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TS賢者は今日も逝くっ!  作者: すげぇ女神のそふぃ
第二章 TS賢者は魔法学校へ行くっ!
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望郷の部屋『瑞穂の里』


 私が『須臾(しゅゆ)』を使って魔物のラッシュボアを倒した後、私はついに説教部屋に連行されてしまい先生から説教を食らってしまった。


 まぁ、説教というか何と言うか、今回は私にぶつかる前に魔物が()()()消滅したので助かったが、今度魔物が現れるような事があったら絶対に先生の指示に従うよう注意されてしまった。


 あ、そういえば説教の途中でこの近くに隕石が落ちたって先生が言ってたし、いつか見に行きたいなぁ·····



 説教部屋から教室に帰ってくると、いつものメンバーは既に席について私のことを待っていた。


「ただいまー」


「おかえりなさーい!ねぇソフィちゃんっ!説教部屋ってどんな所だった!?」


「普通の空き教室だったよー」


「僕たちは説教部屋を見るような事が起きないよう頑張ろうね、ソフィちゃんはもうダメだけど」


「ひどいっ!私のはだムグッ!?」


 フィーロ君が私の裸を見たと言おうとしたら、目にも止まらぬ速さで私の口を手で塞いできて、無言で首を横に振って口止めしてきた。


 フィーロ君にこんなパワーと速度があるなんて·····


「ぷはっ、分かったよあの件は黙っとくね」


「あらソフィ戻ってきたのね、それじゃ帰りましょ」


「うんうん!おふろ入りたい!」


「あっお風呂なんだけどさ!昨日フィーロ君入ってないから先に入っていいよ!でもあんまり長く入ってたら私も入りに行くから·····」


「だ、大丈夫だよ!さっさと出るから!」


「あとお風呂のルールはフシ町の温泉と同じだから、そこはくれぐれも注意して入ってね?」


「もちろんっ!」


「それじゃ、帰ろー!!」


「「「「おーー!!」」」」


 という感じで帰宅の途に就くことになったが、私はある用事を思い出したので、みんなより早く帰宅する事にした。


「·····あっゴメン、私はちょっと用事あるから寄り道しないで先に帰っちゃうね!」


「ええー!ソフィちゃんも一緒に買い食いとかしようよー!」


「まぁまぁアルムちゃん、こういう日もあるって」


「ソフィの用事····· 気になるわね」


「そろーり·····「ウナちゃんはみんなと一緒に居てね!」うなぁ·····」


 ウナちゃんがこっそり付いてきそうだったのでしっかりと釘を刺しておいた。



 そして私はみんなの元から離れ脇目も振らず自分の寮の部屋へ帰る。


 それはまるで、不思議の国への案内人の白ウサギを追いかける体育会系なアリスの如き速さで走り、途中で人の山を通り抜け、小魚を釣ってるおっちゃんが居る小川をジャンプで飛び越え帰っていった。





 そして私はみんなより先に自室に到着し、ディメンションルームに入ってお風呂場に直行、制服を一瞬で脱いでそこら中に脱ぎ散らかし、いつもの髪を洗う工程も身体を洗う工程も簡略化、急いで温泉に入って少し温まって温泉から飛び出した。


 そしてお風呂を出てもいつものパジャマではなく、そこら辺で買っておいた安い短パンと白いTシャツを着て、魔法で作った麦わら帽子を被って、脱ぎ散らかした服を片付ける事なく私は自分の部屋に向かった。



 〜『秘密基地』ソフィの部屋の隠し部屋〜



 さて、私がみんなとワイワイ騒ぎながら買い食いをする魅力を捨ててまで即帰宅をしたのにはちゃんと理由がある。


 私はカバンから昼間に刈り取った、黄金色に輝く稲穂を取り出した。



「懐かしい、稲穂を見てると日本を思い出すなぁ·····未だに夢に出てくるし、やっぱり私、日本好きだったんだなぁ·····」



 その稲穂から(もみ)を1粒だけプチッと外すと、試しに籾殻を割って中身を出してみた。


「むむむ····· なんかいつものと違う·····」


 ええと、前世で作って今世でアカシックレコードに記録しといた『もし異世界に転生したとき用のマニュアル』の『お米』の項目によると·····


「乾燥·····か、ええと稲木(いなぎ)に掛けて2週間天日干し····· うーーーん」


 これ、米作りって超絶大変·····?



