世の中には2種類の人間がいる、水族館に行ってお腹が減る奴と減らない奴が
忍者体験を終えた私たちは、本来の目的地だった水族館へとやって来ていた。
ちなみに葛飾区にあるかなり大型の水族館だ。
「すごっ····· 海の中に居るみたい·····」
「そういえば修学旅行の時に海の中歩いたっけ、なんとなく似てるかもね」
「うん、でもその時より魚が見やすいかも」
水族館の中はほんのり暗いが壁に埋め込まれたりしている水槽の中はちゃんと明るくて、その中では色ろな魚が自由気ままに泳いでいた。
そんな様子を始めてみたフィーロ君は、私たちが付き合い始めたあの修学旅行の時にやったダイビングで見た海底の景色を思い出したらしい。
「だろうね、だって魚ごとにちゃんと見やすいように展示してるし、説明も書いてあるから見やすいよね、ちなみにこの魚は食べてもそんな美味しくないよ」
「そうなんだ·····」
「まぁまぁ、あっちの水槽にはいろんな種類の食べられるし美味しい魚が居るから行こうよ」
「いやそうじゃなくて····· ああもうっ」
そんで私たちは熱帯魚が泳ぐ小さい水槽から離れ、ちょっと大きい規模の水槽へとやってきた。
そこにはアジなどのおいしそうな魚から白黒のボーダーな感じの魚に赤くておいしそうな魚にウツボや美味しそうなカサゴまで色々な海鮮が泳いでいた。
「うー!あぅ~!!」
「気になるの?ほらフェニカ、カサゴさんだよ~?」
「本当だ、いろんな種類が居る····· でもウツボって肉食魚だよね?他の魚とか食べないの?」
フィーロ君の視線の先には、紅白のエビに体をツマツマ掃除されてるウツボが居た。
エビが口の中にまで入って掃除しても食べられないのが不思議なのだろう。
「フィーロ君、何もしなくても楽にご飯が食べられてお腹いっぱいになれるのに、わざわざ動き回るご飯を食べようと思う?」
「·····エサをあげてお腹いっぱいにしてるから他の魚を食べないって事?」
「そうそう、私ら人間だって馬は食べられるけど有益だから普通は食べないじゃん?·····いや、あのエビの場合はサキュバスの方が近いかな?こっちからすると溜まった物を持ってってくれるし、相手はそれを食料にしてる共生関係にあるから、だから食べ」
\ツマツマツマ/
\つまつまつまブスリッ!!/
\ッッッッ!!?!?!/
「あっ·····」
「食べちゃった·····」
そういった瞬間、エビがウツボのエラを思い切り挟んだのかウツボが噎せた。
そしてその拍子に口の中を掃除していたエビをパクッと食べてしまった。
「あっ吐き出した」
「んふっ、んぶっふっ!!んっふふ·····んふふふふ····· ウツボって、んふっ、噎せるんだっふふ·····!!」
「むー、うむぅー」
と思ったらウツボがゲホゲホ噎せた拍子にエビがものすごく勢いで吐き出された。
どうやら飲み込みはしていなかったようだけれど、むせた勢いで何度か噛まれていたようでエビはフラフラしながら岩陰に隠れてしまった。
そんな様子に私は変にツボってお腹を抱えて噛み殺しきれない笑い声をあげてしまった。
でもこういう体の掃除をしてくれる生き物は例え肉食魚でも食べないのは自然界でも水族館でも同じだったようだ。
「あー面白っ····· こういうのを見れるから水族館って面白いんだよね、ついでにあのカサゴ美味しそうだよね、夜ご飯はカサゴの唐揚げにする?」
「えっ、いや·····」
「ほにゃぁぁあああ」
「ん?どうしたのフェニカ?あー、あっち行く?んふふ····· んじゃフィーロ君、今日の夜ご飯はアレにしない?」
そう言って私が指さしたのは、巨大な水槽を泳ぎ回る回遊魚の水槽だった。
そこには新鮮なマグロなどの魚がが泳ぎ回り、まるで回転寿司にきたかのような光景が広がっていた。
「これってマグロ?すごい····· 泳いでるの初めて見た·····」
「すごいよね、しかもこれでもまだ小さい方で、大きいと体長5mで重さ700kgくらいのとんでもなく巨大なヤツもいるらしいからね、自然って凄いよね····· あぁ美味しそう·····」
「うー!あうー!!」
「おっ?ライオンさんとマグロで戦う?ほらもっと振って振って」
その光景に思わず見とれていると、フェニカがさっき動物園で買ったライオンのぬいぐるみを笑顔でブンブン振り回し始めた。
どうやら泳ぎ回るマグロにテンション爆アゲ中らしい。
「マグロは水銀とか毒を体に蓄積してる事があるらしいから、フェニカはまだ食べられないよー?だからもうちょっと待とうね?」
「なんだっけそれ、えーっと·····」
「生体濃縮だね、まぁ向こうはまだ汚染も少ないから大丈夫だと思うし、ある程度たったら加熱すれば栄養も豊富だから食べた方がいいらしいよ?あと脂が多いと良くないから私たちはトロを食べて、フェニカとかフロウには赤身をあげるのがいいと思う」
「そうだ生体濃縮だ、あとさソフィちゃん」
「なに?」
「なんで生き物見ると可愛いとかカッコイイとかキレイとかよりも真っ先に『美味しそう』って出てくるの?」
「えっ?普通思うでしょ?」
「いや、思わないけど·····」
「フィーロ君それマジ?いや普通に鮎とか泳いでるの見て美味しそうって思うでしょ?」
「·····僕あんまりそう思わないんだけど」
「えっ??」
私は訳がわからなかった。
いや、普通泳いでるアジとか鯖とか鯛とかマグロを見たら、真っ先かどうかはわからないけど美味しそうって出てくるでしょ?
