先生の魔法と念願の米
私たちは先生の後についていって、校庭というか学校裏側の街の外にある森のあたりまでやってきた。
「はい、今日はここで魔力の練習をします!昨日と一緒のグループを組んでも、違うグループになってもいいですので5人組になってください!」
『はーい!』
「んじゃ、今日も私たちは一緒のグループにしよ!」
「「「「もちろんっ!」」」」
結局私たちはメンバーを変える事無く、昨日と同じメンバーで集まった。
·····ん?なんか他の班の人達が私たちの事みてる?
あっ、そりゃそうか、このクラスで現状魔法が使える3人がこの班に集まってるし、アルムちゃんとフィーロ君は私が強制的に魔力流路の詰まりを解消したから既に魔力の循環が出来ている。
·····ん?私たちの班ってこのクラスだと頭1つ以上抜きん出てる?
うん、私はこの4人以外と組む気は無いから牽制しとこっと。
「よし!これで5人揃ったから先生の所にいこ!」
すると周囲で羨ましそうに見ていたクラスメイトたちが諦めて班を作り始めた。
·····なんかごめんね?
◇
「みなさん班を作れましたね!じゃあ先生からちょっと離れたところに集まって下さい!」
『はーい!』
班を作った私たちは先生の元に集まった。
先生はアルムちゃんと少し似た感じの木製の杖にバラが巻きついた杖を持っていた。
というか、何となく伝わる感覚がアルムちゃんの杖と似てるから、王都の魔道具店で作られた物だろう。
「ではこれから先生が魔法を使います!よーく魔力の動きや発動の仕組みを見ててください!」
『はい!』
どうやら先生が魔法を使うのを見て学ぶ時間のようだ。
そういえば他人の魔法ってあんまり見た事ないからしっかり発動プロセスとか観察させて貰おう。
「いきます!自然の花々よ我が元で咲き誇れ『グロウフラワー』!」
『おおおー!!』
先生が魔法を発動すると、先生の足元に可愛らしい花がポコポコと咲き乱れた。
ふぅん?
まず魔力を練って杖に流して、それを先生の詠唱で魔法の形にして、地面に繋がっている杖の石突から地面に流す事で発動しているのか·····
·····あ
閃いたああぁぁあぁぁあー!!!
「水田の稲穂よ我が元で実り頭を垂れよ『グロウフラワー』!」
私が先生の魔法をヒントに、地面に指を突き刺して詠唱を書き換えた魔改造『グロウフラワー』を発動してみた。
すると、指を刺した所からみるみるうちに黄金色に輝く稲穂、そう、私が求めていた日本人のソウルフード、お米が生まれた。
「うひょおおおおおおっ!!!」
「どうしたんですかソフィちゃ····· ん?あれ、そんな所まで魔法届いちゃった?ごめんなさいね····· でも見た事ない植物ね····· 魔物の魔石でも埋まってて魔法が狂っちゃったかしら?」
「あっ、いや、なんでもないです、先生これ貰ってもいいですか!?」
「別にいいわよ、みんなも足元の花を摘んでもいいですよ!」
『わーい!』
私は念の為インベントリにいれてた小型のナイフをこっそり取り出して、稲穂を根元から切り離す。
そして穂の部分に沢山ついた籾を見てみると、全ての籾にちゃんと米が入っており、しかも1粒あたりの大きさも良くてとてもいい稲だ。
もしかしたら味は悪いかもだけど、お米·····
それも形状的にジャポニカ種(Oryza sativa. japonica)のように見えるから、これをどこかでちゃんと栽培すればしっかりとしたお米になるはずだ。
私は刈り取った稲をリュックに入れ、ルンルン気分で授業に集中した。
◇
「はい、ということで!魔力の流れはイメージできたかな?」
『はーい!』
その後、先生は色々な初級魔法を見せてくれて、私以外の人物の魔法発動について詳しく知れた。
まぁ大体は私の予想通りだったが、それでも他人の魔法発動や魔力の移動についてよく分かった。
これで他人の魔法発動の邪魔も出来そうだ。
要は魔法に加工する前の圧縮魔力の操作権限を私の魔力波で上書きしてしまえば発動を阻害するどころか、体内で暴発させて内部からの破壊も可能だ。
「ねぇ、ソフィちゃんは先生の魔力の動き見えた?僕はぼんやりとしか見えなかったんだけど·····」
「ワタシは結構ちゃんと見えたよ!」
「私はハッキリ見えたわ」
「わたしも見えたよっ!でもちょっと見えにくかったけど·····」
「ふふふ、私はハッキリ見えたよ!」
どうやらみんなも先生の魔力が見えたらしい。
魔力の訓練を初めて2日でこれはかなりの成長ではないだろうか。
ふふふふ·····
これからみんながどう成長するか楽しみだなぁ·····
◇
私たちが魔力循環と魔法の練習を続けていると授業がもうすぐ終わるかというその瞬間、先生が大声を上げた。
「みんな気をつけて!魔物よ!『ラッシュボア』が現れたわ!木の陰に隠れて!」
「ん?魔物?」
「そうだよ!ソフィちゃん隠れて!」
周囲を見渡すと、みんなが木の陰に隠れて、怖がって泣いている子も居る。
そして、森の奥の方向に奴が居た。
体長は目測で約3m、息を荒くした歯が破城槌のようになった巨大なイノシシが私の方を向いて息を荒らげていた。
あ、ウナちゃん前を横切ったら危な····· いや気付かないんかい!!
