ドーモ、忍者・シュテインです
前回のあらすじ!!
日本の首都トキョーの下町アサクサを歩くソフィ・シュテインとフィーロとその娘フェニカの前に、突如エクスペリエンス・ニンジャ=サンが
「ソフィちゃん、この人困ってるからそのくらいにしときなよ」
「アッハイ、スミマセン·····」
「急にカタコトになったでござる·····」
「外国人のフリしてるだけです、日本生まれの日本育ちですから日本語で大丈夫ですよ」
「そうでござったか、今日はご家族で浅草観光でござるか?」
「そうなんですよー、·····ところでその格好、もしかして」
「おっ、忍者体験にご興味がおありで?なら浅草ニンジャ堂で忍者体験、やってみてござらぬか?」
やっぱり、ホンモノかと思ったらそうだったわ。
こういう観光地特有の忍者体験の勧誘だったのね、それなら観光地に忍者が居てもおかしくないもの。
·····で、いつもなら断るんだけど、今日の私はノリ気だった。
「ちなみに何が体験できるんです?」
「忍者の格好をして記念撮影と、手裏剣投げと居合切り体験が出来るでござる、コスプレ撮影なら赤ちゃんでも出来るでござるよ」
「へぇ?居合切りって模造刀で抜刀してみるとかそういう奴です?」
「ふっふっ、なんとウチでは真剣を使って実際に物を切る体験が出来るでござるよ」
「えっマジですかそれ、やってみよっかな·····」
どうもこの忍者体験施設、本物の刀で物を切る体験が出来るらしい。
それを聞いた私の悪戯心に、カチリと火が灯ってしまった。
「·····ソフィちゃん?刀くらい」
「しーっ!こういうのはナイショにしとくのが面白いの!」
「どうしたでござるか?」
「なんでもないですよ!フィーロ君は体験してみる?」
「僕は武器の扱いそんな上手じゃないから遠慮しとくよ、それにフェニカの面倒も見なきゃだから」
「えっやっていいの?マジ?」
「せっかく東京に来たんだし、ソフィちゃんやらないと満足しないでしょ?」
「んへへ····· って事で大人一人体験できます?」
「もちろんでござる!ではこちらへ!」
という訳で、私たちは予定外の忍者体験をやることになったのだった。
·····ところであの忍者、私の察知能力を掻い潜って話しかけて来たんだけど?
何者なんだアレ····· いや忍者か、うん。
◇
歩くこと数分後、雑居ビルの1階に作られた忍者体験施設へと私たちはやって来ていた。
『イヤーッ!』
\トスッ/
そこでは私みたいな外国人観光客がずらりと居て、皆ニンジャな格好をして手裏剣を投げたりしていた。
まぁ分かりやすくインバウンドメインの観光客向け体験施設だ。
「おー、手裏剣投げてる」
「もしや手裏剣にもご興味があるでござるか?」
「いやぁ遠慮しときます、私投げナイフみたいな投擲武器はそんな得意じゃないんで〜」
「·····このお方、武器の扱いに慣れてるっぽい事仰せられてるし、もしや特殊部隊とか諜報組織の隊員でござるのか?」
やべバレた。
まぁYESと言わなけりゃ平気かな。
「サバゲーが好きなんですよ、そこでたまに模造刀使ったりしてるんです」
「なるほどでござる、おっと失礼、では忍者装束に着替えるでござるか?」
「どうしよっかな、着替えるの面倒だし····· そのままで大丈夫です」
今日は歩く時間が長いから動きやすい服で来てたから、そのまま体験する事にした。
けど、それじゃ雰囲気が足りないから·····
「よっと、自前の赤マフラーを巻いて面頬を着けて····· ヨシ!」
「何がヨシなんだろ·····」
インベントリからこっそりと赤マフラー(レミア謹製の出産祝いの血の色マフラー)を取り出して顔に巻き付け、メンポを着けて準備完了だ。
「·····まぁ、なんというか、気合いが入ってて良いでござるな、さっ、体験はこちらでござる」
「ウム、承知した」
「·····恥ずかしくないの?」
「へーきへーき、周りの外国人観光客もそんな感じだしさ?」
ちなみに実はちょっと恥ずかしい。
うん、口調までは忍者しなくていいや。
◇
忍者の格好モドキをした私が案内されたのは、居合切り体験スペースの前だった。
·····ちなみにめちゃくちゃ手続きとか書類書いたりとか説明読まされたけど全カットした。
