宇宙人とレストランとお祭りと
火星から帰った数日後、私はフェニカとフィーロ君も連れてお昼ご飯を食べにフシ町のファミリー向けレストランへとやって来ていた。
ただ、ここには私たち以外にも数人いた。
「まぁ火星の現状はこんな感じでした、·····報告ってこんな感じで大丈夫でした?」
「大丈夫だ、むしろもっと雑でも良かったんだぞ?できればアポを取ってくれとは言ったが、まさかここまで完璧にしてくれるとはな·····」
「いやぁノリがいい人達で良かったですよ、んじゃ後はルッダーさん達にお任せしますね」
「あぁ、任せてくれ」
それは宇宙生命体連合に所属していてこの星を調査している百戦錬磨の調査隊長ルッダーさんとその部下数名、そして新しくやって来た調査隊第二陣の金星と火星を間違えたおっちょこちょいの隊長だ。
そう、私はフシ町のレストランでお昼ご飯を奢って食べながら火星探査の報告をしていたのだ。
ちなみに私が作った報告書はかなりいい出来だったみたいで、驚いていたけど調査がしやすくなるとかなり喜んでいた。
まぁそりゃキノコ神拳とジャガイモ神拳のバトルをして何だかんだ仲良くなって、Sランク冒険者的な役割のネイデルさん伝手で火星の代表者みたいな人たちに掛け合ってくれたおかげで火星の人々も調査に協力すると快く受け入れてくれたのだ。
ただし条件もあって、植物栽培や惑星環境の改善による地表の緑地化を条件としていたけど、宇宙生命体連合の科学力ならその程度朝飯前みたいだったから宇宙生命体連合も受け入れて晴れて交渉成立となったそうだ。
ってさっき聞いた。
「しっかし、ジャガイモが主食とはな····· この星と火星は過去に交流があったんじゃないのか?」
「まぁジャガイモ神拳の力で何とかしたんじゃないですかね」
「そうだ気になっていたんだが、そのナントカ神拳って一体何なんだ?長い事色々な星を調査してきたが、こんな魔法·····いやスキルか?·····どちらにせよ、見たこともない力だ」
「んー、ギャグテイストじゃないとうまく答えられないんですけど、頑張って翻訳すると『ノリと勢いで世界のリズムをも上書きして現実を改変する拳法』って感じですかね?」
「そうか····· いや説明されても意味が分からないんだが?」
「そりゃパッションですから、大事なのは『考えるな感じろ』ですよ」
「·····すまん俺には理解できそうにない、ただ学者が好きな世界の真実に触れそうなモノって事はわかったぜ」
そういうと、ルッダーさんは注文していたポトフの中に入ってるジャガイモをフォークで刺してパクッと食べた。
どうやら彼曰く、本来なら星が違うと交流を行ってない限り同じ作物は存在しないはずなのに、地球の火星には同じジャガイモがあるのが不思議で仕方ないらしい。
私にも理由はわからないし火星の人々も知らないみたいだし、たぶんだけどアレだと思う。
キノコ神拳に伝わる魔法使いMageの書によると、はるか昔に南米大陸と類似する星にあった高度な文明、今のソラナム文明の前身となった文明が星間移動の魔導装置を作っちゃって移住したっていう逸話があって、確かにあのあたりのジャングルの中にはポテト遺跡が点在しているし今もジャガイモ神拳の影響を受けた拳法が存在しているから、もしかしたら本当に過去に地球から移住してきた人が居たのかもしれない。
「まぁ後の調査はお任せしますね、そんじゃそろそろ·····」
「あぁすまなかった、情報はありがたく使わせてもらおう、ではまた今度」
「ご飯冷めそうなので食べますね」
「·····そっちか」
「そっちですよ」
って事で私は報告も終わったので魔法で保温していた料理を食べ始めたのだった。
◇
そしてお昼ご飯を食べ終えた私たちはレストランを出て、宇宙生命体連合の皆さんと別れて家族3人でのんびりとフシ町の散歩をしようとしていた。
「それじゃまた今度よろしくお願いしますね」
「あぁ、あと数ヶ月で彼らがやってくるようだからな、歓迎の準備を始めなければ」
「ソフィちゃん、彼らって誰?また面倒事呼び寄せようとしてる?」
「面倒事じゃな·····くないかも、今度『サイトーシス星再生計画』の人たちが来る予定なのよ、確か再生用の機材は輸送準備中みたいだけどまずは代表メンバーとかが月面基地に来て宇宙生命体連合と合流予定なのよ」
「なるほど·····」
「そうなんだよ、じゃあよろしく頼むぜ」
「はーい」
私がナヴェリアさんと遭遇してから大体3年くらいが経過して、ようやく惑星サイトーシスの再生計画が始動したのだ。
現在は超光速移動で代表者たちがやってきている途中で、機材は惑星のデータから当初想定されていたのとは違う部分が発見されてしまい大規模修正をしなくちゃいけなくなって時間がかかっていて、今は超大型船に搬入して輸送している所らしい。
