商売人魂こわい、私トラウマなった、狸と馬と乳だけど
「うっうっ····· 私の財布·····」
私は泣いていた。
私を泣かせている原因は、次から次へとこのテーブルに届いていた。
「さっすが料理人が作った料理や!一味も二味も七味も違うわ!」
「奢りだからって食べ過ぎや、タマヤン」
「どんどん食べちゃっていいよ!ソフィちゃん物凄いお金持ちだから!」
お金持ちだけど、今月のお小遣いの限度軽く超えてるんだけど·····
·····そう、私たちはギルド近くの喫茶店に入ったのだが、私の奢りにされてしまったので魔物2人に物凄い量の料理を注文されてしまい、私の財布は悲鳴を上げていた。
たとえ総資産が貴族並でも、私は元々貧乏なサラリーマンだったからお金がガンガン減っていくのは慣れてないのよ。
今も日本の方じゃ資産運用とかしてチマチマセコセコ稼いでるし·····
しかもそんな事お構いなしにアルムちゃんと魔物2人は商談してるし·····
「ワタシのお店は雑貨屋みたいな感じでやってて店舗はマグウェル街にあるんだけど、一応この町のゴルド商店から暖簾分けしたお店で、まだまだ新参者だけど顧客も付き始めて売り上げの実績もあるし、ソフィちゃんが作った魔道具とかちょっと特殊な道具とかを置いてるから街でも結構話題になってるんだ、でもお客様が増えてきたからお店が私ともう一人じゃ回らなくなってきて、そろそろ従業員が欲しかったのと新しいタイプの商品も入荷したかったんだ」
「·····ちょまてや、あのゴルド商店から暖簾分け?どういうこっちゃ」
「あっ言い忘れてたね!ワタシはアルム!ゴルド商店の店長の娘だよ!」
「ほほぅ、そりゃ自信満々にアタシらをスカウトするわけやな、納得や」
ふーん?
ゴルド商店って魔物たちも知ってるくらい有名なんだ·····
「ゴルド商店っちゅーたらアレやん!ウチらの野菜とか発掘品もいい値段で買ってくれるとこやないか!ホントにええもんしか買わんからあまり取り引きできんけど世話になっとるわ」
「えっそうだったの?」
なるほどね、確かにあのお店、いい物は偏見無しでちゃんと相応の値段で買ってくれる真っ当な商売をやってるから魔物たちも信用してたのか。
ところでタマヤンさんの発掘品って何だろ?
「ちょっと横入り失礼、タマヤンさんの言ってた発掘品って?」
「なんや?知らんのか、ウチは主に各地で見つかるようわからん古代の遺物を発掘して売っとるんや、他にも古い美術品とかも扱ってるんよ、そんでウチはそういう発掘したモノを売って稼いどるんや!まぁなかなか無いから普段は余った野菜とかうっとるけどな?」
「·····なるほど、例えばこういうの?」
「おお!そうそう、そんなんや!」
なるほど、この人はかつての魔族がまき散らした魔道具を見つけて売ってるのか·····
魔族製の魔道具は耐久力に優れていて、更に燃費とか威力も現代の元の比べて桁違いに高い、ラノベでよく見る『アーティファクト』とかって呼ばれている道具に近いモノなのだ。
ちなみに私が今取り出したのは鼻毛カッターね、神拳に使えそうだったから貰って来た。
「他にも普通に売れそうな骨董品とか取り扱っとるで?こう見えてウチも鑑定眼やないけどレベルの高い鑑定の魔法は覚えとるさかい、目利きは得意なんや!」
「ちなみにアタシはシンプルに野菜とかをメインにうっとるわ、それと錬金術とか魔法薬の作成で使う素材類やな、村の近くは手付かずでいい素材が多いんや」
「なるほどなるほど·····」
·····ぶっちゃけ言って、この先の内容は私には付いていけなかった。
アルムちゃんが知らないうちに商売の才能を開花させていて行商人的な事をやってる魔物2人と交渉を重ねていたけど、私には2割くらいしかわからなかった。
だから私は自腹で泣く泣くパフェを頼んで食べるのだった。
◇
「って訳でどうかな?」
「ウチはええと思うけど、ホンタはどうや?」
「アタシもかまへんで?ウチらは魔物やから普通の店じゃ受け入れてくれへんし、まだ実績も信用も少ない、せやけどアルムさんはかまわん言うてくれとるからここはご厚意に甘えるべきやね」
「やった!とりあえず仮りで契約は完了って事でいいよね!?」
「まぁ今後ともよろしく頼むわ」
「右に同じく」
おっ、やっと契約が成立したっぽいな。
結構長いこと話してたなぁ·····
なんか利益がナントカとか、店の区画を貸すとか、給料だとか就業時間だとか話してたけどぶっちゃけよくわかんなかったので、私は店員さんが持ってきた試作デザートの『ホイップ揚げドーナツ』とかいうアツアツの揚げドーナツを半分にカットして間にホイップクリームを挟む悪魔のデザートを堪能していた。
ちなみにめっちゃおいしかった。
「で、ソフィちゃん」
「·····なに?」
「今日のここの食事代ワタシが払うからさ?その~·····」
「·····やると思ったよ、良いよ別に、マギ・スマートフォンβ仕様の配給くらいならやってあげる」
「ありがとー!!ソフィちゃん大好きっ!!」
「はいはい、いま製造中だからちょっと待ってて」
·····知ってた。
アルムちゃんがわざわざ私に奢らせるってなんか変と思ってたけど、やっぱり交渉材料に使ってきやがったわ·····
私が払うのを渋るのも分ってて最初に奢らせる事にして、あとから自分が払うけどその代わりになんかやって?と頼むことくらい私だって予想できるわ。
·····回避できないけど。
