関係各所への報告っ!
「よいしよっと、とうちゃーく!」
「王都に来るのなんだか久しぶりだなぁ·····」
お父さんとお母さんとルーベさんと別れたあと、私とフィーロ君は国とギルド本部に妊娠を報告するために王都へとやって来ていた。
ちなみに5段重ねのゲンコツは気合いで引っ込めた。
痛かった。
いやー、でもやっぱり王都に来るとなんか無駄にワクワクするよねっ!
現実で例えると、東京都心にやってきたみたいでなんか無駄に探して買いたくなっちゃうのよね!
「んふふ、フィーロ君、なんか買ったり寄り道したりする?」
「時間は大丈夫なの?」
「ん?あと5分でギルド到着しないとヤバいよ」
「じゃあ早く行かなきゃじゃん!!」
「んへへ、大丈夫、間に合わせるから」
そう、のんびり観光したい所だけどサークレット王国の冒険者ギルド本部のトップに面会の申請をしてるんだけど、その時間まで残り5分なのだ。
·····いや、正確には15分くらいあるんだけど、申請とかを考えると残り5分と考えた方がいいのだ。
って訳で、私たちは王都の中を馬よりも早く走って移動したのだった。
◇
「すいませーん!予約していたSランク冒険者の賢者姫のソフィ・シュテインですー!」
「ちょ!ソフィちゃん声が大きいっ!」
『『Sランク冒険者ァ!?』』
王都の冒険者ギルドに入るなり私は大声で名乗りを上げた。
·····上げてしまった。
全ての冒険者達にとってSランク冒険者とは超有名女優や伝説級の格闘技のチャンピオンのような、憧れの的のような存在だ。
しかもSランク冒険者は他の国では大人気スター並の扱いを受けてチヤホヤされて人前に現れるような存在なのにも関わらず、この国のSランク冒険者は文字通り神出鬼没で遭遇できる確率はかなり低い。
『伝説の魔導師』は普段は魔法学校の校長として働いていて滅多に出会えない。
『珍竹林』のリリアは\おいソフィ!/
うわなんか割り込まれ
\アタシん事チンチクリンって言ったな!?/
リリアは黙ってて、·····リリアはそもそも何処に住んでいるのか、今どこに居るのかも分からない。
\実家に居るぜー!/
だまらっしゃい。
『賢者姫』はフシ町にいるのはわかっているが、Sランク冒険者に会いにいく目的で訪ねるとガチで嫌そうな顔をするし、何故か野次馬目的で近付くとトラブルが必ず起きて近付けず、本当に用事がある人か運のいい人しか会えない。
ちなみにそうなるように仕組んでる。
そう、だからこの国にいる3人の冒険者は基本的に会う事さえ難しい非常にレアな存在なのだ。
そんな存在が人でごった返すギルド本部に現れたらどうなるか?
そんなもの、1つしか無い。
『『賢者姫だぁぁぁぁあああっ!!』』
「うるさいっ!!」
冒険者ギルド本部中が大騒ぎになってしまった。
◇
その後、大騒ぎになって揉みくちゃにされかけた私は結界で無理やり集まってくる冒険者やその他利用者を遠ざけ、ギルド職員さんの計らいで裏に入れさせて貰って何とか騒動は収まった。
そして今、私は軽く怒られていた。
「あのですね····· ソフィ様、貴女があそこで大声で自分の正体を明かしたら大騒ぎになるのはわかっていますよね?」
「わかってたらやると思います?」
「·····わかっていなかったのですね?」
「ハイ····· ソウデスネ·····」
それもサークレット王国の冒険者ギルドのトップ、つまりギルドマスターの『イル・ミ・ナイティ』氏に怒られていた。
ちなみにミがミドルネームの人は伯爵だったりするから、この人も伯爵家の人のはず·····
「ソフィ様?」
「ハイッ!?ナンデショカ!?」
「報告したい事があるとの事ですが、なんの用でしょうか?ギルドの業務が止まりかけているので早めに教えていただけると有難いのですが」
·····要は『お前がギルド内に居ると人が集まってくるからさっさと帰れ』って事か。
もうマヂ無理····· ぶぶ漬け食べよ·····
「お帰り願えます?」
「あっちゃんと言います、おほん、えーっと、私は暫く冒険者活動を休止したいって考えてるのですが、良いでしょうか?」
「·····理由は?」