なので宇宙生命体連合の人たちも結構大忙しになっていて、火星の調査を私に依頼してきたって訳だったのだ。
「んじゃ私たちはそろそろ散歩でも再会しよっか」
「うん、でもフェニカ寝ちゃったけど·····」
「すぅ·····」
「ありゃま、でも寝顔もめっちゃ可愛いなぁ」
ただ報告が思ったより時間がかかったし私が話し合いに夢中になっちゃって、散歩に連れてきていた私の娘のフェニカはお昼を食べてお腹いっぱいになって眠ってしまったようだ。
って訳で仕方ないので私は寝ているフェニカを起こさないように、フィーロ君とほぼ二人きりで散歩と言う名のデートをすることにした。
「なんかこうして二人きりでデートするの久しぶりだよね、最近あんまり一緒に居れてない気がするし、ごめんね·····」
「いいよ、ソフィちゃんも忙しいってわかってるから気にしなくても大丈夫だから」
「そっか、ありがとね」
ここ最近私は結構忙しくて、フィーロ君とフェニカ、それとなかよし組のみんなと一緒に居る時間が少なくてちょっと罪悪感を覚えていたのだ。
なので今日からしばらくは仕事を休んでフシ町でのんびりとしようかと考えている。
たまには休んだっていいよね。
「そんじゃどこ行く?どこでも行くよ」
「うーん····· 河原でも行く?」
「そうしよっか、屋台祭りってまだやってたっけ?」
「僕は知らないけど·····」
「いつまでだっけなぁ····· 今月中旬までだったのは覚えてるんだけど、今日12日だからやってるかな·····」
「まぁ行ってみようよ、無かったらなかったで散歩できるからさ」
「んふふ、賛成っ!」
という訳で、私は休日を満喫するためまずはフィーロ君と一緒にフシ町の真ん中を流れる川沿いに行くことにした。
◇
フシ町では年明けから1月の中旬まで川沿いに新年を祝う屋台が並んで年明けを祝う祭り『新年祭り』がおこなわれていて、色々な屋台が出店して限定メニューなどを食べられたり新年を祝う飾りなどが売られていたりする、年に数回ある町民が楽しみにしている大規模な祭りがおこなわれている。
元々は新たな一年と鉱山の安全を祈願する祭事だったらしいんだけど、長い年月を経ていつの間にか祭事はただの祭りとなって、一応イベント的に鉱山の安全を祈願したりするけどメインは年明けを祝って町民が集まって祭りを楽しむ祭りとなってしまった·····らしい。
そんで今日は1月の中旬である12日なので、祭りの一応メインイベントの鉱山の安全祈願はとっくに終わって撤退した屋台もチラホラ目立ち始めて少し閑散としていたけど、それでも沢山の屋台が立ち並んでいてそれなりに人も居て祭りって感じの気配が漂っていた。
そんなお祭りの中を、私とフィーロ君とベビーカーですやすや眠るフェニカの3人は進っ·····
「お祭りっていいよねぇ····· あっクリームドリンクだ、一つ下さい!」
「二つでお願いします、僕も飲みたいので」
「はいよ2個ね、っと、熱いから気を付けるんだよ」
「ありがとうございます!あつっ!」
「あぁ·····あったかい·····」
·····いったん進むのをやめて、入口付近にあった屋台に早速寄り道してしまった。
ちなみにクリームドリンクは冬の温かくて優しい飲み物って感じで、なんていうんだろ····· 暖かい液体クッキーなのかな?ってかんじのシンプルな味だ。
確か小麦とバターを炒めたブラウンソース的な物に牛乳と砂糖を混ぜて作る飲み物で、手間が掛かるからちょっと高いんだけど味は優しく美味しくて体があったまる、日本で言う甘酒的なイメージのドリンクだ。
ちなみにクリームって呼ばれてるけどクリームは全く使われてない、何でも見た目がホワイトシチューとかに似てるし粘度もクリームシチューくらいだから、何故かクリームドリンクって呼ばれるようになったんだとか。
飲むと結構ドロッともったりしてる粉っぽい感じなんだけど、それがクッキーぽさが出ていて、ふわっとバターの香りが漂ってきて小麦粉が焼けた芳ばしい香りもして、優しい甘みと合わさって本当に美味しいドリンクだ。
という訳で、私たちは暖かいクリームドリンクを飲みながらのんびりと祭り会場になっている川沿いの道を歩き始めた。
「っっっづあっぢゃぁぁああああいっ!!?!?」
「言わんこっちゃない·····」
が、温かい····· いや、粘度があってしかも激熱なクリームドリンクが一気に口の中に入ってきたせいで、口をめっちゃヤケドした。
とりあえず上顎の皮がでろんっとなるくらいガッツリな火傷を治癒魔法で治した私は、同じ激熱クリームドリンクを飲んだけど舌をヤケドしなかったフィーロ君とスヤスヤ眠るフェニカと一緒にフシ町の新年祭りへと再び歩みをすすめた。
「あぢぃ····· 痛いわぁ·····」
「治ったのにまだ言ってるよ····· 自業自得でしょ?」
「まぁそうだけど·····」
