第十八話:八股の血、真実の家系図
焚き火の火が少し落ち着く。
空気も、少しだけ静かになる。
レイグが咳払いした。
「……で」
周りを見る。
「自己紹介、まだだったな」
しゃもじ持ちの勇者
「今さら!?」
元王子
「大事だろう」
遊び人ユウマ
「まあ揉める前にやっとくべきだったな」
女武道家は腕を組んで立っている。
「早くしろ」
レイグ
「俺から行く」
短く言う。
「レイグ。王国の正規勇者だ」
しゃもじ持ちの勇者
「雑っ!!」
遊び人ユウマ
「情報量ゼロ」
元王子
「だが嘘はない。そしてみんな知っている。」
レイグは無視。
しゃもじ持ちの勇者
「じゃあ次!俺!」
しゃもじを掲げる。
「しゃもじの勇者!このしゃもじで整えるのが得意だ!」
女武道家
「何をだよ」
しゃもじ持ちの勇者
「全部」
遊び人ユウマ
「出たよ万能」
スライム
ぷるん!(同意)
遊び人ユウマ
「じゃあ俺」
軽く手を挙げる。
「遊び人、遊び人ユウマ。役に立つかは気分次第」
レイグ
「やめろ」
元王子
「不安要素だな」
遊び人ユウマ
「だが要所で働く」
しゃもじ持ちの勇者
「ほんとか?」
遊び人ユウマ
「たぶん」
全員
「たぶん!?」
空気が少し和む。
そして――
元王子が一歩前に出た。
少しだけ真面目な顔。
「俺の番だな」
一呼吸。
「……俺は――○○国の元王子だ」
沈黙。
一瞬。
本当に一瞬で――
女武道家の空気が変わる。
「……は?」
次の瞬間。
「お前がアイツの息子かァァ!!」
ドゴォン!!
地面が割れる。
しゃもじ持ちの勇者
「いきなり!?」
レイグ
「止めろ!!」
元王子
「待て話せば――」
女武道家は怒りで震えている。
「お前の父はなァ!!」
拳を握る。
「幼馴染だった私の母さん――ビアンカを捨てて!!」
空気が張りつめる。
「商会の娘と結婚したんだよ!!」
元王子
「……なに?」
女武道家の声が、少しだけ揺れる。
「そのとき、母さんの腹には……私がいた」
静寂。
焚き火の音だけが響く。
「母さんはな……」
空を見る。
「独りで山に入って、私を育てた」
拳が、震える。
「誰にも頼らずに」
一度、目を閉じる
「ずっと独りでな」
そして――
まっすぐ前を見る。
「……見返すために、私は鍛えた」
その一言は、重かった。
場の空気が変わる。
レイグも、遊び人ユウマも、何も言えない。
元王子は、言葉を失う。
ゆっくりと口を開く。
「……親父とうちの母さん、フローラ王女が……そんなことを……?」
しゃもじ持ちの勇者がぽつり。
「昼ドラ始まったな」
レイグ
「黙れ」
元王子は混乱したまま、女武道家を見る。
「……待て」
指をさす。
「ということは……」
真顔。
「お前は俺の妹――」
一瞬、止まる。
女武道家
「違う」
元王子
「……ではなく姉?」
全員
「ややこしい!!」
しゃもじ持ちの勇者、ぽつり。
「年上っぽいしな……」
女武道家
「殴るぞ」
遊び人ユウマ、腕を組んでしみじみ。
「なるほどな」
全員が見る。
遊び人ユウマ
「八股は血だったんですね」
元王子
「やめろ!!」
レイグ
「最低だな」
しゃもじ持ちの勇者
「遺伝か……」
元王子
「違うわ!!!否定はできないが多分…」
声は小さくなる。
女武道家は深く息を吐く。
怒りはまだ消えていない。
だが――
少しだけ、迷いが混じる。
「……ほんとかよ、それ」
元王子はまっすぐ答える。
「知らなかった」
真剣な顔。
「だが……確かめる」
沈黙。
風が吹く。
遊び人ユウマが小さく笑う。
「面白くなってきたな」
レイグ
「面白くはない」
しゃもじ持ちの勇者
「いやちょっと面白い」
スライム
ぷるん!(混乱)
焚き火が揺れる。
家族の話。
血の話。
そして――
めんどくさい話が、増えた。