私が今日の目的を告げると、元々胡散臭く見える糸目のギルマスの目付きが変人を見る懐疑的な目から、鋭い目付きに変わった。
うわぁ、ガチモードだぁ·····
「ええとですね····· お恥ずかしながら····· その、妊娠したんで暫く産休と育休が欲しくて····· 最低1年、長くて2年ほど活動を控えようかなと·····」
「おや、おめでたでしたか、ご懐妊おめでとうございます、お相手は····· そちらのAランク冒険者のフィーロ様しか有り得ませんね、わかりました」
「あっ、はい、そうです、ええと、よろしくお願いします」
フィーロ君が急に話題を振られてカチコチになっちゃってるわ·····
まぁフィーロ君は昔っからお偉いさんに会うと割と緊張する癖があるから仕方ない。
でもとりあえずは産休が取れそうで安心したわ·····
「ですが現在他の御二方、サトミ様とリリア様は音信不通の場合が多く、ソフィ様が休むとなると·····」
「デスヨネー····· まぁ、そこら辺は考えてるんで大丈夫ですけど、本当に緊急の時だけに、Sランク冒険者がいないとどうやっても解決しないような事態の時だけにして貰えますか?」
「申し訳ないです、少し前まではサトミ様に頼んでいたのですが、ここ最近行方不明になる事が多くて少し混乱していたのです」
·····校長先生は日本に戻れるようになってからは基本的に休日くらいしか来なくなったから、色々と弊害が生まれているのだろう。
確か異世界転移してした時が高2の16歳の時で、約1年で前世のエビちゃんを倒して、戻った時は転移から1ヶ月経った頃だったはず·····
ってことは今はまだ高2の三学期で、来年卒業するとしたら·····
「えーっと、一応校ちょ····· サトミさんとはたまに会って話をしているので聞いていたのですが、ちょっと用事であまり顔を出せなくなったみたいです、来年くらいからは顔を出す頻度が増えると思いますよ」
「そうでしたか····· 教えて下さりありがとうございます、非常に助かります」
「はいはい〜、んじゃ1年後までは私は妊娠中なので活動は極限まで控えたいです、産後は授乳が終わる約1年後までは本格的な活動は出来ないと思いますので校長先生に任せようと思いますが、大丈夫ですか?」
「良いですよ、ただ国王陛下への報告はされましたか?Sランク冒険者となると活動の休止に····· 誰も守っていませんが形式上では国王陛下への報告が必須となっていますが·····」
「まだですね」
「そうでしたか、ならば私の方から謁見の申請を致しましょうか?」
「いえ大丈夫です、ウナちゃ····· ウナ・ウェア・ラ・サークレット様が事前に申請してくれているのですぐに謁見できます」
「そういえばそうでしたね、いやはや、まさかウナ殿下が冒険者になるとは思いませんでしたよ、それもこの国に1組しか無いSランク冒険者パーティーに所属するとは」
「偶然ですよ偶然」
「偶然でも凄い事だと思いますよ、我々としてはウナ殿下には城で安全に····· していらっしゃいましたね、いやはや、分裂能力とは実に珍しいですし、羨ましい限りです」
「ですよねー、んへへ·····」
サーセン、私も出来ますし妊娠中はそれで活動する予定です·····
「さてと雑談はこれくらいにしておきましょうか、ソフィ様はこの後国王陛下との対談が控えておりますからね」
「あっその前に、エビちゃん····· 私のパーティーメンバーのエヴィリン・アマイモン・ファゴサイトーシスも妊娠中なんですが、活動休止の手続きとかって·····」
「可能ですよ、そうですね····· ギルドからは規定上ソフィ様へのご懐妊祝いなどは出来ないのですが、エヴィリン様の分を含めて諸々の手続きを此方で代理で行う事でどうでしょう?貴女が煩雑な手続きを嫌うのは知っていますので」
「おっ!いいんですか!?ありがとうございますっ!」
なんと妊娠祝いに面倒な手続きなどをギルドが負担してくれるらしい。
そりゃ嬉しい限りだわ·····
たぶんSランク冒険者ともなると書類数十枚にサインしたりしないといけないんじゃないかな?