「今少し並んでるでござる、法律の関係で一度に1人までしか出来ぬのでござる」
『Урааааааааааааа!!』
\バスッ/
目の前の個室の中では、外国人と重装備のスタッフ1人が居て外国人が巻藁に斬りかかっていた。
1本の半分くらいしか切れてないけど、真剣に間違い無さそうだ。
「へぇ····· めちゃくちゃ厳重だ」
で、入口のドアは強化ガラスかつ鉄格子もあって、中には万が一刀を持って暴れてもいいように対策された道具などが沢山あった。
「っていうか真剣を使った体験って管理とか諸々めちゃくちゃ大変じゃないですか?並大抵の理由じゃ事業許可が出ないと思いますけど·····」
「日本文化の保護と継承を目的に刀剣協会と国が提携して特別に許可されてるでござるよ、それでもかなり制約があるでござるが」
「なるほど·····」
本来、刀を所有するには煩雑な手続きとかが必要で、他人にポンと貸して使えるような物じゃないんだけど、ここは特別に許可された施設のようだ。
そんな話をしながら待つこと十数分後、ようやく私の出番が回ってきた。
\ガチャリ/
「さて、では体験を始めるでござるよ」
「よろしくお願いします」
「先程も説明した通り、これから使うのは実際に切れる刃がついた刀でござる、拙者に向ける事や自分に当たらぬよう気をつけるでござるよ」
「了解です、·····って言っても立会人には当てられそうにないですけどね」
「よく分かるでござるな」
「そりゃこんな厳重に保護されてたら分かりますよ」
体験で使う刀には、まるでサイバーパンクの機械のような装飾が施されていた。
鞘と鍔には電子ロックが付いていて許可が出ないと抜けないようになっているし、GPSも組み込まれた特殊な柄が取り付けれている。
更に邪魔にならない程度の太さの鋼鉄のワイヤーで地面と繋がれていて、長さ的に部屋のドア付近までは絶対に届かないようになっている。
更に安全対策もバッチリで、くさび帷子とか防護メガネもつけさせられた。
「うーん····· ここまで色々ついてるとちょっと扱いにくいなぁ·····」
「では解錠するでござるよ、手を切らぬよう気をつけて抜刀するでござる」
\ピピッ/
\ガチャッ/
「了解です、んじゃ失礼して·····」
\シュラララッ/
「·····おぉ、しっかりと刃が付いてる、それに刃文も本物だから刃をつけた模造刀じゃなくて本物だ、·····ただ鋼の中の放射線量が多いから少なくともここ100年以内のモノかな」
色々ゴチャゴチャ行ったけど、結論をまとめるとこの刀は間違いなく日本刀だ。
更に観光客から荒い使い方をされているにも関わらず、丁寧に手入れがされてて刃こぼれも研がれているのか思ったよりも少なく、ちゃんと使えそうだ。
「·····よし、いっちょ本気だそっか」
私は抜き放った刀を上段に構えると、巻藁をじっと見つめ精神統一を始めた。
·····実の事を言うと、私も本物の日本刀を所有してるし使った事あるのよね。
それもエビちゃんの持ってる『神霧視国広』よりも前の時代、日本刀の最盛期と呼ばれる室町時代の刀を前と同じ手法で作って貰った刀だ。
まぁコレクション用に作って貰っただけなんだけど、一応使えるようにトレーニングしたから·····
「·····」
「む、気迫が変わったでござる·····ッ!?」
いつも通りの何処か抜けててアホっぽい感じだった私が、冒険者として活動してる時の思考へと切り替わった事で雰囲気が変化した。
周囲の空気が刃のように張り詰め、その気迫は厳重な強化ガラスと鉄格子の向こう側へと届き、多様な言語で喋っていた外国人たちも日本人たちも異様な気配に会話を止めて目を向けていた。
·····その視線さえ気にならないほど、私の集中力は高まっていた。
刹那
「·····ふぅ」
ぬらり
·····ずるっ
先に体験した人達が半分も切れなかった巻藁を、まるで大気さえも切っているかの如き流れで刀が通り抜け、微かな音を上げて断面を滑り落ちた。
·····が、終わらない。
根元から斬られた巻藁は物理法則により地へ落ちようとするが、そこに数筋の光が閃いた。
「ッシ、ハッ!」
パッ
パスンッ