「でも!私の 忘れられない故郷 の味を再現するためには必要な事だから頑張るぞー!!」







 拝啓


 今世のお父さんお母さん

 そして前世のお父さんお母さん

 前の世界の友達たち


 いかがお過ごしでしょうか?


 私は今、異世界で女の子になって、艱難辛苦(かんなんしんく)の度に日本での知識を思い出しながら頑張って乗り越えて、『ディメンションルーム』で田んぼをつくっています。


 いや、農家さんマジ尊敬。

 なんで米の値段あんな安いんだろうと思うくらい大変だわ。


 ·····まぁ、私の場合は田んぼから作らなきゃだからクソ大変なんだけど。



「肥沃な土よ地面に対し平行にフカフカになって壁となれ『アースウォール』!」

「ついでに畦となれ「アースウォール」」


 というわけで、新しく作った真っ白だった空間はいつの間にか遠くに山が見える長閑(のどか)な田舎の風景に切り替わり、私の前には小さいながらも魔法により田んぼができ始めていた。


「ふふふ、こんな時のために田んぼの仕組みとか調べておいてよかったわ、·····うろ覚えで雑だけど仕方ないよね」


 脳内イメージにあった田んぼは物凄く雑だったが何とか読み取る事ができたので、いまはそれに基づき田んぼの作成をやっている。

 美味しいお米を作るには田んぼもしっかり作らなきゃね!!


 私が前世で書き残していた田んぼのイメージは


 道 用 蛙 水水水水水水水水流=→  道

 道 水 畦 土土土土土土土土 畦 排 道

 道 路 畦 染み込んだ水は→ =→水 道

 道   畦 粘土粘土粘土粘土 畦 路 道


 って文字で全部書かれていた。


「クソがっ!!わかるか!!分かるけど!!なんで(うね)の中に(かえる)が混ざってるんだよ!」


 説明によると、粘土の部分は『鋤床層』らしく、水を通さず染み込みすぎた水を排出する部分があると別の資料に書かれてた。


 なので一旦作った肥沃な土を魔法で浮かして、粘土層と排水するパイプなどを作製する。


 そして土を戻して、用水路を左右に作って水魔法で常に水を出すよう設定、もちろん水門も作る。

 余った水はそこら辺に小川を作ってそこに流しておいた、いつか小魚とか捕まえてそこに入れる予定だ。

 ついでに書いてあったカエルも後で捕まえて田んぼに住ませるとしよう。

 ·····いや、今4月だからまだ居ないか。


 んじゃ次はアレをこうして·····



 そして30分後、なんとか納得のいく小さな私専用の田んぼが完成した。


「·····どうせなら周りにも色々つくっちゃお」


 『ディメンションルーム』の模様替え機能で無機質な床を田んぼの畦と似たかんじの草原っぽくする。

 そして魔法で地面を盛り上げたり下げたり均したりして田んぼの周囲をそれっぽくする。


 あぁ、どうせなら田んぼを見ながら休める場所も欲しい、なら私の部屋の和室と直結····· すると空中に部屋の入口が浮かんじゃうな·····

 じゃあハリボテだけど建築魔法で田舎の茅葺きっぽい民家を作って縁側の入口を私の部屋と繋げて、あぁだとすると雨戸とか·····


 ええい時間が足りん!『須臾(時流:1/100)』発動!


 くっ、魔力消費が重い!『賢人の石』魔力貯蔵からの使用許可!私の魔力タンクと直結!

 これで魔力はほぼ無制限に使えるはず!

 更に伝説のパンツの効果で自然回復魔力量増加っ!


 これで一気に私好みの田園風景を創るっ!!



