帰ってダラダラいつものグダグダ
ガチャッ
「ただいまぁ·····」
\ずりずりぞるずり/
「あっお帰りなさ····· どうしたのソフィちゃん!?」
「·····ミカちゃんと本気で戦ったらこうなった」
「えぇ·····」
あの激しい戦闘の後、私はさっさとヒュドラの死体の一部を回収して大荒れした島をある程度修復してギルドに報告し、やっとこさ家へと帰ってこれた。
そして帰って来た途端にフィーロ君がビビった。
·····まぁ妻が全身血まみれで帰ってきたら誰だってビビるわ。
「なんでミカちゃんと戦ったの?」
「運動したりないって言って暴走気味だったし、珍しく本気だったからちょっとマジで戦ってみたらこうなったのよ·····」
「あぁそう····· お疲れ様、とりあえずお風呂入ってくれば?」
「もちろんそうするよ、ヒュドラの毒もこびりついてそうだからね」
「やっぱり····· フェニカに悪そうだからちゃんと綺麗サッパリ解毒してね?」
「はぁい」
という訳で、私は帰って色々する前にお風呂に入る事にしたのだった。
\ずりぞりずりずり/
「·····ねぇソフィちゃん」
「はいはい?」
「後ろに引きずってるソレなに?」
「ミカちゃん」
「·····わかった、行っていいよ」
「へーい、んじゃまたねー」
そういうと私は着る布団にくるまって動かなくなったミカちゃんを引きずりながらお風呂場へと向かって行った。
◇
かぽーんっ
「はひゃぅ····· デトックスだぁ·····」
「んぅ·····」
お風呂に入った私はまずシャワーで入念に全身真っ赤になるほど大量にこびりついてしまった血を洗い流し、解毒魔法を何度も掛けて体の表面からも体内からも毒を消し去って、やっとこさ湯船へと入って暖まっていた。
なみなみと蓄えられた温泉は私の血と違って心地よい暖かさで、雑な治療でちょっと壊れ気味だった私の身体を癒して元通りにしてくれる手助けをしてくれていた。
「·····『血塗れの賢者姫』、私は気に入らないんだけどその方がお似合いなんだよなぁ····· はぁヤダヤダ」
私の戦い方は『肉を切らせて骨を切る』を地で行くタイプで、死んでも生き返る事と即座に治癒できることを利用した捨て身の攻撃一転特化な戦法が得意だ。
そのせいで私は近接戦闘を行うと超高確率で自分と敵の血液で血塗れになって、全身真っ赤になって獲物を倒して帰ってくる様子から、賢者姫という二つ名よりも『血塗れの賢者姫』なんていう物騒な二つ名で呼ばれる方が多くなってきちゃってんのよね·····
ちなみに名付け親はほぼ私専属のフシ町のギルド娘のマリアージュだ。
·····ってか噂の発生源がアイツで、私が依頼に行って帰ってくると高確率で血塗れになっててしかも汚れを落とさず転移魔法で直にやってくるせいでギルドの床が血塗れになって毎度マリアージュが掃除してて恨み言のように『血塗れの賢者姫め』と呟いてたのを、冒険者たちが聞いて広めてたらしい。
んで私が通った後はぺんぺん草も血で真っ赤に染まるほど魔物が徹底的に殲滅されてしまう事とか、他にも根も葉もない噂を広められた結果こうなったってギルドに居た冒険者が言ってた。
教えてくれた親切な冒険者さんにはワインを瓶でプレゼントしてあげた。
マリアージュにはワインの空き瓶を頭にプレゼントしあげよう、私とお揃いにしてやるわ。
「むぐぐ····· まだちょっと血の臭いがする·····」
