タイムトラベルは私的利用だけにしようね☆
ある日の事·····
私は本体ではなく分体に意識を憑依させて、さらに分体をとある目的のみに限定してかなり私本体での活動に近くなるようチューニングした分体で、日本の栃木県上空にステルス状態で浮かんでいた。
今日の目的は日本のとある場所で、それがこの栃木県に居るはずなのだ。
·····いや、間違った、今はもう居ないけど、ここにいたはずだ。
「全く、エビちゃんのやつめ、面倒事押し付けてきやがって·····」
そして今の私は疑似神化状態で、全身に美しい羽衣を身に纏い、身長をのばして、髪を伸ばして神々しい後光を魔法で作ったThe神様な感じになっている。
むしろモリモリのマシマシのアブラカラメにしすぎたせいで胡散臭いくらい神様だ。
「今が20XZ年の12月で、ターゲットが居るのは····· 約430年前か」
·····そう、私がしようとしているのはタイムトラベルだ。
んで目的だけど、エビちゃんの趣味に付き合わされて無理矢理行かされたんだよね·····
あーもう、ガイア様に時間遡行の許可を得るのめっちゃ大変だったし、私的利用に限って許可するって条件を付けてなんとか許してもらって·····っていう事があってマジで大変だったんだよ?
でも私もちょっとほしかったものが手に入りそうだし、入念に事前調査をして、目的の時間まで行く計画を立てて今日ついにこの日がやってきたのだ。
「おっともう21時か、ターゲットはもうすぐ寝てるかな?よし、行くか!!『TimePotation』!!」
チュインッ!
◇
◆
◇
◆
◇
◆
時間旅行魔法を使った瞬間、私の眼下に広がる景色から一気に光が失われた。
それもそのはず、ここは430年間の天正19年(1591年)の安土桃山時代の日本なのだから街灯なんてあるわけないし、あっても灯篭や提灯くらいだろう。
「うわ星綺麗、さすがは安土桃山時代だなぁ····· っと、見惚れてる場合じゃない、ターゲットを探さないと!えーっと、名前なんだっけ····· 思い出した、『堀川 国広』だ」
私のターゲット····· いや、エビちゃんから接触を頼まれていた人物は『堀川 国広』という安土桃山時代の刀工で、数多くの名刀を作って残している人物だ。
彼が打った有名な刀には聞いた事がある人も多いかもしれない『山姥切国広』などがある、現代にもその名を遺す伝説級の刀の職人だ。
そう、私はその伝説の職人に会いにきていたのだ。
私の調査では国広は1590年に栃木県の足利あたりで『山姥切国広』を作ったとされていて、今はそれが作り終わって落ち着いている上に全盛期だって書いてあったから、一年後の1591年にやって来たのだ。
·····ここまで言えばもうわかるよね?
そう、私が堀川国広に会いに来た理由は、エビちゃんが最近某刀の擬人化ゲームにドはまりしてて、『ワシにも刀を寄越せー!!稀代の名工の刀が欲しいのじゃぁぁぁぁああああああ!』ってクソほど騒いで毎日100回くらい言ってきたから最初は怒ってたんだけど、もう私も疲弊してきて諦めてきたのだ。
ちなみに最初は作ってあげるって言ったんだけど、エビちゃんが『いーやーじゃー!!お主ではなく山姥切国広とか燭台切光忠とか和泉守兼定を作った刀匠の刀がよいのじゃー!!』って言ってダダをこねた結果、もうどうでもよくなって、今こうなってるって訳だ。
話は長くなったけど、結論を言うと私は『寝ている堀川 国広を叩き起こして、寝ぼけてる間に神と名乗って『刀を作ってくれ』って言って刀を作らせる』という作戦を実行しに来たのだ。
