戦争の原因
その後、私たちの殺気を喰らった勇者たちはぶっ倒れたり体調を崩して別室に運ばれ、国王は観念したのか今回の戦争の理由を話し始めた。
「·····この戦争が始まった理由に、この国は関わっていないのだ」
「どういうことですか」
「東の果ての国が画策した事に、我が国も巻き込まれているのだ」
国王の話によると、この国は東の果ての国と同盟を結んでいた普通の軍事国家だったそうだ。
だがある時、東の果ての国がとあることをしてしまい、魔族が戦争を始めて人間の国を襲い始めたのだ。
その理由が·····
「·····ゴルヴェリア皇国の王子をかの国が誘拐したのだ、かの国の要望を呑ませるために」
「要望の内容は?」
「既に正確な地図を把握しているのだろう、故に知っている前提で言う、この大陸の西の果てから更に西へ向かうと『新天地』があると判明したのだ」
「ありましたね、デカい大陸」
この星は既に千里眼とアカシックレコードで解析を行って割と正確な地図が出来ている。
それによると、この大陸の西側の海を約2000kmほど渡ると新たな大陸があるという事がわかっていて、東側には逆に大陸はほぼ無く、·····いや、一応未発見の大陸が逆半球にあるけど、そこに行こうとするなら1万km近く移動しなくてはいけない途轍もない労力がかかるのだ。
「そうだ、東の果ての国はその大陸をも我が領地へとしようと画策し、この国同様にゴルヴェリア皇国にも同盟と言う名の支配を行おうとしていたのだが、あちらの国はそれを断った」
「·····そして意見を聞かせるため、王子を誘拐して人質にして脅したと」
「察しが良くて助かる、その通りだ」
·····なるほどね。
防音結界を張っといてよかったわ。
今調べたら、結構な数のスパイが紛れ込んでるし、聞かれてたらちょっとヤバかったかも。
「んじゃ連続で質問になっちゃいますけど、この国の人間たちの魔族に対する感情はどうなってますか?差別していたり、奴隷扱いをしていたりしていたり、嫌悪感を抱くようなことはありますか?」
「無い····· と言いたいのだが、かの国が魔族を悪とする教育を強制してきている、民の中にかの国のスパイが紛れ込み扇動しているのか、この国でも魔族に対し若干の嫌悪感を抱く者まで出てきてしまっているのが現状だ」
「他の国は?」
「友好的に思っている国は少なくない、どちらでもない国が過半数、嫌悪感を抱く国が少々と言ったところだな」
「なるほど、この国は友好的に近い中間くらいって立ち位置で良いですね?」
「あぁ、基本的に魔族を嫌悪しているのは東の果ての国とその周辺の取り巻きの国程度だ」
大体状況がつかめたわ。
やっぱり魔族は悪くないパターンだねこれ。
今回はそのパターンかぁ、まぁぶっちゃけ言ってRPGゲームみたいに完全悪者みたいな魔族の国ってほとんどないのよね。
魔族って割と長寿でバトルが好きなだけの優しい性格の人が多いし、何なら寿命が短くて常に焦ってなんかやらかしてる人間の方が凶悪だ。
今回も東の果ての国が国家の利権とか土地の拡大とかで隣の大陸に進出するために魔族の国を奪うつもりだったみたいだし、何なら戦争の原因になってるかなり面倒で厄介な国らしい。
·····これ、東の果ての国から王子連れ戻して国をぶっ潰せばよくね?
