食べ飽きるパイと飲酒居眠り飛行っ!
「北へ南へ東奔西走っ♪私は天上天下唯我独尊っ♪全然午後彩々悠々の旅路は2πのどこへやら〜♪」
なんて意味不明な歌を歌いながら、私は王都のギルドから頼まれた荷物を引っさげて空を飛んでいた。
ちなみに龍仙花はもう納品済みで、次の依頼をやってる所だ。
「やっぱり目視で目標を確認できると楽だなぁ·····」
その目的地にはありえないほど大きな目印、サークレット教の聖地に生える巨木の世界樹があり、ここからでもしっかりと見えていた。
そう、目的地はこの国の聖地なのだ。
まぁもう1回行ったことあるから旅路はカットだけどねっ☆
··········行きたくないなぁ。
◇
『そこです、降りてきて下さいませ』
「はーい、降下開始〜」
聖地にある教会までやってきた私は、吊り下げながら運んでいたかなりな量の荷物を教会の前にある広場にゆっくりと下ろした。
その様子は山小屋に荷物を運ぶヘリのようだった·····と思う。
\ドサッ/
「よし、運搬完了です」
「ありがとうございます、ソフィ様、ここ数日パイしか食べておらず見習いの子達も1人を除き不満を漏らしていたので助かります」
「·····悪い予感」
『ソフィさまー!!パイ焼きましたー!!食べませんか!?』
「げぇっ!?ででで、でっでは私はこれで·····」
「逃がしま····· お待ちくださいませ、お礼にパイなどはどうでしょう?」
「いら····· ります」
「わぁい!そろそろいらっしゃると思って沢山作ったんですよ!沢山食べてくださいね!」
そして笑顔で近付いてくる、パイ地獄の中でたった1人笑顔を保ち続けている聖女見習いのフィグちゃんの手には、おぞましい量のパイがあった。
しかもアツアツ出来たて。
食糧不足だって言うのにまた焼いたようだ。
「·····食料庫に鍵かけないんですか?」
「掛けています、物理鍵は30個ほど、魔導鍵は10個つけていますが·····」
「えぇ·····」
「どんなに鍵を掛けようと、物理鍵は全て運気だけで突破され、魔導鍵は知識で突破されます、もうどうしようもありません」
「あっそうだ!みんなー!!ソフィ様きたよー!!」
\なんだとぉ!?今行く!!/
\おっ来た?行くから引き留めといて/
「め、面倒なの呼び寄せやがった·····!!」
「原因が今来ます、好きに説教してくだい」
\バァンッ!/
「ほあちゃーっ!今日こそは論破してやるぅ!!」
「論破とかどうでもいいからさ、私と勝負してよ、今度こそアンタの私物貰ってくから」
「·····」
「·····あの二人も説教はしました、が、やはり取り繕ってただけでしたね」
「はぁ·····」
「おーい!パイたべませんかー!!あっ!もっと焼きたての方がいいですか!?今から焼いてきますっ!!」
「「フィグはパイでも作ってて!!」」
「えーっ!?わかった追加で作ってくるね!あっソフィ様っ!お荷物ありがとうございました!卵と小麦粉とバター貰っていきますね!!」
「ダメっ!!」
「なんでですかーっ!?!?」
「どきたまえフィグ!\きゃんっ!?/yoソフィ様、僕とラップバトルをしたまえ、ちぇけらー」
「何言ってんだこの子·····」
「フィグ、懺悔室に来なさい」
「ひ、ひゃーっ!?とりあえずオーブンに入れてた分だけでも·····っ!焦げちゃいますよぅー!!」
「見たまえ、僕ぁ裁縫や料理といった事が不得手が故にマルスに頼んで制服をスリット入りの素行不良者風に改良してもらったのだ、スリットはボタンで閉じられて普段は隠しているが、こういう時は解放していわゆる不良風にできるのだ、ついでにスカートも巻き上げて短くして····· これで僕ぁラップが似合う立派なレディーと言う奴になったぞ、さぁこいソフィ様よ」
巨大な支援物資を開けてお菓子の材料を奪おうとしていたフィグちゃんは懺悔室に送り込まれた。
·····が、次なる刺客が送り込まれた。
うん、変なサングラス掛けてフィグちゃんから奪った泡立て器をマイク代わりにしてなんかラップバトル仕掛けてきた。
なんで聖地にサングラスあんだよ。
·····いやまぁ、雪の多い聖地だから目の保護のために冬場はサングラス掛けたりするらしいからそれだと思うけど。
「ヨーぼかぁ世界一の天才、いぇあ、つまりディスりも世界一だ、論破してみろブラッディ・ソフィ」