巻藁が地面に落ちるまでの僅かな間に、空中で巻藁が2度斬られ、返す刀でもう一度、更にトドメと言わんばかりに振り下ろされた刀が地面に落ちる直前の巻藁を切断した。
「·····っっっふぅぅぅううぅぅ」
そして止めていた呼吸を再開し、集中を解除した。
「よし、上手くいった」
「お、お主何者でござるか·····」
「何者って、普通のお料理上手の主婦ですよ?刃物の扱いくらい慣れてますから、んふふっ」
シュラララララㇻㇻッ·····
シュキンッ
私は納刀しながら、カッコつけた決めポーズと決めゼリフをキメたのだった。
◇
体験を終えた私は外国人らしい賞賛の指笛やら歓声を浴びながら、いつの間にか忍者の格好をさせられて不機嫌そうに撮影されてたフェニカを回収して、受付の外へ向かっていた。
「いやー見事でござった、この時代でそこまでの太刀筋を見れるとは思わなかったでござる」
「んふふ、そう言ってくれると練習した甲斐がありましたよ、今日はありがとうございました」
·····とここで、忍者さんがコソコソ話を仕掛けてきた。
「·····ところで、あれほどの実力を見込んでの頼みでござるが、オヌシ本物の忍者に興味はござらぬか?」
忍者さんが本物の忍者にならないかと勧誘してきたのだ。
·····が。
「·····来ると思ってた」
「ほぅ、どうしてでござるか?」
·····私、この忍者と面識あるのよね。
だいぶ昔に、ここ浅草でね。
「·····360年前、ここ浅草で任務中にこっそりと最近移転してきた吉原遊廓に行こうとしてるところで、突然現れた変な奴に絡まれて浅草の観光案内させられたの覚えてます?」
「むっ·····!?」
「ドーモ、不死川・ニンジャ=サン、いつもお孫さんの
史華さんにお世話になってます、ソフィ・シュテインです」
「·····あぁ!そうでござったなら早く言ってくれればいいのに、孫の部下の方でござったか!」
「えっ知り合いなの?」
「うん、さっきも言ったけど浅草にタイムトラベルした時にばったり会ってね、それにほら、私が日本でやってる秘密特殊部隊の隊長で飲兵衛の不死川 史華さんの不老不死のお爺ちゃんって言えば分かるでしょ?」
「なんか聞いたことあるかも·····」
そう、この人は史華さんのお爺ちゃんで、千年以上前に興味本位で献上されるはずの人魚の肉をつまみ食いして不老不死になっちゃったその人なのだ。
「って訳で、実は私も本物の忍者だったんですよ?んふふっ」
「それならばあの実力にも納得でござるな、流石でござった」
「·····ところで、前にセスナ機で墜落して肉体が木っ端微塵になって魂だけになったって聞いたんですけど」
「拙者のクローンに魂を移したでござるよ、細胞の培養も楽でござるから協会が使うクローンは拙者ら不死川家の遺伝子と細胞を使ってるのでござる、それを1つ貰ったのでござるよ」
「えぇ·····」
「えぇ·····」
フィーロ君と反応被っちゃったわ。
てかどおりで若いと思った訳だわ····· さてはクローンになった時ちょっと若返ったな?
「まぁ既に忍者ならば仕方ないでござる、では史華の事をよろしく頼むでござるよ」
「は、はーい·····」
最後の最後で変な空気になりつつも、不死川さんのお爺ちゃんと別れを告げ、私たちは水族館に向かったのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「·····ところで、なんで浅草で忍者体験のスタッフやってるんです?日本国家諜報局『忍者』の局長でしたよね?」
名前:不死川 参治右衛門
ひと言コメント
「拙者、はるか昔より面白そうな事に目が無い性格でござるが故、こうして忍者体験のスタッフをやってるでござるよ、まぁそれ故、人魚の肉をつまみ食いしてしまったり、江戸を離れシルクロードを旅してヨーロッパで活動してみたりして、その時の事が歴史の教科書とかにも出てくるでござる、·····サンジェルマンと言えば分かるでござるかな?」
名前:フィーロ
ひと言コメント
「·····ごめんなさい、僕ぜんっぜんわかんないです、ソフィちゃんが興奮してるから凄い人なのはわかるけど」
名前:フェニカ
ひと言コメント
「むー·····(忍者の格好をさせられたのが未だに不満でグズり気味)」




