第二話:初仕事、だいたい解決がおかしい
「す、すげぇ……!」
商人の男は、涙目で俺を見ていた。
その後ろには――
正座した盗賊団。
しかも全員、やたら姿勢がいい。
「いや俺も意味わかってないからな?」
思わずツッコむ。
盗賊のリーダーっぽい男が、深々と頭を下げた。
「本当に申し訳ありませんでした!!」
声がでかい。
無駄に通る。
「いや、急にどうした」
「我々は……間違っていました……!」
「さっきまで襲ってたよな?」
「はい!!」
元気よく言うな。
横ではスライムたちが、ぴょこぴょこしている。
どう見ても満足げだ。
……混ぜた結果、
倫理観まで整ったっぽい。
「なあ、これ戻るのか?」
俺はしゃもじを見ながら呟く。
「戻る気がしねぇな……」
盗賊たちは完全に改心している。
というか、ちょっと真面目すぎて怖い。
「おい」
俺はリーダーを指差した。
「はい!!」
「お前ら、これからどうするつもりだ」
盗賊たちは顔を見合わせ――
「働きます!!」
声が揃った。
なんでそんな体育会系なんだよ。
「いや、具体的に」
「真っ当に!!」
「雑すぎるわ」
だが、目は本気だった。
さっきまでのチンピラ感が完全に消えている。
……これ、放置しても大丈夫そうだな。
「じゃあ、あの商人の護衛でもしろ」
「はい!!」
「給料はちゃんと交渉しろよ」
「はい!!」
「あともう盗むな」
「はい!!」
三連続「はい!!」いただきました。
商人が震えながら手を上げる。
「あ、あの……本当に大丈夫なんですか……?」
「たぶん」
「たぶん!?」
「まあさっきまでよりは100倍マシだろ」
それは確かだ。
さっきは命の危機だったんだから。
商人はおそるおそる盗賊たちを見る。
盗賊たちは、にこやかに微笑んだ。
「よろしくお願いします!!」
「怖い怖い怖い!!」
まあ気持ちは分かる。
「……そのうち慣れる」
適当にフォローしておく。
こうして――
元盗賊団は、臨時護衛として再就職した。
俺の初仕事、
だいたい解決したが方向性がおかしい。
「で、お前はついてくるのか」
森の出口付近。
俺は、隣を歩く狼に声をかけた。
ピカピカの狼は、当然のようについてきている。
わふ。
返事した。
「いやもう完全に仲間じゃん」
スライムたちも、ぞろぞろついてくる。
数、ちょっと増えてないか?
「……お前ら、どこまで来る気だ」
ぷるぷる。
全員、やる気満々である。
「……まあいいか」
正直、戦力としてはありがたい。
問題は――
「名前どうするかだな」
このままだと不便すぎる。
「お前、狼だからウルフ……」
わふ?
「ピカピカだから……ピカウルフでいいか」
わふ!
めっちゃ嬉しそう。
「安直すぎるだろ俺」
まあいい。
通じればいいんだよ。
「スライムは……」
十数匹。
見分けつかない。
「……全員スラでいいか」
ぷるん!!
全員同時に反応した。
「区別できねぇ!!」
やっぱダメだこれ。
森を抜けた先。
そこには、小さな村があった。
木の柵。
畑。
煙の上がる家。
いかにも序盤の拠点。
「……来ちまったな」
勇者っぽいことしてる。
しゃもじ持ってるけど。
その時――
「魔物だぁぁぁ!!」
村人の叫び声。
一斉にこちらを見る。
俺の後ろには、
スライム十数匹+狼。
……うん、完全に不審者だな。
「違う違う違う!!」
俺は慌てて手を振った。
「これ仲間だから!!」
誰が信じるんだそんなの。
村人たちは武器を構える。
鍬とかだけど。
ピリつく空気。
その時。
ピカウルフが前に出た。
そして――
ぺこり。
頭を下げた。
「……え?」
村人、固まる。
続いてスライムたち。
ぴょこぴょこ。
――整列。
ぺこり。
「なんで礼儀正しいんだよお前ら!!」
村人たちは顔を見合わせる。
そして一人が、おそるおそる言った。
「……本当に、襲わないのか?」
「たぶん」
「たぶん!?」
信頼がない。
だが、その時。
一人の少女が前に出た。
「……この子、いい匂いする」
ピカに近づく。
「おい危な――」
少女は、ピカウルフの頭を撫でた。
ピカウルフ、尻尾ぶんぶん。
完全に犬。
「……大丈夫だよ、この子」
少女が笑った。
その一言で、空気が変わる。
村人たちの警戒が、少しだけ解けた。
「……あんた、何者だ?」
年配の男が聞いてくる。
俺は少し考えて――
しゃもじを肩に担いだ。
「たぶん……勇者だ」
間。
スライムたち、ぴょんぴょん。
ピカウルフ、わふ。
「……嘘だろ?」
ですよね。
こうして俺は、
しゃもじ一本と変な仲間たちで――
最初の村に拠点を得ることになった。
なお、まだ魔王の“ま”の字も出ていない。