「·····あのさ、立派なレディーとか言ってるけど、フィグちゃんは料理できてマルスちゃんは裁縫出来るのに、どっちも出来ないあたり立派なレディーじゃなくない?ちなみに私はどっちも出来るよ、·····本ばっか読んで架空の机上の空論でけったいな講釈垂れてないでさ?たまには自分でもやってみなよ」
「ほぁ?··········き、きっ!きさまぁ!!?禁句を言ったなコノヤロー!!それに僕より上手く韻を踏みやがってぇ!!こうなりゃ場外乱闘だぁーっ!!キエェェェエェッ!!」
「ふんっ!」
\むんずっ/
「お゛ぁ゛ぁ゛あああっ!??!?あ、アイアンクローは、やめた、やめたまぇぇえっ!!」
「ほい聖女様1人追加で懺悔室にお願いします、ちなみに服魔改造してますよこの子」
「·····ありがとうございます、懺悔させてきます」
「いやだぁ!僕おこられるのやだーっ!あああああああぁぁぁぁぁぁぁ·····」
私はシトラちゃんをアイアンクローで持ち上げてそのままフィグちゃんを懺悔室に送って帰ってきた聖女様に渡した。
そして聖女様は立ち止まる事なくシトラちゃんを受け取ると踵を返して懺悔室へと連れて行った。
「はぁ、あっさり負けてるし····· 明確な弱点あんのにディスり勝負仕掛けるってアホなの?」
「まだまだ未熟なのよみんな、んふふ」
「·····あ?何?私まで未熟だって言いたいの?」
「マルスちゃんはあの二人に比べればまだマシな方だと思うよ?」
\かちーんっ/
「はぁ·····? わかった、あん時のリベンジするわ、今度は負けないから」
「おっ?やる?今度は何で勝負するの?」
で、今度はスッ転び聖女3人組の最後の1人、豪運のマルスちゃんが勝負を仕掛けてきた。
·····この前縄文時代で貰ってきた翡翠の勾玉のネックレスめっちゃ見てるんだけど、欲しいのかな?
新しくピアスの穴開けてハンドメイドのリングピアス付けてるし、アクセサリーに興味を持ってる年頃なのだろう。
·····まぁあげないけど。
「コイントスで勝負しよ、5枚同時に投げて表が多かった方の勝ち、それでいいっしょ?」
「いいよー」
「私が勝ったら財布の中身とそのネックレス貰うから」
ぴーんっ
高らかにカツアゲ宣言をしたマルスちゃんは、なにか企んでるのを隠してるような澄ました顔で、重なったコイン5枚を投げた。
·····前回イカサマしてきたから、コインが表裏ちゃんとしてるか見てやろ。
1枚目のコインは空を普通に回りながら飛び、重力に従って床に落ちると表面が上になって止まった。
2枚目は空中で別のコインにぶつかると、私の予測では裏が出るはずだった軌道が変化し表が出た。
3枚目は表が出るはずが2枚目のコインにぶつかり裏が出る軌道に変化した·····が、そこに飛んできた羽虫がぶつかり、更に変化し表が出る結果に変わった。
4枚目は·····ん?なんか他のと動きが少し違う?まぁこの世界のコイン不純物とか多いし形もちょっと歪だから仕方ないか、ちなみに表が出た。
5枚目はどっかすっ飛んでったけど、探したら変なところに引っかかってナナメになってた·····けど表が出ていた。
「っし、5枚全部表キタわ、じゃあ次アンタの番ね、1枚でも裏だったら負けだから」
「·····運が良すぎるって次元超えてる、そうなるよう運命が仕組まれてたみたいだなぁ」
異能レベルの運の良さを見せつけられた私は、マルスちゃんからコインの束を受け取った。
ちなみに途中でイカサマコインに入れ替えられてないかチェックしたから大丈夫だ。
「んじゃ飛ばすね」
ぴーんっ
「·····勝った」
私が計算し尽くした角度で投げられたコインたちは、放物線を描いて空を舞った。
1枚目のコインは地面にぶつかると、コロコロと円を描いて転がると表面が上になって止まった。
2枚目、3枚目、4枚目は同時にまとまって·····
\パシッ!!/
「何コレ?」
「げっ!?」
·····落ちる中から、4枚目のコインを素早く摘んで抜き取り、勝ちを確信したニヤケ面のマルスちゃんに見せつけた。
その瞬間、マルスちゃんの顔色が一気に真っ青になった。
「私の動体視力なら高速回転するコインの面も見れるんだけどさ、このコインだけ途中で絵柄が変わったんだよね、両面ともに裏にね、·····何これ?」
「あ····· え·····」
「ナニ、コレ?」
そう、マルスちゃんは1枚だけイカサマコインを仕込んでいたのだ。
前回、私が実力でサイコロの目を操作してたのをたぶんシトラちゃんの助言で知り、知恵を借りて確実に勝てるイカサマコインを作ったのだろう。
その報酬でシトラちゃんにあのチャラそうな服を作ってあげたって感じかな?
