姉と姉つまりどっちも姉貴
「って訳で」
\めけめけめけめけっ/
\めけめけめけめけっ/
「·····何今の音」
「あぁこれエヴィリンからの着信音、はいもしもし?」
「キモ·····」
姉貴が魔族だった頃の話を聞いて、これからどうしようかという時に変な音が姉貴のケツから聞こえて来た。
とんでもない屁でもしてるのかと思ったら、どうやらエビちゃんからの着信音だったようだ。
「ふん、ふん、はーん?いいじゃん、さっすが私の妹!んじゃ今から行くわ、サンキュ!」
「·····で?何があったの?」
「ふっふっふ····· ソフィたん、私の前世の姿、見てみたくなぁい?」
「無い」
「·····」
「·····」
「·····」
「·····だぁぁぁぁああああああああああああっ!!わかったから!わかったから無言の真顔でこっち見るのやめてっ!!」
何か癪に障ったから拒否したら無言&真顔でじーっとみられてしまい、我慢の限界となった私は先に折れてしまった。
姉貴の真顔って睨めっこでは最強だし、交渉でも最強だし、シリアスシーンにも使えるし、ギャグシーンにも使える最強の表情なんだよね·····
勝てる訳ないじゃん·····
「よし来た!じゃあ早速行こうか」
「わかったよもぅ····· アキさ~ん、フェニカの面倒お願いしてもいいですかー!?」
『すいません、今少々手が離せなくて····· イデアさんお願いいたします』
『はーい!まっかせてー!!』
「·····大丈夫なの?」
「だいじょーぶ!あかちゃんですから!」
私はフェニカをアキさんに任せようとしたが手が空いてなかったみたいで、その代わりに何故かイデアがやってきた。
·····そういえば来てたんだっけ。
まぁ、うん、イデアは今1才3ヶ月くらいでまだ赤ちゃんだけど、フェニカとフロウともなんか話が通じてるっぽいから任せても大丈夫かな·····
「わかった、アキさーん、ご飯とかはアキさんがお願いますー!」
『承知いたしました、ではいってらっしゃいませ』
って訳でフェニカたちを任せる事に成功したので、私たちは早速魔王城に·····
「·····どうやって行くか決めてるの?」
「ヘイ!タクスィ!魔王城まで連れて行って!」
「運賃13万7500円だけどいい?」
「じゃあ歩いて行くわ」
「行ってらっしゃい」
「·····」
◇
\シュインッ/
「やっほーエヴィリン、調子はどう?」
「おぉ姉上、やっと来たか」
私は結局タダで魔王城まで姉貴を連れてきてしまった。
姉に勝る妹などいないって本当なんだよ·····
たとえ神でも姉貴には勝てないんだ·····
「さてと、ようこそ私のラボへ」
「うわ割とガチじゃん」
「今はワシの研究室じゃがのぅ」
まぁ気を取り直すか·····
だって、目の前に広がってる部屋は、私から見ても物凄いとしか言いようがない、未だに生きている太古の魔族たちが創った機器が所狭しと並べられた、めっちゃSFな研究室だったからだ。
私はてっきりテキトーな部屋を改造した汚い部屋をイメージしてたから、ここまでガチだとは思っていなかった。
それこそ、姉貴への不満が薄れるくらい衝撃的な光景だ。
「そんでそんで、例のブツは?」
「ちゃんと元通りにしておいたのじゃ、こっちなのじゃ」
「おお流石っ!ほれソフィたんもこっちこっち、それ自爆ボタンだから」
「どうせ噓でしょ?」
「それか、押した人に爆破魔力を流し込んで爆破させる魔道具じゃな、押しちゃいけないボタンを押したくなる癖を利用したトラップなのじゃ」
「本物かよ!!」
私は自爆ボタンから手を引っ込め、大人しくエビちゃんの後を追ったのだった。
◇
エビちゃんが案内したのは、研究室の最深部のセキュリティゲートの奥だった。
本来なら魔族の中でも王族、つまりエビちゃんのような魔王家の血筋の者にしか開けられないドアの向こうに、私は立ち入っていた。
「おー、懐かしいなぁ····· 映像の中の私を見てるみたいで違和感凄いけど、まぎれもなく私だわ」
「それは良かったのじゃ、見つけた時はだいぶ劣化しておって、ワシの記憶で治したから少し心配だったのじゃ」
