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TS賢者は今日も逝くっ!  作者: すげぇ女神のそふぃ
第六章 TS賢者は母になるっ!
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魔王家の最後の歴史と姉貴の秘密



「うみゅ?」

「ほにゃー!」


「ほーれほれ、いい子いい子」


「·····いっつも思うけど、なんで姉貴子供の扱いそんな上手なんだよ」


「だって私の幼稚園の頃の将来の夢、スペースシャトルの中の保育園の先生だったし?」


「理由になってないじゃんそれ」



 ある日の事、エビちゃんが出かけるからとか何とかって言う理由でフロウの面倒を見に姉貴が家に来ていた。

 そしたらフロウどころかフェニカまで持っていきやがって、しかも3人仲良く遊んでいた。


 そんな様子を見て私はソファで嫉妬していた。



「というか、エビちゃん一人でどこ行ったんだろ·····」


「あー、聞いてるけど知りたい?」


「一応聞いておくけど、尊厳にかかわりそうだったらやめとく」


「でぇじょうぶだぁ、魔王城に行くって言ってたよん、なんか結構大掛かりな魔導具とかの修理中でそろそろ完成するって言ってたよん」



 そんでどうやらエビちゃんは魔王城までお出かけ中のようだ。

 確かにここ最近よく出かけてると思ったけど、魔王城に行ってたのか·····



「なるほどねー、んで何直してるとか聞いた?」


「前世の私の亡骸の修復中だってさ」


「あっそ、姉貴の前世の亡骸····· ん?おい待て今なんつった?」



 前世の亡骸の修復中?

 どういう事?全く意味が分からん·····



「話すと長くなるんだけど聞きたいかな?特別に教えてあげてもいいよん」


「教えてあげるじゃなくて教えろ、どういう事?」


「仕方ないなぁ····· 私の前世の話からスタートするけどおk?」



 私は文句を言おうとしたが、その前に姉貴による説明が始まってしまった。





 藤石 穂乃花


 彼女は今でこそただの日本人だが、前世は魔王家の末裔である『ホモカネル・アマイモン・ファゴサイトーシス』という存在だった。

 そしてその名が示す通り、私の今世の義姉である『エヴィリン・アマイモン・ファゴサイトーシス』とは前世で姉弟という血縁関係だった。


 ここまでは、私も当然のごとく知っていた。


 だが、ここからは私も知らない情報だった。



 私は前世の頃·····ホモカネルって名前の頃は実は学者だったんだ。



 魔族は遥か昔は高度な文明を築き栄華を極めていたが、戦争により故郷の星を棄て、いまの星へと移住した。

 そして長い月日が経ち、魔族はその星の文明と同レベルまで技術が失われ、あの城にある壊れた機械は修復不可能なガラクタとなってしまった。


 技術を失った魔族は、技術が失われるのに反比例するように圧倒的に強靭な体を活かして武闘派の種族となりどんどん勢力を増してきた。


 ·····だが、そんな魔族の中にも変人は少なからずいた。


 それが私だ。


 私は城の地下にある魔導機械を修理し、使えるようにする研究をしていた。

 そして研究室は魔王城の地下のとある場所にあり、人間にも魔族にも見つからないよう、かつての魔族が作った道具で巧妙に隠していた。


 余談だけど、今エヴィリンが魔導具の修理ができているのも全て私が残した遺産によるものだと思う。

 まぁ私は前世から天才だったのよん。


 それはさておき、ついでに私が研究ばっかりして王位を放棄した変人だったこともさておき、そろそろ本題に移ろうかな。



 なんで私の死体が残っているのか。



 そう、私は3600年近く前に死んだ。


 私は『そこら辺の機材に頭を打って死んだ』と言ったな、アレは嘘だ。


 本当は·····





 今から約3666年·····


 魔王城マサトクラマの地下に、1人の女性が逃げ込み、とある場所に向かっていた。



「はぁっ、はぁっ····· いやキッッッツイわ····· ·····あは、マジでキツいねこれは」


 ズゥゥゥゥウウウンッ!!

 パラパラパラ·····


「·····認めたくないけど、魔族はもう終わりかな」



 彼女は今では藤石 穂乃花と呼ばれている、魔王家最後の女王·····になるはずだった女性、ホモカネル・アマイモン・ファゴサイトーシスだ。


 彼女は弟のエヴィリンが囮となって逃げ、必死の思いで魔王城の地下へと入り込んでいた。


 向かう先は彼女が研究を行っていたラボだ。



「ホント、なんで戦争なんてするかねぇ····· 頑張ってね、エヴィリン」



 私は上に置いてきた弟を心配して、聞こえないであろう激励を送った。


 ·····本当は、もう無理なのも分っている、きっと弟は、私のたった一人の家族のエヴィリンは、もうすぐ殺される。


 それだけじゃない、この城に居る魔王家の者は皆殺しにされるはずだ。



 もう、泣くなんか通り越して笑うしかないよね。



 ドッッッゴォォォォォオオオオオオオオンッッ!!!!