で、見た感じコインの裏面同士を貼り合わせて、表面に偽装の魔法かけてたっぽいね。
それと余った表面はいまマルスちゃんの耳でピアスになってると·····
相変わらず手先が器用な子だなぁ、その使い方が悪どいんだけどさ。
例えば、サイコロの中に重り仕込んで重心をズラすとかね·····?
「·····あと前回のサイコロ、私のやつ6の面の所に鉛か金仕込んで重心ズラして1が出やすくしてたでしょ」
「げぇっ、全部バレてた·····!ちっ、逃げよ!」
\どひゅーんっ/
悪事が全部バレてたマルスちゃんは異世界人らしく物凄い速度で逃げ出した。
「ふん」
\ピッ/
\ギュオンッ/
「えっ?·····げぇっ!?説教部屋ァ!!?」
·····が、私は逃げ出した先に即座に懺悔室に繋がる転移ゲートを開いた。
「あっマルスちゃんも····· うぇーん·····」
「ふむ、死なば諸共、説教は道連れ世は非情と言うやつだ、ほら来たまえ全員仲良く地獄へ行こう」
「嫌なんだけどッッッ!!!って止まれなッッッ」
「「えっ」」
それに気が付きはしたものの、反射神経的にも身体性能的にももう避けきれない速度だったマルスちゃんは、止まりきれずにそのままゲートに突っ込んだ。
\ドンガラガッシャーンッ!!!!/
\\\ぎゃぁぁああぁぁあぁあぁぁあッ!!?///
「んじゃ説教ちゃんと受けるだよー、またねっ☆」
「ありがとうございますソフィ様、前回反省してから時間が経ってまた調子に乗り始めていたので助かります」
「·····直らないと思いますけどね、まぁ何にせよ依頼は達成したのでサインくださいな」
「わかりました、·····これで良いでしょうか?」
「OKです!それじゃ·····」
「お待ちください、心ばかりのお礼も持って行ってくださらないでしょうか?」
「おっおっ、いいですよ!タダで貰えるなら何でも貰う主義なんで!!」
「うふ····· ではフィグが焼いた·····焼きすぎたパイが15個あります、持って行ってください」
「し、しまった嵌められた·····ッ!!」
何でも貰うと言った手前断ることが出来なかった私は、またとんでもない量の世界樹の実のパイを貰ったのだった。
そして説教に巻き込まれるのが嫌だったので、大量のパイを持ってさっさと帰ったのだった。
·····ところで読者さん、パイいりません?
今ならソフィちゃん宅配便で送料無料でお届けしますよ?
