体調不良で早退しますっ!
「ずびっ·····」
「まぁ、なんだ、落ち込まないで、十分面白かったから」
「うるしゃい!余計な情けはむしろ悲しくなるだけじゃい!うっうっ·····」
私は火星で渾身のギャグが決まらなかった事でめっちゃくちゃ凹んでいた。
あまりにも凹み過ぎて普通に会話できるようになったくらい心配してくれたし超絶凹んだ。
「·····とりあえず元気だしな、次はきっとみんな笑ってくれるさ」
「ぐずん·····」
って感じで本気で落ち込んでたけど、今は火星探索を進めなきゃなので泣いてばかりいられない。
だって私がここに来た理由は神拳バトルではなく、宇宙生命体連合から依頼されて正式に調査しに来ているのだから。
なので私は気を取り直そうとしたが、なんだかんだダメで·····っていうか、激しく動いたせいで高山病が悪化してきたから、30分くらい落ち込むついでに休んでたのでカットすることにした。
◇
そして1時間後、一応元気を取り戻した私は火星の地下都市を案内されて探索していた。
ちなみに高山病はまだ続いてる、頭痛い。
「ここが道具の加工場だな、この町での生活に必要な金属製品の大半はここで製造されている」
「おぉ····· 蒸気機関みたいな武骨な感じだけど、ちゃんと機械だ·····」
「蒸気機関?なんだそれは」
「あーこっちの話です、ところで金属資源の鉱山はどこら辺にあるんですか?」
「いや、あまり採掘はやっていない、地表に転がっている鉄を使う事が大半だな」
「·····まさか隕鉄?」
「多分合ってるだろうな」
今見ているのはこの地下都市で使われている金属製品の製造をしている工場で、中には入らせてもらえなかったけど、外からチラ見した感じだと機械がちゃんとあって、どうやら文化の水準は私の住んでる地球より少し高くて産業革命が起きた後のような感じらしいとわかった。
あと驚いたのはそこら辺をチャリンコが走ってたことだ。
さっき子供に三輪車で轢き殺されかけたけど、ちゃんと自転車もあってかなり普及してそうだった。
んで使う金属はなんと空から降ってくる隕石を使っているようで、ぶっちゃけ言ってクソ羨ましいけどクソ勿体ない。
それと地表に鉄分が多いからそれも活用してるっぽいけど、そのついでに隕鉄も使ってるらしい。
隕鉄ってレアで結構高いのに·····
まぁでも地下に都市を築いてるからこそ、地下をむやみやたらに掘り返してはいけないってわかっているんだろう。
そもそもこの星に資源があるかもわからないから、隕鉄は正に天からの贈り物だ。
あと色々聞いてみたけど、火星の文明はここだけじゃなくて結構そこら中にあるらしくて、ほぼ全てが地下にあるので火星は地下帝国が沢山ある星だったらしいのだ。
その都市と都市の間はトンネルで繋がっていて、レトロな魔導鐵道で人や物の移動が可能らしい。
でもやっぱり外にはあまり出ないそうだ。
たぶんだけど地中に住む種族だから太陽光に含まれる紫外線とかに弱いんだと思うけど詳しくは知らない。
ちなみにこういう地下都市はジオフロントって呼ばれてるらしい。
あっ箱根のアレとは関係ないよ?
ジオフロントっていう言葉が元々ちゃんと存在してるらしくて、日本でも作る計画があったんだとか·····
んでこの地下都市は直径5kmはあろうかという巨大さなんだけど、天井は割と低くて薄っぺらい構造だった。
あと他にも元々村サイズの小さな地下都市が点在していたんだけど、技術が発展してきてからこういう巨大な都市を作るようになったって言ってた。
「まぁそんな感じだな、では次はどこに行く?」
「なるほどなるほど····· んじゃ私は下調べのために軽い調査に来ただけなんでそろそろ帰りますね」
「わかった次は帰るに行く····· 待て待て待て待て待て!!もう帰るのか!?」
「だってお昼ご飯作らなきゃですし」
そう、私は調査に来たと言っても下調べというか交渉役だったのだ。
さっき偉い人に宇宙生命体連合の説明資料とかその他色々を渡して、アカシックレコードと魔法のコンビで既にある程度の解析は済ませてあって、今はお昼までちょっと時間があったので自由時間にして火星の地下都市探索を楽しんでいたのだ。
「だ、だが·····」
「なんか引き止める理由があるんですか?」
「せ、せっかく他の星の人々と友達になれたのだから、もうすこし、こう、なんというか·····」
「·····しばらくしたら調査隊の人が来るみたいなんでその人に頼んだらどうです?」
「なんでそんなに冷たいんだ!ま、まさか、さっきの笑わなかったのを恨んでいるのか!?」
「それもありますけど、酸素が薄くて頭痛いんですよ·····」
「そうなのか?」
実は私、さっきから珍しく体調を崩しているのだ。
っていうのも、この地下都市、大気圧が地球の70%くらいしかなくて、魔力の属性比率も違くて長くいると酔ってきたり高山病みたいなのになって結構辛いのよ·····