「うわっとと!あぶなっ!」



 上ではもうとんでもない戦いが起きてるようで、さっきから物凄い揺れが城を巡って、その度に私はバランスを崩していた。


 ちなみに、この時すっ転んで私は床に落ちてたなんかの魔道具に頭をぶつけかけて、後にソフィたんに嘘をつくために利用してたりする。



 だから、ここからが誰にも語っていない本当の魔族の歴史だ。



「·····ここだ、SeVryQ」


 シュインッ



 私はキーワードを発すると、私の秘密の研究室への扉が開いた。


 部屋の中は外とは違い、まだ生きている魔導機器が動き、光を発し、駆動音をあげていた。



「ここが私の棺桶になるか、未来に魔族を残す子宮となるか····· どっちになるかは私次第、責任重大すぎるなぁ」



 シュインッ


 カチャンッ ガキャンッ!



「·····ロックは掛けた、もうこれで人間は入ってこれないはず」



 私は密室の棺桶の中で、白衣に着替え、早速作業を始めた。



「先祖の方々に感謝するよ、まさかこんなものを遺してくれてるなんてさぁ·····」



 私が戦争が始まってからずっと修理を続けていたモノがあった。

 それはわかりやすく言うなら『魔族を後世に残すための装置群』だろう。



「もう魔族は無理、でも、これがあれば·····」



 ·····その機材は、何種類か存在した。


 魔族の完全人工育成装置、精子・卵子凍結保存装置、肉体保存装置、そして、魂の保管装置·····


 そう、これはかつて星々を移住した魔族がたとえ自分たちが全滅しても、新たに子供が産まれない状況になっても、遺伝子操作などで人工的に魔族を産み出すために作られた装置だったのだ。


