未来からの忘れ物
私の現状を的確に表す最高の言葉がある。
「暇だぁ·····」
そう、私は暇をしていた。
いやね?ミナタは2日前からもうずっと漫画に夢中でじっくりじっくり読んで3巻まで読み進めてて、その結果この2日はどこにも行かないで漫画部屋で『ティンクル☆キュルピカ』を読んでいたのだ。
つまりあのへな煩いミナタが黙ってるってことは、彼女が来る前の生活に戻っていつも通りになってたんだけど、ちょっとばかし刺激が足りなかったのだ。
そして来賓のイルミア君も漫画に夢中なので特にやる事も無く、しいて言えばフェニカの面倒を見ていたくらいだから結構マジで暇。
「なーにしよっかなぁ·····」
ちなみにフィーロ君は仕事に行ってていないし、他のみんなもあまり構ってくれないから一人で自分の部屋でのんびりしている真っ最中だ。
更に不運な事に、私はめっちゃ暇だった。
特にやる事も無いし、この前アカシックレコード『トリニティ』の増設を行って補助演算記録装置をようやく取り付ける事に成功したから、神界での仕事もちょっとお休み中なのだ。
そうそう、この補助演算記録装置のお陰で私が3回まで生き返れるのは変わりないんだけど、もし本当に死んだときにこの補助演算記録装置に私の魂を一時的に保管し、24時間経ってアカシックレコードと私の魂の機能が復活したら戻るという、いわば保険というか外部の記録装置になっているのだ。
これで私はマジで死ななくなった、私を殺すには3回殺したうえで神界に行って厳重に保管されているアカシックレコード『トリニティ』の補助演算記録装置を破壊しなければ殺せないという、ラスボスでもそんなのやらんわっていうくらい厄介な状態になったのだ。
·····まぁ、ちゃんと機能するかは理論上でしか確認できてないから、もし動かなかったら私は魂さえ残らずに死んでしまい、二度と蘇る事は出来ない。
だから死んでも大丈夫じゃなくて、もしもの時に、もしかしたら生き残れるかもという可能性に賭けて増設したのだ。
ちなみに演算能力が37%向上したから、増設という点で見ればかなりいい結果だ。
元々は40%を目指してたけど37%ならまだいいだろう、·····0.1%でむこうのスーパーコンピューターを軽々凌駕する性能を持ってるからだいぶデカいっちゃデカいけどね。
「他なんかあったっけなぁ·····」
そんで他になんかネタになりそうなことが無いか考えながら、私は私が座るゲーミングチェアを魔法でゆっくりとクルクル回して、ぼーっと天井とデカいアルバムの底を見·····
·····デカいアルバム?
いやそんなものウチに·····
\ゴッ!!!/
「メ"もイ゜っ!!?」
あったわ。
なんかデカいアルバムみたいなのが私の額を直撃し、結構な分厚さと重量のあるアルバムが激突した額からは血がダラダラと流れていた。
いやぁ着てたの下着だけで良かったわ、服についてたら洗うの大変だったわ。
「いってて····· でもなんでアルバム·····」
私はパックリ割れた額を魔法で治し、溢れ出た血は魔法で体内に戻して、床に落ちたアルバムを拾おうとした。
·····だが、床に落ちて開いていたアルバムを見た私は固まった。
「·····なに、これ」
私は我が目を疑った。
そこには、一目見て成人したとわかるくらいまで成長したなかよし組のみんなと、今いる私たちの子供たちと、見知らぬ子どもたちが写った集合写真が貼られていた。
そして何より、日付が今よりもはるか先だったのだ。
「未来の私たちの写真·····っ!?」
そう、私の額を直撃したのは、なんと未来の私たちのアルバムだったのだ。
◇
私は机の上に乗っている未来のアルバムを前にして、ゲーミングチェアにあぐらをかいて悩んでいた。
「·····どーしよっかなコレ」
私はこのアルバムをさっきのページ以外は全く読んでいない、何せ私はネタバレとかは嫌いな人間だから自分たちのはるか未来の記録なんて見たくない。
ついでに、さっき開いたページは分厚いアルバムのまだ前半で、この後も色々写真がみっちり詰まっているから相当先までの写真があるのだろうとすぐにわかった。
もし見てしまったら、私の人生はこの先に何が起きるか全部わかってしまうのだ。
「やっぱりどっかに保管しておいて、未来に送り届けるしかないよなぁ」
そんでこのアルバムはいつの時代から来た物なのかは全くわかっていない。