そして、セキュリティゲートで守られていた部屋の中には2基の培養槽があり、そのうちの左側に一人の女性が浮かんでいた。
見た目は成人女性くらいになったエビちゃんとよく似ており、ウェーブの掛かった白みがかった銀髪のロングヘアで、頭からはエビちゃんと全く同じ角が2対生えて天へと向かって伸びていた。
ただ、顔は今の姉貴とは似ても似つかない、真面目そうなエビちゃんのような顔つきをしている、間違いなく美人と言えるであろう綺麗な女性だった。
·····でも私は騙されんぞ、黙ってりゃ芍薬、座れば大開脚、歩く姿はバカ丸出しって姉貴専用の言葉があるくらい、喋らせたら超変人の可能性だってある。
っていうかあの見た目で中身姉貴なのが信じられないわ。
「·····これが、姉貴の前世の姿なのか?」
「そうだよん、この私も結構イケてるでしょ?」
「うーん·····胸に親近感を覚えるわ、さてはシュテイン家の貧乳遺伝子は魔族由来だな?」
「·····おーい、エヴィリーン?修復に不備があるけど大丈夫かなぁ?」
「このくらいじゃったろ、というか胸は特に調整しとらんのじゃ」
·····ただ、うん、貧乳だった。
今の姉貴は割とデカい。
青年誌の表紙で水着グラビアの写真がデカデカと飾られるくらいにはデカいしプロポーションもかなり良い、黙ってりゃ美人、喋ると奇人、戦うと百戦錬磨の武人、それもが私の知っている姉貴なのだ。
だが培養槽の中のホモカネル・アマイモン・ファゴサイトーシスは、確かに運動できそうな体はしているがどっちかというと文系·····いや、理系でメガネと白衣がよく似合いそうな感じで、真面目で大人しく冷静沈着な、立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花という言葉がふさわしい、貧乳を除けば王族の威厳まで感じられる女性だ。
「それで、どうするつもりなのじゃ?」
「どうしようかねぇ、今更元の身体に戻るのも微妙だし、かといって破棄するのは嫌だから難しいよねぇ·····」
「ん?培養槽2基あるって事は魂の入れ替えできるからやりに来たんじゃないの?」
「·····へっ?」
「·····むっ?」
「·····鉄っ?」
「いや悪ふざけじゃなくて、ヘム鉄じゃなくて、その手があったかぁ、思いつかんかった!!」
·····え?
マジでただ身体が治ったから見に来ただけだったの?
てっきり中身を入れ替えて元の魔族の身体に戻るんだと思ってたんだけど·····
「じゃが姉上、魂を扱う機器はワシでも修理できんかったのじゃ、ここにある物だと入れ替えは不可能に近いと思うのじゃ」
「あーそっかぁ····· どうするべきかねぇ·····」
更に、今ある機器では姉貴の魂を前の身体に入れ変える手段が無いようで、姉貴の前世の身体はもうどうしようもない状態だったようだ。
んじゃマジで見に来ただけなのかよ·····
「·····まぁ、戻れなくても見てるだけで懐かしいし嬉しいよ、この時の私の願いはギリギリで叶ったみたいだから、もう役目は終えたけどね」
「うむ、ワシとフロウが居るからのぅ、時間は掛かるが、そのうち魔王家は再興できると思うのじゃ」
どうやら私の推測は当たってたみたいで、姉妹で前世の姉貴の肉体を眺めながら、思い出話に浸っていた。
/神は言っている····· そこで魂引っこ抜くと面白いことになるよ!·····と\
「·····ン?んふふ、なるほど·····」
·····しかし、そうは問屋と神が許さなかった。
この世界の神は、基本的にめっちゃ愉快犯だ。
「·····キノコ神拳神級奥義『今日のビックリドッキリ魂!射出っ!』」
「ぐばっ!!!!」
\にゅぽんっ♡/
「あっ!姉上ぇぇぇえええっ!!!?」
私は神託を受け、姉貴の背中の中心を思いきり掌底打ちした。
するとビックリした姉貴のハートから魂がすっぽ抜け、物凄い勢いでぶっ飛んでいった。
姉貴は最近魂が引っこ抜けやすくなる特異体質になっていて、幽体離脱なんかもしやすくなっていた。
