第二十六話:山に潜むものと、“そこそこ”の正体
北の山岳地帯。
空気が違った。
冷たい――だけじゃない。
「……静かすぎる」
レイグが低く言う。
しゃもじ持ちの勇者は周囲を見回す。
「魔物いなくね?」
その瞬間。
ガサッ。
影が動く。
次の瞬間――
ドンッ!!
地面がえぐれる。
巨大な魔物が飛び出した。
しゃもじ持ちの勇者
「うわ出た!!」
レイグ
「来るぞ!」
だが――
次の瞬間には終わっていた。
ズン。
魔物が崩れ落ちる。
全員、固まる。
しゃもじ持ちの勇者
「……え?」
ゲイルが、そこに立っていた。
剣を振り下ろした姿勢のまま。
「一体」
それだけ言う。
遊び人ユウマが小さく笑う。
「“そこそこ”じゃないですね」
レイグ
「基準がおかしい」
元王子はじっと見る。
「……今の、見えたか?」
誰も答えない。
スライム
ぷるん(速すぎ)
ゲイルは何事もなかったように歩き出す。
「進むぞ」
しゃもじ持ちの勇者
「仕切り始めた!?」
――山の奥へ。
進むほどに、違和感が増す。
魔物の死骸。
だが――
傷がない。
遊び人ユウマがしゃがみ込む。
「……これ、同士討ちじゃないな」
レイグ
「制御されてる」
元王子
「操ってるやつがいる」
その時。
ゲイルが止まる。
「いるな」
全員が構える。
空気が張りつめる。
そして――
上から声。
「へぇ」
軽い声だった。
だが、底がない。
全員が見上げる。
岩の上。
そこにいたのは――
細身の男。
笑っている。
「新顔混ざってるじゃん」
遊び人ユウマがぼそっと言う。
「当たり引いた直後にボスですか」
しゃもじ持ちの勇者
「運悪すぎ!!」
男は楽しそうに言う。
「ここ、俺の狩り場なんだけど」
レイグ
「……魔物を操っているのはお前か」
男は肩をすくめる。
「操る?違う違う」
「“遊んでる”だけ」
空気が一気に冷える。
元王子
「……魔王軍か?」
男は少し考えてから笑う。
「まぁ、そんなとこ」
「幹部、って言えば分かりやすい?」
しゃもじ持ちの勇者
「出たよ幹部!!」
遊び人ユウマ
「しかも軽いタイプ」
レイグは剣を構える。
「排除する」
男は笑ったまま――
視線をゲイルに向ける。
「で、お前」
「なんかおかしくない?」
一瞬。
空気が止まる。
ゲイルは無言。
男は続ける。
「“人間の匂い”が薄い」
しゃもじ持ちの勇者
「え?」
元王子
「……どういうことだ」
ゲイルは、少しだけ目を細める。
そして。
「さあな」
次の瞬間。
消えた。
ドンッ!!
衝撃。
男のいた岩が砕ける。
だが――
男も消えていた。
空中。
交差。
火花。
ガギィン!!
剣と何かがぶつかる音。
遊び人ユウマ
「速すぎるだろ……!」
レイグ
「目で追うな、気配で捉えろ!」
しゃもじ持ちの勇者
「無理言うな!!」
空中でぶつかる二人。
明らかに、次元が違う。
元王子は歯を食いしばる。
「……あれが幹部クラスか」
遊び人ユウマ
「いや」
「それと張り合ってる新入りのほうが問題だろ」
スライム
ぷるん(理解放棄)
そして――
ドンッ!!
二人が同時に地面に降りる。
距離を取る。
男が笑う。
「いいね」
「久々に楽しい」
ゲイルは静かに構える。
「……借りを返すついでだ」
男
「誰への?」
ゲイル
「あの女武道家だ」
一瞬。
男の目が細くなる。
「ああ」
「“あの女”ね」
空気が変わる。
遊び人ユウマが小さく言う。
「……知ってるな」
レイグ
「つまり繋がったか」
元王子は剣を握る。
「全員で行くぞ」
しゃもじ持ちの勇者
「やっと出番!!」
スライム
ぷるん!!(参戦)
そして――
戦いが始まる。
これはもう、“調査”じゃない。
明確な戦闘。
しかも――
ただの敵じゃない。
“姫の過去”と繋がる敵。
そして。
新入りゲイルの正体もまた――
ここで、少しずつ暴かれていく。




