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TS賢者は今日も逝くっ!  作者: すげぇ女神のそふぃ
第五章 TS賢者は妻になるっ!
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現実はそんな甘くないから


 敵が魔王と魔族だと聞いた瞬間、私たちは大慌てで魔神姫で魔王で魔族のエビちゃんのツノを引っ込めさせた。

 幸いエビちゃんはツノが地面に根元までぶっ刺さってて隠れてたし、そこからさらに長い髪の毛でおおわれていたおかげで誰にもバレていなかったみたいで、ギリギリで事なきを得た。


 そんで今は角ナシで普通の人間っぽく振る舞っているエビちゃんと私と日本からの転生者の4人組と、この国のお姫様のオブ····· おぶ····· オリーブだっけ?オブシディアンだったような····· 忘れちゃったわ、とりあえずオブなんとか姫様に先導されて国王様の居る王の間へと向かっていた。



 いやーでも滑稽だよね、異世界転移に巻き込まれた2人が神様と魔王だったなんてさ。


 ·····ぶっちゃけ私の管理してない世界なんて心底どうでもいいから早く帰ろ。



「皆様、この先に王が居られます、異世界より召喚された者ですので多少の無礼は目を瞑っていただけるとは思いますが、くれぐれも失礼の無いよう」


「王様に会えるなんてな、私も一時期そういう事にハマっていたけど、まさか本物に出会えるとは」

「目上の人に対する態度だったら大丈夫だろうな、気を付けておこう」

「王様ってなんかいいイメージ無いけど、どーなんだろ」

「謁見ってやつですな!ぜひ写真に収めたいけどやったら処刑ですなぁ·····」


「ま、ほどほどにやっておく?」

「うむ、頭を下げる義理も無いしのぅ」



 って考え事をしてたらどうやら王の間についたようだ。

 もし王がブクブクに太った銭ゲバ王だったら強制ダイエットで厚さ1cmにしてやるわ。


 そして王の間のドアが開くと·····



「·····そう来たかぁ」

「想定外のパターンじゃな」


「「「「··········は?」」」」


「ここが王のいる場所、戦争の総司令部です」



 ドアの先にあったのは、元々は王の間というか謁見室だったとわかるくらい豪華な内装の部屋だったのだが、玉座のあるべき場所には一応玉座はあるがその前に重厚感のあるテーブルが置かれ、謁見室の段下には沢山のテーブルや椅子が並べられ、大量の人々が何やら作業や書類の確認などを行っていた。


 そして、落ち着いた重厚感のあるテーブルと全く合ってない豪華絢爛な玉座の後ろにある大窓のあたりで、1人の質素な軍服らしき服を着た初老の男性が外を見つめていた。

 ·····その頭に一応とばかりに乗せられた王冠がなければ、軍人だと勘違いしていただろう。



「国王様、『アビロ作戦』が成功いたしました、そして召喚された『ヴレーヴ』様達をお連れいたしました」


「·····結構、ご苦労だった」


「はっ!」



 そして老人は私たちの方に振り返ってきた。


 ·····なんというか、海外の映画俳優に居そうな悪役っぽい顔の無精ひげを伸ばした割と筋肉のある初老の王様だった。


 王様というか将軍とか軍曹って言われた方がしっくりするわ。



「·····君たちが我々の最後の希望か、まずは話をしよう、そこの会議室がいいだろう、ついてきたまえ」


『『はいっ』』

「はぁい」

「承知したのじゃ」





 割とアグレッシブな王様に連れられた私たちは、作戦会議室のようなデカいテーブルのある部屋へと案内され、椅子へと座らされていた。


 ·····なんつーか、異世界感がチグハグな世界だなぁ。



「まずは君たちに我が国、ウルティナ王国の現状を説明しようと思う、使用人、地図を」



 王様の一声で部屋の奥からメイド服ではなく軍服を着て頭にホワイトブリムだけ乗っけたなんとも違和感溢れるメイドさん達が入ってきて、机の上に地図や資料を広げていった。



「この国はこの大陸の西方の果てより侵略を続けてきている魔族の国『ゴルヴェリア皇国』によって侵略を受け続けてきている、その戦況は芳しくなく、少しずつこちらの戦力は削られ、ついに魔族は王都への最終侵攻を仕掛けると宣戦布告をしてきたのだ」



