ソフィちゃん式ダンジョンご飯
地下9階
私たちは順調にダンジョンを進んで行き、色々あったけどようやく10階目前の広間の前までやってきていた。
ちなみにタイムは休憩挟んで7時間で、私からすると遅すぎる結果だけど冒険未経験の3人を連れてこの結果なら目を瞑っても全然大丈夫だ。
「·····どうする?ぶっ続けでアレ倒す?」
「むりです·····」
「私も無理ぃ·····」
「僕も少し、休みたいかな····· 普段の運動を疎かにしていたツケが回って来てしまったようだ、よし、戻ってからは毎日運動しよう、ただ筋肉痛も考えて一週間後が妥当だろう」
だが流石に休憩を挟んでも7時間も慣れない戦闘を繰り返すのは厳しかったようで、10階に突入する前にちょっと大休憩を取る事にした。
まぁそりゃ目の前に明らかにボスとわかる巨大なゴーレムが佇んでる部屋があったら入りたくないよね。
私だって突撃したくないわ、いったん休憩しないと絶対嫌だわ。
って訳で、私たちはゴーレムを眺めながらセーフエリアでご飯を食べることにしたのだ。
「んじゃ早速だけどこういう野営でご飯を作る方法を3人に教えておくね」
「キャンプですよね!?フシ町に来る途中に何回かやりましたよ!えっへん!」
「キャンプっていうか野宿じゃなかった?」
「物は言いよう、ともいうじゃないか、キャンプといった方がおしゃんてぃーとやらがプラスされて気分も良くなる、だからキャンプと呼ぶべきだ」
「そうそう、キャンプって言った方がテンションあがるでしょ?でも流石に狭いから簡易的なのしかできないのは勘弁してね?」
そのついでに軽く休む予定なので、私はキャンプの準備を始めた。
「ではまずはキッチンを作ります!よーく見ててくださいね!」
「わかりました!」
「でも枝とか無いから焚火も出来なくね、·····魔法使えばまぁ何とかなるけど料理するには長く出しとかないとだし」
「このダンジョンには燃やせるものが少なかった、それに洞窟内で物を燃やすと毒が発生すると聞いたことがある、僕の見立てでは魔法で熱するのではないだろうか?」
「まずインベントリから魔導コンロと携帯式キャンプ用シンクとオーブントースターと食器棚とテーブルと椅子とソファとクッションと」
「「「まってまってまってまって!」」」
「はい?」
「あの、えっと·····」
「ちょま、それどこから·····」
「それに規模がキャンプではない、家を作る勢いだ」
「えっ?普通でしょ?」
おかしいな、これでも簡易バージョンにしてるんだけど·····
本当なら魔導キャンピングトラックに備え付けられたサンルーフとか展開したり、豪華なテントを作ったり地面を魔法で均して板を敷いてその上にカーペットを敷いて寝転がれるようにしたりするんだけど、流石にこの狭めなセーフルームだと無理だからキッチンと食べる場所だけ作ろうかなって思ったんだけど·····
くっ、さすが聖地で過ごしてた3人だ、この程度じゃ満足できないか·····
「足りなかったなら空間魔法でこの部屋を拡張してもっと豪華に·····」
「じゅうぶんすぎますって!!」
「豪華すぎる!!ここに住むつもり!?」
「普通をあまり経験した事のない僕たちだが、これは普通の数十倍だとわかる、だからといって質を下げてほしくはないが、上げ過ぎると申し訳なくて遠慮してしまう、故に現状維持でお願いしたい」
「·····りょーかい」
どうやら豪華すぎたようだった。
◇
って訳で、豪華すぎるらしいキャンプの準備を整えた私は、早速ダンジョンで栄養を補給するためのご飯を作り始めた。
「みんなお腹空いてるよね?結構ガッツリなご飯にするけどしっかり食べるんだよ」
「もうペコペコです····· 甘い物も食べたいです·····」
「右に同じく·····」
「僕ぁ小食なのだが、ここで沢山栄養を取らないと倒れてしまうだろう、食べきれるかは不安だが限界まで食べるべきだろう」
「おっけー!しっかり食べないとバテちゃうからね!んじゃゆっくり体を休めてなよ」
ダンジョンは登山とかと同じで、非常に体力を多く使うため栄養補給は非常に重要になってくる。
特にダンジョンなどでは食料の補給が難しく、栄養バランスが悪くなり体調を崩して魔物に負けて死んでしまったり、そもそ食料を確保できず餓死してしまうなんてこともしょっちゅうあるほどだ。
だが私なら問題ない。
だってインベントリの中に途方もない量の魔物肉とか色々入ってるし、野菜類は瑞穂の里で大量栽培中で在庫が沢山あるし、水も塩も砂糖も魔法で出せて、醤油とかの調味料もインベントリに入ってるし、調理道具も台所の設備も全て入ってるから、どんな場所でもちゃんとした料理が作れるのだ!
