ママはママでもママ間違い
みんなへの妊娠報告を終えた私は、部屋で体が冷えないようにしながらダラダラとしていた。
ちなみに家族への報告は受精卵が子宮に着床して落ち着く一週間後を予定してて、ギルドと国への報告は妊娠検査薬が反応しはじめて一ヵ月後か、受精卵から胎児に変化し始めた3週間後を予定してる。
·····まぁ、家族くらいには妊娠したかもって言ってもいいかもしれない。
「んへ、んへへへへ·····」
「あのさソフィちゃん」
「なに?」
「さっきから一人で天井見ながらグヘグヘ言ってるの気持ち悪いよ」
「ひ、ひどい!だって····· えーと·····」
実は私は今、千里眼で子宮の中を覗き込んでいるのだ。
そんで卵管の中を移動しながら細胞分裂を始めた卵子を見て、細胞分裂を起こして細胞が二つに増えて増殖し始めて着実に人間へと変化しようと頑張っている愛する我が子の様子にグヘグヘとしてしまっていたのだ。
·····でも、千里眼で見てるせいで多分他の人からは仰向けに寝転がってグヘグヘ言ってる奇人にしか見えなかっただろう。
「ちょっとグロ注意だけど、いま私の赤ちゃんがどんな感じか見てたのよ、見る?」
「見たい!」
「僕も見てみたい」
「グロは苦手なのよ、やめておくわー」
「わたしはみるよー!!」
「ワシも気になるのじゃ」
「すぴぃ·····」
「私も、見る」
「んじゃえーっと····· よしOK!」
私は千里眼の映像の出力先を魔導ホログラム式アカシックレコード操作端末の画面へと表示して、みんなに見せてあげた。
「·····えっ、これなの?」
「赤ちゃんじゃない·····」
「ただの玉みたい」
「これが人になるのか?」
「人じゃない····· これは、何?」
「えーっと、資料はどこだっけ····· あったあった、まぁ長くなるから説明しないけど人はこうやって形ができていくんだよ」
そういや忘れてたけど、この世界だと赤ちゃんがお腹の中でどう成長してるかはよくわかってない未知の現象だったっけ。
一応胎児の初期段階くらいまではわかってるらしいけど、顕微鏡サイズとなると流石に厳しいみたいで、受精の仕組みとかもよくわかってないそうだ。
とりあえず性行為をして精液を子宮内に注ぎ込むと子供が産まれるというのだけは判明してるみたいだけど、そこからの解釈は国や宗教ごとに異なってるのよね。
たしかサークレット教ではお腹の中で精霊が祝福をして、その魔力が(※1精液と母親の血液と混ざり合って)変化してお腹の中に子供が出来るっていう事になってたはず。
※1:子供向けの経典からは削除されてて、原文は『血と精が混じり合い』と書かれていてぼかされている。
「なるほどのぅ····· ワシの子もこうして成長したんじゃな、偉いのぅ、よう頑張ったのじゃ、流石はワシの子じゃ、よしよし」
「こうなってたんだ····· 後でちゃんと教えてほしいんだけどいい?」
「僕も一応見ておきたいかな」
「私は見ないわよー!」
「グラちゃん、ウェイザ君と付き合うならみてたほうがいいんじゃない?」
「·····さすがに、これには変身できない」
「あー保健の授業ね、わかった後でね」
なんでか知らないけど、私は保健の授業をさせられることになってしまった。
·····まぁ、別にいいけど。
私はウィンドウを私の元から離して、お腹の中をみんなにジロジロ見られてむず痒い気持ちになりながらも、テーブルの上に置きっぱなしだったけど魔法のコップのお陰で冷めてないお茶をのんd
「ままー!!久しぶりー!!」
「あっチェル!久しぶり、元気だった?」
コップに口を付けた瞬間、チェルが久しぶりにディメンションルームへと帰ってきた。
4月くらいまで向こうで越冬すると思ってたから意外だわ、まさか来るとは·····
「んでどうしたの?」
「えっとね!まま、ママになったんだ!」
「えっ?なんで知ってるの?教えてないと思うけど·····」
「うん?どういうこと?」
「私が妊娠したって聞きつけてきたんじゃないの?」
「えっ!!!?ままがままになったの!?チェルとおなじだー!!」
「ぶっっっふううううううううううううううっ!!!!??」
「うわばっちぃ!!おい!お主!ワシに吹きかけるな!!」
·····えっ?
えっえっ?
◇
チェルが妊娠した。
その衝撃はさっきの私の妊娠報告ほどじゃないけどなかよし組のみんなを驚愕させるには十分すぎる情報だった。
「ちょま!?チェル、妊娠したの!?」
「えっ?」
「ママになったって言ってたよね?」
「うん!チェルね!ママになったんだ!」
「つまり子供ができたって事?」
「ちがうよ?パパができただけ!」
「·····ちょいまち、久しぶりにチェル語翻訳シミュレーターを起動するわ」
えーーーーーーーっと?
