魔無しVS知恵の神
アメリカから日本へと戻ってきた私は、実家の自室で貰って来た巨大なクレイジーな対戦車狙撃銃の検査や調整を行っていた。
「ふんふん····· 魔鋼含有率0.03%か····· 結構多いな、でも完全に魔鋼化してるのは0.007%だから転移の時に魔力が侵入して一時的に変化してるだけかな·····」
改めて銃身の魔力の含有率を調べたところ、想定を上回る量の魔力が込められていることが判明した。
目標値は0.001%だから今の数値はそれの30倍もあって、この状態では魔無しに弾かれる可能性が非常に高いと考えられる。
というのも、実は既に私は魔無しと接触していて、色々な調査を行っているのだ。
◇
というわけで、サブの私に視点が切り替わった。
私はストレイア渓谷のとある場所の山の上あたりから、渓谷の下にある河原で獲物を喰らう巨大な竜を見ていた。
ヤツは体長15m、見た目はトゲとかが生えたトカゲといった様子で恐竜というよりトカゲに近い形状をしている。
ちなみに恐竜は胴の真下に向けて足が生えるのに対して、トカゲは胴の横から足が生えて逆L字に曲がって地面に足を付けている事で見分けられる。
まぁ恐竜も骨格を見ると曲がってるんだけどそこはご愛敬。
「魔力量は測定不可能、魔力の侵入も不可能、魔法も飛び道具も無効、その範囲は体表から3m以内、ただ魔力含有率0.001%以下の物質場合は問答無用で当たる····· でもそこら辺の岩は弾く様子はないし地面も酸素も水も触れられているのはなんでなんだろ·····」
そんで生で見る魔無しは、見れば見るほど奇怪な存在だった。
全ての魔力を持つ物を弾くという特性があるにもかかわらず、地面や水や空気は弾かないで普通に触れられているし、魔法を弾く3mの領域内に侵入できていた。
原因は魔法でも調査できないからわからないんだけど、遠くから色々とやってみて地面の岩石を魔法で直接飛ばしてみたり魔力を完璧に遮断して素手で投げても弾かれてしまったし、水も空気もダメだった。
だからどういう基準ではじき返しているのかよくわからないのだ。
一応予測はしてみてて、生命体が干渉したモノだった場合ははじき返すんじゃないかという結論は出てる。
っていうのも、魔無しを山体崩壊で生き埋めにすることができる理由を説明すると、全体ではなく一部を破壊して山体崩壊を誘発させた場合、その一部には人の意志が込められて弾かれるが、その部分が別の部分を動かした場合、自然現象という定義になり他の部分が接触可能になるんじゃないかと予想してみたのだ。
それだったら方法はない事は無いが、威力が足りない。
そんで色々頑張ってみた結果、特定の物質内に含まれる魔力が0.001%以下になるとはじき返されないと判明したのだ。
だがそれは実質不可能に近い事だ。
この世界の物は全てに魔力が混ざっている。
そして日本の物質でも物質には必ず魔力が混ざっていて、その値は0.001%を超えているのだ。
それを完全に近いレベルで除去したうえで、豊富な魔力があるこの世界に接触しているだけで魔力量の少ない物質は物理現象の熱平衡化現象のように外部と魔力が均一になろうとするためすぐに最低値を超えてしまうのだ。
ついでに言えば日本でも外に放置しておくと魔力量があっという間に0.001%を超えるだろう。
まぁそれは一時的なもので簡単に除去はできるんだけど、攻撃時にはこの魔力が問題になる。
「·····ただ、一瞬なら大丈夫だし、遮断する方法もある」
そこで思いついたのは、ちょっと狂った作戦だった。
この世界の魔力平衡化現象は熱の平衡化現象とほぼ同じと言っても過言ではない仕組みで動いていると先程実験で確認した。
それはつまり、『一瞬であれば高濃度の魔力に触れても魔力が侵入する事は無い』という事だ。
熱平衡現象でも手に水などの物を纏わせる必要があるが、熱の伝導を遅らせる物を噛ました上で高温の物質に触れると、1秒にも満たない間であれば触れることが可能なのだ。
実際に、手に水を纏わせれば素手で1200度で赤熱する鉄を触る事が可能と実証されている。
あっ治療魔法が無い人はやらないでね、普通にヤケドするから。
まぁそれはいいとして、この特性を改めて再確認した事で事態は一気に進展した。
アカシックレコードによる演算であれば、物質内に含まれる魔力量が0.001%以下·····って言うとわかりにくいか、対象の材質内に含まれる魔力量が一番弱い魔法である魔力の玉を作る魔法の消費魔力を1とするとそれの10万分の1、魔力含有量0.00001以下にすると弾丸を魔無しが弾くことが不可能になると予測できたのだ。
だから私はそれを実現するため、銃や弾丸の改造を施していたという訳だ。
それに、私が未だにここにとどまっているのも作戦の一つだったりするけど、それは実行の時に·····
◇
視点を日本の私に戻して、今やっている加工を軽く説明しようと思う。
「さてと、やるか·····『魔力遮断結界』、そんで『マギ・ヴォイド』発動」
カッ!!!