「それは置いといて、ソフィちゃん、火星ってどうだった?」
「言わなかったっけ?うーん····· この星と比べると自然が少なくて寂しい場所だったけど、ちゃんと生き物が居て逞しく育ってる良い場所だと思ったかな、一応大気とかもあってフィーロ君たちも行けるとは思うけど、大気圧が低い上に酸素濃度も少し低いせいで多分体調を崩すから行かない方が良いかなぁ·····」
「大丈夫じゃない?」
「フシ山の山頂みたいな環境だけど·····」
「うーん····· それはキツいかも」
「フィーロ君、2600mちょいくらいで諦めてたもんね」
火星は一度行ってみたい場所だったけど、不毛の大砂漠で酸素も薄い非常に過酷な場所だった。
住めば都というが、今住んでる都に慣れている私にとってはやっぱりこのフシ町が一番好きで、こうして冬だからだいぶ緑は少ないけど生命で溢れて揺れ動く星が私は一番好きだ。
ちなみにフィーロ君は私に付き添ってフシ山の登山をしたことがあったけど、その時は2600mを超えたら酸素が足りなくなってぶっ倒れて転げ落ちかけたのがトラウマで、フシ山に付いて来なくなっちゃったのよね·····
今ならフィーロ君の体力とかも考えて十分登れると思うけど、無理に誘うのは良くないからやってない。
「そんな厳しい環境で良く過ごせるよね·····」
「確かこの世界にも標高5000m近い山の中に首都がある国があったと思うよ、タントラ魔法学校なんてそこから1500mも上にあるし·····」
「·····それ酸素とかどうなってるの?」
「大気圧とかを考慮しても70%以下しか無いんじゃないかなぁ·····」
ちなみに姉貴曰く、こっちの火星よりチベットに行った時の方がキツいと思うとの事。
こっちの火星の大気圧は70~80%なのに対し、あっちのヒマラヤ山脈は高度にもよるが標高5000mくらいだと65%くらいしか無いし寒さもけた違いに寒いだろうからガチで厳しいだろう。
ちなみになんだけど、山の上で『酸素が薄い』というのは正確には間違いで、大気中の成分的に見ると酸素の比率は地上と変わらず21%だ。
そのかわり体積あたりの大気の量が少ない影響で、1呼吸で得られる酸素の量が減ってしまうため、『酸素が薄い』と感じる訳だ。
「まぁ火星は無理に行かなくてもいいと思うよ、それに金星も落ち着くまではいかない方が良いと思う」
「聞いた感じだと行かないというか、金星に行ったら死んじゃうでしょ」
「んふふ、まぁね」
金星は今は気温450度近くて、大気の大半が二酸化炭素という生命が住めない環境だ。
だがもうすぐで魔族たちの再生計画が始まるから、しばらくしたら人々が生きていける環境になるかもしれない。
いや、確実になるだろう。
元々気温は地球よりちょっと高いっぽいけど、酸素濃度も環境も地球とあまり変わりない星だったからいつかは生命が戻ってきてかつての栄華を取り戻せると私は信じてる。
「もし金星が住める環境になったら、みんなで行ってみよっか」
「楽しみに待ってるよ、でも安全確認はちゃんとしてね?」
「んふふ、もちろんっ!」
もし金星が住めるようになったとしても、私はこの星に居続けるだろう。
だって、この星が好きなのだから。
◇
【後書き】
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「あぁ美味しい····· 寒いからあったかい物が美味しいなぁ·····」
名前:フィーロ・シュテイン
ひと言コメント
「やっぱりソフィちゃんと一緒に居るのが一番幸せだ、ソフィちゃんが居ないと結構寂しいし皆も暇そうだから居てくれるのが嬉しいよ」
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「この後祭りには参加したんだけど、家族3人で団欒したかったからカットしちゃったよ☆ たまにはこうやってのんびり過ごすのも····· いや、ずっとこうやってのんびりした平和な日々がいいなぁ·····」
名前:フィーロ
ひと言コメント
「·····ソフィちゃん、教会の屋台でフィグちゃんが物凄い量のお菓子を作って売ってたのに触れたくないからカットしたでしょ?あとマルスちゃんがくじ引きの屋台壊滅させてたし、シトラちゃんは古本の屋台に齧り付いて店主さんに迷惑掛けまくってたし····· あと他2人の連行中にフィグちゃんの面倒見てたけどお菓子物凄い量食べさせられたんだけど、自分が食べたくないからって押し付けたよね?? ねぇソフィちゃん?聞いてる??あっ逃げた、·····レミアさん、好きにしていいよ」
名前:レミア
ひと言コメント
「いいんでふかぁ!?えへっえへへへへぇっっっ!!ソフィさまぁっ!待ってくださぁぁあああいっ♥!♥♥!」
\ンギョェェェエエエエッ!!?!?!/