·····史実に無い、ロストナンバーの新たなる刀の新造をお願いしに来たという訳だ。
まぁこの時代の人ってよく夢で神様に会ったとか言って色々やらかしてるし、堀川国広もサクッと信じてくれるでしょ。
「えーっと、『堀川国広』でサーチ開始!やっぱり居た!!」
そして堀川国広は予想通り栃木県····· この時代では下野国の足利学校近くに居るのを見つけることに成功した。
実は堀川国広は山姥切国広を作った時は小田原に居たという説もあるんだけど、この世界線では栃木に居たようだ。
あっそうそう、この世界と読者さんの世界は世界線がちょっと違うから歴史もちょっと違うよっ☆
これから起こる事が歴史の教科書にも文化財の資料にも載ってなかったら別の世界線だよ☆
「よし、行こう」
そして私は覚悟を決めて、切られないかちょっと心配しながら堀川国広の元へと向かって行った。
◇
下野国某所
私は魔法を使いながら家の中に侵入すると、布団で寝ている人物の枕元に立って部屋に防音結界と遮光結界を展開し、早速作戦を開始した。
「さーてと、優しくねぼけるくらいで起きるように調整して·····『ウェイクアップ』っ!!」
「·····む、なんだ····· 何奴!」
目覚まし魔法を使うと、堀川国広はモゾモゾと動いて起き上がった。
どうやら無事に目覚めてくれたようで、寝ぼけまなこで私を見ると露骨に警戒し、床の間に置いてあった刀を掴んで構えた。
『貴方が堀川国広様でございますね、本日は貴方に折り入ってお願いしたい事がありまして、天より参りました』
「·····貴女はいったい何者だ?」
『私でしょうか?私は貴方の作る刀剣に見惚れてしまい、居ても立っても居られなくなり、天より舞い降りた者でございます』
「·····さすれば、貴女は神や仏の類か?」
私は警戒している堀川国広に微笑みかけた。
まぁ、たぶんこれで私を神とか仏とかお釈迦様か何かと勘違いしただろう。
·····嘘は言ってないよ?事実この前エビちゃんと一緒に和泉守兼定見に行ったけどめちゃくちゃ凄くて見惚れたし、早く私の目的の物も欲しいから居てもたってもいられなくなったし、物理的に天から降りてきたからね☆
それはさておき、そろそろ本題に入ろう。
『貴方に折り入ってお頼み申し上げます、私のために一振りの刀を、貴方が作る最高傑作と言える刀を作っていただけないでしょうか』
「·····良いだろう、我が腕が神仏に認められ、神仏の世界に広まるのであれば光栄だ、何か要望はあるか」
「実際に使え、使用に耐えられるものであれば構いません、どうかよろしくお願い申し上げます」
「わかった、私の人生を掛けた最高傑作を作ってみせよう」
「感謝します、完成した刀は····· そうですね、床の間に刀掛けを使って飾っていただけますでしょうか」
「承知した」
「では私は行きます····· とその前に、もし貴方の作った刀が私の目に叶えば、その暁に貴方が神代の名工であると認める書状をしたためて差し上げましょう、それと心ばかりのお礼もいくつかご用意させていただきます」
「·····フッ!承知した、この堀川国広、此迄の全てを以て神々さえ驚愕せん刀を作って見せよう」
「お願いしますね、では私は天から見守っています、·····どうかよろしくお願いします」
そう言うと、私は魔法を堀川国広に掛けて眠らせて、風邪をひかないように布団をかけてあげて家から抜け出したのだった。
『TimePortation』
◇
チュインッ!!
