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TS賢者は今日も逝くっ!  作者: すげぇ女神のそふぃ
第五章 TS賢者は妻になるっ!
584/729

刀とヴァイオリンは使いようっ!


 翌日·····



「おっはよーエビちゃん」


「うむ····· くあぁぁっ、眠いのじゃ·····」



 深夜に帰ってきてぐっすり熟睡した私は早起きをしてエビちゃんを待ち構えていると、目覚めて顔を洗ったのであろうエビちゃんが洗面所から出てきた。


 私がエビちゃんを待っていた理由は、もちろんあの刀『神霧視国広』をエビちゃんに渡すためだ。



「エビちゃんちょっとこっち来て」


「なんじゃ、下らん用事だったらブッ飛ばすのじゃ」


「·····前々からエビちゃんが欲しいって言ってたやつ、手に入れたよ」


「本当か!?早うよこすのじゃ!!」


「いいよ、はいどうぞ」

\ぬとぉっ·····/



 そう言って私は冷蔵品用インベントリから剣を取り出した。



「ほう、なかなか見事な剣じゃのぅ····· くっそ生臭いのじゃが、よく切れそうな武器じゃな、でも生臭いのじゃ、この異常なほど生臭い剣の名はなんと言うのじゃ?」


「えっ?カジキマグロの吻だよ?」


「お主、これでブッ刺すぞ?」


「キャーコワーイ!っと冗談はさておき、あっそれいる?」


「いらんわこんなもの!!!」

\ドスッ!/

「ぐえっ!!」


 剣というか、カジキマグロの剣みたいになってる上顎の『吻』っていう部位を渡してみたら、それはもう見事にノッてくれた。

 流石はエビちゃんだ、最近大阪の吉〇新喜劇の動画を見て爆笑してるだけあってノリがいいわぁ。


 さてと、カジキマグロの吻が頭に刺さってるけど本題に移ろうかな。



「んじゃ悪ふざけは終わり、いでぇっ!!!いったた····· 結構痛いねコレ·····」


「なんじゃ、まだ何かあるのか」


「んっふふ·····」



 私は頭に刺さったカジキマグロの吻を引っこ抜いて、噴水みたいに噴き出す血を魔法で体内に戻しながら治療して、そして吻を軽く掃除してインベントリに入れて、手もちゃんと洗って綿の白手袋を着け、その代わりに別のモノを取り出した。



「これなーんだ?」


「ま、まさか、刀か·····? でもどうせお主が····· いや、それは····· まさかっ!!」


「銘を『九州日向住国広作 天正十九年辛刁弐月吉日平神仏』、号を『神霧視(カミキリムシ)』と呼ぶ、幻の名刀だよ」


「国広ってあの、あの、堀川国広か!?それに神霧視国広などという刀は聞いたことが無いのじゃ·····」


「そうだよ、あと聞いた事なくて当然だよ、だって時間遡行をして会って直々に作ってもらったんだもん」


「時間遡行と聞くとなんかモヤッとするのじゃ····· じゃが、その、わ、ワシのためにか·····? 伝説の刀匠が·····?」


「うん、エビちゃん用だよ?しかも『()に捧げる為に最高傑作を作って欲しい』って頼んだから、正真正銘の堀川国広の最高傑作だと思うよ」


「あうぅぅぅううっ·····ソフィありがとうなのじゃー!!!」



 エビちゃんは感極まって目を潤ませ、私に飛び掛かって抱きついてメチャクチャ喜んだのだった。





 その後、あの時代で売ってた刀掛けや手入れ道具(一部は現代の高品質なモノ)を取り出し、エビちゃんに渡していた。



「んでコレが刀掛けで、こっちが刀の手入れ道具ね、手入れの仕方は知ってる?」


「当たり前じゃ!!常識じゃろう!!」


「常識なんだ····· まぁいいや、じゃあ早速抜刀してみたら?」



 どうやらエビちゃんにとって刀の手入れ方法は常識らしい。


 まぁ、こっちの世界でも普通に武器の手入れとかしてるし、日本よりは馴染み深いかな?