◇
私はパイをムリャムリャ食べながら、次の目的地をめざしていた。
ちなみにサインは貰ったけど教会への生活必需品と食料の輸送費は先払いで貰ってるし、教会とギルド間で接続された魔道具で達成の連絡はしてもらってるはずなので、達成報告もせずに次の依頼を達成しに向かっている。
·····まぁ、依頼っていってもギルドで契約を交わした訳じゃないんだけど。
だって·····
「うーん····· 美味しいけど食べ飽きるなぁ·····」
·····私はまったく違うことを言っていた。
ま、まぁ、説明するからいいけど·····
私はそろそろ18歳の誕生日なので、この世界の山形あたりにある街で美味しいお酒が作られ始めてると聞いて自分へのご褒美で買いに行っているのだ。
そろそろフェニカも乳離れしはじめて、複製母乳とか粉ミルクだけでも満足してくれるようになったから、誕生日くらいお酒を楽しんでもいいだろうって事で買いに来ているって訳だねっ☆
そして道中は話す事も特に無くて、私は無言でのんびりと空の旅を楽しんだのだった。
◇
そしてそして、時間はあっという間に飛んでしまい、私は自分へのご褒美用のお酒をしこたま買い込んで酒蔵から出てきた。
「いやぁ、ひっく、いい買い物が出来ましたよ、ありがとうございます」
「いえいえこちらこそ、ではまたのお越しをお待ちしております」
·····い、いや、試飲に夢中になってたとかそういうのじゃなくてね?
未成年の人にお酒を買う様子を見せるのはどうかなぁ·····って思ってね?
ねっ?
·····はい、夢中になってました。
超久しぶりのお酒でテンション上がっちゃいました。
んへへ·····
「ではでは〜」
そんでもって、私はお酒をインベントリにしっかり収納して、空の彼方へと飛び上がっていった。
今日の仕事はあと3個で道中で終わるからさっさと帰ってのんびりしよう。
·····しかし、私は間違った判断をしていた。
この時点で試飲でだいぶ酔っ払ってたから、今日はもうディメンションルームへと帰るべきだったのだ。
◇
帰り道の1つ目の依頼は、街道沿いに巣食ったミドルワイバーンの討伐だ。
なんかずっと街道の上をグルグル回って飛んでるらしくて、荷物や馬が襲われて食われてる被害が続出しているらしい。
ついでだし飛んでるから倒すことにした。
「んーと、いた、『Revenger-404 Magiカスタム』発射用意!すてんばーい、すてんばーい····· うーん?酔いが回ってきて照準がブレる····· とりあえずふぁいあ!」
ッッッッッッドッッッガァァァァァアアアアアアアアンッ!!!!
『ギャギャーーーーッ!!!?』
「はい討伐かんりょ、つぎつぎー」
そしてワイバーンはトンデモ銃によって脳天をぶち抜かれて倒されてしまったのだった。
◇
次の目標は魔物ではなく土砂崩れで埋まった街道の再整備だ。
「よいしょー、なおれなおれー、んふふふ·····」
「おおっ!通れるようになったぞ!」
「流石は賢者姫様だ·····」
「なんか酒臭くないか?」
「というか酔ってねぇか?」
だが私は酔いがだいぶ回ってきてベロベロになりかけていた。
でも仕事はきっちりとこなし、法面工事までやっちゃってそのまま次の場所に向かった。
·····だが。
◇
「すぴー····· すぴー·····」
『クキョーッ!!!』
飲酒運転は、例え飛行魔法でも絶対にやっては行けない。
こうしてソフィのように爆睡しながら空を飛んで、しかも怪鳥に襲われながらでも平気で爆睡するのだから、危険極まりない。
『クキョキョー!!』
「うるさい!!!」
『グギョ』
そして危険なのは何よりもソフィ自身だ。
ギャーギャー騒いでいた怪鳥にソフィはキレてしまい、崩壊魔法の上位互換である消滅魔法で怪鳥を消し飛ばしてしまったのだった。
さらに、この後ソフィは1時間ほど起きることは無く、気がついたらなんかとんでもない所に居てびっくり仰天したのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「やっべぇ····· 寝落ちてた····· どこなのここ?·····うわっ、こっちの世界のアラスカ的な所まで来てるし····· さっさと帰って寝よ·····」
名前:フィグ
ひと言コメント
「やっと説教おわったぁ·····あっお菓子ソフィさまが持って行ってくれたんですね!あとで感想聞かなきゃ!!」
名前:マルス
ひと言コメント
「あの翡翠のペンダント、変な形だけど綺麗だったな····· ちぇっ、イカサマがバレてなかったら今頃私のモノだったのに·····」
名前:シトラ
ひと言コメント
「むむ····· ラップバトルもダメならば何で戦えばいいと言うんだ、いっそ3人がかりで奇襲でも仕掛けてパンツ下ろすしか·····」




