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TS賢者は今日も逝くっ!  作者: すげぇ女神のそふぃ
第六章 TS賢者は母になるっ!
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くたびれたエビ



 エビちゃんが第一子のフロウを産んでから1週間が経った。


 産んでから数日はお爺ちゃん達や校長先生や姉貴に赤ちゃんを見せに行ったり祝われたり、自慢の娘を甘やかしてデレデレしたりして、お兄ちゃんもエビちゃんも楽しそうだった。



 ·····だった。



 だが異変は4日目を過ぎたあたりから発生し、そして·····



「·····」


「大丈夫?」


「お主、2時間おきに叩き起こされて授乳して、その度にぐずって寝ないフロウを寝かしつけるの、マジきついからの?もう無理なのじゃ·····」



 エビちゃんは力尽きた。



 どうやら最初の数日は楽しくて仕方なかったみたいだけど、だんだん寝不足になってきて目の下に隈もできてきたし、めっちゃイライラし始めていて常に眠そうで、今日にいたってはもうフロウが泣いても起きずにソファでぶっ倒れていたのだ。


 流石の魔王でも2時間おきに叩き起こされる生活は厳しかったようだ。


 その結果、安物のおせちの中に入ってるくたびれたエビみたいになってしまっているのだ。



「エビちゃん、別に私たちに頼ってもいいんだよ?シルキーさん達も手伝ってくれるし、別に母乳じゃなくて粉ミルクも私が作った母乳複製装置とかもあるんだから遠慮なく頼っていいんだよ?」


「むぅ····· じゃが、魔王の威厳·····」


「·····あると思ってんの?その格好で?」


「ひどいのじゃぁ·····」



 エビちゃんはこの期に及んで魔王の威厳とか言ってるけど、明らかにやつれて顔色も悪·····いのは元々だけど、体調が悪そうにソファで上下スウェットのラフな格好で脱力してる様子はどう見ても魔王の威厳なんてこれっぽっちも無い。

 何なら母としての威厳も皆無だ。



「で?どうすんの?今は私が代わりにあげてるけど、この後はどうするつもりなの?」


「むぐぅ·····」



 そんで今はちょっと待っても呼びかけても動こうとしないエビちゃんの代わりに、私がエビちゃんの母乳成分を分析して魔道具の効果で魔法で複製したミルクを飲ませてあげている所だ。

 ·····私が母乳が出れば飲ませられたんだけど、生憎まだ出ないから仕方ないよね。


 まぁこの子も満足そうにグビグビ飲んでるし、私の事も嫌がらないからホントに我が子みたいに可愛くてついつい甘やかしちゃうからいいけど。



「んっ、飲み終わった?んじゃげっぷしようね~、とんとんっ」


「·····お主、ワシより母親が板に付いてるのは何故なのじゃ」


「母性本能じゃない?」


「けぴっ」


「んふふ、けぴっって変なゲップだねぇ、よしよし、偉い偉い」



 ·····言われてみれば、なんで私エビちゃんの子供の面倒見てるんだろ。


 まぁこの前なかよし組のみんなの娘みたいなものだからみんなで面倒を見るって話しになって、それをしてるだけなんだけどさ。



「エビちゃん、手伝ってほしいなら言ってよ、変に意地張ってないでさ?」


「うるさいのぅ、ちょっと休んでおるだけじゃろうが·····」


「はぁ、だーかーらー、一言手伝ってって言えば手伝ってあげるんだからさっさと言いなよ!」


「いーやーじゃー!お主に下げる頭なんぞない!」


「あぁん?」



「ちょ、2人ともケンカしないで、フロウちゃんが泣いちゃうよ!?」



「それよりもエビ」


「オエッ」


       ﹁

  花 夜 處 春

  落 來 處 眠

(ツルコト) ,風 聞 (ㇾ )

  多 雨 (ニ ク) (ㇾ ェ)

 少 ( ノ) 鳥 曉」

()    (一 ヲ)  ( ヲ)