 地図を見ると、ちょっとユーラシア大陸っぽい感じの、多分この時代特有の正確じゃない地図の西の方に禍々しい城の絵があって、中央よりちょっと東側にこの国らしき城の絵があった。


 そして地図には幾度も書き加えられたのであろう線やバツ印が書かれており、ジワジワとこちらへ線が近付いてきているのが分かった。



「·····戦況はだいぶ芳しく無いね」

「うむ、陥落寸前じゃな·····」


「その通りだ、故に我々は人間国家に伝わる伝説の秘術、勇者召喚を用いて勇者を召喚し、魔族を殲滅する戦争を仕掛けることにしたのだ」


 なるほどなるほど·····


 ·····書いてある文字も大体解読できたわ。

 そしてなんで魔族が攻めてきてるのかも、攻めてくる理由も、戦争の原因も凡そ解った。



「はい質問っ!」


「·····王に対して不遜な態度だな、だがその怖気づかない態度は面白い、特別に答えてやる、なんでも聞くが良い」


「まずなんで攻められてるんです?ぶっちゃけ西も東も地理的に異常で植物が育たないという事や海産物が取れない事は無いですし、もしそうだとしても人間が住んでいた痕跡のあるこの大陸の半分まで行けば土地は十分足りているはずです」


 そう、戦争の原因は大抵が『自分の土地に無いモノを手に入れるため』だ。

 対象は水、土地、海、人、資源など色々あるけれど、大抵が『無いものを得るため』に違いはない。


 そして例外的に起きる戦争は『報復』『文化的原因』『政治的原因』の3つだ。

 文化的原因は、民族間の対立のようなイデオロギーや差別を発端としたモノから、宗教が原因の戦争だ。


 政治的原因は、ざっくり言うと独裁者とかが国内の不満をかき消すために戦争を起こしたり、他国が強化されるのが不安になって先制して潰すために起こる戦争だ。



 で、最後の『報復』は·····



「何が言いたい」


「·····戦争の原因、こっちにあるんじゃないですか?」



 先に嫌がらせをしてきた相手に対する報復だ。



「·····違うな」


「へぇ、嘘を誤魔化すの上手なんですね、眉一つ動かさないし呼吸も声のトーンも乱れていない、でも魔力が一瞬多めに漏れ出していましたよ?それに私の発言を聞いた瞬間、僅かに腕の筋肉が緊張して汗腺が活発に動き始めていましたよ」



 実は私は既に上空に千里眼を飛ばしていて、この大陸を目で見ていた。


 そして魔力の流れや海流や大気の動き、気温、地質、気候、その他色々をすべて解析していたのだ。


 その結果、魔族の国は、戦争の引き金となる土地の栄養不足による食糧難や土壌汚染など略奪を必要とするような無く、むしろ他と変わらないくらい豊かで、その海は西の端で海流の合流地点になっていて魚が豊富に取れる豊かな国だ。

 故に、資源を略奪する必要は無いに等しい。


 更に魔王の国も見えたが、城にはお堀はあるのだが橋が石橋で頑丈そうなくらいで、城壁などもそこまで頑丈でもなく、こことは違って戦争の為に作られた城や城下町ではないとわかったし、文化的にもかなり栄えてるようで人も多く、奴隷を多用して成り立ってるような社会では無さそうだった。

 つまり人間を確保するための戦争でも無いという事だ。


 更に魔族には魔族の宗教があるようだけれど、一神教ではなく多神教で、某十字架教や黒い石教と違ってかなり穏便な、神道やギリシャ神話のような宗教観らしかった。

 故に宗教が原因の戦争でもないと判断出来る。



 まとめると、魔族側には人間を侵略する必要はほぼ無いのにもかかわらず、広いこの大陸を中央まで攻め滅ぼすほどの何かがあったと、人間側を攻め込むほどの何かの理由があったという事になるのだ。



 ·····まぁ、察しは付いてるけどね。



「この小娘が·····」


「魔族の生態として、確かに人間を食べることはあると思います、私の居た世界がそうでしたから、ですがそれはあくまで『嗜好品』、生活に必須な物ではなく、普段は人間と変わりない食事をとっているはずですよ?」