「っととと、よし!とうちゃーく」
そして二度目の時間超越でやって来たのは、あれから約1ヶ月後····· 正確には29日後だ。
私は未来視を使っていつ頃完成したか見てみたところ、29日目に床の間に刀を置いたのが見えたので、さっと取りに来てしまったのだ。
·····ちなみに、作ってる風景は彼にくっつけた自動制御の視認干渉不可能な魔導カメラで撮影してあるので、それも回収予定だ。
そんで私はついさっきと同じ手段で侵入·····しようとしたが、ちと大事になっていた。
なんか堀川国広のいる部屋の周囲とか屋敷の周りに、妙に見覚えのある家紋をつけたお侍さんが沢山いるのよね、·····うん、某ご隠居様が見せつけまくってるせいで見覚えのありすぎる『葵の御紋』が。
んで、屋敷は空からわかるくらい松明が炊かれまくり、とんでもない厳戒態勢だ。
·····こりゃアレだな、堀川国広さん最近この辺りを豊臣秀吉から領地に貰ったばかりのとあるお方にチクッたな。
うん、間違いなく徳川家康にチクりやがったわコイツ。
まぁいいけどさ。
見た感じ神を捕まえるためってより神に捧げる刀をなんとしても守るためと、関東なんて田舎に左遷させられて不満たっぷりな家康さんがチャンスとばかりに神と自分は関わりがあるんだぞって箔をつけて関東地方の支配を強める足掛かりにするつもりっぽいしさ。
ちなみにその徳川家康さんは堀川国広も居る家の中の別室でなんかソワソワして、時々襖を開けて寝室を覗いてる。
·····まぁ神様が来るなら見てみたいよね、私だって有名神が来るって聞いたら見ちゃうもん。
ちなみにちなみにお忍びで日本に来てたキリスト様と仏陀様は会ったことある。
で、堀川国広はというと家康に見られながらは寝れないのか、·····っていうかオッサンにチラチラ襖の隙間から見られてたら寝れないと思うし、頑張って寝たフリをしてるけど相当イライラしてそうだった。
「てか家康邪魔だな····· あんま見られたくないし、これ以上干渉したら歴史変わっちゃうかもだし·····」
まぁ刀1本作って神に捧げた程度で歴史が変わるとは思えないけどね。
でも流石に徳川家康まで来ちゃったらちょっと不安だからバレない内に刀を受け取って次の所へ行こうと思う。
「·····仕方ない安眠魔法『グッスリープ』発動っ!」
「·····」
よし寝た。
あとは一番の問題の家康さんだけど····· どうしよ。
まぁ5分間隔で覗いてるから隙をつけば大丈夫かな、回収するだけだし·····
\すぅっ·····/
「オジャマ·····」
堀川国広の居る部屋に入ると、そこの床の間にそれはもう見事で美しい刀がちゃんと飾られていていた。
「ごめんなさいね~、エビちゃんと私の我儘に付き合わせちゃいまして····· んっ?」
私は刀をこっそり回収して刀掛けごとインベントリに収納すると、お駄賃代わりに金塊と魔鋼を少しばかり置いてあげて、『貴方が神に認められた匠であると証明します』と書かれた置き手紙を残しておいた。
ちなみに紙自体にちょっと魔力を込めておいて、一般人が見ても『神が書いたモノ』と分かるよう思考誘導する魔法を発動する魔法も仕込んである私の発明品だ。
で、昔の人って某大名が『二日酔いで遅刻しそう·····マヂㇺㇼ····· 読んだら燃やして·····』って書かれた手紙が現代に残ってるくらい書物を残しがちな癖があるから、残ってもいいように昔の書体で書いておいた。
「ふぅ、これでよしと····· うん?」
とここで、逆に手紙が置いてあることに気が付いた。
私はそれを持ってかれに頭を下げ、そして家から抜け出して次の場所へ向かいながら読み始めた。
「なになに?『私の刀は神仏の目にかなったのだろうか、かなったのであればこの書状は無くなっていてあの方が読んでいるだろう、この刀の銘は『九州日向住国広作 天正十九年辛刁弐月吉日平神仏』、号は『神霧視』だ』·····ほほー!いいね『神霧視国広』かぁ、かっこいいじゃん!!」
私はなんだか羨ましくなりながら、そして早く見てみたくなりながら、次の目的地を目指したのだった。
チュィンッ!!
『むッ!!?今のは·····ッ!!』
·····家康さんにちらっと見られたけどセーフ。
◇
「よいしょっと、えーっと、ここで合ってたっけ·····」
次に私がやって来たのは、あれから128年後の1719年のイタリアの上空だ。
私の絶対に正しい地図が正しければ、ここは『クレモナ』という小さな町のはずだ。
「よし合ってる!んじゃ早速····· 『アントニオ・ストラディバリ』でサーチ!!·····いた!!よっしゃいた!!!やったやった!!」
みんなもこの人の名前は聞いたことがあるんじゃないかな?