 私とエビちゃんが口論になってヒートアップした瞬間、フロウの頭があった方の肩から生暖かい感触と嫌な音が聞こえてきた。


 ·····やっべ、フロウが吐いちゃった。



「ちょ、誰か一旦預かって!」


「ボクが預かるよ、ソフィは洗って来ていいよ」


「まってソフィちゃん今なんて言ったの?なんかめっちゃ言ってなかった?」


春眠(しゅんみん)(あかつき)を覚えず

 処処(しょしょ)啼鳥(ていちょう)を聞く

 夜来(やらい)風雨の声

 花落つること知る多少ぞ

 って言ったの!!あーもう!ちょっと洗ってくる!!」


 ビックリした私は思わず『春暁』が口から飛び出してしまった。

 まぁそれはどうでもいいから、身体を洗って服を着替えるためお風呂場へと向かって走っていった。



「·····いや意味言わないとわかんないよ!?」

「どうでもよいじゃろあんなヤツの断末魔なんぞ、それよりもフロウ!大丈夫なのじゃ!?」





 軽くシャワーを浴びてお風呂から上がると、エビちゃんがフロウを抱っこしてあやしている所に遭遇した。

 ·····が、なんか様子がおかしい。



「おまたせ、大丈夫だった?」


「うむ····· こえはワシの子じゃ····· 誰にも渡さぬ·····」


「·····って感じでちょっとダメそうだからさ、無理やり寝かせられないかな? それとフロウの面倒もボクも手伝うけどソフィたちにもお願いしていい?」


「ダメじゃ、これはワシの自慢の娘じゃぞ····· 大切な跡取りじゃぞ·····」



 だがエビちゃんはもうほぼ瞼が落ちて微妙にフラフラしてるし、喋ってる事もなんかおかしくなっていて本格的にダメな気配がしていた。


 そしてずっと付き添っていたお兄ちゃんがとうとう降参して私たちに助けを求めてきた。



 さぁ、なかよし組の出番だ。



「ウナちゃん、GO」


「任せて!」



 まずは妊娠してない方の分裂しているウナちゃんがエビちゃんの元に気配を消して近寄ると、そっと赤ちゃんを抱きかかえて持ち去り、ラーちゃんが出てきて私が冷蔵庫で熟成中だった丁度3kgくらいの小型のブリを持たせて気が付かれないようにして····· あっ3kgちょいならワラサか、最後にサーちゃんが光魔法でワラサの見た目をフロウちゃんに変えた事で偽装が完璧に終わっ·····


 ちょま!!

 それ私が楽しみにしてた熟成寒ブリ(ワラサ)なんだけど!?


 ま、まぁ、これでいつ手放しても落っこちるのはブリだけでフロウちゃんは安全だ。


 ブリは地面に落ちても味は落ちないと信じたい。



「アルムちゃん、GO」


「えっ?」

「私がやるわよ、『迷宮姫』『オブジェクト移動』」



 今度はエビちゃんがぶっ倒れてもいいように背後にアルムちゃんの乳(クッション)を配置しようとしたが、それより早くグラちゃんが迷宮姫の力を使って沢山置いてあるクッションを動かして周囲に配置した。



「ひどーい!!ワタシの胸をクッションにしようとしたなー!?」


「やべバレた、んじゃミカちゃん後は頼んだ」


「ん、熟睡魔法『デッドスリープ』」


「むぅ?なんか、フロウが生臭く····· ふがっ·····」



 手をワキワキさせて近付くアルムちゃんに対応しなきゃいけない私は、睡眠の専門家のミカちゃんにエビちゃんを寝かせるように頼んだ。


 するとミカちゃんは物騒な名前の睡眠魔法を放ち、並大抵の魔法が通じないはずの魔神姫のエビちゃんは元々激しい眠気に襲われていることもあってあっさりと意識と熟成4日目のブリを手放し、仰向けにぶっ倒れてしまった。