「·····ん、くさい」
「面倒だし魔法で消臭しよっと」
最近ではなんか依頼に行ってなくても体から血液の臭いが漂ってくるような気がするし、血塗れ状態を見てしまった子供には何もしてなくてもビビられてちょっとショックをうけてたりする。
一応町の子供たちとは時々遊んであげたり、町の外で遊ぶときに安全確保をしてるからイメージは回復しつつあるとは思うけど、やっぱりなぁ····· 寝ない子に『ブラッディ・ソフィが来るよ!』って脅して寝かしつけてるのが流行ってんのが絶対悪い。
やっぱり空き瓶じゃなくて中身アリで送ろうかな、その方が威力高そうだし。
「·····血塗れの賢者姫ってバーサーカー過ぎる名前だよなぁ」
私は血の色とは正反対な、綺麗な青みがかった銀髪の毛先をクリクリしながら、お風呂で心ゆくまで温まったのだった。
◇
「·····ねぇソフィちゃん、『血塗れの賢者姫』から『茹でダコの賢者姫』に改名したら?」
「嫌でーす·····」
·····率直に言おう、のぼせた。
長湯しすぎて茹でダコみたいに真っ赤になった私は溺死寸前で遅いと思って見に来たフィーロ君に救出され、今はクールダウンのために割と際どい格好で畳の上で転がって体を冷やしていた。
「そうだ、フェニカはどうだった?」
「ちょっとぐずったけど大丈夫だったよ、·····ぼくの胸に吸い付いてきたときはびっくりしたけど」
「TSしなきゃいいんじゃないの?」
「で、でも····· いいじゃん別に·····」
そうそう、どうやらフィーロ君は私が依頼に行ってる間は性転換して女の子になってフェニカの面倒を見ていたようなのだ。
もちろん母乳なんて出ないから意味はないはずなんだけど、最近母性が溢れてきちゃって性転換してフェニカの子守をすることにハマっているらしい。
そしてTSした葛藤で悶々としてるフィーロ君を見るのがなかなか楽しくて、私はいつもニヨニヨしながらその様子を見てたりする。
「んふふ、でもフィーロ君はフェニカの父親で私の夫なんだから、ちゃんと男で居てよね?」
「わっ、わかってるって、今も一応男に戻ってるし·····」
なんか、夫婦ともに性別が変化できるってちょっと面白くて変な夫婦だよなぁ·····
私は元男で今は女性で時々男になったりして、フィーロ君は自分で自由に性転換してイロイロできちゃう女装好きな男の娘というデコボコカップルだけど、うまく凸と凹が嚙み合ってなんだかんだ子供もできたいい夫婦になれたと思う。
「·····ねぇフィーロ君、もし将来フェニカが男装女子になったらどうする?」
「応援するしかないんじゃないかな、僕たちが言えたことじゃないでしょ?」
「んふふ、だよね」
なんて話をしていると、私はだんだん眠くなってきてしまった。
まぁいくら神さまの私だってあんな激しく戦闘したのは久しぶりだし、運動したら心地良い疲れで眠くなってしまうのは人間と何ら変わりはないのだ。
「んへへ、眠くなってきちゃった、私もミカちゃんみたいに軽く寝よっかな」
「わかった、ソフィちゃん今日はお疲れ様、涼んだらちゃんと布団を掛けるんだよ?」
「はーい、おやすみぃ·····」
という訳で、私は軽くひと眠りする事にしたのだった。
◇
チュンチュン·····
ガバッ!!
「··········あれ?」
目が覚めると、私は異常に気が付いた。
·····外が明るいんですけど?
