ソフィちゃんお使いクエスト中っ!
フシ町の最寄りの港で私の思い出の地でもあるルーラル港へとゴルド商店が借りている商船を送り届けた私は、船員さん達に別れを告げて次の仕事に向かっていた。
次の仕事は2つ同時に達成を狙う予定だ。
その目的地は·····
「よいしょっと、届けにきましたよー」
『·····』
「おーい、おーい」
ぺちぺちぺちぺちっ
「·····要らないなら帰ります」
『いらないとは言ってない、ったく、ヒトが気持ちよく寝てる所を邪魔して····· 龍仙花を盗むのはドラゴンを起こさないようコッソリやるって習わなかったのかい?』
「だって依頼が立て込んでるんですもん、というかコレ届けに来たんですから起こさなきゃできないですよ」
ここはフシ山の山頂の丁度中心付近、つまりフシ山の火口の中だ。
そして依頼人は火口を寝床にしている世界最強のドラゴンのレディクルスさんで、なんでも今度知り合い同士で酒盛りをするらしくて異世界の美味しい酒を5種類くらい持ってこいと言われたので持ってきたのだ。
ちなみに持ってきたのは日本酒、焼酎、ワイン、ウィスキー、そしてスピリタスの5種類で、銘柄の違うものを10本ずつ仕入れてきた。
足りるか心配だったけど人間の体でやるみたいなので大丈夫だそうだ。
『まぁいいさ、酒は頂くよ、だがお駄賃がそこら辺の雑草でいいのかい?時々寝返りで潰しちまってるけど·····』
「いいですよ!残ってるのだけで十分ですから!」
レディクルスさんはとんでもなく巨大なドラゴンの手で器用に人間サイズの酒瓶の入ったケースを受け取ると、虚空に収納してしまった。
そんで酒のお駄賃という事で私は『龍仙花』という特殊な植物を貰いにやって来ていたのだ。
コレがまたすんごい植物で、生えるのは標高3000m以上かつ温暖な場所で高濃度の魔力が満ちている所でしか見つからないとんでもない植生をしている。
そう、標高3000mを超えると気温は平地に比べて18度も低く、温暖化やヒートアイランド現象がほぼ発生していないこの世界ではフシ盆地の気温でも最高30度行くか行かないかレベルで、フシ山の上だったら真夏の昼でも気温は下手したら1桁台になるほど寒い。
現に火口の外の気温は10度くらいでメッチャクチャ寒い。
そして龍仙花が育つ温度は25度前後で気圧は約700hPa以下というめっちゃ条件が限定された植物なのだ。
「あったあった、これですよコレ、いい香り·····」
『霊薬の原料になるんだったか?好きなだけ持っていきな』
「それと種は美味しい調味料の原料になりますし、鱗茎も茎も葉も食べられるし、観賞用、香水、アロマとか色々な用途があるモノなんですよ!」
『凄いモノなんだねぇ·····』
「まぁでも貴重で採取が困難なんで滅多にお目に掛かれないんですよ、よしウチでも栽培しよっと」
龍仙花は様々な種類の霊薬····· っていってもわかんないか、魔法式の治療薬の原料になるすんごい素材だ。
今回の依頼も、王都・マグウェル街・フシ町の3つの治療院からいっぺんに依頼を受けてこの『龍仙花』を採取しに来たのだ。
ちなみに大きさは大きくても20~30cmくらいだけど、その小ささでも有能さは世界樹に匹敵する。
この植物から作られる霊薬はエリクサー症候群を起こしそうなくらい効果が高く、例えば四肢の欠損は直せないものの肉を抉られるような傷なら綺麗サッパリ元通りにできる薬や、完全解毒薬にもなるし、子孫繁栄の妙薬の原料にもなるらしいし、最上級の魔力回復薬や、超回復薬の原料に、そして蘇生薬の原料の一つでもあるらしい。
更にこの植物自体がめっちゃ美味しい。
葉はニラよりも香りが強いが嫌ではない食欲を増進する香りで炒め物にすると絶品で生でも食べられるためサラダに入れるとめっちゃおいしい。
芽は葉と比べると少し辛味や旨味や香りが強いため生食には向いてないかわりに炒め物にすると葉を使うより最高だ。
鱗茎は大きくニンニクと玉ねぎの中間みたいな感じで焼いても炒めても揚げても何にしても最高に美味しくてホクホクトロトロで旨味もニンニクより強いが独特の風味があってとても美味しくてスライスして揚げて肉の付け合わせにすると爆発的に美味しい。
根は細くてわしゃわしゃしてるので食べられそうにないように見えるが、しっかり洗って揚げて食べると最高のおつまみになるし、ふりかけにするとご飯が進みまくる。
花は他の部分と比べると美味しくないんだけど、それでも並大抵の植物よりは美味しいしフラワーティーとかにするとすごく美味しいし王族が飲むようなお茶になるし、錬金術の凄い重要な材料にもなるとかなんとか·····
