私の家族事情っ!?
休憩を終えた私たちは、お父さんの元に戻って仕事を再開していた。
「·····ありゃま、あそこのお爺ちゃん亡くなっちゃったんだ」
「どれだ?·····あぁ、家族に見送られて大往生を迎えたらしいな」
「亡くなる方もいますが、今年は事故死や病死の件数が少なく出生率が良いので町が明るい雰囲気になっていますよね、いい傾向です」
フシ町は片隅にあるとはいえフシ盆地というゲームでいうと高レベルの魔物が跋扈する危険地帯の中に存在する町で、その影響で毎年結構な数の住人や冒険者や商人や旅行者が魔物や自然災害によって死亡している。
山奥の鉱山のための町が発展した場所だから仕方ないとはいえ、私としては町を治める家の者としても個人としても神様としてもあんまり死んでほしくはなかった。
でも今年は死亡者が少ないみたいで、天寿を全うできる人が多くて少し安心した。
メタい話だけど、神様にとっても大往生は凄く良い事で、魂の洗浄も簡単だし経験値も沢山入るからアップグレードしやすくて本当に助かるから、なるべく皆には長生きして幸せに死んでほしいと私は思ってる。
そんで、今年は赤ちゃんが産まれた件数や妊娠した人の数が結構多いようだ。
なんかこの町だけじゃなくて国中で出生率が上がってるみたいで、産まれた日付けを見るとウナちゃんの懐妊の公表後から一気に妊娠した人が増えたっぽいから、国中がおめでたムードになった結果だろう。
「まぁそれに私たちが子供産んだし·····」
「そういえばそうでしたね、フェニカちゃん、今何歳でしたっけ」
「いま9ヶ月ですね、エビちゃんの所のが11ヶ月で、グラちゃん····· 伝説の魔導士様の子孫で私の親友の公爵家令嬢の所が8ヶ月、ウナちゃんの所が7ヶ月だったはず····· で、確かイデアが今1歳····· あれ?まって、イデアって今何歳?」
「·····忘れたのか?実の妹の年齢を?」
「い、いや、そのー、ここ最近妊娠したり子育てしたり忙しくてさ·····?あとタイムトラベルしたり変な世界に飛ばされて時間感覚狂っちゃったし·····」
·····何歳だっけ?
ヤベェ、思い出せない。
「今は2才5ヶ月だぞ」
「·····えっ?ん?·····んっ???」
私、フェニカたちとイデアって同級生になると思ってたんだけど·····?
まって、マンデラ効果、めっちゃマンデラ効果起きてる。
マンデラ効果っていうか私の記憶がなんかゴッチャゴチャになってるわ·····
「·····いま建国何年?1230年だよね?」
「1229年の9月6日だぞ」
「エッ?ふぇ、フェニカが産まれたのって1228年の4月10日だよね·····?」
「1227年だ、というかフェニカじゃなくてイデアだろ」
「えっ?あっ普通に言い間違え····· えっ?イデアそんな生まれたの早かったっけ」
「ソフィが卒業してすぐにイデアが産まれてただろ、もしかしてマジで忘れたのか?」
「·····ガチで忘れてたっぽいかも」
私はちょっとアカシックレコードをガチでフル回転させて記憶をたどった。
その結果·····
イデアは今2才、フェニカは9ヶ月、つまりフェニカは学年で言うと2個上になる····· ってコト!?