「それは·····」


「·····勝手に呼んどいて、しかも自分たちが原因の戦争への参加という身勝手な行為につき合わせるのやめてくれません?ハッキリ言って、クソほど迷惑なんですけど」



「おい君、流石にそれは憶測で言うのは·····」

「そうだ、違うかもしれないだろ」

「うんうん、攻めてきてるのは魔族なんでしょ、悪いのはアッチでしょ」

「勇者として早く戦いたいなぁ、ははぁっ!」



「あ゛?貴様らどうせ温室育ちじゃろ、怪我した事あんのか?肉が切れて骨にまで達して、血が噴き出して、骨を何本も折るような怪我した事あんのか、命の危機感じた事あんのか?·····ワシのように、戦争で友も家族も何もかも失った経験が、貴様らにあるのか!!戦争はそんな甘っちょろいモンじゃないのじゃ!!」


「私は戦争の経験は無い、でも何度も死ぬ思いをしてきて傷付いてまで人を助けてきたのよ、そして同時に人から悪意だって向けられてきた、·····この国は、この世界は今『転生して無双しちゃいました☆』だとかそんな優しいストーリーじゃないのよ、大した危険に遭遇した事もないアンタらには無理だよ」


「い、委員長は通り魔を捕まえて警察から勲章をもらった事もあるんだ!それに俺らだって·····!」



「·····ふーん、その程度なんだ、そんな程度の覚悟なら大人しく守られてな」

「それにここも安全とは限らぬ、退け貴様ら」



 その瞬間、私とエビちゃんは魔法を瞬時に何個も発動し、呑気な事を言ってる温室育ちの学生に、確実な死をもたらすであろう超高温の炎の槍を突き付け、私はガイウスの槍を委員長と呼ばれている女子を囃し立てていた男子学生に、エビちゃんは既に達人級の腕前になっている刀を使って委員長と呼ばれていた学生の首に刃を押し当て、一瞬だけ殺気をぶつけた。



『『ひっ!!?』』


「·····私たちはお前らみたいに平和な世界で暮らして無いんだよ」

「うむ、ワシは本当の戦争を経験しておるからのぅ、もう二度とあんなのはこりごりなのじゃ」



 ·····私の世界は、私の力で『テクスチャ』を上書きし、明るいように見えている。

 しかし、それは私が見えてる範囲で、この小説で見せてる範囲だけでしかない。


 ゴブリンに犯されて死ぬよりひどい目にあう女性も沢山いる、盗賊団に村が襲われて全員が目を瞑りたくなるほど残虐に殺されるなんてこともよくある、親が目を離した隙に子供が魔物に生きたまま食われてる事も、戦争が起きて沢山の人が死ぬことも、飢饉で人が死ぬことも、親を失って悪の道に走るしかなくなった子供も、大人になれず死んで行く子供たちも、スラム街も、沢山ある。

 今でこそ準Sランクに至ったレミア(あの子)だって、最初は私の目が届かない範囲に居たせいで下半身を挫滅し瀕死になっていた。

 そしてそんな出来事が『当たり前』なのが、私が住むあの世界なのだ。


 ·····私とエビちゃんはそんな世界で生き抜いてきて、何度も死んで死にかけて、痛い思いをして、沢山の命を奪ってきた。



 日本では決して経験できない、リアルな異世界を生きてきたんだ。



「·····現実は甘くないよ、王様もね」


「貴様ら、何者だ」


「私ですか?そうですね、異世界転生を経験して、神になった一人の少女と」

「かつて人類と敵対して殺され、蘇り人と共に生きて人を守ると決意した魔神姫じゃな」



 そして、私たちは本来の姿を現した。



 私は全身に神属性の魔力を纏い、頭上にはあふれ出す魔力が渦を巻いて光の環となって渦巻いて、背中にも魔力が溢れ出して纏まった光の翼が顕著した。


 エビちゃんはツノを出して、4枚になった禍々しい翼を背中から生やし、普段の悪魔っ娘な尻尾ではない、エビちゃんの魔神姫としての刺々しいおぞましい形状の槍のような尻尾を生やした。



「·····私は、返答次第では魔族にも加担しますし」

「ワシは人間国家に味方もするのじゃ」



「さてと、もう一度聞きますよ、この戦争の原因を教えてください」




 異世界に最も呼んじゃいけない2人が、その理由を国王と呑気な勇者たちに知らしめたのだった。




名前:ソフィ・シュテイン

ひと言コメント

「私、戦争とかマジで嫌いなんだよね」


名前:エビちゃん

ひと言コメント

「うむ、特にワシは身勝手な理由で始まった戦争に巻き込まれるのが心底嫌なのじゃ」


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