「なんや、まぎすまーとほんって?」
「便利な道具なんか?」
「あー、簡単に言うと超すごい連絡用魔導具ですね、基本機能として同じスマホを持つ人たちと何処にいてもリアルタイムで連絡が取れて、風景を記録できるカメラ機能もありますし、電卓機能とか簡易的なライトとか軽い暇潰し機能もありますよ、んでβ仕様は一般人用に機能制限したγ仕様からグレードアップした、特定ポイントに転移可能なアプリと権限がインストールされたバージョンですね、これさえあれば多分移動がかなり楽になりますよ?」
「な、なんやその夢みたいな魔道具、ありえへんやろ!」
「アタシの鑑定眼でも全く見抜けへんソフィさんの力ならあり得るかもしれへんな、山頂のドラゴンを3割くらい鑑定できるんやけどなぁ····· 自信無くすわぁ」
そんでアルムちゃんが狙ってたのは、駄々洩れだった心の声を解読してわかっていたけど2人に転移魔法を使って町を行き来できるようにしてほしいという事だったのだ。
でもいちいちワープゲートとか作ってたら面倒だから、マギ・スマートフォンに私の許可は必要だけど転移先を登録してある程度自由に転移可能な機能を組み込んでおいてそれを渡すことにしたのだ。
ちなみに魔力の都合で1日に5往復が限界で、距離もせいぜいこの国の範囲内が限界だけど相当便利になるはずだ。
所有者は今のところリリアとレミアとお兄ちゃんとイデアとイルミア君くらいで、他の一般の人には基本的にγ仕様だ。
「っと、完成したから渡すね、使い方とかは····· とりあえずその丸い部分あるでしょ?そこに親指を当てて魔力を流してもらえるかな」
「こうか?」
「こうやな?」
「そうそう、んじゃ魔力を流してくださいね、それで所有者登録と·····」
「ぎゃっ!!?」
「いぎぃっ!?」
バタッ·····
「脳に直接諸々の注意事項と使い方をブチ込むんで、その時に多分脳みそが外れて吹き飛びそうになりますけど耐えてくださいね?」
「ソフィちゃん言うの遅いよ?」
「·····だね」
そしてこのマギ・スマートフォンの凄い所は初めて使用する人に対して使い方や使用時の注意事項を直接ぶち込んで、さらにマギ・スマートフォンとそれに付随する情報などを外部に漏らさないように思考誘導する、我ながらよくできたと思うマッドな技術が使われている所だろう。
そんで記憶をブチ込まれている最中の2人は机に突っ伏してしばらくビクンビクンしていたのだった。
◇
しばらくすると、記憶のインストールが終わったのか2人が起き上がり、早速スマホをイジリ始めた。
「ってて····· わりゃなんちゅーもん作っとるんや····· 革命が起こるでコレ·····」
「マジックバック機能搭載とかありえへんわ、簡易とか言うとるけど最大10トンまで入るとかすごすぎるやろ·····」
「まぁ自信作ですから?」
「一度使ったら離れられなくなっちゃうもんねソレ!通話とかもできて楽ちんだし!」
「せやな、この遠くの相手と話せるヤツ、これだけでも便利過ぎるわ·····」
「タマヤン!これ計算機までついとるで!あと風景を記録するモンまであるみたいや!すごいでこれ!」
「んふふ、どう?お気に召してくれたかな?」
「ウチは気に入ったで!今度から使わせてもらうわ!」
「アタシも使わせてもらうわぁ、ホンマ何から何まで助かるわ、感謝しかないわぁ·····」
「それじゃ2人とも!今からよろしくね!」
「おうっ!·····まてまてまてやぁ!!!?どういうこっちゃねん!?」
「今からぁ!?きいとらんでそんな事!」
「今言ったからね、だってワタシ今仕事抜けてきたんだもん、それじゃ行くよ」
そういうと、アルムちゃんはマギ・スマートフォンをいじり始めた。
彼女の持つスマホはなかよし組のメンバーしか持っていない『マギ・スマートフォンα仕様』、ほぼすべての制限が無い上に他人の強制転移も可能な超高スペックなマギ・スマートフォンだ。
そして彼女はその強制転移を使って、途中で抜けてアヤメに一任していたお店へと帰るつもりなのだろう。
「んじゃアルムちゃん行ってらっしゃい、2人も今後ともよろしくね?」
「ちょまてやぁ!?これどういう事か説明s
「ヤバいってこの子!ウチら本当に大丈夫n
「転移っ!」
\シュンッ!/
そして2人のツッコミは途中で転移魔法によってかき消されてしまったのだった。
多分今頃マグウェル街のお店のバックヤードで早速働かせられているだろう。
だが、私にはそんな事より重大な事が起きていて、2人の心配をする暇はなかった。
「あ、アイツ····· 代金払わず出て行きやがった·····」
「こちら伝票です」
「·····ああああああああああああああああああっっっ!!!???」
そして届いた伝票を見て、私は発狂したのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「さ、最新のスマホが買えるくらい食っていきやがったよあの3人····· うっうっ·····(泣)」
名前:アルム
ひと言コメント
「なんか忘れてる気がするんだけど、なんだっけ?」
名前:タマヤン
ひと言コメント
「ほーん、どんなブラックな職場かと思ったら普通にええ所やん、というか立地ええなぁ!」
名前:ホンタ
ひと言コメント
「ん?なんや?·····ヴィエルグランツ?初めて聞く名前の魔物やな、せやけど只者やないな?どーなっとるんやこのニンゲンたち·····」