最低でもさっき見た写真の日付け以降だとはわかっているけど、最後のページは何年後なのか皆目見当がつかない。
そして、私は最後のページの写真は絶対に見たくない。
ついでにさっき見た写真の事も、この件が片付いたら頭の中から消す予定なくらい見たくなかった。
·····写真の中の私はめっちゃ幸せそうだったけど、私は自分でその場を見て初めて体験したいから記憶を消しておきたいのだ。
「さてと、保管に関しては今の私のアルバムに関する記憶を書き換えて、『未来から届いたアルバム』という記憶にして、このアルバムが未来で完成したら未来だとアルバムが消えているはず、その時はコレを代わりに出すって感じがいいかなぁ·····」
そんでこのアルバムは表紙だけでも凄く丁寧に未来の私によって装飾されていて、とても大切な物だったとすぐにわかった。
だから燃やすって事は絶対にありえないし、丁寧に劣化しないように保管するしかないだろう。
「·····はっ!閃いた!!」
そして私は突如天才的な案を思いついてしまった。
私はインベントリから紙を取り出すと、手紙を書いたのだ。
その内容は『アルバムを完成させた私へ、一番後ろのページは写真を無くして、いつ完成したか書いた紙を入れておいてください、そしたら送り返します、こちらは現在建国1230年6月19日 午前10時32分です』となっている。
これを読んだ未来の私は、きっと一番後ろのページに完成した日付けだけが書かれた紙を入れているだろう。
私はそう信じて、アルバムの最後のページを開けた。
「ナムサンっ!!」
\ペラッ/
「ヤッホー、アルバム返してねっ☆」
だが、最後のページには日付けが書かれた紙は無かった。
その代わりに、何故かページから私が顔を覗かせていた。
「·····へぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!??時空が捻じれて宇宙が爆発しちゃうううううううううううううううううううううっ!!!!!」
「大丈夫でしょ、というか未来の日記がある時点で察して?」
「·····確かにっ!!」
私は未来の私からツッコミを入れられた。
よく考えたらそうだったわ、うん、冷静さ失ってたわ。
えーっと?現状を説明すると、アルバムの最後のページから転移門が開いて時空を超越して私が顔を覗かせてきたのだ。
某有名映画で過去と未来の自分が出会うと宇宙が爆発するという話を覚えていた私は発狂したが、よく考えたら大丈夫だったと気が付いて落ち着いたのだった。
「やれやれ····· 手紙ありがとね、ナイスアイディア!いやぁ私って天才なんだねぇ」
「いやぁ褒められても~、んへへ·····」
「さてと、冗談はこのくらいにして、このアルバムは返してもらうけどいいよね?」
「いいよー、あっそうだ、記憶ってどうしたらいい?」
「未来のアルバムが届いたっていう記憶と、それを何らかの方法で返却したって記憶にしておけばOKだね、あともし未来でアルバムが無くなったらあの手紙を開くって覚えておいて、保管場所はインベントリね」
「おっけ!ちなみにどうやったん?」
「アルバムの最後のページに開いた瞬間に時空超越ゲートを展開する魔法を仕組んでおいたんだよ、ちなみに発動の条件はあの手紙に書かれた日付に開かれたら発動するようにしてあるよ、まぁ未来になってあのアルバムを作る事になったらやり方も分かると思うよ」
「なるほど、まぁその記憶も消すけどね、それじゃあ····· なんて言えばいいんだろ?」
「なんて言ったっけなぁ····· 忘れちゃったわ、でも未来はめっちゃ楽しい事になってるから楽しみにしててね、んふふ·····」
「ほほー、そりゃ楽しみだなぁ····· んじゃまたね、私」
「あっそれだ!懐かしっ!それじゃばいば~い」
私はそういうとアルバムとは別に展開されていたゲートを閉じて、未来へと帰って行った。
そして私は未来の私がアルバムと共に帰って行ったのを見届けると、自分の記憶を改ざんしたのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「·····はっ!?あー、記憶改ざんしたのか、私、えーっと?アルバムは謎の方法で未来に送り届けて?ふんふん····· なるほど了解!」




