第二十二話:戻る者と、残る空席
山の小屋にいた時間は、短かったはずなのに――妙に長く感じられた。
その場で、すべてが決まった。
女武道家は一瞬だけ、何か言いかけて――やめた。
ビアンカは王女として王都へ戻ることになった。
そして――女武道家もまた。
「姫」として迎えられることになった。
しゃもじ勇者が目を丸くする。
「え、昇格イベント?」
レイグがため息をつく。
「制度が雑すぎる」
遊び人ユウマは少しだけ空を見上げる。
「まぁ……血筋的にはそうなるのか」
元王子は、その言葉を聞いたまま黙っていた。
――王都へ戻る道。
空気は少しだけ軽くなっていた。
問題は片付いた。
はずだった。
だが、誰も気づいている。
「終わった」のではなく、「形が変わっただけ」だと。
王城に戻ると、正式な儀式はあっさり終わった。
ビアンカは王女となり、爆乳女武道家は「姫」として扱われることになった。
「姫」
その響きに本人はあまり納得していない顔だったが――
殴られなかっただけマシだった。
しゃもじ勇者は廊下で感心している。
「このパーティ、貴族率上がってきたな」
レイグ
「戦闘力とは関係ない」
遊び人ユウマはぽつりと言う。
「むしろややこしくなってます」
そして。
その夜。
王城の庭。
風が少し冷たい。
元王子が一人で立っていた。
しゃもじ勇者が後ろから声をかける。
「おーい、何してんだ」
元王子は少しだけ笑う。
「……整理してた」
「何を?」
少し間。
そして――
ぽつりと。
「フローラ王女……俺の母さんは、もう死んでる」
しゃもじ勇者は、いつもの調子で言おうとして――やめた。
珍しく黙る。
元王子は続ける。
「親父にとっては……今の形のほうが幸せなのかもしれないな」
風が吹く。
遠く、王城の灯りが揺れる。
「過去はもう変わらない」
「でも、今は変わった」
しゃもじ勇者がぽつりと言う。
「……それでいいのか?」
元王子は少しだけ目を伏せる。
そして――
「分からない」
正直だった。
「でもさ」
顔を上げる。
「少なくとも、誰かが救われたなら……それでいい気もする」
その言葉に、しゃもじ勇者は少しだけ笑った。
「お前、八股する奴だけど意外と真面目だな」
「今さら気づいたか」
少しだけ、空気が軽くなる。
その後ろで。
遊び人ユウマが柱にもたれている。
「……でさ」
しゃもじ勇者が振り返る。
「なんだよ」
ユウマは淡々と言う。
「これ、パーティどうなるんだろうな」
一瞬、沈黙。
しゃもじ勇者
「増えたよな?」
レイグ
「増えた」
ユウマ
「減ってはない」
スライム
ぷるん(数は増えてる気がする)
遠くの廊下から、爆乳女武道家…もとい 姫の声。
「おい、訓練するぞ」
しゃもじ勇者
「ほらな」
レイグ
「姫が一番戦闘民族だ」
ユウマは小さく笑った。
「まぁ……まとまるわけないか」
でも、不思議と悪くはない。
血が変わり。
立場が変わり。
過去が少しだけほどけて。
それでも――
このパーティはまだ続いている。




