今日のお仕事はおしまいっ!
「えーっ!!ソフィ様もう行かれちゃうんですかーっ!!?」
私は思わず『誰がイカれてるじゃいっ!』と突っ込みかけたが、たぶん意図が違う事に気が付いてツッコミを喉元でギリギリ留めて返事をした。
「もう夕暮れ時ですし、私も家庭があるのでこの辺で帰らせてもらいますね、フィグちゃんもお土産のタルトありがとね? ·····ちょっと多いけど」
「はいっ!えへへ、作りすぎちゃいました」
「ソフィ様、本当にありがとうございます、ソフィ様が砂糖や小麦などを分けてくださらなければしばらくはタルトをひたすら食べることになっていました····· フィグ、ソフィ様に感謝しなさい」
「ソフィ様ありがとうございます!」
·····この子、どうやら食料をめっちゃくちゃ使いまくってタルトを作りまくっていたらしい。
お陰で食材が底を尽きたりしていて結構ヤバかったみたいなので、仕方なく私のインベントリから食材をだしてあげたりしたのだ。
そのお礼はタルト26個だ。
元々18個だったんだけどさっき焼きあがった8個が追加で増えた。
これどうしよっかな·····
まぁ消費先の目途は経ってるから私たちは10個くらいあれば十分かな。
·····またダイエットしなきゃなぁ。
「それとソフィ様にはもう1つ感謝しなければですね」
「ん?なんかやりましたっけ·····」
「アレです」
「なぜだぁ····· 僕ぁ天才のはずなのに·····!うぇーん、ままー!おっぱいちょうだいー!!ばぶぅー!!·····おい何見てんだ、僕ぁ見せもんじゃぁ無いんだ、シッシッ」
「負けた····· 私ギャンブルは無敵なのに·····」
そういや問題児2人ボコボコにしたんだったわ。
自称天才のシトラちゃんは論破とか称して知識勝負仕掛けてきたから、アカシックレコードを使った純粋な知識で言い負かしたのよね。
こう見えて私、一応ほぼ全知全能なのよ?
で、徹底的に伸びた鼻っつらへし折ったシトラちゃんはというと、幼児退行しておままごとに興じてる。
お次にマルスちゃんは私物を賭けたギャンブル勝負で私が全戦全勝して、同級生とかから巻き上げた代物を全部取り返した。
方法は至って簡単、サイコロを振って出目の多い方が勝ちのルールでひたすら勝ち続けただけだ。
マルスちゃんも最初はものすごい運で6個のサイコロ全部6を出すとかやってたけど、なんか運の残量か何かがあるらしくて、ずっと6のゾロ目を出し続けてる私に意地を張ったのか、結果惨敗して全部巻き上げられたという訳だ。
·····イカサマはしてないよ?
私、アカシックレコードを使えば物理演算でどうやれば6のゾロ目が出るか予測できるし、それを実行できるだけの繊細な動作ができる体もある。
だから運も関係なく6のゾロ目で勝ち続けたって訳ね。
で、惨敗したマルスちゃんは自分で切って裁縫して作ったスリット入り聖女服からパンツ丸見えになるのも気にせず床で体育座りしてイジケてる。
「·····やり過ぎちゃいましたかね」
「いえ、このくらいやらなければ言う事を聞きませんから、·····これで真っ当な生徒になってくれるといいのですが」
·····私も問題児だったからわかるんだけどさ。
聖女様、最悪手を打っちゃったのよね。
ありゃ悪化するパターンなんだけどなぁ····· まぁ黙ってよ、その方が面白くなりそうって私のセンサーが反応してるし。
「何はともあれ、美味しいお茶が飲めてよかったです、それではこの辺りでお暇させてもらいます、見習い聖女ちゃん達、聖女修行をしっかり頑張るんだよ?」
『『はーい!』』
「この子たちの遊び相手になってくださり、更に世界樹の危機も救って下さり、何から何まで本当にありがとうございます、貴女に清き光あれ·····」
結局この教会には大体3時間近く滞在してて、あの二人を負かしたり他のちびっ子聖女ちゃん達と遊んであげてたらあっという間に3こんな経ってしまったのだ。
·····ちなみに3時間でタルトを丸ごと6個も食わされて死ぬかと思った、ちなみにホールケーキサイズね。
もう私はいらん、でも美味しいからみんなにも食べてほしいわ。
そうそう、あと世界樹の葉のお茶の作り方も教えてもらったから帰ったら作ってみようと思う。
うちの世界樹は他のと比べて格段に美味しいからね、新芽の天ぷらとかめっちゃ美味いのよ。
「それじゃまたなんかあったら依頼してくださいね、ではでは~」