「·····やべ、起きれなかった」
やっばぁ····· 仮眠するつもりだったのに朝まで爆睡·····
「ふぇ、ふぇっ····· ぺくちっ!!うぅぅうぅ····· 寒い·····」
私は体を見下ろすと、うん、昨夜の涼みようの格好でかなり薄い服だしお腹も出てるね。
今は三月下旬で春が近づいてるとはいえまだまだ寒い季節で、夏みたいな恰好をしてたら体は完全に冷え切って大変な事になるだろう。
いや、なってる。
「うぶるるるる····· さむい····· コタツ·····」
全身が冷え切った私は即座にコタツに潜り込み、温度を一気に上げて冷え切った身体を温めまくった。
そのおかげで十分くらいで元通りの体温を取り戻すことに成功した。
·····だが、それには代償が付いてきていた。
「さてと、そろそろ出よ····· さむいいいいいいいっ!!!」
コタツから出れなくなった。
よくよく考えたら私は今全裸の方がマシってくらい薄着だし、外は冬くらい寒いからぬっくぬくなコタツから出れるわけがないよね。
「あっちゃ~、私ったらうっかりさんっ☆ ·····みんな来るまで部屋温めてコタツの中で待ってよ」
って訳で、私は室温が外に出れるようになるまでコタツの中でネコのように丸くなって寝るのだった。
◇
\ゲシッ!/
『にょじゃぁぁぁああああああああああっ!!!!???』
「うるさっ!ぎゃんっ!!!」
/ガツンッ!!!\
私がコタツの中で丸くなって寝ていると、誰かに蹴られた。
そして珍妙な悲鳴が聞こえてきて、蹴飛ばしてきた相手がエビちゃんだと悟った瞬間、私は快眠を邪魔した邪知暴虐な魔王を懲らしめようと起き上がろうとして、コタツの天板に頭を強打した。
『の、のじゃぁぁぁぁああああ····· ビックリしたのじゃ····· おい!誰じゃコタツの中におるのは!!』
「あいたたたた····· エビちゃんおはよ·····」
「お主かいっ!!マジで心臓止まると思ったのじゃ·····」
「ごめんごめん、私さっきまで床で寝てて身体冷えちゃっててさ、コタツの中で暖まってたら出れなくなっちゃってそのまま寝落ちしちゃって·····」
「そういう事か····· まじで、マ!ジ!で!ビビったのじゃ!!」
「ごめんって」
『ふぁぁぁぁああっ····· あれ、ソフィちゃん起きてたんだ、おはよ』
私とエビちゃんが一触即発な状況になっていると、フィーロ君が起きてリビングにやってくると私を見つけて挨拶してきた。
朝っぱらからケンカする気力の無い私はフィーロ君を利用させてもらう事にした。
「あっ!フィーロ君おはよ!!」
「おぅ、お主も起きてきたか····· ソフィ、ワシをビビらせた罰として朝食を作れなのじゃ」
「へーい、言われなくてもそろそろ朝ご飯の時間だからやるよ」
「ソフィちゃん、無理しなくてもいいんだよ?」
「いいよいいよ、でもエビちゃんご飯作る前にちょっと着替えてきていい?まだちょっと肌寒くて·····」
「そんな恰好だからじゃろ、さっさと着替えてこい」
「はぁい」
って感じで、この星が木端微塵になってしまう滅亡の危機と人知を超えたバトルをした翌日にもかかわらず、私たちは今まで通りの日常を今日も送り始めたのだった。
ちなみにこの後、朝ご飯で間違えて焼きサバじゃなくて焼きそばを作っちゃってエビちゃんと大ゲンカした。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「ダメだ、今日は休みにしよ····· 疲れた·····」
名前:ミカちゃん
ひと言コメント
「きょうも、ずっとねる·····」
名前:フィーロ
ひと言コメント
「朝から焼きそばかぁ····· 重いなぁ·····」
名前:エビちゃん
ひと言コメント
「ワシが頼んだのは焼きサバじゃ!!なのになぜお主は焼きソバを作りやがったのじゃ!!!土下座して謝れこのソースまみれ賢者姫がぁ!!!」
『あぁん!?エビちゃんが焼きソバって言ったのが悪いんでしょこのタコ!!海鮮焼きそばにしてやろうか!!?』
\ぷちん★/
「ワシが頼んだのは海鮮焼きそばじゃないのじゃああああああああああああっ!!!やぁ!きぃ!さぁ!ばぁ!!!!!お主の耳はイカの耳か!!」
\ぶちっ☆/
『あぁん!?てめぇこんにゃろ!!ブチ殺してやるっ!!!ってかイカの耳は耳じゃねぇ!!あそこはヒレとかエンペラって呼ばれてる部位だから聴覚器官ですらないわ!!!』
「おうおうやってやるのじゃ、今日という今日は許さんのじゃ!!!貴様の耳をイカの耳にしてやるのじゃ覚悟しやがれ!!それとも髪の毛全部ブチ抜いて顔面殴りまくって真っ赤にしてタコ頭にしてやるのじゃこの焼きそば女め!!!」
名前:女神ガイア
ひと言コメント
『はいはいケンカ両成敗、そのネタ素でやらないの』
\ゲンコツッ!!!/
『ぐえぇっ!!』
『のじゃっ!?』