その瞬間、私の中でフェニカたちとイデアたちが一緒の教室で授業を受けている微笑ましい光景が音を立てて崩れ落ち、私も崩れ落ちて机に額を強打したのだった。
◇
その後は私は死にそうな顔をしながらもキッチリと今日の分の仕事を終わらせ、同じく定時で上がったピセット姉さんと別れて家へと帰ってきた。
「ただいまぁ·····」
「おかえり·····ってどうしたのソフィちゃん、また仕事アレルギーが出ちゃった?」
「フェニカたちとイデア、大体2才差だったって気が付いちゃった·····」
「·····えっ?今更?」
「だよね、私だけだよね·····」
するとすぐにフィーロ君が迎えに来てくれたけど、死んだ顔をしてる私を見てビクッとしていた。
そんなフィーロ君も時間感覚はちゃんとしてたみたいで、やっぱり感覚がズレていたのは私だけだという事が判明してしまった。
残酷な事実で悲しくなってしまった私は、かわいいかわいい自慢の娘のフェニカに泣きついた。
「ぶぇぇぇええええんっ、ふぇにかぁぁぁあああああ·····」
「んむぅー、ままぁー」
「·····へ?」
「·····え?」
·····が、フィーロ君からフェニカを受け取って抱っこしようとした瞬間、私たちは動きをピタリと止めた。
タロットカードの21番目の名を冠するス〇ンドからの攻撃で時間を止められたように、私たちは動きをピッタリと止めた。
だが時が止まる時間にも限りがある。
9秒経過
「·····はっ!!?」
「えっ、い、いま、フェニカ、ママって·····」
「きゃっきゃっ♪」
フェニカは私の事をちゃんと見て、しっかりと私と認識して笑顔でママと言って来た。
これは、もう、確定でいいんじゃないかな·····?
うっわ、もう、マジで嬉しいんだけど·····
テンションめっっっっっっっっっっっっっっっっちゃ上がるわぁぁぁああああああっ!!!!!
マジでもう死ぬほど嬉しすぎて14の言葉抜きで天国へ至りそうなくらい死ぬほど嬉しいんだけどっ!!?
もう無理発狂するわ!
WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYーーッッッ!!!!!!
「ねぇフィーロ君!!!いま!フェニカ!!」
「ママって言ったよね····· フェニカ、僕は?お父さんだよ?パパだよ?」
「ままー!!」
「まっ·····」
「ぶふぉっw フィーロ君w ママってwww」
そしてフェニカから2回目のママという言葉が発せられた。
·····しかしその言葉を向けた相手は、自身の父親であるフィーロ君に対してだった。
普段から女々しい事を気にしていながらも女子になる事が楽しく感じていて悶々としているフィーロ君にとって、我が子にママと、母親と呼ばれるのは致命傷レベルの一撃だったようで、フェニカを抱っこしたまま膝から崩れ落ちた。
ちなみにフェニカは崩れ落ちる前に私が回収した。
「フィーロ君、フェニカの面倒を見る時はTSするのやめたら?完全にお母さんって勘違いされてるよ?」
「うん·····」
「うーうー」
「ん?どうしたのフェニカ?」
「ぱぱー!!」
「がはっ」
·····だがフェニカは反転少女、つまり天邪鬼だった。
彼女は私の顔に手をのばしながら、パパと言って来た。
私は元々男で、そのことで結構悩んでいて女性になろうと母親になろうと悩んで悩んで頑張っていた。
性格がガサツで男勝りな事も、今は髪が少し伸びたこともあって女性っぽくはなったけど短かった頃はしょっちゅう男の子と間違えられてマジで結構悩んで気にしていた。
そこへフェニカの無邪気な一撃がクリーンヒットしてしまった。
パパと呼ばれた私は、ママ(※父親)と同じく崩れ落ち、玄関で夫婦仲良く床でショックを受けてぶっ倒れた。
「あう~♪ふにゃー」
そして両親を一撃で昇天せんばかりに喜ばしてから地獄に叩き落した生後たったの9ヶ月の赤ちゃんは、最近猛烈な勢いでできるようになった自慢のはいはいで母親の腕の中から抜け出すと、両親を放置して一人でリビングにいる大親友で姉のフロウの元へと遊びに行ったのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「ぱぱ····· パパって····· むぐぅ·····」
名前:フィーロ
ひと言コメント
「·····そうだよ、フェニカはきっと、反転能力があるから僕たちの呼び方を反転して言ってるだけなんだよ、僕の事はママって呼んだけどきっと父親だって思ってくれてるはず、そうに違いない、そうじゃないと僕の心が折れて、母性が爆発して戻ってこれなくなっちゃう·····」
名前:フェルゼン・シュテイン
ひと言コメント
「アイツ、なんで実の妹の年齢を間違えたんだ?やっぱアホ····· いや頭おかし····· いや娘にアホとか頭おかしいと言うのは流石にやめておくか····· でもやっぱりアホだし頭おかしいよな」
名前:ピセット
ひと言コメント
「私ですか?一応4歳の息子が居ますけど·····」