「Bruaaaaaaaaa!!!」
「うわっ!こっち来た!」
「逃げてソフィちゃんっ!間に合えええええ!『ツリーオブウォール』ッ!!」
イノシシは先生の魔法が私とイノシシを遮るよりも早く、私に向けてとんでもない勢いで走ってきた。
あぁ、アレが直撃したら私なんて一瞬で冒険者Bセットのハンバーグにされちゃうだろうな·····
直撃したらの話だけどねっ☆
私は突撃してくるイノシシなんていなかったかのように、地面から手で握れるサイズの石ころを拾い、コイントスみたいに上に投げて落ちてきた石を手で受け止めてまた投げて重さを確認した。
うん、なかなか投げやすそうな石だ、50gくらいかな?
「あー、イノシシさん、遅いよ」
『須臾』
刹那
この世界の全ての動きが止まった
しかし、止まった世界で動く者がただ1人居た
◇
「まったく、イノシシさん恨まないでよね?自然界は弱肉強食だからねっ☆」
私は止まった時の中で、私が投げて空中で止まった石ころをパシッと掴んだ。
この石の推定重量は50gくらい。
そして時の流れが約1億分の1になったこの世界で、本気で石をブン投げる。
まぁ私は今は生憎6歳児、石を投げても威力なんてタカが知れてるし、当たり所が悪くてもちょっと血が出る程度だろう。
だがしかし·····
「『マクスウェルの悪魔』、この石のみ例外的処理を行うよう変更·····っと」
私は石をイノシシに向けてブン投げた。
すると石は私の手を離れると1mほど進み、空中で停止してしまった。
·····が、それは『マクスウェルの悪魔』による矛盾解消システムではなく空気抵抗による減速で停止したように見えただけで、実際の速度はべらぼうに早い。
この前開発した『マギ・レールガン』より遥かに早く、そのぶん威力も桁違いに上がっているだろう。
っとその前に、このまま放つと空気抵抗とかで洒落にならない爆音が鳴ると思うので、私は射線上の空気を時空魔力を混ぜた風魔法で退けておく。
よし、これであのイノシシはもう終わりだ。
·····
アレやっちゃお
私はイノシシに背を向けると·····
「時は動き出す·····」
私は決めゼリフを言って『須臾』を解除した。
◇
ドッッパァァァァァァァン!!!
私が『須臾』を解除した次の瞬間、私の投げた石ころは私が作っておいた真空の通り道が閉じるより早く、そして稲妻より速クラッシュボア目掛け突き進んだ。
流星さえ置き去りにできる速さの石ころは、途中にいた『ラッシュボア』の堅牢な頭蓋をブチ抜き、体の中を通ってお尻から突き抜け、その冒険者の剣さえ受け止めてしまう引き締まった肉体は木っ端微塵に爆砕、そして衝撃で砕けた石ころは凄まじい破壊力を持つショットガンのようになり遥か彼方まで飛翔した。
ッッガアアアァァァアァアアァァァァァッッ!!
飛翔した礫は遠く離れた森へ突っ込み、広範囲の木々を吹き飛ばし森林伐採後の野山のような風景へと変えてしまった。
この間、僅か0.0001秒以下の出来事であった。
「ううっ····· ソフィちゃん····· 間に合わなかった·····ってあれ?ソフィちゃんが無事?それにラッシュボアが居なくなって····· な、何が起きたのかしら」
「·····えっと、ソフィちゃん?」
「·····フィーロ君、何も言わないで」
うん、もうちょっと時間の流れは調整した方が良いかも。
名前:ソフィ・シュテイン
年齢:6才
ひと言コメント
「そうだ!私プロ野球選手になれるかも!ボールどころか球場もろとも消し飛ばす『消滅する魔球』ってつよそうじゃない!?」
名前:フィーロ
年齢:6才
ひと言コメント
「あーあ····· ソフィちゃんまたどっかに連行されてるよ····· 逃げろって言われたのに立ち向かったのが原因かなぁ」
名前:アルム
年齢:6才
ひと言コメント
「魔物怖い····· でも戦えるようにならなきゃ!ワタシも勇者さまみたいになりたいな!!」
名前:グラちゃん(グラシアル・ド・ウィザール)
年齢:6才
ひと言コメント
「い、いま起こった事をありのまま話すわ、ソフィちゃんが一瞬で後ろを向いたと思ったら『ラッシュボア』が消し飛んでいたわ····· 何を言っているのかわからないと思うわ、でも私も何が起こったのか分からなかったわ····· 頭がどうにかなりそうだった、たぶん魔法とか超スピードとかそんな軟弱なものではなかったわ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わった気がするわ·····」
名前:ウナちゃん(ウナ・ウェア・ラ・サークレット)
年齢:6才
ひと言コメント
「イノシシさんとっても大きかったけど、どっかいっちゃった·····」