「まぶしっ!?」
魔法を発動すると、銃が一気に輝いて私はビックリしてしまった。
私が作った魔法『マギ・ヴォイド』は、その名の通り魔力を虚空に送る魔法だ。
·····っていったらかっこいいけど、実はただの光魔法だ。
魔法の発動に必要な魔力を私ではなく対象物質から使う事で、対象物質の魔力を枯渇させる効果があるのがこの魔法なのだ。
というか、これうちの魔導ランプと全く同じ仕組みなんだけどね?
本来は魔石に刻み込む魔法プログラムで、対象から魔力を奪って発光する仕組みを流用して魔力を枯渇させる魔法に変更したのだ。
ついでにこの魔法は発射時にも使用し続け、魔無しの範囲内に侵入するまで続ける予定だ。
っていうのも、この銃も弾丸も異世界には持ち込めないのでこっちの世界で狙撃を行い、転移ゲートを作って直接向こうの世界とこっちの世界をつなげ、そのトンネルを通過させて至近距離から命中させる予定なのだけど、ゲートをくぐると魔力の膜を通過するので魔力が籠るのだ。
それを避けるために魔力を消費しようって考えだ。
ただし魔力平衡化現象を防いで魔無しに攻撃を与えられる有効射程はたった5m以内、そんでそれを何とかするために必要なのが向こうの私で、3mの範囲内ギリギリに接近してもらってゲートを展開してもらって、こっちの世界から発射して攻撃する予定という訳だ。
「よし弾丸も加工完ry」
\ガチャッ/
「邪魔するよん、って、なんじゃそりゃ!?」
「うげぇっ!?姉貴ぃ!?」
って作業してたら姉貴が入ってきた。
マジ最悪だ·····
「こ、これは~、その~·····」
「まっさか米軍からちょろまかしてきたとかぁ?」
「ギクゥッ!!?」
「·····えっ、マジなん?」
「ちょろまかしてきた訳じゃないけど、貰って来た·····」
「mjk」
「んで、何それ大砲か何か?」
「·····30mm口径弾専用対戦車狙撃銃『Revenger-404』、米軍の頭のおかしい研究者が作った、機関砲弾を発射可能な単発式狙撃銃だよ」
「えっそれで狙撃銃!?私ハワイで実銃とか対物ライフル撃たせてもらったけど比にならないくらいデカくね!?ってか弾丸それ!?」
「んふふ、デカいでしょ」
「こわっ、てかそれ人間が撃つ用のモノじゃないでしょ!?反動で死なない!?」
「あー、2回くらい試射させてもらったけど、1回目はアホみたいに強化してても腕が千切れたから相当だね、一般人だったらまず間違いなく即死だと思うよ」
「やべぇ····· アメリカやべぇよ·····」
どうやらコイツはあの姉貴でもビビる代物だったようだ。
「で、それで何やる予定なん?ドラゴンでも撃ち落とすの?」
「·····魔無しが出た、それも地竜型の魔無し」
「·····は?魔無し?マジ?」
「マジ、それを倒すために借りてきたんだよ」
「えっでも魔無しって魔族なら簡単に倒せるしエヴィリンに頼めば一瞬で倒せると思うけど?私は魔力が少ないから無理だけど·····」
「·····は?」
いまなんつった?
「魔族って言うか魔王家の者が使える魔神魔法あるっしょ?真の闇魔法ってヤツ、アレなら簡単に倒せるし·····というか魔無しって魔神魔法の一種が発生してるから魔力を受け付けないだけで、同じ魔神魔法を使えば楽に倒せるはずだよん、実際戦争の時に魔無しが出た時はエヴィリンが即倒してたよん、というかエヴィリンが居たら倒しに行ってくれたんじゃない?」
「えっ?·····そういえばエビちゃん、実家の方に行ってて報告来た時居なかった気がする·····」
·····あれ、私クレイジーじゃなくて天才じゃなくてアホだった?