「皆、ソフィ様をお見送りしてあげなさい」
『『はぁい!!』』
私はさっさと帰ろうと教会の外に出たが、聖女ちゃん達がお見送りに来てくれた。
ちなみにシトラちゃんとマルスちゃんも一応来てくれてて、嫌われてなくてちょっと安心した。
·····でもちょっと帰りにくいなぁ、私子供と遊ぶの嫌いじゃないし、子供たちが寂しそうな顔してるとまた会いに来たくなっちゃうのよね。
まぁでも、それよりも大事な待っている人と大事な子供が居るから心を鬼にして帰るけどね。
「んじゃみんなまたね~、聖女様もこれからもっと寒くなると思うんでお気をつけて」
「本日は誠にありがとうございました、ソフィ様もお体にお気をつけて、無事に出産なされましたらぜひ祝福を受けにいらしてください」
「はーい、まぁ頑張って産みますよ、では」
「ソフィさま!あかちゃん見せに来てくださいね!!」
「みんなで頑張って祝福します!」
「元気な赤ちゃんをうんでくださいね!」
「次来た時は覚えとけよぉ!!絶対論破してやるぅ!!」
「次はもっと運気貯めて絶対アンタの私物貰うから」
「来てくださったらまたタルト焼きますね!!」
「ごめんフィグちゃん次はタルト以外にして?それと問題児2人も、受けて立つよ?ただしまたボコボコにしてあげるけどね、んふふ·····」
「えー····· わかりましたよぉ·····」
\\カチーンッ!//
「なんだとぉ!?」
「あ?何?自分が絶対に負けない自信あんの?」
「こら、ソフィ様に謝りなさい」
「ひえ、·····わかったこれ以上はやめておこう、そうしよう」
「チッ····· サーセンした」
「それでよし!許す!んじゃいつまでたっても行けない雰囲気なんでさっと行っちゃいます、では!」
なんだかんだ長居しちゃったので、私はお土産を持って空へと飛行魔法で飛び立つと、もしかすると私が入っていたかもしれない聖女学校の生徒たちに手を振って別れを告げ、地元へと向かって飛んで行ったのだった。
◇
「すいませーん、遅くなりましたー」
「あっソフィさんですね、依頼は全て終わりましたか?」
「はい、6個全部終わらせました」
あのあとちょっと寄り道はしたが、概ね特に何もなく私は依頼を全て完了させ、フシ町のギルドにやって来ていた。
「·····あの」
「はいはい?」
「正体不明のバケモノはどうなったのかしら?何の報告書も無いけれど」
「コレですよ」
\ゲシッ/
『んむぅ~っ!!!』
「·····人間だったの?」
「知り合いです」
「あっ、はい、そういう事だったのね····· じゃあソフィから彼女に厳重注意しといてくれるかしら」
「了解です、それとこの子の上司にもた~っぷり絞ってもらいますんで反省すると思いますよ」
\ひいっ!?/
「わかりました、では報酬は····· うげっ足りないかも····· 後で王都のギルド本部で換金してくれないかしら、今これだけの額が現金で無いのよ、とりあえず達成のハンコは押しておくからそれでいいかしら?」
「いいよー、ありがとうございます、んじゃまた何かありましたら~」
「わかったわ、えー、おほん、本日も依頼の達成をして頂きありがとうございました」
私は回収したブツを担ぐと、ギルドを出て大切な我が家に·····
帰る前に、大事なモン忘れてたわ。
「·····プリミティブフルーツのタルト食べます?聖地の教会でめっちゃ貰っちゃったんで2個くらいあげますよ、職員の皆さんで食べてください」
「いいの!?超嬉しいわ、私タルト大好物なのよ、·····もうひとつ私専用に貰ってもいいかしら?1ホール余裕よ」
「いいよー、ほいよ☆」
「で、デカいわね····· ソフィの顔面くらいあるじゃない」
「クリームたっぷりのパイも追加で欲しい?」
私は失礼な事を言ったマリアージュに向けてホイップクリームを山盛りにしたパイを投げつける構えを取った。
ちなみに普段からイタズラ用に常に5個はストックしてるのよね。
まぁ1発使ったら残りの4発は反撃で私が喰らう羽目になるんだけどさ。
·····ちなみに私の顔面よりタルトはめちゃくちゃデカい、宅配ピザくらいらデカい。
それと私小顔だからね、モデルやれるくらいには。
「遠慮しとくわ、まぁこのくらい余裕よ、ありがとうねソフィ」
「お礼なら作ってくれた見習いの聖女ちゃんにしてあげてね?喜ぶと思うから、ではでは~」
私はタルトを置いて、家へと帰っていった。
·····ん?