「はぁ····· はぁ····· できた·····」


 あれから10時間後·····

 リアルではたった6分だが、私の体感で10時間もの時間を掛けてようやく満足のいく田園風景と私の家が完成してしまった。



「し、しあげ·····」


「『魔物召喚:ミニトード!ステルススネーク!ウィンドドラゴンフライ!アサルトダック!ファイアスワロー!プリティアサシンキャット』そして『モンスタープリンセス』」


 私は外から生き物を連れてくるのは諦め、田んぼに居そうなモンスターを多数召喚し、全員私の支配下に置いた。


「私が今日からみんなのリーダーになったソフィだよ!早速だけど、みんなにはここで平和に暮らして貰います!あとここは·····」


 そして配下の魔物たちに『田んぼの生き物っぽく生活して』とお願い(命令)し、食と住を提供する代わりに私に癒しを与えるという相互関係を築いた。


 ルールは、まず殺し合い禁止。

 次に餌はこの空間の外にみんなだけが通れる小さいゲートを私の住む盆地の人が来なさそうな所に繋げておいて、お腹が空いたらそこから出て食べて貰う。

 あとは私の魔力結晶をおやつとして提供する。


 そして、この部屋に来た人間に対しての攻撃禁止、逆に攻撃されたら逃げるよう言い聞かせた。


「って感じでいい?」


 「ゲコッ!」

 「シュロロロ·····」

 「·····!(円を描くように飛ぶ)」

 「クワっ!」

 「ちゅんっ!」

 「にゃー!」


「よし解散っ!好きに暮らしていいよっ!」


 私が許可を出すと、魔物たちは私の作った空間の各地に自分好みの住処を探しに行ってしまった。


 「なぁお?」


「ああぁぁ····· もっふ····· よし!お前の名前は今日から「もっふす」だ!」


 「にゃあー」


 そんな中、縁側に座る私の膝の上が自分の場所とでも決めたかのようにふてぶてしく座ってきた『プリティアサシンキャット』に「もっふす」という名前を付けてしまった。

 だってこの子もっふもふで可愛いんだもん·····


 あぁ〜、もっふもふじゃぁぁ·····



 あれ?この魔物の名前って·····

 プリティ(可愛さで)アサシン(暗殺する)キャット(猫ちゃん)じゃ·····?

 もしかして、可愛さでおびき寄せて·····


 ひえっ



 私は縁側に座り膝に愛猫のもっふすを乗せ、魔法で作った湯のみにこれまた魔法で作った熱々の緑茶を注いで、優しい春の風が流れるこの美しい田舎の景色を眺めて非常に満足していた。


 美しい田んぼ、清らかな風、生き物の動く音、長閑な山々、風で揺れる木々、ざわめく草花·····




 ここの時間は『須臾』を使ってもいないのに、とてもゆっくり流れているような気がする。





 そうだ、この部屋に名前を付けよう。


 瑞々(みずみず)しい稲穂が生え、この世界とは違う私の本当の故郷の景色に近い、この部屋に相応しい名前を。



 そうだなぁ、私の本当の故郷『日本』の美称、稲が多く収穫された事から付けられたその名を拝借して·····



「この部屋の名前は、二度と帰れない私の故郷を想って作った、この部屋の名前は·····」



瑞穂(みずほ)の里』





 私は『瑞穂の里』にある私の家の縁側に座ってお茶を啜り、その温かさを感じてホッと幸せなため息を漏らす。


 そして湯のみをそっと縁側に置いてもっふすを膝から下ろし、使っていた座布団を枕に縁側に横になり、春の香りを楽しみながら私は目蓋を下ろした。


 ·····この場所を作って改めて思った。


 『賢者の石』を作るという目的を果たせたら、いつの日か絶対に日本へ帰ろう。

 私はもうこの世界で一生を終えると決めたけど、やっぱり私の本当の故郷は忘れられない。


 青々しい山々に鉱物採取に行ったり、綺麗な清流で砂金取りをしたあの日の事は忘れられない。


 フシ町が私の生まれ故郷なら日本は私の·····


 いや()の魂の故郷だろう。








「って違うっ!!!私はお米を作りに来たんだよっ!!何タソガレちゃってんの私っ!!それになんで田園風景が出来上がってるんだあああああぁぁぁ!!しかも肝心の『瑞穂』が無いじゃんっ!!!」


 私渾身のツッコミが炸裂した。




名前:ソフィ・シュテイン

年齢: 6才

ひと言コメント

「みんなー!ソフィちゃんだよっ☆ 故郷っていいよねっ!はぁ、もっふすの触り心地サイコ〜·····






























ぐずっ·····

父さん、母さん、元気かな·····


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