買い食い、参拝、たまにNINJA
「いや~、たのしかったねぇフェニカ、動物さん沢山見れて良かったねぇ」
「なかなか面白かったなぁ····· ソフィちゃん、次はどこ行く?」
軽食をたべたあと、私たちは動物園の中をのんびりと巡って色々な動物を見てなんやかんやして、フェニカが気に入ったライオンの赤ちゃんのぬいぐるみを買って動物園の外へと出てきた。
そんでこの後の予定はどっかの水族館にでも行こうという事になっているのだが·····
「フィーロ君、連続して動物見るとちょっと飽きそうだからさ、せっかくなら近くにいい場所あるし寄り道しない?」
「えっどこどこ?」
「んふふ、浅草行かない?」
その前に、ちょっと浅草に寄り道しないか提案してみた。
前に浅草に行ったのは数年前に日本に帰ってきた時で、あの時は他にやる事があって落ち着いて見れなかったから改めて行ってもいいかな?って思ったのよ。
「·····アサクサってどこだっけ、ごめん僕まだ日本はあんまり詳しくなくて」
「初めて二人で日本に来た時にお土産買いに電車乗って行った所だよ、あの大きい赤い提灯のある所」
「あーあそこかぁ!確かにいいかも、色々見慣れてきたし、あの時より落ち着いて見れるかもだから行ってみたいな」
「んふふ、ちなみに前乗った地下鉄で行く?丁度駅もあるしさ」
「いや、地下だとフェニカが居たら降りるの大変でしょ?それにお金も掛かるから転移で行こうよ」
「別にベビーカーとかも私なら軽々運べるし、運賃も6歳未満なら無料だから気にしなくてもいいよ?」
「そうなの?·····じゃあその代わりベビーカーとかは持つよ、フェニカは抱っこしてもらってもいい?」
「いいよー、んじゃこっちこっち」
という訳で、私はフェニカを抱っこしてベビーカーはフィーロ君に持ってもらって、上野から浅草に移動する事にしたのだった。
◇
「·····で」
「なに?」
「なんでスラム街みたいな所に案内されてるの、僕」
「スラム街だなんて失礼な、由緒正しき歴史ある日本最古の地下商店街、浅草地下街よ?」
銀座線から降りた私たちは、ちょっと寄り道して浅草の地下を歩き回っていた。
そこは浅草のディープなスポットとして名高い浅草地下街と言って、正直そんな綺麗じゃないんだけど日本で1番アングラ感の漂う私お気に入りのスポットだ。
「ちなみにここの立ち食いそば美味しいよ」
「す、すごい雰囲気·····」
「んでここの奥に進むと新仲見世商店街に出る出口があるんだけど·····」
「空気が澱んでる····· だ、大丈夫なの?ここ·····」
「大丈夫よ、昼間っから酒飲んでる人が居るくらいで治安は·····まぁ大丈夫」
「うーん····· フェニカも居るからやめとかない?」
「へーい····· じゃあ普通に表からいこっか」
でもフィーロ君はお気に召さなかったようなので、普通に東武浅草駅側の出口を使って私たちは地上へと出て雷門へと向かっていったのだった。
◇
そんなこんなで····· 道中にある名物のブランデーを買おうとしてまだ17歳だから買えないの忘れてて断られつつも、雷門へと到着した。
「相変わらず凄い人の量····· ベビーカーしまっといて良かったね」
「だね、ずっと持ち歩かせるのも悪かったしナイス判断!」
『集合写真撮るよー、はいもっと寄ってー!』
\\ワイワイガヤガヤ//
雷門前は相変わらず人がごった返していて、観光地に来た感が溢れかえっていた。
ちなみに今日はどこかの高校の修学旅行の生徒も来てるのか、制服を着た私と同い年くらいの子達が集合写真を撮っていた。
·····その様子を、私はぽかんと見つめていた。
「·····」
「うん?ソフィちゃんどうしたの?」
「あっいや、あそこにいる子達さ、まだ私たちと同い年くらいなんだけど·····私もう1児の母じゃん?そう考えるとなんか不思議な気分になっちゃってさ·····」
·····そう、私はこっちの世界ならまだ高校生くらいの年齢だ。
でも、あそこで並んで青春を楽しんでる高校生たちとは明確な違いが私との間にはあった。
·····私は、一児の母だ。
この腕の中に居るフェニカを妊娠したのはまだ16歳の頃で、あの子たちとあまり変わらない歳で出産して、絶賛子育て中だ。
この世界なら不良として世間から冷たい目で見られるほどの若齢出産で一児の母となった私は、この世界からは浮いた存在なんだと改めて思い知らされた。
「えっそうなの?僕たちと同い年なのに誰も子供いないって遅くない?」
「·····えっ?そっち?いやまぁ確かにそうだけどさ」
·····まぁ、なんていうか、人間という生物として考えると、今の日本人は適齢期を過ぎてから結婚して出産してるから、私たちの方が正しいんだけどさ?