チェルがママになって?パパができて?子供ができたわけではない·····
チェルは自分の親じゃなくても、夫婦の妻を『ママ』、夫を『パパ』と呼ぶ癖があった。
その法則を当てはめると·····
「·····もしかして、彼氏できたってこと?」
「かれし?えっとね!村の儀式でせいれい様が『パパとつがい?になれ~』って言ってきたんだ!だから付き合った!!」
「·····許婚かな?」
ちょっと情報が少なすぎて断定できなかったからアカシックレコードで検索してみて、ようやくどうなってるか判明した。
チェルの村、スェイゥルュゥ村では村の者同士の交際や結婚は精霊が決める事らしくて、将来の婚約者を決める儀式なんかが行われるらしい。
この儀式は300歳になってないかららしくて、チェルは300歳になってないから本当はまだらしいんだけど、村が滅ぶときにたった一人生き残って、村を復興してくれた神様と一緒に過ごしたからもう大丈夫だろうって事で早めにやらせてもらう事になったそうだ。
そんで、その儀式で精霊というか長老たちの占いで婚約者となる人が決まった。
·····って言う事らしい。
んで追加検索の結果、選ばれた相手はチェルの幼馴染で仲が良い子だったみたいで、まぁ、遅かれ早かれって感じの関係だったみたいで一安心できた。
「·····って事だったんだ、なるほど、とりあえずおめでとうチェル、相手を大切にするんだよ?」
「うんっ!」
·····多分わかってないなこりゃ、結婚とか交際を『一緒に居るだけ』って思ってる顔だ。
まぁ、純粋無垢な少女も悪くないし、見てて面白いから別にいいか。
「んでこの後はどうするn」
『ソフィちゃ~ん、そこのエヴィリンちゃんも連れてちょい来て~』
「もにょひんっ!!?」
「どぅへぁっ!!!?」
「ママたちどうしたの?」
「い、今のって····· というかみんな聞こえてた?」
「わ、ワシは聞こえたのじゃ·····」
「なんか聞こえたの?ワタシは聞こえなかったよ?」
「私もね····· 幽霊とかだったら早く祓いなさいよ!! こ、怖いとかじゃないけど気味が悪いのよ!!」
「わたしにはとくになにもー····· ん?ラーちゃんは聞こえたの?音がしたくらいかぁ·····」
「聞こえなかった·····」
「·····今のってガイア様の声であってる?」
「うん····· あの面倒事を呼び寄せる疫病神の声は間違えるはずもない」
『誰が疫病神じゃい!!!!』
『『·····』』
今度は全員に聞こえたみたいだ。
「·····とりあえず呼ばれたし神界に行ってくるわ、エビちゃんも行こう?」
「まてまてまて!なぜワシも!?ワシ関係ないじゃろ!?というか神の世界なんぞワシは行けぬぞ!?」
「え?エビちゃん魔神でしょ?一応神族だし行けるよ?」
「·····そうなのじゃ?」
『そうだよん、その魔神関係とキミの体の事でちょっと用事があるから来てね~、アデュオーヴェデルチ~☆ ·····あれ、コレで合ってたっけ』
·····クソほど間違ってるし。
アディオスとアデューとアリーヴェデルチが混ざっとるわ。
「んじゃちょっと行ってくるね、チェルは好きにしてていいよ」
「うんっ!せかいじゅさんに会いに行ってくる!!」
「わかった、寒いから気を付けてね」
「仕方ないのぅ····· ワシもいってくるのじゃ」
なんでエビちゃんが呼ばれたかわからないけど、とりあえずガイア様を捻れば答えは雑巾から絞られた水みたいに出てくるから聞きに行くことにしたのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「チェルもそういうお年頃かぁ····· あっ、もしかしてガイア様の用事ってアレかな、そろそろだと思ってたけど、もうそんな時期かぁ、懐かしいなぁ」
名前:チェル
ひと言コメント
「かれしってなに?すっごくなかのいいおともだちの事だよね?」
名前:エビちゃん
ひと言コメント
「神の世界なんぞ本当にあるかもわからぬのに行く羽目になってしまったのじゃ·····」
名前:なかよし組
ひと言コメント
アルム
「赤ちゃんって女の人同士じゃできないのかなぁ·····」
フィーロ
「アルムちゃんは本当にブレないよね·····」
グラちゃん
「·····見るのは嫌だけど、どんな感じだったのかしら、教えてくれないかしら?」
ウナちゃん
「見ればいいのにー、そんなにグロくないよ?」
ミカちゃん
「·····うなちゃん、洋ゲーのすごくグロいの、へいきでやるから、信用ならない」
アヤメ
「私の変身って、どこからできるんだろう、人の形になってから?そもそも、人の定義って、何?·····人はどこからが人なの?産まれてくる前の赤ちゃんは人間なの?二足歩行してる獣は人なの?·····あ、あれ、ニンゲンって、なんだっけ?」