ちなみに酸素濃度は地球と比べて低めの18%くらいだけど、日本の安全基準的にはギリ大丈夫かな?って程度だった。
まぁ私だったら適応できるんだけど、別に大気圧70%なら平気でしょって高を括っててやってなかったツケが回ってきたのよね·····
マジで気持ち悪いわ·····
ちなみに、私の経験則だけど、前世で富士山に登った時は標高3000mを超えると急にキツくなるんよ·····
大気圧は確か、平地の70%くらいになって、呼吸しても酸素が足りなくなる感覚がしてキツいあれと、火星の大気って結構似てる気がする·····
「体調が良くないなら家で休んだらどうだ!?近くに私の家が····· まてまてまてまてまてっ!ワームホールを開いて帰ろうとしないで!私の家を紹介したいんだ!うぐっ!?力強いっ!」
「家に帰って休んでって言ったのそっちじゃないですか!帰らせ····· おえっ·····」
「ゲロするのか!?ここで吐かないでくれ!」
「大丈夫です····· 吐かないけど、横になりたいのでそろそろ帰っていいですか·····」
本当はあとで皆も連れてこようかと思ったけど、これはやめといた方がいいかも、いきなり来たら酸素濃度が低くて絶対高山病になるわ·····
というかこの人、さっきから4本腕で掴んで離してくれないんだけど·····
「だが·····」
「わかりましたよ、家行きますよ、ただ魔法使って治すので、離してください·····」
「そうか!家はこっちだ!」
「待ってくださいって····· あぁもう····· ヒールっ!」
埒が明かないので、私は自分に回復魔法を掛けてむりやり高山病っぽい症状を治して、更に体をこの環境に適応させて、治ってもダルい体を頑張って動かしてネイデルの後を追って行った。
◇
「だるい·····」
「大丈夫?ほら蒸かした芋だ、食べて元気を出せ」
「要らない·····」
私は今、ネイデルの家のソファみたいな座椅子でぐったりしながら、芋を食わされそうになっていた。
そんで時刻は地球時間で12時半過ぎで、帰れなかったのでお昼ご飯は結局サブの私を呼び出して向こうで作った。
あと私は食欲が無かったから食べずにこうして休んでいるんだけど、ネイデルが隙あらば口にジャガイモを詰めようとしてくるせいでかなり疲れてた。
多分今食ったら吐く。
「こんなに美味しいのになぁ、はふはふっ!」
「·····もうあと30分したら帰りますよ?」
「ええっ、家の紹介もマトモに終わってないし、彼もまだ仕事から帰ってきてないのに····· きっとソフィも見たら惚れるぞ?」
「私にはもう夫も子供も居るから無いです、というか休む所を貸してくれるのは有難いんですけど、ゆっくり休ませてくれません·····?」
「えっ、もう居たのか·····」
「そっちこそ、やっぱり彼氏が居たんですね」
実は誰かと一緒に住んでそうなのは家に入った時にもう気がついていた。
色々な物が2人分あるし、玄関にネイデルと彼氏らしき男の人っぽい人と一緒に写った写真が飾ってあったたからすぐにわかったわ。
顔はまぁ普通にイケメンだったけど、私のフィーロ君の方が圧倒的に好きだった。
「ま、まあそうだな、そうだ、そろそろ元気になってそうだから部屋の紹介をさせてくれ!」
「いや、結構狭いから紹介する程じゃないですよね?」
「職人に頼んでこだわって作ったんだ!説明してもし足りない!例えばこの足温窯を見てくれ!足を入れたらずっとポカポカで1度入れると寝るまで出せない最高のモノで私が考えて作っ」
「あーもう、頭痛いんですから、静かにしてください····· 吐きますよ?」
「やめろやめてくれ、吐くのはやめてくれ!」
「だったら少しくらい寝かさせて下さいよ·····」
私はもうネイデルのことを無視して、布団を被って少し目を瞑って寝ることにしたのだった。
·····その後、私はほっぺたにクソ熱蒸かし芋を当てられてブチ切れてボッコボコにしてトイレで吐いて、でもなんか帰ろうとしたら泣きそうな目でこっち見てて可哀想だったから連絡先を交換して、故郷の地球に帰って邪魔されること無くガッツリ寝たのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「あぁ、明日から毎日芋食べなきゃ····· 50キロくらい芋くれたんだけど芽が出る前に食べ切れるかなコレ····· あっうまっ!乱切りにして油でカリッと揚げたらバクバク食べられるわ!」
名前:ネイデル
ひと言コメント
「あぁ、明日から毎日キノコ食べなければ····· キノコ50キロくらいとレシピをくれたのだが、食べ切れるか不安だ····· はむっ、·····いけるなこれ、1週間で食べきれそうだ、意外と美味いな!」