私はそう思っていた····· というか、私の中ではそれが完全に常識になっていたのだ。
そんでこれは後々知った事なのだが、生きている魚などを見て美味しそうと思うのは非常に稀で日本人くらいしか居ないそうだ。
そしてフィーロ君はパラレルワールドの日本であるサークレット王国出身だが、生憎日本人のような感性は持ち合わせていなかったようだ。
「·····その反応、本気でわかってない時の顔だよね」
「えっ?だって水族館の中に魚を食べられるレストランがあるの普通だしここにもあったはずだし、料理で出された魚を探したりするのって普通でしょ?」
「やっぱり日本人って変だと思うんだけど僕の感性間違ってないよね?」
フィーロ君は自分の感性が大丈夫か不安になっていて、私は自分の感性が伝わらなくて困惑していたが、フェニカだけはそんな事お構いなしに子ライオンのぬいぐるみをブンブン振り回してご機嫌な様子だった。
◇
そんなこんなで家族3人で水の中の水族館なのに水入らずで見物して周り、水族館から出ると気が付けば夏に向かって行って陽が長くなり始めているとはいえ午後6時の東京は暗くなり始めていた。
「ん~っ!楽しかったぁ·····」
「だね、フェニカのために来たけど、僕たちの方がはしゃいじゃったかもね」
「まぁ途中からフェニカ寝ちゃってたもんね」
「すぅ·····」
そんでフェニカに関してはイルカのショーを見ているときに寝てしまって、すぐに帰ろうと思ったんだけどちょっとくらい夫婦でデートしてもいいかなって意見が一致して、館内を2人で仲良く見て回っていたからこんな時間になってしまったのだ。
だって水族館なんて滅多に来れないし、リア充しながら水族館デートをするなんて初めてで楽しかったから仕方ないじゃん·····
「さてと、この後どうする?時間も時間だし帰った方がいいと思うけど·····」
「僕も帰った方がいいと思うよ、フェニカも抱っこされっぱなしだと寝にくいだろうし」
「確かにねぇ····· お土産、動物園と水族館で買ったのしかないけど大丈夫かな?」
「いいんじゃないかな、今日はお土産より家族3人で出かけるのが目的だったからそれ言えば許してくれると思うよ」
「·····まぁ文句言われたらインベントリにマグロ入ってるからそれ出したらいっか」
「やっぱり食べる事考えてる·····」
「だってそりゃおいしそうな魚沢山見たから、今日の夜ご飯何にしよっかなぁ·····」
なんてちょっと夫婦らしいけど、夫婦らしくないというかこの世界らしくない事を言いながら、私たちは元の世界へと帰って行った。
◇
「いでででででででっ!ぎぶっ!ぎぶっ!!れふぇりー!!カウント!10カウントしてぇ!!!」
「お主なんじゃコレは!!お土産にマグロ1匹まるごととかふざけてんのじゃ!?」
「じぬ、ぐぇ、だずげ·····」
家へと帰ってきた私たちは、スヤスヤ眠るフェニカをベビーベッドに寝かせて早速皆にお土産を配っていた。
だけどやっぱりお土産が少ないやら微妙やらありきたりやら言われて、仕方なくこっちの世界でクトゥさん達から貰った30kg級のマグロをインベントリから出したところ、エビちゃんにキャメルクラッチを喰らって私は死にかけていた。
「まったく、水族館に行ったと思ったら魚をまるごと出してくるなんて予想できるわけないじゃない」
「ビックリしたぁ····· いきなりマグロさん出てくるんだもん·····」
「とりあえず一回死んでおけば?」
「ひ、ひどい、うぶ、もう無理、エビちゃん、ゆるじで·····」
「わかった、許すのじゃ」
\ゴキャッ!/
「あ"」
\ゴスッ!/
エビちゃんの力が強まったと感じた瞬間、鈍い嫌な音と激痛が首辺りから聞こえて来た。
どうやら首の骨が折れたみたいだ。
そして折れたのを確認したエビちゃんは手を離して、私はなすすべなく床に顔面を強打してしまった。
だが私はこの程度ではもう死なない体になっている。
いや流石に骨が折れるのと同時に神経もやられてて身体が動かないから死ぬのも時間の問題だし、一般人だったら痛みで死んでるだろうけどね?