正体不明のバケモノは何だったんだって?
ちょっと家に帰ってからね、ちょいまち。
「まったく····· 何してんですかホント·····」
『もぐぅー』
◇
私は簀巻きにして猿轡も付けていたソレを開放してあげた。
「ぷはぁっ!もーっ!!なにするんですかソフィさん!!」
「そっちこそ何してるんですか、ツクモさん·····」
自由の身になった頭に双葉アホ毛を生やす少女は、早速私に抗議してきた。
そう、正体不明のバケモノの正体は地球の新米女神の『明星 木兎萌』さんだったのだ。
いや、もう最初から予想してたんだけどね?
だって依頼書に『何者かに喰われたような跡があちこちに出現し、ファットボアやミニタウロスなどの魔物を片っ端から喰らいつくす暴食の化身が目撃されている』って書いてあったんだもん、しかも見た人の記録に『頭に2本のアホ毛が生えていた人間』って証言があったんだもん、もうこの人しかいないよねって思って、出発した時点で魔法で居場所を特定していたのだ。
そんで邪魔だから帰りに回収しにきたら、大食い大会を壊滅させて得た賞金でどっかの町で大食いしているのを見つけ、とりあえず簀巻きにして回収してきたのだ。
「·····マジで何してるんですか?」
「だって、だって、最近ヌシ様がご飯代をケチってずっとおなかペコペコなんですよ!?神様虐待ですよーっ!! だから食べ放題なこっちに来て魔物さんを食べて空腹をしのいでいたんですよ!!」
「だからと言って、絶滅するような勢いで地面ごと食べるのはやめてくださいよ、そこら中に歯型が出来て大変な事になってるんですよ?しかも物質が消滅してるので私がチマチマ戻してましたし·····」
「でも·····」
やーっぱりなんか文句言ってくると思った。
助っ人を呼んでててホント正解だったわぁ、マジで助かる。
『·····お主、時々いなくなると思っておったらここにおったのか』
「ひゃんっ!!?あ、アマテラスさま·····」
『今日という今日は許さぬ、みっちり説教じゃっ!!ったくこやつは····· ソフィ殿、こやつが迷惑を掛けたのぅ、あとで詫びの品を送るから許してやってくれ』
そう、助っ人は彼女の上司の天照大神様だ。
この人、怒るとマジで怖いからなぁ·····
次こそ南無阿弥陀仏·····
いや神道だから違うか、神道のそういうヤツってなんて言うんだっけ?