 ·····私の持ってる『星核合金』製の武器はさびないし切れ味が落ちたりしないからさっと水洗いでOKだからほとんどやった事ないけど。



「よいのか?では失礼するのじゃ·····」



 そしてエビちゃんは机の上に置いてある刀掛けから『神霧視国広』を取ると、柄と鞘を持って眼前で左右に引っ張り、鞘から刀を引き抜いた。


 シュララララララッ·····


 という音を奏でながら、その刀身が鞘から抜き放たれ、日の目を浴びた刃は光を受けるとヌルリと輝き、まるで光をも切り裂いてしまっているのではないかと感じてしまうような美しくも恐ろしい光を放ち、見事な刃文を浮かび上がらせた。



「すっごぉ····· あぁ、私の作ってたのって、しょせん贋作だったんだ·····」


「こ、これは····· 見惚れてしまうのじゃ·····」



 流石は神仏に捧げるために作った刀だ·····

 もはや実戦刀というレベルを通り越して、芸術作品の域にまで達してるわ·····


 ·····本当のことを言えば、私が魔法を駆使して作った星核合金製の刀やヒヒイロカネ製の刀『神炎』の方が性能は圧倒的に上だろう。


 だが、この刀には、『神霧視』には、後世に名を遺す職人が己の技術、思い、魂が込められた、まさに神刀と言ってもいい威厳を放っていた。


 本当の神である私でさえ、鞘から抜いただけで圧倒されてしまうほど美しい刀だ。


 魔力のあるこの世界において、魂が込められ造られた道具は時に本来出せる性能を遥かに超える力を持つ。

 この刀も、エビちゃんが使い続け造り手の想いを理解した時には、ただの鋼鉄の刀を超える神をも切り裂く刀となるだろう。



「ソフィ、試し切り、してみても良いか?」


「もちろん!んじゃ庭に行こ!」



 そして『神霧視国広』は美術品ではない。

 神匠が己の持てる力をすべてつぎ込んで作った渾身の一振には刃が付いている。


 否、刃が付いているからこそ、刀として成り立つのだ。



 その切れ味を確かめるため、私たちはディメンションルームの庭へと向かった。






 庭へとやって来た私たちは、早速試し切りをするため、えーっと、あのー、なんていうんだあの試し切りするときに使う畳を巻いたヤツ。



「·····畳を巻いたヤツ召喚!」


「適当じゃな·····」


「だって名前わかんないんだもん」



 ちなみに後に調べてみたけど、いまいち正式名称は決まってないような感じだった。

 畳表とか巻藁とか色々な名前があるらしい。


 まぁ、名前がわからんくても現物は魔法で出せたので問題ない。



「さてと、もう切ってもよいか?」


「いいよ!鞘は預かっとくね!」


「助かるのじゃ、ふぅ····· ではゆくぞ」



 エビちゃんは刀を構えると目を瞑って精神統一を始めた。

 そして精神が整った瞬間、刀を振りかぶってえいやと一気に刀を振り下ろした。


「ふんっ!」


 ガスッ!!!


「·····ん?」

「·····む?」



 ·····振り下ろされた刀は巻かれた畳表に袈裟斬りで左斜め上から侵入し、畳表にめり込んで止まった。


 あっるぇ····· スパッと切り落とせるはずなんだけど·····



「·····もしやこれ、素人には扱えぬパターンか?」


「そういえば、刀って素人が振って切れるようなモノじゃないって聞いたことあるわ·····」


「じゃが、お主の持っておる刀じゃと普通に切れたよな?どういう事なのじゃ」


「えーっと、私のはインチキで触れただけで切れるから·····」



 そう、私は趣味で刀を何本か作っているが、全部インチキだから切れてしまうのだ。

 私の刀は表面こそ鋼鉄や玉鋼などの素材を使っているけど、実は刃の部分に星核合金を使っているお陰で技術が無くてもスパッと切れてしまうのだ。


 だから、この本物の純粋に技術だけで作られた刀はそれ相応の技術が無いと切る事が出来ないのだ。



「·····私のバイオリンと一緒だ」


「むっ?どういう事なのじゃ?」


「実は私もエビちゃんの刀を貰うついでにバイオリンを貰って来たんだよね、ほらこれ、ストラディバリウスって聞いたことない?」



 私はインベントリから楽器ケースに丁寧に収納したストラディバリウス『ソフィ』や弓を取り出すと、それっぽいポーズをしてみた。



「あー、なんか、あの、テレビによく出ておる陽気なモジャ頭の男とかヒステリックなオババが持っておる、やたらめっちゃ高い楽器じゃったかのぅ?」


「そうそれ、それを作ってもらったんだけどさ?鳴らしてみたんだけど世界の終わりみたいな音がするって言われちゃって·····」



 そう、実はヴァイオリンも素人が持って適当に動かしただけで鳴るような楽器では無いらしいのだ。


 私がやった時もかろうじてクッソ汚い音が出た程度で演奏まで程遠かったし·····

 ちなみに今朝もちょっと練習しようと動画を見ながら庭でやったけど、あまりにもひどい音すぎて世界樹さんが頭の上に魔力の実とか枝を落としてきまくって抗議してくるくらいにはヘタクソだ。


 ·····今度からは新しく作る予定の防音演奏室で練習しようと思う。



「いや流石に世界の終わりは言いすぎじゃろう?そんな音なんぞ·····」



 ギュヴィエアァアアアアアアアアアッ!!!