それに異世界なら私のたちの方が常識だし、今めちゃくちゃ幸せだし、この歳でちゃんとお金も稼いで子育て出来てるんだから、何も問題ないよね。
「んじゃ行こっか、私のオススメスポットに案内するつもりだけど、フィーロ君はなんか見たい所とかやりたい事ある?」
「えっ?うーんと····· 今回はお寺の中とか見てみたいかな、サーちゃんに行ってもいいって許可貰ってるし」
「そういや貰ってたね、私はアレだからいいけどフィーロ君サークレット教の信者だもんね」
実はちょっと前に····· というかフェニカ出産の前にサーちゃんに日本の神社とかお寺に参拝していいか許可得てたのよね。
ちなみに結論としては、別に改宗しなければこの世界の宗教じゃ無ければ関係ないとの事。
あと私は神だから好きにすれば?って言われた。
本当は初詣で安産祈願するつもりだったんだけど、その前に産んじゃったから結局あんま関係なかったけどね。
「それにしても、なんか感慨深いねぇ·····」
「どうしたの?」
「前に来た時は付き合いたての頃だったなぁって思うとなんか不思議でさ?あれから数年で結婚して妊娠して、今こうして家族3人でもう一度ここに立ってるなんて、あの時は思わなかったよ」
「たしかにそうだね、まだ数年しか経ってないのに色々変わっちゃったね」
「うんうん、フェニカもそう思うよね?」
「·····」
「んふふ、それよりも早く観光したいのかな?んじゃ行こっか、道中にも美味しいもの沢山あるし、フェニカが喜びそうな玩具があったら買おっか」
「そういうのも置いてあるの?なんでもあるんだなぁ·····」
という訳で、フィーロ君の行きたがってた浅草寺へと私たちは向かって歩みを進めた。
◇
\てんてんてんてん/
「きゃっきゃっ!」
「やっぱ赤ちゃんがでんでん太鼓持ってると似合うねぇ、フェニカも気に入ってるみたいだし良かったわぁ」
仲見世通りのお土産屋ででんでん太鼓をフェニカに買ってあげたり、きびだんごやら人形焼きやら煎餅を食べたりした私たちは、やっとこさ浅草寺へとたどり着いていた。
·····うん、すんげぇ寄り道しちゃった。
「前回はあんまりしっかり見てなかったけど、改めて見ると大きいし荘厳なつくりになってるなぁ····· 確か1400年くらい前からあるんだっけ」
「といっても今の本堂が出来たのは比較的最近よ、戦争で焼けちゃったからね」
「そうなんだ····· でもここまで復元したの凄いと思うよ、凄く信仰されてるんだね」
「·····ちゃんと信仰されてんのかな、まぁされてるのか、うん」
私はそこら辺の人工芝に寝転がる外国人観光客を横目のジト目で見ながらそう言った。
だって私も黙ってたら外国人観光客にしか見えないし。
「·····あれ、そういえば前回ってあそこの扉閉まってたよね?」
「だって5時に閉まっちゃうからね、前回来た時は5時過ぎてたから·····」
·····うん、そういや買い食いしてたりしたら5時過ぎて間に合わなかったんだっけか。
だから中に入って参拝するのはこれが初めてだ。
「ちなみに作法は覚えてる?」
「えっと、確か何処かで手を洗うんだっけ·····」
「もうちょい行った所に手水舎があるよ、でもその前に····· んふふ」
浅草寺の宝蔵門を潜った私たちは、おみくじのエリアや授与所を通り過ぎて本堂真正面までやって来た。
そこには大きな香炉があり、人集りか出来ていて皆一様に煙を浴びていた。
「これこれ、これフェニカに浴びせておきたかったのよ」
「·····お香?なんで?」
「え?なんでって言われても····· うーん····· 私は母さんに頭が良くなるから浴びなさいって言われてただけで詳しくは知らないかな」
「じゃあフェニカには沢山浴びせないとだね」
「だから来たのよ、·····ん?おい、それだと私は浴びてないからこんなバカみたいになったって言ってる?」
「言ってないよ!?」
「んふふ、冗談冗談、ちなみにホントは線香の煙には穢れを払って心身を浄化する力があるって信じられてたから、仏様に会う前に清めるために置かれてるらしいよ」
「·····じゃあフェニカじゃなくてソフィちゃんがたっぷり浴びるべきだね、せっかかだし心も綺麗にしてきなよ」
「むぐっ····· ちょっと線香買ってくるわ·····」
心が汚れてる自覚のある私は、授与所で線香を1束買ってきてこっそり魔法で火をつけて香炉に立てた。
「これでよしっと、ほーらフェニカも浴びなさい〜、頭脳明晰で無病息災ないい子に育つんだよ〜」
「む〜っ!あぅー!!」
「煙たそうだからそのくらいにしとこうよ、泣いちゃったら参拝どころじゃなくなるからさ」
「だね、ごめんねフェニカ、煙たかったよね〜」
「むぅー」
煙を浴びたフェニカは嫌そうにでんでん太鼓を振り回していたから早めに切り上げて、手水舎でさっと手を洗って本堂へと向かい、参拝の行列に並んだ。
「ところでなんでここの提灯って志ん橋って書いてあるの?」