まぁ別にいいや。
「いいですよ別に、というかこの子の主様も大変ですね····· どんだけ食うんですかこの子」
『無限じゃな、理論上では宇宙一つ····· いや、四次元世界をも喰らうのではないかと推測しておるほど食えるからのぅ····· 末恐ろしいやつじゃ』
「えへへ·····」
『褒めておらんわ、他所の世界にまで迷惑を掛けおって·····』
「ところでどうやって来たんですか?ゲートとか繋げてないと思うんですけど·····」
「えへへ、『世界を巡る女神』っていうわたしの力ですっ!どんなところにでも、わたしが望んだ場所に行ける凄い力ですよ!」
『じゃから困るのじゃ····· こやつの『旅の女神』としての神格の力じゃから予期できぬときがあるのじゃ·····』
「厄介ですねそれ····· しかも私の探知魔法にもアカシックレコードにも来た形跡がないんで、たぶんですけど完全な未知の手段で移動してるとしか考えられないんですよ」
『うむ····· ワシらも何とか対応しようとしておるのじゃがのぅ····· すぐ近くに居ないと行き先でさえわからぬから厄介なのじゃ』
どうやらツクモさんは魔法を超えた神の力で世界を行き来していたようで、私でも天照大神様でも止めることができないようだ。
·····あっ、いい事思いついた。
「ツクモさん」
「はいなんですかっ!」
「私、妊娠中なの覚えてます?」
「·····えっ!?ソフィさん妊娠してたんですか!?」
『マジか!?』
「えっ言ってませんでした?」
「『聞いてない』」
·····ちょっと説明するね☆
◇
「って訳で、来月出産予定なんですよ」
『それはめでたいのぅ、あとで詫びの品と一緒に祝いの品も送らせてもらうのじゃ、高天ヶ原からの贈り物じゃ、期待するが良い』
「おめでとうございます!!」
「·····で、本題なんですけど、私、実は1ヶ月前が出産予定だったんですよ」
「えっ?って事は産んじゃったんですか!?」
『来月出産予定って言っておったじゃろ』
「あっそうでした!でもなんで·····」
さてここからが本題だ。
ツクモさんが他の世界に簡単には行けなくなってしまう恐ろしい事を教えてあげよう。
「実は私とエビちゃんは不慮の事故で時間の流れが違う世界に行っちゃってまして、向こうの5時間でこっちの世界だと2ヶ月も経ってしまう時間の流れに差がある世界だったんですよ」
『あー、そういう世界あるのぅ、不幸じゃったな·····』
「ほえぇ」
「ツクモさん、ヌシ様は人間なんですよね?」
「はい!ギリ人間です!」
「世界には時間の流れの差が1秒で1000年経つような世界もあります、もしその世界に行ってしまったらどうなると思います?」
「·····ヌシ様が、死んじゃう?」
「正解です」
「で、でもわたしの能力は·····」
「私でさえ巻き込まれて事故で別世界に飛ばされるんですよ?ツクモさんでも十分そういうことはあり得ます、もしそれが嫌なら、異世界に行くときは絶対にそこの天照大神様同伴で行ってください、いいですか?」
「は、はい·····」
私の実体験とそれを元にした危険を説明したら、ツクモさんは最悪の事態を想像したのか体を震わせてアホ毛もペタッと倒れてしまっていた。
ちゃんと反省してくれたかな?
「·····私からは以上です、あとは天照大神様とヌシ様にたっぷり叱られてください」
「はい·····」
『うむ、ツクモよ、本気で怒るから覚悟しておくのじゃ』
「·····」
『わかったなら行くぞ、ヌシ殿が心配しておるぞ、ったく····· ソフィ殿、ワシらはこれで失礼する、もしこやつがまた来たらワシに報告するんじゃぞ?』
反省しすぎたのか返事もせず泣きそうな顔で動かなくなってしまったツクモさんを引きずって、天照大神様は元の世界に帰ろうとした。
「待ってくださいっ!!」
·····が、私はそれを引き留めた。
『む?なんじゃ?』
「タルトたべません?·····15個くらい」
『·····貰っていくのじゃ』
そして天照大神様は片手でトボトボ歩くツクモさんの腕を引っ張り、もう片手でパイ15個を持って帰っていって、私はそれを見届けて今日の仕事を終わりにしたのだった。
·····でもまだタルト残ってるんだけど?
ほんとどうすんのコレ。
名前:フィグ
ひと言コメント
「次ソフィさまが来てもいいように沢山料理の勉強しなきゃ!あと聖女様になる練習も!」
名前:マルス
ひと言コメント
「ソフィ様のアレどうやってんだろ····· イカサマとしか思えないんだけど? でもサイコロに細工してたのになんで絶対6出てたんだろ」
名前:シトラ
ひと言コメント
「くっ、次来る時までにラップでも覚えておくべきか、語彙力がモノを言うディスり勝負なら負けないぞ、ヨー!ちぇけら!」
名前:明星 木兎萌
ひと言コメント
「もう絶対に勝手にどこにも行かないです····· どこに行くときもヌシ様と一緒がいいです·····」
名前:天照大神
ひと言コメント
『ところで、ソフィ殿はなぜこんなに沢山世界樹の実のタルトを持っておったのかのぅ····· 謎じゃのぅ·····』
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「お い タ ル ト 食 わ ね ぇ か」