って訳でまずは行動食でも定番のパンを用意するのだが、インベントリの中に焼きたてアツアツの美味しいパンがあるから今はまだ出さないで後で出す予定だ。
そんで次はカロリーの暴力という事で·····
「今日の献立は鶏むね肉とモモ肉のガーリックチキンステーキ焦がしバター醤油味だよ!」
「おおー!」
「名前だけでお腹空いてきた·····」
「僕たちは聖女で教会の教えであまり豪華な食事はしないという事になっているが、ご厚意を無下にするのは人として良くない、それにダンジョンという厳しい環境であれば栄養補給は必須だから少しくらい豪華でも構わないだろう、端的に換言するならば、早く食べさせてくれ、お腹がペコペコだ」
私はジューシーな鶏肉のステーキを作ることにした。
ついでにそれに冷しゃぶサラダに野菜ドレッシングをかけたサラダもつけて、大量のパンやパスタ、そして白米という豪華なメニューだ。
ちなみに豚肉にはビタミンB1が含まれていて疲労回復に良いと聞いた事があるので、効果があるかはしらないけどオマケで付けてみた。
もちろん味付けは全部脳の血管がハチ切れるくらい激裂にしょっぱい味付けにする予定だ。
今の時期は冬とはいえさっきまで沢山動いて沢山汗をかいたのだから塩分はいくらあっても足りない、だがダンジョンでは水を節約するために塩分を控える傾向があるが、汗をかいたせいで水分も全く足りないから水を沢山飲まなければいけない。
しかし水は魔法でいくらでも出せるからガンガン飲んでOKだ。
「肉はどれにしよっかなぁ····· ユキクイドリか····· いやフルマラソンバードがいいな、いやどっちも使うか!」
「ふるまらそんばーど?」
「マラソンバードは聞いた事ある、美味しいらしいけどマラソンバードでも結構高かったような·····」
「フルマラソンバード、飛べない鳥だが陸路を延々と走っていられる体力おばけのような魔物だったはずだ、時折手懐けられた個体が荷物の運搬に使われると聞いた事がある」
「そうそう、ジビエの肉みたいに味が濃くて強い味で凄く美味しい肉だね、食べたら丸一ヵ月走ってられるくらい栄養が付くらしいから買ってきておいたんだ、·····あっ、そろそろ焼くから気を付けてね?気を付けないと·····」
「「「気を付けないと·····?」」」
「んふふ····· 焼ける匂いでお腹がすき過ぎちゃうからね、まずは野菜でも食べて空腹を誤魔化しておいた方が良いよ」
そういうと私はささっと冷しゃぶサラダを作り、野菜ドレッシングを掛けて3人に出して、アツアツに熱したフライパンに脂肪たっぷりでジューシーな胸肉のユキクイドリの肉を皮目から乗せた。
ジュゥゥゥゥウウウウウウッ!
「よっと、おお····· めっちゃ鶏油が出てくる、よしそろそろいいかな、ニンニクスライス投下、ついでにまるごとゴロっとニンニクも投下!」
そして分厚い脂肪の層から溢れ出た鶏油にニンニクをこれでもかとブチ込み、油にニンニクの風味を加えながらガーリックチップとホクホク素揚げ丸ごとニンニクを同時並行で作り始めた。
すると、狭いダンジョンの中に急激に香ばしいガーリックの香りと、おもわずヨダレが出てきてしまう肉が焼けるいい香りが充満し始め、私の背後から腹の虫の大合唱が聞こえてきはじめた。
「あーいい匂い、んふふ·····」
「おなかすきましたよぉ!!早く焼けないんですかー!!」
「もう限界、野菜じゃ我慢できないんだけど!!」
「この匂いの前には言葉も理論も無用だ、今すぐ肉にかぶりつきたい·····」
「ワシもじゃ」
「ワタシもー!」
「僕もお腹空いたから食べていい?」
「私の分もお願いするわ、濃いめでお願いするわ」
「わたしも食べに来ちゃった」
「ん、おなかすいた」
「アチシもたべっけ!へな食うっけ沢山つくっけな!!」
「·····知ってた」
ダンジョンの中では匂いの強い料理を作ってはいけない。
それは何故かって?
飢えた猛獣たちを呼びよせてしまうからなのさ·····
結局私は全員分のチキンステーキを焼いて焼いて焼きまくる羽目になったけど、まぁ想定内だからもう準備してる。
って訳で、私はインベントリからヒヒイロカネ製の巨大な鉄板を取り出すと、一気にチキンステーキ30個を焼き始めて付け合わせも作ったりする豪華なご飯を用意しはじめたのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「ヤバい、今ダンジョンに入ってから一番キツいし体力使ってるかも····· 焼くのめっちゃ疲れる·····」
名前:フィグ
ひと言コメント
「ニンニクと鳥さんの匂いでご飯何杯でも食べられちゃいそうです·····」
名前:マルス
ひと言コメント
「さ、さっきからゴーレムがこっち見てるような気がして怖いんだけど、美味しそうな匂いの方が気になる·····」
名前:シトラ
ひと言コメント
「·····ソフィ様のご友人方、嗅覚が強すぎる気がするのだがどうなっているのだろうか、ただこの匂いは僕の理論的な思考を本能で上書きするには十分だ、性欲より睡眠欲より強い僕の知識欲を上回るとは、実に美味しそ····· 興味深い」