◇
色々悩んだ結果、私はアホになる事にした。
「姉貴、その結界の外に出るなよ?死ぬから、ガチで音で死ぬから」
『あいよー、流石の私でも命は惜しいからねぇ』
私はクレイジー狙撃銃『Revenger-404』を持ってとある場所へやって来ていた。
そこは少し傾斜はあるものの木も生えていない大草原で、たぶん日本でここでしかこの銃を撃てる場所はないという場所だ。
『いやー、流石はしなずっち、顔が広いねぇ』
『もう頭痛いです、頭カチ割って脳みそを洗いたいです·····』
「あとで強力な治癒魔法と私が作った疲労回復効果抜群栄養ドリンクあげるんで許してくださいね」
「酒は混ぜて大丈夫でしょうか」
「ダメ」
「·····」
そこは、富士山のふもとにある自衛隊の演習場だった。
まぁ最初は家で撃とうと思ったんだけど流石に狭すぎるし、たぶん撃ったら家がド〇フみたいにバァーン!!って爆発して壁が軒並み吹き飛んですんごい事になると気が付いて、超能力者機関の偉い人である不死川さんを連行してここを貸してもらったのだ。
ちなみに超能力者の能力検証の場でもあるらしいので不死川さんが言ったら快く貸してくれた。
「·····よし、やるか」
という訳で、射撃を開始することにした。
私は地面に置かれた改造済みの30mm口径弾を一発手に取ると、それを薬室内に装填し、ガッチリとロックを掛けて更に安全装置も解除して、全長3.5mもある巨大な銃を水平に構えた。
その様子はまるで世界最大級の水鳥猟に使用されるパントガンを構えたかの如き様相で、ただパントガンとは違い近代化したような見た目で、既に禁止されてしまったかの銃がこの世に復活したように思える見た目だった。
そしてその銃は、これから水鳥ではなく竜を狩ろうとその鎌首をもたげていた。
「ふぅ·····ゲート接続開始」
◇
向こうに居る本体から連絡を受けた私は、行動に移り始めた。
「よっと、接近開始っ!」
私はゲートを展開する準備を開始し、いつでも接続できるようにしたところで山から一気に駆け下りて『魔無し』の元へと降り始めた。
まぁそんなに距離は無いし、斜面を走って降りていたので一瞬で谷底にまで到着し、獲物を捕食しようとして失敗し荒れ狂う地竜の目の前に躍り出た。
『グルルルルル·····』
「ご機嫌はいかが?うーん、ご機嫌ナナメだねぇ·····」
そして巨大な竜と対峙しながら、私はゲートの角度を調整していた。
狙いは脳天、いくらドラゴンの硬い頭蓋骨といえどカルシウムであることに変わりはない、あの鋼鉄をも容易くブチ抜く威力がある銃であれば容易く貫通できる。
ただし狙いをつけるためにはゲートの角度を調整し、動く魔無しの脳天に正確に位置を合わせなければいけないのだ。
でもそこは私だから何とでもなるっ!!
「よし来た!射線上に乗った!リンク開始っ!!」
私は一気に魔無しの領域ギリギリに接近して気合いで狙いを定めると、二つの世界を魔法でつなげた。
あとは向こうの私が何とかしてくれるだろう。
◇
「よし来たっ!!」
そしてこっちの私の銃口の目の前に、直径30cmくらいの空間の穴が発生した。
穴の厚さは0ですぐ向こうに魔無しが真正面から見えており、絶好のチャンスという事が一瞬でわかった。
そんで、私は一瞬のチャンスを逃がすような女ではない。
「発射ァ!!!」
ドッッガァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!
引き金を引いた瞬間、とんでもないデカさの弾丸は大量の火薬によって一瞬で音速を超え、回転しながら銃口を飛び出し、そして世界を繋ぐゲートを潜り抜けようとした。
そしてゲートの中に先端が入ると、魔力平衡化減少により侵入しようとしてくる魔力が全て光に置換され、激しく輝きながら潜り抜け、そして·····
◇
バッゴァァァァァアアアアアアンッ!!!
『グゥギェガッ!!!?』
「命中っ!!!」
ゲートを潜り抜け、魔力が規定値以内のまま魔無しの領域に接近した弾丸は、その不可侵の領域内に侵入し、領域の支配者である魔物の頑丈な頭骨を粉砕し、脳を吹き飛ばし、たった一撃で死に至らしめてしまった。
「魔力が無くとも人間はここまでやれる、叡智の力なめんなよ?」
こうして、この国の未曽有の危機となり得る『魔無し』の発生という事件は人間の叡智の結晶である『技術』の勝利で幕を閉じたのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「帰ったらエビちゃんにバカにされたからこの銃でぶん殴ったら逆にひん曲がっちゃった····· 直すのに魔法使ったからもう魔無しには使えないわ····· まぁでも、とってもクレイジーで素敵な武器だから時々遊びでつかおっと、サンダーボルト・アヴェンジャーだと連射式だから狙撃とかじゃ使いにくいんだよねっ☆」
名前:藤石 穂乃花
ひと言コメント
「ひゃっほう大艦巨砲主義だぁい」
名前:不死川 史華
ひと言コメント
「··········?··········(耳がやられて何も聞こえてない)」




