第二十話:王の答えと、しゃもじの証明
玉座の間。
空気は、完全に張りつめていた。
王はまだ動かない。
女武道家の言葉が、天井に残っている。
「……私は、お前が捨てたビアンカの娘だ」
沈黙。
その重さに、誰も口を開けない。
元王子が一歩前に出る。
「親父……いや、王」
「答えろ」
王はゆっくりと目を開いた。
そして――
「……ビアンカは」
「……生きているのか」
声が低い。
「生きている」
一瞬、空気が崩れる。
元王子が固まる。
女武道家の拳が止まる。
レイグも眉を動かす。
しゃもじ持ちの勇者
「え、そこ?」
遊び人ユウマ
「いや、そこ重要だろ」
王は続ける。
「死んだと聞かされていた」
「山で、独りで子を産み、そのまま――」
そこで言葉が切れる。
王の視線が揺れる。
「私は……何も知らなかった」
女武道家の目が細くなる。
「……知らなかった?」
「それで済むと思ってるのか」
空気が一気に殺気を帯びる。
その時だった。
しゃもじ持ちの勇者が一歩前に出る。
「ちょい待て」
全員が見る。
しゃもじを肩に担ぐ。
「つまりだな」
「誤解で全部こじれてるってことだろ?」
レイグ
「雑にまとめるな」
しゃもじ勇者
「でも事実だろ!」
遊び人ユウマがぼそり。
「まあ……だいたい人間関係ってそんなもんだしな」
元王子
「軽く言うな」
女武道家は震えたまま立っている。
怒りと、混乱と、少しの空白。
「じゃあ私は……」
「何のために」
王が一歩、踏み出す。
「……会わせてくれ」
「ビアンカに」
空気が止まる。
その瞬間。
しゃもじ持ちの勇者が、しゃもじを掲げた。
「よし」
「とりあえず飯だな」
全員
「なんでだよ!!」
レイグがため息をつく。
「状況理解してるか?」
しゃもじ勇者
「してる」
「家族問題は、腹減る」
遊び人ユウマが笑う。
「まあ、確かに長期戦だしな」
元王子
「戦争じゃない」
女武道家は、ゆっくりとしゃもじ勇者を見る。
「……お前」
「なんだ?」
「空気、壊す天才か?」
しゃもじ勇者
「褒めてる?」
そして――
女武道家は、少しだけ力を抜いた。
「……母さんに会う」
「それで全部決める」
王が静かにうなずく。
「案内してくれ」
そのとき。
遊び人ユウマは、小さく呟く。
「ここまで来るとさ」
「もう魔王より家の方がラスボスだよな」
レイグ
「否定できないな」
しゃもじ勇者
「ラスボス=親」
元王子
「やめろ」
スライム
ぷるん……(家族って何)
こうして王城の中で――
“戦いではない決着”が始まろうとしていた。
剣でも魔法でもない。
これは、言葉と過去の物語だ。
そして誰もまだ知らない。
この話の一番厄介な敵は――
魔王ではないということを。