それと同時にビックリすると魂が引っこ抜けてしまう体質にもなっていた。
そのせいで姉貴はあっさりと魂が引っこ抜け、魂の尻尾だけが器と結びついてお祭りの水風船みたいにニョーンと伸びた。
\ぽんっむ☆/
『なにすんねんゴルァ!!』
「あっ姉貴になった」
『ったくもー、ビビるわ突然、たまには私だってシリアスムードになったっていいじゃんか』
「そうじゃそうじゃ!ワシらは割と大事な話をしておったのじゃぞ?邪魔したらどうなるかわかっておるんじゃろうな?」
そして伸びきったところで姉貴の魂が半透明な姉貴の形となって幽霊みたいになって普通に文句を言って来た。
だが神の悪戯はまだ終わっていなかった。
「姉貴、後ろ」
『ん?っぎゃああああああああああああああっ!!!?すい、吸い込まれるぅぅぅううううっ!!』
\スポンッ/
私は姉貴に後ろを見るように伝えると、姉貴はあっさり引っかかって後ろを向いてしまった。
そこには、空き部屋があった。
姉貴の魂は前世の体の魂の器に引っ張られ、そして器の中にスポッと入ってしまったのだ。
そして·····
「·····姉上?」
『·····?ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!????』
「おお、やっぱりガイア様の言う通りだったわ」
姉貴は、ホモカネル・アマイモン・ファゴサイトーシスは、水槽の中で数千年ぶりに目を開いた。
そして溺れた。
◇
「けへっ、けへっ、へけっ····· うげぇ····· 気持ち悪·····」
「姉上!?姉上じゃな!?本当に、本当に姉上なのじゃ!!」
「うぎゅぇ、ギブ、しぬ、しぬ·····」
私たちは急いで培養槽から全裸の姉貴を引きずり出し、全裸だったのでとりあえずエビちゃんが来ていた白衣を着せて床に座らせて様子を見ていた。
ちなみに今世の体は魂が抜けた瞬間ぶっ倒れて額を無機質な床に強かに打ち付けていて、今も床でぶっ倒れたままの状態で放置されてる。
「·····意外と小さいんだな」
「けほっ、ま、まぁね、20cmくらい、低いんじゃないかな·····」
初めて前世の姉貴の声を聴いたけど、エビちゃんの声からだみ声成分を抜いて綺麗にして少し低くしたような感じだった。
ちなみに並んでやっと分かったけど、身長175cm越えのモデル体型の今世の姉貴と比べて20cm以上も小さい、エビちゃんそっくりな身長だった。
「姉上なのじゃ····· 懐かしいのじゃぁ·····」
「ふふふ、懐かしいでしょ、エヴィリン」
「うむ·····」
「まぁ懐かしいのはエヴィリンだけじゃないけどねぇ····· いやぁマジで久しぶりの感覚だわ、魔力も豊富だしいい感じだねぇ·····」
そして姉貴もエビちゃんも、前世の体を懐かしんでいるようだった。
「いやー良かった良かった、これにて、一件落着っ!なんちゃって☆」
「あっそうそう、ソフィたんちょっといい?」
「ん?なに?」
って締めようと思ったら、姉貴がエビちゃんを引きはがして私の方にやってきた。
これは、お礼言われちゃうパターンかなぁ?
「·····突然魂引っこ抜いたの、許して無いから」
「へ?」
「ロマネスコ神拳究極奥義、オシオキだべぇ~!!」
「ほんぎゃあああああああああああああああああっ!!!」
\ボッカァァァァァァアアアアアアアアンッ!!!/
爆発オチなんてサイテーっ!!
やーなかんじー!!
そして私は黒焦げで服が所々破けてせくすぃな状態になって今世の姉貴の体と共に姉妹仲良く床で転がる事になったのだった。
名前:ホモカネル・アマイモン・ファゴサイトーシス
ひと言コメント
「フハハハハハハ!なじむ!実に!馴染むぞ!最高にハイってヤ\ドュクシ!!/いでぇっ!?いてて·····普通にこめかみ痛いわ·····」
名前:エヴィリン・アマイモン・ファゴサイトーシス
ひと言コメント
「姉上、姉上ぇ····· 会いたかったのじゃぁ·····」
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「後でガイア様に慰謝料請求しよ·····」