 更に肉体と魂の保管装置は、仮に数千億年の時を超えてでも宇宙を航行できるようにした、コールドスリープ装置の進化版みたいなモノだ。

 まぁ、見た目はSFの培養ポッドそっくりで魔力が満たされた液体が入った筒の中に入って色々チューブをつなげて何億年も維持するための装置だ。

 魂の保管装置は肉体を保管できなくとも魂だけでも保存できるようにと作られたモノだ。



「·····父さん、母さん、エヴィリン、ごめんね私だけ生き残っちゃってさ、でも、魔王家は、魔族は、絶対に絶やさないから」



 私はこの装置を使って、戦争が終わって魔族が忘れ去られる時代まで、戦争の影響が完全に消えるまで眠り続けるつもりだ。

 今は無き仲間たちの遺伝子は装置に登録した、精子と卵子は戦死者から拝借させてもらって既に両性共に500名近い量のモノを確保した。


 私はその肉体を失った仲間たちと共に、この肉体をそのまま遺して、はるか未来に行く。



 それが、私が研究を続けていた理由だ。



「本当は隣にエヴィリンが入るはずだったから2台直したんだけどなぁ····· 1台で十分だったかぁ」



 私はそんな愚痴を漏らしながら、戦争そっちのけで未来へ行くための準備を進めていった。





 準備が終わったのは、戦争が終わったと思われる4日後だった。


 ·····本当に、地獄の4日間だった。



「·····もうエヴィリンも、みんなも、この世に居ないんだ」



 城の揺れはとっくに止まり、この城に居る人類は私一人になった事を察知していた。


 ·····つまり、エヴィリンはもう死んでいるのだ。



 この世に私たった一人になってしまった。



「遺伝子からクローンは造れる、でも、魂が無いと本人は生み出せない·····」



 そして、私を最も絶望させた理由は、魂にあった。


 私は研究を続け、先祖が研究した資料から生命体の根源である魂の存在に気が付いていた。


 ·····魂が無ければ、故人を蘇らせても無駄だという事も分っていた。


 ここにはエヴィリンを生き返らせられる設備はあるが、魂が無ければエヴィリンは生き返らない。

 たかだか生命体如きでは、ただのエヴィリンそっくりな肉の塊しか生み出せないのだ。


 ただし、人工育成して精子と卵子から培養した生命体であれば魂を宿して動く。

 ·····でも本人を産み出すことは不可能だ。



「·····神が憎い、私にも魂を扱わせてほしいのに、私が魂を扱えたら魔族を未来に遺せたのに·····」



 そして魂の解析から、私は全ての生命体の上位の存在である『神』という存在が実在することに、そしてその正体にもほぼ気が付いていた。


 今世でガイアっちに聞いて答え合わせをしたけど、9割は当たってたから我ながら天才だったわ。



「いや、もういいや、無い物をねだっても無駄だね····· それに、もう、この時代に居る必要もない、はるか未来へ行こう、みんな·····」



 機材の最終調整も、準備も、何もかも終わっていた。


 だが、私の精神は限界だった。

 本気で死のうかと思うくらい、たった一人しかいないという事は絶望しかなかった。


 でも同時に怒っていた。


 絶対に魔族を滅ぼさないと、人間共の思い通りにはさせないと、その怒りだけで動いていた。



 だから私は、1人で培養槽に入り、はるか未来まで、きっと人類が魔族の事を忘れてくれて、謎の亜人として扱ってくれるようになる遠い遠い未来まで、私は眠る。


 魔族はかつてこの星に移住してきた異星人ということが忘れられるまで、数百万年もかかった。

 だから私は、1千万年間眠る。


 この船も機材も、きっと持ってくれるはずだ。



 そう信じて、私は機器を動かし、眠りに就いた·····





「っていうのが、私が魔族としての最後の記憶だね」



 ·····クソほど重い話だった。

 ったく、この姉妹はなんでこうも暗い過去ばっかり持ってるんだよ。


 ただまぁ、姉貴の気持ちはわからないでもない。

 私だってきっと最後の一人になったら自分たちの種を遺すために、尽力するだろう。



「·····続けて」


「あいよ、でももうほぼ終わりだし今起きてる結果から推測した話になるよん」





 ·····だが、計画は失敗していた。

 私と先祖の魂への認識が甘かったのだ。


 私は保管装置に入り数百年は眠っていたはずだ。

 目覚める事もない、夢も見ない、死んでいるのとほぼ変わりない、深い深い眠りに就いていた。


 しかし、長い月日が経ち、魂を保管していた装置に異常が発生した。



 装置の仕組みをざっくり説明すると、空間魔法によって魂を異次元に隔離する仕組みだったのだ。


 装置の中で私の魂は安定した状態で保管されていたのだが、ある時保管される異次元に異常が発生し、私の魂は行方不明になってしまった。

 吹き出されたシャボン玉のようにどこかほかの世界に行ってしまったのだ。



 ·····私が直した装置は、今見ても完璧に動いていた。

 じゃあ何故私の魂が世界の外側にはじき出されるエラーが起きたのか?



 それは、私の肉体がとある役目を担っていたからこそ発生していた。


 保管されていた私の体にある魂の器が、死んだエヴィリンの魂を取り込み保管していたのだ。

 遥か未来に、大切な弟も連れて行くために·····


 その代償として、肉体とのリンクを切られた私の魂は宙ぶらりんとなり、この世界の外へと弾き出された。


 そして行方不明の魂は長い時間旅をして、何故か今の私になってしまった。



 多分だけど、勇者共が帰った時の道を、そしてはるか先祖であり、今世の母さんの父である爺ちゃん····· 鞍馬 真人の痕跡をたどったんじゃないかと思ってる。





「·····後はもうわかるよね?」


「私が姉貴の居た世界から帰ってきて、癌を直して、魔力を付与したりしたら記憶がよみがえった」


「正解、それが今のホノカたんだよん」


「キモッ」


「ひでぇ·····」



 最後だけキモかったけど、これが魔族の最後の歴史になるはず()()()物語の内容だった。



「そんでさ?魂は今ここにあるじゃん?」


「うん?」


「·····肉体さ、まだ保管されたままだったのよ、それをこの前エヴィリンに言って探しに行ってもらってたんよ、そしたらほぼ完璧な状態で見つかってさ?今どうしよっかなぁ·····って話してたのよね」


「·····なんじゃそりゃ」



 そして、魔族の新たな歴史は、より一層訳が分からなくなりそうだった。



名前:藤石 穂乃花

ひと言コメント

「ほんと、今は幸せな時代になったよ、昔とはもう違うし戻ってこないけど、今もいいなって思えるくらい、いい時代だよ」


名前:ソフィ・シュテイン

ひと言コメント

「もうやめて····· 私の家系図めちゃくちゃにするのやめて····· 立体交差する家系図とか書くの死ぬほど面倒臭いのに·····」


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