 だがエビちゃんは後ろに敷いてあった人をダメにするビーズクッションのお陰で完全に無傷で着地し、そのまま深い深い、絶淵のように深い眠りについてしまった。


 ついでに私は分体を生贄にしてアルムちゃんの百合百合攻撃から難を逃れたのだった。

 ·····後で分体からめっちゃ文句を言われたのは言うまでもない。





『おにゃぁ!おにゃぁ!』


「むぅ、はっ、授乳せねば·····」


「おはようエビちゃん、目覚めはどう?」


「·····む?」



 あれから15時間後、フロウの泣き声でようやくエビちゃんが目覚めた。

 いやー本当によく寝てたよなぁ、だってマジで死んだんじゃないかと思うくらい熟睡してたし·····


 でもお陰で寝ぼけまなこだけどだいぶ元気が戻ってきてそうだ。



「·····腹減ったのじゃ」


「はいはい、ご飯は作ってあるから沢山食べて早く回復してね」


「うむ·····」



 そしてエビちゃんはボヤ~っとしたまま食卓に座って、疑似インベントリで保存しておいたエビちゃん用のご飯をムシャムシャと寝起きにもかかわらず物凄い量を食べ始めた。


 そんでしばらく食べているのを見守っていると·····



「·····わ」


「やば、遮音っ!」


「忘れてたのじゃアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!」


「うるさい!!遮音結界で包んでたから起きてないけどフロウが起きちゃうでしょ!!」


「あ、ご、ごめんなのじゃ·····」



 エビちゃんが授乳も忘れてぐっすり熟睡していた事実に気が付いたようだ。


 そして天地を揺るがすほどの絶叫をあげそうだったので、私はエビちゃんの娘が起きないように急いで遮音結界を張ってあげて事なきを得たのだった。



「んもー、エビちゃんが寝てる間みんなでずっと見守ってたんだよ?感謝してよね」


「そ、そうなのじゃ?」


「ボクも面倒を見るのを手伝ったんだよ、夜中はシルキーさん達が交代でやってくれてたんだから後でお礼言いに行こうね」


「う、うむ·····」


「ちなみに昼間はボクとなかよし組の皆で授乳してたよ」


「そ、そうなのか····· な、なんかすまぬのぅ·····」


「良いよ別に、というかこの前も言ったけどさ、無茶しすぎないでよ?母親がぶっ倒れたら赤ちゃんはどうしようもないんだからね?」


「すまなかったのじゃ·····」


「まぁ容赦なく頼っていいからね、特に夜とかは疲れるだろうしシルキーさん達にも夜中起きてる組も居るし、その人たちに頼ればいいからね?」


「わかったのじゃ、·····お言葉に甘えて、頼んでも良いか?」


「もちろんっ!!でも自分で出来る時は自分でやりなよ?あんまり頼り過ぎるとお母さんって認識されなくなるからね?」


「わ、わかっておるわい!!とりあえず今は飯を食わせろなのじゃ!!」


「へーい」



 私は抱っこしていたフロウを浮遊魔法を使って起こさないようにベビーベッドにそっと寝かせて、エビちゃんと一緒にちょっと軽食を食べることにしたのだった。



名前:ソフィ・シュテイン

ひと言コメント

「ちなみに私は夜の授乳に関しては秘策があるから大丈夫だよっ☆ ·····多分」


名前:エビちゃん

ひと言コメント

「マジでキツいのじゃ····· ふぁぁ·····眠いのじゃ·····」


名前:ラクト

ひと言コメント

「みんなのお陰で意外と何とかなっててよかった·····」








「ところで、なんか記憶が無くなる直前にフロウがめっちゃ生臭く感じたのじゃが、アレはなんじゃったのじゃ?」


「あー·····私は悪くないから怒らないでよ? エビちゃんを寝かせる時にさ、ウナちゃんがフロウの身代わりに私が熟成中だった寒ブリを勝手に入れ替えてたから生臭かったんだよ、私が指示したわけじゃないから·····ね?」


「·····ワシがフロウと思って抱っこしておったのは今食ってるこのブリか?」


「んふふ····· 大正解っ!美味しいでしょ!」


「·····美味しいから殴るのはやめてやるのじゃ」


「よかったぁぁぁあああ!セーフッ!!」


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