そして、実というか種子はトウガラシのような見た目をしていて、その中に黒色のBB弾みたいな種がたくさん詰まっているんだけど、外側も中の種も全部食べられる。
外側はトウガラシのようにピリリと辛いんだけど、トウガラシと違って色々な植物を合わせたような旨味があり辛味も後に引かないスッキリした辛さで味のアクセントで加えると普通の料理が2ランクくらい上がる最高の香辛料になる。
その中にある黒色の種は生の黒コショウを食べた時のようなフルーティーでさわやかな香りがあり、ピリッと辛いけど濃厚な魔力が溢れ出して食材の旨味を何杯にも引き上げるすんごい種だ。
たった5粒で寸胴いっぱいのスープを別格のおいしさにできるほどの魔力量で、そのまま食べると弱い人だと1粒で魔力過剰状態になってぶっ倒れるほどの濃度だ。
この『龍仙花』は調味料・滋養強壮の王者のような植物なのだ。
「んふふ~ん、1本5000円が無限に生えてるから無限円~♪」
『·····なんだいその歌は』
「ノリで歌ってるだけですよ~」
そんでたった1本で5000円というめっちゃくちゃな値段のこの龍仙花は、フシ山の火口の中に物凄い量が生えている。
マジで草原みたいな量が生えてる。
その理由が、火口の中はレディクルスさんが快適に過ごすために気温が高く保たれていて、風も吹きこんでこないし雪も入ってこないし、魔力も地質の関係とドラゴンが多数住んでいるため半端じゃなく濃いから、この植物にとって絶好の生息地になってるからなのだ。
それとこの植物は温室で育ってるから四季の概念が無いっぽくて、花が咲いてたり実がなってたり芽が出てきてたりと好き勝手に生えている。
ちなみに龍の巣の近くでよく見つかるからこの名前がついてるんだけど、時々地上にも生えてきて見つかる事があったり·····
「よし、500本も確保できたしそろそろいっかな、ありがとうございますレディクルスさん」
『はいよ、じゃあ宴までもうひと眠りしよっかねぇ····· そこの辺りに尻尾がいかないよう気を付けといてやるよ、気に入ったらまた採りに来な』
「ありがとうございますっ!んじゃ今度もまたおいしいお酒持ってきますね!おつまみに龍仙花で作った料理も持ってきますよ!」
『ははは、楽しみにしてるよ、石の子よ』
そういうと、レディクルスさんはまた丸くなって眠ってしまったのだった。
そんで私は次の目的地に行こうとしたけど、つまみ食いした龍仙花が美味しかったから追加で500本くらい採ってから火口から出て行った。
◇
龍仙花を届けに行く前に、フシ山の麓にちょっくら寄り道しに来た。
「すいませーん、お届け物でーす」
『あいよちょっと待ってぇなー!』
ドタドタドタッ
ガチャッ
「あっソフィやん、久しぶりやな!もしかしてアレ届けに来てくれたんか?」
「お久しぶりですタマヤンさん、これで足ります?」
「おおっ!流石や!大丈夫やで!サンキュな!!」
寄り道しに来たのは最近アルムちゃんと取引をしているポニコーサスのタマヤンさんの家だ。
まぁ遊びに来たんじゃなくてお菓子のおすそ分けしに来ただけなんだけどね。
この前宇宙生命体連合の調査隊のみなさんのためにクッキーをアホほど焼いちゃって余ったから、追加でニンジンクッキーも作って渡しにきたのだ。
「それとさっき山菜取って来たので食べます?龍仙花が豊作だったんですよ」
「ほほー龍仙花·····って龍仙花ァ!?よく採ってこれたなそんなもん!!ウチじゃ絶対買えん高級食材やないか!!」
「たくさん採ったんで20本くらいまるごと上げますよ、あっ体質的に食べても大丈夫ですか?」
「大丈夫や、でもええんか·····?」
「良いですよ別に、それで、アレは用意してくれました?」
「お、おう、用意したけど·····」
私はタマヤンさんに業務用かと見間違えるような量のクッキーと龍仙花を渡し、そのかわりにとあるものを受け取った。
「おおおっ、なんか美味しそう、ありがとうございます、んじゃまた今度~」
「ありがとな!じゃあなー!おいチビたち!お菓子きたでー!!」
『『わぁい!!』』
私はまだ温かい包みを受け取ると、再び空へと魔法で飛んで行った。
そしてギルドに向かいながら、上空で包みを開けてタマヤンさんに作ってもらっていたお昼ご飯のおにぎりをたっぷり堪能したのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「んっ、具が鮎だこれ!うまっ!!あと龍仙花どうしよっかなぁ····· 今日の夕飯はこれで肉野菜炒めにするかなぁ·····」