そう、彼は有名な超高額のバイオリン『ストラディバリウス』を作った伝説の職人なのだ!!
もうわかるよね?えっ?
『そんなのしってらぁ!ついでにヴァイオリンは長く使われた方がいい音色が出るから出来立ては意味ねぇじゃろがいっ!!べらぼうめぇ!!』
だって?
もちろん知ってるよ?
でも私の耳には最近のバイオリンとストラディバリウスのどっちがいいかよくわかんないから、ド素人がなんとなーく興味本位で使うんだったら作ってもらったばかりのストラディバリウスでもいいでしょって思ってね?
それに、『新品のストラディバリウス』なんて20XZ年には存在してないからねぇ·····
激激激激激激レアよ。
あっそうそう、実は私、ヴァイオリンを始めようと思ってましてよ?おほほほほ!!
「·····バッカみたい、さっさと作らせてこよっと」
その後私はクレモナの町に降り立ち、さっきの堀川国広の時と全く同じ手段でアントニオ・ストラディバリさんに私を天使と誤認してもらって、さっきの堀川国広の時と全く同じ方法で回収して、それはもう見事で美しく世界にたった一つしかない、そしてこの世界に存在しないロストナンバーの『1719年製『ソフィ』』という幻のストラディバリウスが爆誕したのだった。
ちなみに弦とか弓とかも作ってもらっちゃった☆
そんで空に逃げた後、回収し終わったストラディバリウスを取り出して月光に晒して美しく照らされるのを見たり、優雅に夜空で一曲演奏してみるなんていう乙な事をしてみたりもした。
·····でも、いくらヴァイオリンが美しくても、とても美しい景色の中で轢いても、どんなに私が美しくても、ド素人の私のストラディバリウスから出る音はクッソ汚かった。
私は帰ってから猛練習しようと心に誓い、現代へと帰っていった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「·····帰ってから歴史の本を読んでたらさ?」
『堀川国広は神仏に刀を捧げ、その刀は神に認められ一通の書状(国宝)と神鋼(国宝、正体は星核合金配合の玉鋼)が贈られた、そしてその神鋼を用いて徳川家康の為に一振の刀(国宝)を拵え、神匠へと至った』
『徳川家康は関東移封の後、堀川国広が会ったという神をその目で目撃し(家康が自分で描いた『神』の絵は国宝に指定されている、ちなみになんていうか、その·····そんな似てない)、その神から送られた神鋼を以て打ち据えられた刀を携え、天下分け目の関ヶ原において抜き放つと多くの武将が家康率いる東軍へ加わり、東軍全体の士気を上げ、結果関ヶ原の合戦に勝利したと伝わっている』
「っていう風になってたんだよね····· ちなみに実物みてきたけどヤバかった、ガチやばい代物作り出してた、んでストラディバリの方の伝説も変わってて」
『ストラディバリはラッパを無くした黙示録の天使に出会い、ラッパを失って悲しむ彼女にラッパの代わりにヴァイオリンを作って献上した』
『ストラディバリの作ったヴァイオリンを大層気に入った彼女は彼に感謝状を渡した後、彼女はクレモナの町の上で終焉のヴァイオリンを堂々と弾き鳴らした』
『しかし彼女が鳴らしたのはラッパではなくヴァイオリンだったためなのか厄災が起きることは無く、世界に平穏が訪れ、アポカリプスは訪れなかった』
『彼の作ったヴァイオリンは天使に気に入られ世界の終焉を止めた伝説の楽器と呼ばれるようになった謂れであると伝えられている』
「っていう話が増えてたりしたんだよね·····」
「誰が!!!だ!!!れ!!!が!!!私の!!ヴァイオリンの演奏がッ!!!アポカリプスじゃいっ!!アポカリプティックサウンドちゃうわいっ!!!!うがあああああああっ!!私は演奏下手じゃないもんッ!!!刮目して聞けやゴルァァァァアアアア!!!」
ギュィィィィイイィィアアァァァァギヮェェエエエェェェヴィアアアアァアヴァァァアアアアッッッッッ!!!!