「確か新橋あたりに住んでた人たちから寄贈されたかららしいよ?あっそうだ、ついでに歴史も軽く紹介しとく?」
「あっいいの?じゃあお願い」
「任された!浅草寺の起源は今から1400年前、西暦628年に漁師の兄弟が投網で魚をとってたら一体の仏像が入ったことから始まったらしくて·····」
長くなるからざっくり説明すると、今の隅田川で漁師の兄弟が投げた投網に仏像が入ったことから始まったらしい。
んで魚じゃないからと川に返したのに、場所を変えても何回投網を投げてもまた入るし魚は入らないしで、諦めて持って帰って土地の長に見て貰ったら聖観世音菩薩という事がわかって祀られ、時を経て受け継がれて今に至るそうだ。
·····そして江戸時代になると、ついに浅草寺は信仰の場から今の浅草らしい観光地へと変化する。
庶民たちが集まり、江戸時代になり花開いた庶民文化によって見世物小屋や水茶屋が立ち並び、時の将軍までやって来る江戸文化の中心地になったそうだ。
「で、それが今に受け継がれて賑やかな浅草寺が完成したという訳らしいよ」
「350年前からこんな感じなんだ·····」
「ちなみに360年前の浅草は行って見てきたけど、実際そんな感じだったよ?まぁもっとカオスだったけどね」
「·····見てきたの?」
「うん、面白そうだったし」
実は私、タイムトラベルして江戸時代観光した事があるんだけど、今と雰囲気はあんま変わらなかったから驚きだ。
ちなみにタイムトラベルした先で忍者がなんかコソコソしてた所にばったり遭遇したからとっ捕まえて案内して貰ったけど、昔から浅草はこんな感じだった。
「そうなんだ····· ってしれっと過去に戻って観光してるし」
「だって気になるじゃん?それよりもほら、本堂の中入るよ」
「あっ、凄い····· 本堂の中はちゃんと荘厳な作りになってるんだ」
「だって由緒ある信仰の場だもの、·····ちなみにお寺だから手を合わせるだけでいいからね、間違って2礼2拍手1礼しないようにね?」
「·····ありがと、やる所だったよ」
「やっぱり?教えといてよかったわぁ」
なんて話をしたり、本堂の中を観覧していると私たちの順番はあっという間に回ってきて、私は丁寧に日本人らしくお参りをした。
願い事はもちろん家内安全とフェニカの健やかな成長だ。
ちなみにフィーロ君も同じだったみたいで、浅草寺のご利益をたっぷり受けたフェニカはというと····· うん、普通に爆睡してた。
まぁその可愛い寝顔には聖観音様もその秘密めいたアルカイックスマイルをフェニカに向けてくれている事だろう。
そう信じながら、私たちは浅草寺を後にして浅草観光を再開したのだった。
◇
浅草寺を出た私たちは遊園地の巨大な黄色いタワーを目印に西方面へ向かっていた。
·····けれど、途中で仲見世通りの方へと向きを変えもどっていた。
「むぅー」
「遊園地行けなくて残念だったねぇフェニカ、もっと大っきくなったら一緒に行こうね」
遊園地に行くと水族館に行く時間が無くなるのと、フェニカにはまだ早いからと諦めたのよね。
だから今は仲見世通り方面へブルジョワな肉寿司を買い食いしながら向かってる途中だ。
·····そこで事件が発生した。
「スシはいいよね、美味しいし効率的なエネルギー源だからね!」
「·····そうなの?まぁ美味しいけど」
『そこのご家族!失礼するでござる!』
「っっひゃあっ!!?」
「えっ何?」
「むぁう?」
突如なんか変な口調の人に呼び止められた。
そして声がした方を振り返ると·····
「拙者は忍者でござる!忍者体験にご興味·····あー、アイ・アムNINJA!Hast thou any interest in a ninja experience?」
そこにはニンジャが居た。
「おーっ、忍者って日本のスパイみたいなのだっ
\ちょっとフェニカ預かってて/
·····あれ?ソフィちゃん?どうしたの急にフェニカ預けてきて」
「うー?」
「·····アイエエエッ!!?!?!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?コワイ!!ゴボボーッ!!」
おお聖観世音菩薩よ!なぜ浅草にニンジャが居るのです!
ソフィ=シュテインはニンジャを目撃したショックにより白目を剥き、マグロめいて痙攣し泡を吹いて倒れた!
おぉ神よ!何処にいるのです!浅草で買い食いでもしているのですか!
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「呼び込みとか魅力的なものばかり····· おちおち買い食いもできんな浅草は」
名前:フィーロ
ひと言コメント
「·····僕の妻がごめんなさい、時々変な行動するんです」
名前:体験ニンジャ=サン
ひと言コメント
「大丈夫でござるよ!たまに居るのでござる、話しかけると同じように絶叫したり倒れる方」




