでいた。
本来なら蘇生しても魂は戻らないで植物状態になるはずなのに、普通に泳いでいるのは神であり魂を扱う側の人物である私でさえ目を疑う光景だった。
ただ、何で生き返ったかは既に解明できてはいた。
「·····まぁ、結論から言うと『中身が別人』だね、肉体を蘇生してそこら辺で死んで漂っていた生き物の魂を入れたことで、疑似的な完璧な蘇生ができたんだと思う」
アユの魂の器の中に、別の魂が入っている。
今このアユの中にはカエルの魂が入っていて、うまいこと動いているようなのだ。
ぶっちゃけ意味わからん。
確かに小動物の魂だから互換性はあるから動かせる可能性は十分にあるけど、もしこれが人間のような知能が高い生命体の場合、かなり厳しい事になるだろう。
だって、強制転生させられて狂わないわけがない。
人間でこの蘇生をやったら、突然知らない体にブチ込まれてしまったら魂は肉体と適合していても精神がそれを受け入れられずに精神崩壊を起こす可能性が極大だ。
「って訳だから、その蘇生能力は人間の死体に使うのは絶対に禁止、·····もしかしたら、ユニークスキルと併用すれば神でさえ驚愕する奇跡を起こせるかもしれないけど、本当に大事な時にしか使っちゃダメだよ」
「はーい」
「·····ユニークスキルを剥奪されるとね、ユニークスキルが発現する切っ掛けとなった願いも奪われて、それができなくなるし忘れるんだよ、フィグちゃんの場合は『料理』『お菓子』、この二つが奪われることになるね」
「きっ、きをつけますっ!絶対に使いませんっ!!」
もしそんなことをやられたら、やられた人も困るし魂を取り扱う者『神』としても非常に迷惑だ。
まったくもー·····勝手に余計な仕事増やさないでよね?
魂関係の仕事ってめっちゃ大変なんだからね?
◇
「あれおっかしいな····· ユニークスキルじゃない?コレも違うしアレも違う·····」
「ソフィさまー!お菓子つくりましたよー!すっごい早く作れるようになりました!ユニークスキルってすっごいですね!」
「·····まさか、特殊能力なしの、素の力?」
私は3人を放置して、さっきガイア様からも緊急調査依頼が入ったフィグちゃんの正体不明の蘇生能力の解析を進めていた。
そんで解析の結果、隠れユニークスキルは存在せず、ユニークスキルではない特殊な能力かと疑っても存在せず、純粋に彼女が使える能力という事が判明した。
ただ謎なのは、蘇生魔法でもないのだ。
本当の蘇生魔法は神の魔法で発動には神属性魔力が必須かつ権限が完全に封じられているのでごく一部の神にしか使えない魔法で、フィグちゃんが蘇生魔法を使った形跡はなかった。
ユニークスキルでも、魔法でも、神の魔法でもない。
それはつまり、彼女はこの世の理を超えた何かで蘇生を行っているとしか考えられないという事を示していた。
「·····神さえ認識していない、世界が生み出した『奇跡』そのものって訳か、興味深い」
この世界には極めて稀に、こうした理から外れたモノが発生することがある。
そのモノがもし人々に利をもたらすのなら、それは『奇跡』と呼ばれ、もし人々に害をもたらすのなら、それは『厄災』と呼ばれる。
その力は大半は気が付かれずに、発現もせずに寿命と共に消えていくだろう。
だがもしその力を人類が見つければ、多大な利をもたらすか、有り余る害を被るか、そのどちらかを手に入れる事ができる。
そしてフィグちゃんの蘇生の力は、間違いなく『奇跡』であり、その事実が判明すれば『厄災』の芽となりかねない非常に危険な力だ。
·····うまいことユニークスキルで蘇生できるようにして正解だった、教会への嫌がらせのつもりだったけど助かったかもしれない。
「ソフィさま~、シフォンケーキ焼いたんですけどたべませんか~?」
「あー貰うよ、ありがとね」
私はガイア様への報告書を書き込みながら、フィグちゃんが作っていたシフォンケーキを食べっ
\パァンッ!!/
「·····は?いやっ、えっ?腕治った?」
「ソフィ様の腕が吹き飛んだ!?」
「これマジ?相当な古傷だったのに·····」
シフォンケーキを食べた途端、義手だった私の左腕が弾け飛んだ。
そして義手があった場所には完璧に元通りになった私の生身の左腕が生えていて、産まれてからずっとあったかのように何の違和感もなく動いた。
確か私が義手になったのは6年近く前、つまりあの傷は6年以上経過していて傷口は塞がって治癒されていたはずなのだ。
それが、一瞬で元に戻ってしまった。
まぁ再生するときに魔力をごっそり持っていかれたけど、完璧に元通りになってしまった。
「だっ、だいじょうぶですか!?」
「大丈夫、私もともと左腕が義手だったから」
「そうなんですか!?」
流石に食べただけで完璧に再生するとは思わなかったけど、一般人だったら死んでるレベルで魔力が吸われたから釣り合いは取れていそうだ。
それに、ユニークスキルだったらまだ十分あり得る範囲だ。
「凄いねそのユニークスキル、·····あんまり他の人に使っちゃダメだよ?奇跡は安売りするモノじゃないから、程々にしなきゃ価値が下がっちゃうからね」
「でも、聖女さまは人を癒すのが仕事で·····」
「·····私はぶっちゃけ言うと、左腕が無い方がいいのよね」
キュラァァァァアアアアアッ!
キンッ!
「よっはっほっ、よし、いい感じ」
「·····義手にもどっちゃった?」
「戻したんだよ、私の義手って意外と便利で何にでも変形できるし、熱い物を直接つかんでも平気だし、激ヤバ特級呪物のナイフが刺さっても平気だし、こっちの方がもう慣れてるからね」
私は左腕に泡沫ムゲンの眠り姫の力を収束し、現実を改変して生身から義手へと事実を書き換えて元に戻してしまった。
もう6年も使って来たし、普段は何の違和感もないレベルで生身の腕に戻せるんだからこっちの方が良いに決まってる。
「そうなんだ·····」
「そうなんだよー」
その後、私はお菓子を食べながらフィグちゃんとユニークスキルと『奇跡』の使い方や制約について相談をしたのだった。
·····ちなみにシフォンケーキはめっちゃおいしかったんだけど、効果を忘れてつい食べちゃってまた義手が弾け飛んで生身になる事件が5回くらい起きて、その日は義手にするのは諦めたりしたけど、話は無事にまとまったので良しとしよう。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「神様でも知らない事はあるし、予測不可能で理解できない事が沢山ある、·····だからこの世界は面白いんだけどね?」
名前:フィグ
ひと言コメント
「あんまり使わないように気をつけなきゃ!·····でも他にどんなの作れるんだろ?」
名前:シトラ
ひと言コメント
「ちなみに、だ、フィグよ、そのユニークスキルは性格の悪さは治せるのかね?出来るかも?·····ふむ、おーいマルス、これ食べて\がぽっ/ぐぁむぐむっ!!?!?·····うふふ、皆さん美味しいお菓子は知恵を分かち合うように分け合い美味しく頂こうじゃあないか、おぉ可愛いお魚さん、水球の中は快適だろうか、うふふ、うふ、うふ···············おいマルス、おい」
名前:マルス
ひと言コメント
「おー効果抜群じゃん、凄いじゃんか、·····ところで運気の悪さを治すお菓子\ほぁちゃー!仕返しだぁ!/むぐぁっ!!?·····うふ、ギャンブルは人の心を惑わせる悪しき文化です、聖職者たるもの平日はルミナリア様に感謝を捧げ(以下略)」