\のじゃわぎゃっ!?/


「·····ね?」


「ま、マジで世界の終わりかと思ったのじゃ·····」



 私が軽く弓でバイオリンの絃をこすると、あの時代の人らが終焉の天使のラッパと勘違いするほどの酷い音を鳴り響かせた。

 その音を聞いたエビちゃんはすべてを察したようだ。





 その後、エビちゃんは意地でも何かを切りたかったのか畳をガスガス切りつけて終いにはキエエエエッ!と叫びながら斬りかかったらなんとか無理やり叩き切れたり、薩摩示現流を使えるとはさっすがエビちゃん!なんて言ったらキレたエビちゃんが私に切りかかろうとして大ゲンカになったりして、朝食を食べたあと、リビングでもう一度集まっていた。



「·····エビちゃん、お互い練習頑張ろうね」


「うむ、じゃが少し心配なのじゃが·····」


「なに?」


「練習するとなると、この刀じゃと不安なのじゃ····· もし壊したら取り返しがつかないのじゃ·····」


「なるほどね?」



 どうやらエビちゃんは『神霧視国広』を使って練習をしてたら壊したり曲げちゃったりしないか不安だったようだ。

 確かにバイオリンに比べると壊れたりする可能性高いよなぁ·····


 というかバイオリンに関してはよっぽどのことが無い限り、ネックを持ってぶん回してたたきつけたりしない壊れないだろうから気兼ねなく使えるけど、日本刀に関しては刃物だから刃こぼれしたり刀がゆがんだりするリスクがあるもんね。



「んじゃ練習用の刀作ってあげようか?」


「それがいいと思っていたのじゃが、ワシはコレが好きなのじゃ、これ以外使いたくないのじゃ!」


「うわめんどくさ····· んじゃそれを使って練習するの?壊しちゃうかもよ?」


「それも嫌なのじゃ!」




 うわぁめんどくさ·····

 大人しく私が魔法で再現した複製日本刀を使っとけば·····


 ん?あっの手があったか!



「エビちゃんいい事思いついた、それちょっと貸して」


「嫌じゃ!どうせ星核合金でコーティングとかするんじゃろう!嫌じゃ!!」


「違うから、いいから貸してって!!」


「むぐぐぐぐぐっ!」

「ふんぬぬぬぬぬ!」



 そして力比べの結果、鞘とかを傷つけたくなかったエビちゃんが手を離し、無事に私の手元に『神霧視国広』がやってきた。



「ソフィ、お願いじゃから変な事はしないでくれなのじゃ····· ワシの愛刀を変にしないでほしいのじゃ·····」


「大丈夫だから、ちょっとまってて」



 私は心配しまくってるエビちゃんをよそに『神霧視国広』をアカシックレコードを利用した魔法による情報解析と分子単位でのデータの保存を行い、そのデータを取り込むことに成功した。


 あとはこのデータを複製して、ちょっと細部を変えて一目で偽物とわかるように細工してっと·····



「創世魔法発動、アカシックレコードより『模造刀国広』のデータを分子単位で取得·····完了、創成出力魔法『Genesis Output』発動!」


 キュィィィイインッ!!


「おおっ!?」



 私は私にしか使えない万物を生み出す魔法『創世魔法』を使うと、私の手元に一振の刀が出現した。


 その形状は『神霧視国広』にそっくり·····否、原子単位でその刃は完全に再現された本物と全くおなじ刀がそこに現れた。


 ·····が、絶対に本物と見間違う事は無い。


 何せ柄や鞘のデザインにハートが多用されまくっててリボンやキラキラの模造石がちりばめられた女児向けなデザインになってるし、しかも全体がド派手なピンク色になっている某おもちゃメーカーが売ってそうな感じに仕上げた逸品だ。