「·····あの、この国は戦争がしたくてしてる訳じゃなくて、魔族と和平交渉できるならしたくて、東の果ての国の支配下から逃れたいって少なからず考えてるって事でいいですか?」
「うむ、概ねその通りだな、此方に利の無い戦争なんぞ意味は無い」
軍事国家っぽいけど、一応ちゃんとはしてるのね。
確かに利益の無い戦争ならやる価値は無いだろうし、防衛し続けるのも厳しいだろうし·····
それに他の国も魔族に制圧されたり降伏している国はあるし、このままだとどんどん被害が拡大するだけだ。
んで、この戦争を終わらせる条件は二つ。
魔王軍の壊滅か、悪だくみをしている東の果ての国を潰すか·····
·····さっきから魔王軍に制圧されたり降伏した国を見てるんだけど、人々が虐殺されたり奴隷にされたりした様子はないのよね。
むしろ、人質になってるような感じに近くて人道的に手厚く保護もしているくらいだ。
やっぱり魔族も王子を連れ戻したいだけなんだろうな。
「·····決めました、残念ながら私は魔族の味方をします」
「··········そうか、この国を滅ぼすのか?」
「いいえ?そんな面倒な事しないですよ?もっと早く終わらせる方法を思いついたので」
「うむ、状況を見るにそっちの方が良さそうじゃしのぅ」
私たちが決めたルートは·····
「魔族に味方して、東の果ての国が誘拐した魔族の王子を奪還後、戦争と侵略を企てる王と上層部を徹底的に破壊して国を叩き潰します、そして王子を一旦この国に連れてきて、戦争締結の交渉をしてもらって、その後王子を魔族の国に連れて行きます、それでいいですよね?」
魔族でも人類でもなく、根本原因をとっとと潰してしまってあとは全部任せるRTAコースだ。
「·····私の一存では決めかねる、今日はお二人に部屋を用意させてもらった、そちらで休んでいただけないだろうか、明日には答えが出せるはずだ」
「わかりました、じゃあお言葉に甘えさせてもらいますね」
「うむ、未知の国の料理なども楽しみじゃからな、期待しておるぞ?」
「満足できるもてなしが出来るよう従者たちに言い聞かせよう、おい、このお二方を来賓室へ案内してやれ」
『『はいっ』』
「では此方へどうぞ」
どうやら今日は答えを出すのは無理っぽくて、これから会議とかを開くようなので私たちは休憩させてもらう事にした。
「·····最後に、此方から一つ質問だ」
「はいはい?」
「貴女達は何者なのだ?」
「ん~、何者って言われても·····」
「別に普通の女の子じゃな」
「そうか····· まぁいい、この無益な戦争を終わらせられるならば普通の女子にも縋るしか残されていない、全てが決まったら、その時は頼む」
「はいはい~、んでは~」
強面で頑固そうだけど、意外と柔軟な人だったみたいだ。
◇
戦闘服から何か武装はしてるけどギリメイド服と言えるメイド服を着たメイドさんに連れられた私たちは、城の中を移動して来賓室に案内されていた。
「はへぇ、意外としっかり····· いや、最後の戦いに対応できるように見た目より頑丈さに重きを置いてるんですね」
「よくわかりましたね、先程の方たちは地味で味気ないと仰られておりましたが、貴女方は理解できていたようですね、この城の意味を·····」
「最後の最後まで籠城して抵抗し続けるためじゃのぅ、庭園の木々も植物も全て食べられるか有用な物しかないのじゃ、窓もしっかり格子が付いておるからのぅ」
このお城はサークレット王国の城みたいに豪華絢爛というよりは、質実剛健な戦うための城といった感じがした。
どうやら勇者たちは地味な城と笑ってたけど、笑えるようなものじゃないんだよねコレ·····
もし首都であるここまで攻めてこられたら、ここに国民も避難させて全滅覚悟で徹底抗戦をするための城なのだから。
「·····本来の目的で使われない事を願ってますよ、この国の人は良い人が多いみたいなので」
「我々が戦うのが定めなのです、死んだらその時ですよ、この城を墓標にできるのであれば死んでも構いません」
「私は平和な国で生まれたんでそういうのはよくわかんないですよね····· 戦って利益を得るよりも、好きに生きて生きながらえることが一番なんで」
「そうですね、私たちも本当はそれが一番とは思っておりますが····· あの、これ以上はあまり····· 我々王宮勤めの者は国に命をささげることになっておりますので·····」
「あっ、なんかすいませんでした」
「いえ、では到着いたしました、勇者の皆様もいらっしゃいますので夕餉までお好きにお過ごしください、何かありましたら私に」
「わかりましたー、ありがとうございました」
「案内ご苦労じゃった、下がって良いのじゃ」
「いえ、私はオブリビア様のお付きのメイドですので付いて行きます」
「·····そうじゃったか」
という訳で、オブリビア·····って誰だっけ?
·····名前を名乗ったのあの姫様くらいだし、姫様の名前で合ってるよね?
私たちはオブリビア姫?のお付きのメイドさんと共に勇者たちが待つ来賓室に入っていった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「これなら別に協力してあげてもいいかなぁ····· とりあえず部屋についたらフィーロ君に連絡しよっと」
名前:エビちゃん
ひと言コメント
「魔族に対する差別が無いようで安心したのじゃ、差別してたら····· この城をこの国の墓標にしてやってたのじゃ」
名前:フィーロ
ひと言コメント
「ソフィちゃん、エビちゃん、大丈夫かな····· みんな心配してるよ、早く帰ってきて····· ███間も見つからないなんて····· ███間もソフィちゃんが居ないなんて····· お願い、帰ってきて、帰ってこれなくても、無事でいて·····」