うん、めんどくさいったらありゃしないわ。
って事で、私はお言葉に甘える事にして、ギルドを後にした。
·····けど、表には人が集まりすぎてて出れなかったから、裏から出させてもらって王城へと向かった。
◇
王城に到着すると、門の前に普段着っぽい感じのドレスを身にまとった、ひじょーに見覚えがある、待ちきれなくて表に1人で出てきてしまったおてんばなお姫様が堂々と待ち構えていた。
「やっほーウナちゃん」
「ソフィちゃん、ウナちゃんはここでは王族なんだからちゃんとした口調で話さないと·····」
「やっべ、打首獄門ポイント1点増えちゃった·····」
「うふふ、大丈夫だよソフィ様、わたしの権力ならいくらでも揉み消せますから」
「怖っ!」
「横暴だなぁ·····」
「まぁまぁ、今日はお爺様への謁見でしたよね?お爺様がお待ちしております、だから早く行こう?」
「口調が混ざってるわぁ····· なんか混乱するぅ·····」
ここに居るのは普段家で廃ゲーマーレベルでゲームしまくってるプロゲーマーのウナちゃんではなく、王族で次々期女王のウナ・ウェア・ラ・サークレットだからなんだろうけど、やっぱり混乱するわぁ·····
「ではお二人共、わたしに着いてきてください」
「はーい」
「わかっ·····りました」
「えへへ、別に私語でもいいのですよ、わたしとソフィちゃん達は親友と城では周知の事実ですから」
「りょーかい、んじゃ国王様のところまで案内お願い」
というわけで、私たちは王女様なウナちゃんに連れられておじいちゃん····· 国王様の元へと向かって迷宮のごとき複雑さと広さを誇る王城の中を移動し始めた。
◇
「お爺様、ソフィちゃんとフィーロ君をお連れ致しました」
「おお、ウナか、それにソフィ殿とフィーロ殿も、久しぶりだな」
「お久しぶりです国王陛下」
「お、お久しぶりです·····」
歩くこと20分後、私たちは軽く迷ってようやく国王様がいる部屋へと到着した。
ちなみに国王様とは年明けに新年の挨拶をしに来た時に会ってるから····· 2ヶ月ぶりくらい?
まぁそんな感じで久しぶりなのでちゃんと挨拶をして、早速本題に移った。
「本日から暫く····· 約2年ほど冒険者としての活動を休止、もしくは極力控えようと思っていまして、その件について国王様にも報告に来ました」
「ほう、2年もか····· いや、なるほど、そういう事か」
「お察しの通りです、実は先日妊娠が発覚しまして、出産と育児に専念したいので暫く活動は休止するか、本当に緊急の時以外は活動しないようにしたいと考えています」
「そうか、国としてでは無く儂個人からだが懐妊を祝福させて貰うぞ、おめでとうソフィ殿、フィーロ殿、健康で元気な子を産むのだぞ」
「はいっ!ありがとうございますっ!」
「ありがとうございます、国王陛下」
「うむ、いやはや、ウナの方が先になるのでは無いかと思っていたがソフィ殿に先を越されるとはな、そういえばウナ、お前はどうなのだ?」
「えっわたし?うーん····· 頑張ってるんだけど上手くいかなくて·····」
何故かウナちゃんに話が飛び火した。
どうやらウナちゃんも頑張ってるみたいだけど、なかなか上手くいっていないようだ。
まぁ第1子は次の次の次の国の主だから急かすのも分かるけど、やっぱり王族って大変だねぇ·····
「不妊治療とか受けてみたら?」
「不妊治療?」
「うんうん、どうしても無理そうだったら日本だったら受けられるしやってみたらいいと思うよ?」
「ニホン·····? あぁ、サトミ様の故郷の異世界か、確かにな····· あちらは医学も含め非常に文明が発達していると聞く、ウナ、いざとなったらイルミアと共に行ってみてはどうだ?」
「うーん····· わかった、もうちょっと頑張って無理そうなら行ってみる」
·····自分から提案しといてなんだけど、話がズレてるなぁ。
元々私の妊娠の報告だったはずなんだけど·····
「ええと、とりあえず私の冒険者の活動休止については認めて下さるでしょうか?」
「む?もちろんだ、ソフィ殿とフィーロ殿は育児に専念して構わぬ····· が、もしもの事があったらその時は頼むぞ」
「もちろんですよ!」
こうして私は正式に産休と育児休暇を獲得する事が出来て、ここから本格的に私の母親としての生活が始まっていくのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「さてと報告も終わったし、あとは暇な時に知り合いにちょいちょい報告するくらいかなぁ····· とりあえず明日はのんびりしよっと」
名前:フィーロ
ひと言コメント
「今日は緊張続きで大変だった·····」