 で、よく見ると刃紋もハートマークになってる拘りも込めて、堀川国広が生涯の全てをつぎ込んだこだわりを別角度からのアプローチで再現した、私渾身の力作だ。



 ·····そう、私はあの刀をほぼ100%コピーして全く同じものを魔法で再現することで、いくらでも使いつぶせる偽物の刀を生み出してしまったのだ。

 一応本物をそっくりそのまま創り出すことも可能だけど、それをやってしまうと本物がある意味がないので、偽物って一瞬でわかるデザインにしてしまったのだ。


 ·····我ながら邪道だとは思ってるけど、エビちゃんの望みを叶えるにはこれしかなかったのだ。



「できた、切れ味とか性能は本物と99.9%同じだけど練習用だから見た目もダサくして、本物には及ばなくしてみたんだけどどうかな?」


「よいのじゃ!これなら遠慮なく振り回せるのじゃ!·····まぁ、色とかデザインについては見分けるために考えてくれたのじゃろうから咎めないでおいてやるのじゃ」


「よかった····· ダメなら紫と蛍光グリーンにしようかとか考えてたからさ·····」


「お主の趣味じゃろそれ」


「·····てへっ☆」


「はぁ····· ちなみに号はなんじゃ?」


「え?号ってなんだっけ·····」

「名前じゃ名前、神霧視とか山姥切国広みたいな刀の名じゃ」


「あーそれか、·····居る?これに」

「あった方がええじゃろ」


「日本人っぽい考え方だなぁ·····うーん」


 どうしよ、DX日〇刀とか·····?

 いや別に炎とか水とか出ないただの刀だしなぁ。


 きゅあきゅあ!幻煙刀♡叡智(げんえんとう えいち)でいっか、うん。



「·····『きゅあきゅあ!幻煙刀♡叡智』とかでいい?偽物ってめちゃくちゃわかりやすいし見た目に合ってるでしょ」

「まぁ、うん、そうじゃが····· 変な事言うたら変身しそうじゃなこれ·····」


「なんでバレた」

「貴様ッッッ!!またやらかしたな!?貴様は血塗れの賢者姫(ブラッディ・ソフィ)にでもなっておれ!!」


\ズガスッ!!/

「あぷぱっ!!?」


 ちなみに変身機能は無い、ジョークなのに頭カチ割られた。





 何にせよエビちゃんの練習用の刀は作れたので、あとはお互い練習を重ねて、私はバイオリンを、エビちゃんは刀を使いこなせるように頑張ろうと思う。


「ところでエビちゃん、お腹だいぶ大きくなってきたのに刀を振り回せるくらい動けるの?」


「むっ?多少キツいのじゃ、まぁ、激しく動かなければしばらくは大丈夫なのじゃ」



 んで問題なんだけど、私とエビちゃんは絶賛妊娠中で、エビちゃんに関してはもう服を着てても分るくらいお腹が大きくなってきてて、もうあと1ヶ月も経てば妊娠5ヶ月になって刀を振るのが困難になってくるだろう。


 私に関してはまだ1週間をちょっと過ぎた程度だし、前に計算間違いをしててちゃんと計算したら出産は11月になる予定だからね。

 ·····そうそう、私、めっちゃ勘違いしてたんだけど妊娠周期って着床からじゃないのね、初めて知ったわ。


 だから本当は1週目じゃなくて2~3週目なのよね·····


 ま、そこら辺はテキトーでいいっしょ、11月上旬に産まれるのは確定なんだし。



 それに話も逸れちゃったし。



「私は別にバイオリンだから妊娠してても弾けるけどね~」


「下手糞な音楽を子に聞かせるのは悪影響を与えすぎなのじゃ、やめておけ」


「あぁん!?ここから上手くなるしぃ!!上手になっていい曲を聞かせてあげて元気な子になるの確定だしぃ!!!」


「ふんっ、せいぜい子が音痴じゃないことを祈っておるのじゃな」


「むがぁぁぁああああああああ!!!」



 怒った私はストラディバリウスでエビちゃんの頭をストラディして思いきりバリウスしようとしたが、値段を思い出して手を止め、なんとか怒りを抑えて平和的に喧嘩を止めてお互いに練習の続きをはじめたのだった。




名前:ソフィ・シュテイン

ひと言コメント

「妊娠周期ってよくわかんないよなぁ····· 最終月経から計測を始めるって、赤ちゃんがいないのに妊娠してる期間があるなんて思わないじゃん·····」


名前:エビちゃん

ひと言コメント

「ふっ!よし、なんとなくコツは掴んできたのじゃ、じゃが難しいのぅ····· ふんっ!あっ曲がったのじゃアアアアアアアアアっ!!!?ソフィィィィィイイイイ!!直してほしいのじゃぁぁぁあああああっ!!」


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