ついでに痛みになれたってだけで普通に死ぬほど痛いわ。
まったく、人を壊れてもすぐに元通りになるオモチャみたいに扱って·····
\ゴキッ/
「あーいてて····· 治った治った、んじゃ今日の夜ご飯はマグロでいい?あと鶏とカサゴとかの唐揚げもしようと思うけど」
「いいね!よろしくソフィちゃん!」
「おぉ、じゃあフロウ用にマグロを頼むのじゃ、もちろん加熱するのじゃ」
「わかってるよ、それじゃもうちょい待っててー」
私は折れていた首の骨と断裂していた筋肉や神経などを魔法で治すと、軽く首を動かして様子を確認しながらキッチンへと向かったのだった。
「·····なんか、ソフィちゃんの首が折れる程度じゃもうみんな驚かなくなったよね」
「まぁどうせ生き返るし」
「そうね、あの程度じゃ死なないし死んでも生き返るからいつもの事よ」
「でも流石に生首リフティングしてる時はビックリしちゃったなぁ·····」
「アレは流石にアホすぎると思うのじゃ」
「ん、ねるのに、もんだいなし」
「ソフィはおかしい·····」
なんかさんざん言われてる気がするけど、私の首は治ったので良しとしよう。
◇
「ごちそうさまでしたっと、はぁ美味しかったぁ·····」
「皿洗いは僕g」
「私がやっておきます、フィーロ様はごゆっくりおやすみください」
「あっ、わかりました、ありがとうございます」
ちょっぴり豪華な夕飯を食べ終わった私たちは、いつも通りダラダラと過ごす事にした。
「ワタシはタマちゃんとホンタさんと話し合いしなきゃだから行ってくる!」
「はぁーい」
でもアルムちゃんは用事があるみたいなので、あの魔物2人に貸している最近使う機会が減ったマグウェル街の家へと転移していった。
彼女らは向こうで商売をするときはあそこを拠点にしようとしているそうで、使わないなら使った方がマシという事で私も快く貸してあげているのだ。
·····ちなみに持ち主のグラちゃんが最近ウェイザ君を連れ込んで色々ヤッてるみたいだけど、それでもあまり使わないので貸してもいいという事になった。
「ん?ところでミナタさんってどこ行ったの?」
「自分の部屋でぶっ倒れてるんじゃない?10巻読んじゃったみたいだし、しばらく立ち直れないでしょアレ」
「あぁ····· なるほど·····」
そんであの騒がしい獣耳族のミナタはというと、ティンクル☆キュルピカの10巻を読んでしまって完全に撃沈して寝込んでいる。
だって彼女の推し、悲劇の10巻と呼ばれる巻で戦闘不能状態に陥って酷い状態になる物語の転換点となる人物なんだもん、そう簡単には立ち直れないよ。
·····初見で見てたら巴〇ミがマミる時のショックくらいあるんじゃないかな。
今朝もさっきの夜ご飯の時も尻尾と耳がペタッとして明らかに落ち込んでる状態で出てきて、無言でご飯を食べたらヘナも何も言わずに部屋に戻って行ったもん。
「·····流石に落ち込み過ぎだし、スピンオフ書いてあげよっかなぁ」
「その方がいいんじゃない?初めて読む漫画がアレは厳しすぎると思うし」
「だよねぇ·····」
ちなみに10巻以降は更にダークな世界観が前面に出てくる。
ミナタの推しのトゥインドラコ・フライバードっていうキャラは最終巻近くで一応復活はするんだけどラスボスに取り込まれた主人公に直接殺されるんだもん、耐えられるはずないわ。
一応そのあとどんでん返しで生き返るけど、うん、見ちゃったらミナタ死ぬんじゃないかな。
とりあえず救済ストーリー書かなきゃなぁ·····
ifルートって事でいいかなぁ·····
なんて考えながら、私はフィーロ君とイチャイチャして食後の時間を楽しんだのだった。
ちなみにifルートの話を夜に考えようと思ったけど考える暇がなかったけど、私たちはなんだかんだ充実した一日を送れたのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「そういえばみんなに聞きたいんだけどさ、泳いでる魚見たら美味しそうって思うよね?·····えっ思わないの?やっぱ水族館の魚を見て美味しそうって思うの日本人くらいなんだ····· でも私サークレット王国出身のはずなんだけど?中身の影響が大きいのかなぁ·····」
名前:フィーロ
ひと言コメント
「動物園の時から変だったから素でちょっとヤバい趣味してるんだと思ったけど、日本人だったらこれが普通なんだ····· やっぱり素で変だったんだなぁ·····」




